聖パウロ×工学院 高校入試ルネサンス(1)

日本語IB、スーパーグローバルハイスクールの大きな教育改革の波が到来している。しかし一方で、高校受験市場では、中学受験市場とは違い、都立の進学重点校などに見られるように、大学合格実績が高いところに人気があるという価値が鮮明である。

また、私立学校は公立人気に押されて、魅力アップのためにさまざまな改革を行う学校が多いという幻想も広まっている。ところが、このような価値意識が、自己肯定感の低い高校生を大量に生み出している可能性を示唆するデータも研究者のリサーチによって提出されている。

解なき未来社会で自分で考え、自信をもって、ともに生きていける青年を育成するために高校入試ルネサンスを掲げる聖パウロ学園高等学校校長高橋博先生、工学院大学附属中学校・高等学校校長平方邦行先生に聞いた。 by 本間勇人:私立学校研究家

高校入試の本当の問題

平方先生:中学受験と高校受験の大きな違いは、マーケットの地域制。中学受験のマーケットの半分は首都圏に集中している。高校受験は、高校入学率が97%を超えているわけであるから、全国に広がっている。すると、メディアはどうしても全国の最大公約数的な価値意識をベースに編集せざるを得ない。そうなると、大学合格実績に注目して高校を選ぶという従来の価値意識を続ける以外にないということだろう。

高橋先生:グローバル教育という良し悪しについては、もっと議論しなければならないけれど、この流れを回避することはできないだろう。そうすると、高校入試に関しては、平方先生のおっしゃっていることは、首都圏と日本全体で価値観のズレが生じているということだろう。これは日本の教育を見渡した時に、根本的な問題。このギャップをどのように埋めていくかは、私たちも悩むところだ。

平方先生:もちろん、大学もグローバル教育を受け入れられるように、カリキュラムイノベーションを行っているし、2015年から2018年ごろにはっきり表れてくるが、大学入試改革も進む。また次回の学習指導要領も知識偏重型の教育からメタ認知という言葉もすでにつかっているぐらい思考力を全面的に養うカリキュラムイノベーションを行う予定のようだ。

高橋先生:もちろん、そういう方向性は大歓迎だし、大いに期待するけれど、同時に今までの教育改革が現場で必ずしも成功してこなかった実績をみると、そう簡単にはいかないだろうという懸念もある。いずれにしても、いまここでの高校生は、まだまだ従来型の価値基準で高校を選ぶ。つまり人生の選択に関して、グローバル教育の恩恵に浴することができない。そこをどうクリアしていくのか、そこが重要なジレンマ問題だ。

平方先生:この東大を頂点とする偏差値ピラミッド。これが大学合格実績を生み出す評価基準だが、実はこの基準にしたがって、高校選択、つまり高橋先生のおっしゃる人生の選択という重要な局面で、3分の2の高校生は、個人差はあるけれど、自己肯定感を喪失し、自信を失って高校に入学してくる。人がつくった基準によって、振り回され、それで自分はできない。がんばっても、どうせダメだと考えてしまう若者を形成しているところが、高校入試の本当の問題。

高橋先生:逆もある。高偏差値の子は、それですべてにおいて優秀だ、人格の序列でも一番なんだと錯覚する生徒もでてきている。このような事態は私たち学校を運営している教育者にとって、引き受けねばならないとても大事な責任。そこにどうやって私たちはコミットメントしていけるか、それを議論し、解決する教育を実践していきたい。

平方先生:そこにテーマを絞って話していきましょう。

 

 

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