八雲&エール 国際交流 クラシックとロックで(2)

八雲学園がエール大学のコーラスチーム“Whim'n Rhythm”と音楽交流をするというのは、最も新しい概念の意味での「プロジェクト学習」でもある。八雲学園の感性教育という教育の総合力がaction perspectiveのベースを育成している。従来のプロジェクト学習は、言葉をコミュニケーションのツールとして活用して終わっていた。

しかし、プロジェクトとは、未知の世界の舞台で、自ら全身全霊表現を放つことである。そこではもはや言葉はコミュニケーションのツールの段階を超えて、行動するものの見方・考え方となって表現力の本質に変容している。

今回も八雲生全員は、近藤校長から、エール大学の学生をウェルカムの精神で迎えよというテーマが与えられた。ウェルカムの精神を体現するとはいかなることか。それがエール大学のコーラスチームと共にコンサートを開催するというアクションになった。そのアクションの一コマを垣間見た。by 本間勇人:私立学校研究家

2014年5月28日(水)、ホール「パーシモン」で、≪A Cappella Concert Whim'n Rhythm from Yale University≫が開催された。コンサートは13時から約3時間。この3時間のために、八雲の生徒とエール大学の学生は、数カ月の準備をしてきた。

世にいう真正のプロジェクト学習の本領は、この最終段階のクリエイティブプレゼンテーションにいたるプロセスにある。今企業の就職試験も、大学の入試も、グローバルスタンダードに照準を合わせ、大学時代の経験と学びのプロセス、高校時代の経験と学びのプロセスを重視しようという動きが出ている。すでに中学入試は、その段階に入っている。

近藤校長の「教育は総合力であり、感性教育こそ疎かにしてはならないのだ」という考え方はすでに時代を先取りしていたことになる。

数カ月もかけた準備について取材することはできなかったが、その一端であるコンサート直前の午前中のリハーサルを取材できた。スナップ写真をご紹介したい。10時に伺ったが、すでに“Whim'n Rhythm”のチームは、ウォーミングアップに入っていた。全力で歌い、それでもまだ議論し、調整していた。

スポーツと一緒だし、楽器と同じで、身体と心を柔らかく、温かくしておかないと、最高の声はでない。最高の声がでてはじめてアカペラは共振するというのである。

エール大学のチームは、声楽部と共演する。事前に、英語の作品と日本語の作品の楽譜をやりとりし、“Softly”と“ほたる”を選択。ハーモニーについては、前日の八雲学園での打ち合わせでできているが、ホールという空間でどうなるか音合わせ。息はピッタリ合った。一体感という言葉が、このときほどしっくりしたのを見たことはない。

ドリル部もかけつけた。アメリカ西海岸で生まれ、米国の高校では授業でも扱われている人気のパフォーマンス。日本流儀になった演技でエール大学を歓迎する。舞台という狭い面で、どのように力を発揮するか調整に余念がなかった。

舞台袖では、エール大学をはじめ多くの国際教育ネットワークをもっている榑松先生が、エール大学の学生やご自身が顧問をされているグリー部(ミュージカルの部活)との打ち合わせが行わrていた。自由でのびのびしたパフォーマンスは綿密な時空の計算が必要であることをシェアしていく大切なプロセス。

昨年末、英語劇ではじめて高校生有志によるミュージカルが披露された。それまで、年末の英語劇のイベントは、中学生によるものだった。しかし、英語によるドラマを高校になってもやりたいという意欲と意志を持った生徒がいた。近藤校長は、中学の英語劇の積み上げが、自分たちがやりたいというモチベーションを生み出したことに感動した。感性教育の成果の一つであるからだ。

そして、すぐに英語劇のプロフェッショナルでもある榑松先生と相談し、米国で人気ドラマ「グリー」をやってみようということになった。榑松先生と英語の先生方は英語劇を活発に行っている他校を訪問し、リサーチをしながら、モチベーションの高い高校生有志と1カ月くらいで間に合わせた。その達成感の大きさは説明するまでもないだろう。電撃的有志の活動は、そのあとすぐに部活結成のアクションとなり、あっという間にホールで部活初デビューを迎えることになった。

ホールに立った時、部員全員は、驚嘆の声をあげた。「こんなところで演技ができるなんて!」と。ひるむのかと思ったら、ますますやる気がでてきたと、リハにはいった。

初演とあって、マイクの調整が難しかった。ホールのスタッフと学校の先生方と限られた時間で何度も調整した。

そして、高3生による名司会者たちの準備もOK。会場から「イエー!」「ヒューヒュー!」という盛り上げる絶叫を大いに引き出すノリだ。

もちろんイマージョン率100%。オールイングリッシュのコンサートの準備が着々と進んだ!

 

 

 

 

 

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