三田国際学園 21世紀型授業展がる(2)

スーパーサイエンスコースの授業といえば、数学と理科。数理的思考とは何か?大学入試問題ができるようになることは当然。しかし、それだけでは理数系に強い人材を育成できない。たとえば、アインシュタイン的な発想の持ち主を育成したいというのが、三田国際学園。

つまり、ガリレオの身の回りの現象から気づいた相対性原理を光速を組み合わせて、特殊相対性理論として方程式化=一般化してしまったその思考のパースペクティブを授業に取り入れたいというのである。

実験の実験

菅原先生の数学の授業の後は、SSのクラスの生徒は生物室に移動。DNA上の塩基3つが1個のアミノ酸を決めるために暗号化されたものをいかに解読するかという授業だった。

まずはDNAのミクロの世界を動画で学んだ。目に見えないものをイメージするアイスブレイキング。数学の授業と同じ質感で始まった。この後、電子黒板というツールの多機能とそれに連動するiPadの循環がディスカッションと思考へのフロー状態をファシリテートしていくことになる。

そのツールの編成をマネジメントするのが深田先生。いわば先生はファシリテーターのファシリテーターだった。より高度な内容になると、授業の展開だけではなく、生徒のモチベーションの持続と集中の状態をどうつくるか授業運営の力も必要になる。

たいていは、道徳や抑圧の力、あるいは試験に出るぞというにんじんで生徒を圧するのであるが、生徒はエヴァンゲリオンよろしくパワースーツを着こなしていくうちに、モチベーション、チームワーク、思考への誘いに集中していく。

あらゆる授業で、iPadは活躍している。深田先生からは、ワークシートが送られ、それをダウンロードしてチームで作業が行われた。シートは膨大だから、もし紙媒体で配布されたらどうだろう。

ページをめくりながら、どこを探すか焦点が定まらないでにぎやかになってしまうのが常である。ところが、iPadの場合、情報を限定し、3人でそれぞれ調べるシートを分担して、情報をすぐに交換し合えるから、そういう無駄な時間がない。その分思考する時間が増える。

塩基配列を翻訳し、解読結果がでたら、今度は生徒たちは電子黒板に書き込んでいく。この授業の展開は、もしICT機材を使っていなかったら、このような感じでは授業は展開されていなかっただろう。

どういうことかというと、従来だと問題を解いて、黒板に解答をただ書き込むというテーストだったはずだが、ICTを媒介にすることによって、実験結果を入力し、サイエンティスト全員でそのデータを眺めて議論するというシーンに変化しているのである。

遺伝子組み換えの実験を実際にやっているのではない。しかし、あたかもそのシミュレーションのようになっているのである。

本物の実験をすることは大事だが、本物の実験をしたとしても、その実験を通して何を発見するかが、サイエンス思考のパースペクティブ。とするならば、実験シミュレーションを通して、何を発見するかという学びにおいても、サイエンス思考のパースペクティブを学ぶことができる。

おそらく深田先生は、教科書の実験を追試するだけなら、動画で十分だと思っているのではないだろか。実験をやるのなら、教科書にないような自分で考えた実験をと。

それはともかく、驚いたことに、深田先生は、この作業がやっと終わりかけたときに、問いを投げかけた。この作業を通してある重要なコトに気づいたひとはいるかなと。一生懸命ワークシートの暗号を解読してきたのに、実はもっと重要な別の問題が隠されていたなんて!生徒は大いに驚いたが、それは次回までに考えてくるということでまたまた驚いた。三田国際学園になるということは、こんなにもたっぷり考える時間で満たされるのかと。

深田先生の授業も、菅原先生同様のオチがあった。それは問題を解いているとどうしても木を見て終わってしまう。そこで、その問いの背景には、森を見るパースペクティブの問いがパラレルワールドのごとく重ね合わされているのである。

あの天才コンピュータサイエンティスト、故ランディ・パウシュ教授は、最後の授業で、そのことを「頭のフェイント」と呼んだ。

 

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