富士見丘 模擬国連部 C1英語レベルの頼もしさ

今年の4月、富士見丘中学高等学校(以降「富士見丘」)は「模擬国連部」を立ち上げた。高校生が「国連大使」になりきって決議案を出し、他の国と交渉する「模擬国連」の活動に参加する機運が学内で盛り上がった。

同校はSGH校であることもあって、在校生は持続可能な開発を中心にグローバルイシューへの関心が高い。また、SGHプログラムや多彩な高大連携プログラムによって問題解決能力、英語によるプレゼンテーション力など日頃から学んでいる。「模擬国連」の教育プログラムと同期するのは必然的な流れだったことだろう。

夏の合宿を経て、活動はさらに進化していく。その部活動の1コマをご紹介する。(by 本間勇人 私立学校研究家)

 

今年4月に立ち上げたばかりであるが、すでに夏の合宿のあとのコンクールで(上記写真)、入賞するなど、成果があらわれている。その進化の速度に驚き、部活動を見学させてもらった。

(夏の合宿の様子)

すると、そこには、異次元の光景が広がっていた。英語でリーダーシップをトレーニングをしているのかと思えるほど、ネイティブスピーカーの先生や吉田成利先生と英語でディスカッションをしていたのである。

(吉田成利先生は、同校の校長補佐であると同時に、明海大学の研究者で、ロンドン・キングス・カレッジやシカゴ大学で研究し、法学博士Ph.Dを取得している憲法学者。つまり、富士見丘の模擬国連部は、いわば法科大学のゼミと同じレベル。いや、日本の大学の学部のゼミと大きく違うのは、オールイングリッシュだということ。この違いは極めて重大事である)

一般に、模擬国連の活動は、選ばれた数名の生徒が挑戦するが、富士見丘は部活動で行っていくから、相当の人数がメンバー。にもかかわらず、全員が英語で、「決議案」を組み立てるために、ディスカッションし、ライティング活動を行い、プレゼンテーションするのである。

しかも、国連が掲げるグローバルゴールズを解決するために議論をするのである。この重要性はわかるだろうか?NHKテキストのサイトで、CEFR基準が簡単に次のように紹介されている。

C1
 
広範で複雑な話題を理解して、目的に合った適切な言葉を使い、論理的な主張や議論を組み立てることができる
 
B2
 
社会生活での幅広い話題について自然に会話ができ、明確かつ詳細に自分の意見を表現できる
 
B1
 
社会生活での身近な話題について理解し、自分の意思とその理由を簡単に説明できる
つまり、富士見丘の模擬国連部の英語のレベルはC1レベルの環境ということ、わかりやすく置き換えれば、「英検1級」ということなのである。世の中には、CEFRテストは存在しないから、スコア化できないが、模擬国連部のメンバーが、TOEFLやIELTSに挑戦したら、相当な成果をだすことだろう。
 
 
(生き生きと英語で対話するメンバー)
 
吉田理事長・校長も、部活を見学しに来て、「ところで、この今の高度な英語でのやりとりは、100%理解しているのか」と尋ねると、当然ですと反応があったのにも驚いた。というよりも、珍しく校長が日本語でたずねたので、生徒たちが、一瞬戸惑ったぐらい、英語圏になっていたのだ。
 
 
吉田校長は、自ら堪能な英語力の持ち主である。これまで、日本の英語教育を、自らが英語を駆使して牽引してきた。在校生の海外留学先の契約も、提携校に単身乗り込んで交渉してきた。イギリスやオーストラリア、米国西海岸の研修旅行も自ら率いてきた。
 
しかし、SGH校として、教師が一丸となって動き始めると、吉田校長が行ってきたことが、校長補佐吉田成利先生を中心に、多くの先生方にエンパワーメント(権限移譲)される展開になってきたのである。英語で交わされているディスカッションのさ中に、ふと校長は自然に日本語で話してみたいと思ったのではないか。もはや、自分が先頭にたたずにも、教師と生徒がこんなにC1英語を使っているのだからと。
 
 
生徒が「議決案」をプレゼンすると、すぐに吉田成利先生が、丁寧にコメントを返す。もちろん英語でだが、この方式こそ、イギリス流儀のチュータリング方式である。
 
 
2020年大学入試改革に伴って学習指導要領の改訂作業が進んでいる。その中で最も話題を呼んでいるのが、アクティブラーニングであるが、この富士見丘の模擬国連の活動こそ、深いアクティブラーニングのロールモデルだろう。何といっても、英米の名門大学院のゼミ形式がそのまま展開しているわけだから。
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