Created on December 31, 2016
グローバル教育が加速度的に広がり、すっぽり日本列島を覆う中、他とは全く違う「唯一のスペシャルグローバル教育校」と呼べる立ち位置にある八雲学園。グローバル教育という名目で、帰国生の入学を推進し、その実東大をはじめとする難関大学に合格させることが本音の学校が多い中で、帰国生入試をあえて行わず、小学校での英語体験以外は特に英語教育を受けてこなかった一般生を対象に、グローバル教育を行っている。by 本間勇人 私立学校研究家
(2016年度の3ヶ月留学生)
極端に言えば、帰国生を積極的に取り入れている学校は、英語教育をほとんどしなくても帰国生が英語の実績をあげてくれるので、一般生は大学受験勉強をしていればよいということになりがちだ。
しかし、八雲学園は帰国生が一般入試で入ってきても、特別な授業を行うわけではなく、一般生が英語を学ぶ場でいっしょに学ぶ。ただし、押さえておかねばならないことは、特に帰国生がいなくても(とはいえ、一般入試で入学してきてはいる)、帰国生同様の英語力を身につける教育環境をつくっているという点で、最も英語教育において教師が創意工夫をしている学校といえるのだ。
帰国生がたくさんいれば、確かに、帰国生と一般生がシナジー効果を生み出すが、それがメインになっている学校は、教育を放棄していると言えば、言い過ぎだろうか。
その点、八雲学園は、一般生を受け入れ、生徒一人ひとりの言語感覚を覚醒させ、その上で、どんどん英語力が伸びる生徒と基本的なサポートが必要な生徒のそれぞれのニーズに応じた英語学習のプログラムをデザインしている。
スピーチコンテストやレティテーションコンテスト、文化祭での英語劇、英語祭、イングリッシュファンフェアーなど比類なき多様な英語環境は、生徒一人ひとりの英語という言語感性の違いを教師と生徒が共有できる場なのである。
そして、その場があるからこそ、自分の英語力に応じたグローバル環境を選ぶことができる。理系に進む場合、CEFR基準に換算すればB1に到達しなければならないが、それはアドバンスドクラスで十分に養われる。
毎年一学期にイエール大学と国際音楽交流が行われているが、八雲学園の生徒がイエール大学の学生に刺激を受けて、ミュージカル部を創りたいと思い立ち、自分たちで部活を創ってしまったというのも、その才能開花の1つである。
また、イエール大学のような海外大学で、世界に貢献する能力を磨き上げたいと思った生徒は、CEFR基準で換算すればC1レベルが必要。現状のオーナーズクラスでは、B2レベルぐらいまでで、このB2では、国公立大学、早慶上智レベルはカバーできるが、イエール大学のような海外大学はカバーできない。
八雲の先生方は、どこか外部からパッケージプログラムを持ってくることはしない。あくまで、生徒が欲求した場合、俊敏に動くことをモットーとしている。他の学校とはかなり違うある意味徹底した生徒ファーストな学校なのだ。
今年で3年目を迎える米国3ヶ月留学も、4年前にスタートしたイエール大学との国際音楽交流という環境を設定したことによって生徒の方から強い要望があったから作ったのである。
菅原先生によると、「不思議なもので、1年目より、2年目。2年目より、3年目とチャレンジする生徒の英語力が向上し、単純にTOEFLや英検などのスコアを上げるためというより、本格的に米国の大学生とディスカッションしたり、エッセイを書いてみたいという欲求が高まってくるため、毎年プログラムをブラッシュアップしなくてはならない」ということである。
実際今年3ヶ月留学を終えて帰国した生徒の事後学習プログラムでは、文化人類学的サーベイ手法を取り入れていた。いわゆるPBL(プロジェクト学習)で、最近ではアクティブラーニングと呼ばれている学びのスタイルで実施された。
たとえば、米国に留学に行く前の自分たちの先入観と留学中に多くの米国人にインタビューした後の米国のイメージを比較スタディーして、エッセイを書いていたかと思うと、留学中に、米国の方々に日本人についてのイメージをインタビューし、帰国後そのイメージとのギャップがどうして起こるのかエッセイを編集したりしていた。
いわゆる、ロジカルシンキング、クリティカルシンキング、クリエイティブシンキングという高次思考の領域で学ぶプログラムだ。
英語科主任の近藤隆平先生によると、「中学までに培ったウェルカムの精神が効を奏しています。先入観を素直に受け入れつつ、一方で何が現実と違うのかについてリサーチをするにも素直に相手の話に耳を傾ける姿勢は重要です。
アカデミックスキルが伴うまでの英語力(C1英語)は、英語のスキル習得だけではなく、また、現象としての世界を説明するだけではなく、そこで起こっている問題に気づき、どうしたらそれを解決するために自分は役に立てるのか、世界観も掘り下げて行く必要があります。それがなければ、ディスカッションはできませんし、エッセイも書けないでしょう。国内の大学受験だけを考慮すれば、こんなに広く深い言語感覚を養わなくてよいのですが、生徒が望むなら、何度でもトライアンドエラーします。プログラムもどんどん磨き上げていきます」と頼もしい。
英語に限らず、運動会、文化祭、芸術鑑賞などのプログラムすべてが、生徒と共に創り上げる八雲学園。生徒ファーストと教師の創造的リーダーシップが教育コミュニティを形成している。
なぜ八雲学園は楽しいのか?この生徒と教師の創造的なケミストリーが生まれ続けているからであろう。