聖学院 知のデザイン広がる <難関思考力>

聖学院のSGT Super Global Teacher)児浦良裕先生と対話した。児浦先生は、数学教師であると同時に、聖学院の21教育企画部部長。知のコンセプチャルデザイナーである。それゆえ、聖学院の生徒一人ひとりの創造的才能を引き出し、実現していくGRIT(気概)を鍛えるクリエイティブコーチングプログラムを、中高一貫という6年間に張り巡らそうとしている。

それがいかなるものなのか、その全貌のデッサンは今年の秋ぐらいに表現できる予定であるというから楽しみである。それにしても、児浦先生自身、数学的思考をアンチ専門分野主義的に拡張できるSTEAM思考の持ち主であるがゆえに、対話していく過程で、いろいろな発想が湧いてきた。今回は聖学院の知のデザインの素描の素描をご紹介したい。by 本間勇人 私立学校研究家

(2017年2月19日、本機構主催「第1回新中学入試セミナー」でも児浦先生は登壇)

聖学院の「思考力入試」は、多くのメディアや受験情報誌で取材され、注目されている。それは、この入試の問いや生徒の思考活動が、従来の知識論理型思考をジャンプして論理創造型思考まで問うているために、生徒一人ひとりの創造的才能を引き出す新しいテストであり、また、2020年大学入試改革の背景にある知のパラダイムのプロトタイプでもあるからだ。

生徒の創造的才能を引き出すエンパワーメント評価として、同校では「メタルーブリック」が開発されている。G1・G2・G3・G4という独自の思考の次元がデザインされている。おそらくG1は単純思考、G2は拡張・収束思考、G3は関係思考 G4は創造的思考というステップになっていると思われるが、思考する素材や対象などに応じて、具体的に「ローカルルーブリック」を設定している。上記はレゴプログラムの「ローカルルーブリック」の簡易版であるが、これが論述やプレゼン、読解力、数学的思考・・・などそれぞれに応じて、変容適用されていくのだろう。

すでにプロトタイプができているのだから、来春も同じように行っていくのかと思っていたが、児浦先生いわく、「プロトタイプは再構築、つまりリファインして進化していくものです。コンセプトという種が芽を出し、葉を広げ、開花し、再び実を結ぶように、成長していくものです。ですから、来春はもう1つ新しい<難関思考力入試>を行います」ということだ。

今まで行ってきた「思考力+計算力」は、自分の思考過程をモニタリングしながら自ら思考の次元をステップアップしていく「批判的思考力」が中心。生徒によって創造的才能の成長の仕方は異なる。その才能が引き出されるには、それぞれのタイプに応じたプログラムが必要。思考を1つひとつ積み上げて行く中で、あるときピョンとジャンプする成長タイプの生徒もいる。

(同セミナーで児浦先生がプロジェクターで映し出した図)

これに対し、紆余曲折、眩暈がするのではないかと思うほどグルグル回ったり、アップダウンを繰り返し思考に没頭できるモヤ感耐性のある生徒は、その霧の中からある瞬間パッと閃くというタイプの生徒もいる。そういう生徒は、レゴを活用した「思考力 ものづくり」が適している可能性がある。

児浦先生の「21教育企画部」のチームメンバーとPBL(プロジェクト型学習)型授業や行事の試行錯誤/思考錯誤を繰り返している中で、生徒の才能の成長タイプが見えてきたという。高等部部長の伊藤豊先生の最近接発達領域の研究が、ここにつながったようだ。

それでは、<難関思考力入試>は、どの才能成長タイプを想定しているのだろうか。児浦先生いわく「現状では、今までの2つの才能を統合・融合したタイプを想定して問いを生み出そうと思います。ただ、2つのタイプに適応する問いを並べるだけではなく、2つのタイプが結合したときに起こるケミストリーが全く新しいタイプを生み出すことになると思います。すでに、在校生の中にニュータイプが存在しているので、そのような生徒のリサーチもしつつ、練り上げていきますから、楽しみにしていてください」ということだった。

ワクワクする話を聞いてしまったがゆえに、刺激を受けて、私なりに聖学院の知のコンセプトがイメージになった。独断と偏見ではあるが、こんな感じである。児浦先生は、いや違います。こうですよということになるだろうが、それこそが、聖学院の対話思考である。今後のSGT児浦先生との対話を期待して頂きたい。

 

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