Created on November 20, 2017
11月14日(火)富士見丘中学高等学校にお邪魔し、授業を見学する機会がありました。特にイベント授業ということではなく、ふだん通りの授業を中学1年生から高校3年生まで様々な科目において見学しました。いくつも印象的な授業がある中、今回は高1の帰国生中心の英語取り出し授業をご紹介します。by 鈴木裕之:海外帰国生教育研究家
マーシャ先生と9名の帰国生とが輪を作るように座り、英語でディスカッションを行います。この学期は「surveillance」というテーマに沿って、毎回関連する新聞記事を2~3つ取り上げ、それについてのディスカッションを行っているとのことです。
いくつかの記事があらかじめ生徒に渡されており、生徒はその記事すべてについてリサーチを済ませています。まずはある記事を担当する生徒がその記事の概要とそこから浮き上がる問題をグループメンバーに対して英語で提示し、それを受けて他のメンバーが順不同で質問や発言をして、グループディスカッションが始まります。見学したときには、アメリカの大学において、受験生のSNSでの発言が入学や奨学金の受給などの面で影響を受けることを問題視した議論がなされていました。
ディスカッションは、先生が指名するまでもなく、気づいた生徒から順不同に発言していきます。賛成・反対といった立場を明確にする意見の応酬をするばかりではなく、自分の経験に基づく話を織り交ぜながら、本質的な問いかけを発したり、時にジョークを飛ばして笑いが起きるなど、議論の方向は、様々な事柄に広がっていきます。
マーシャ先生は終始にこやかに生徒のディスカッションを聞いていて、時々参加者の一人として自分の経験を話しますが、生徒の意見の中身についてその場で評価コメントを述べることは一切しません。生徒一人一人の発言回数やその発言の性質(質問、賛成意見、反対意見、短いコメントか長い意見か、等)を評価表に書き込んでいき、それを元に後で生徒にフィードバックをするとのことでした。
生徒はみな発言内容に意識が向いていて、英語力が高いかどうかは関心の外にあるようでした。もちろん全員がCEFR基準のC1レベルの英語力ですから英語力を気にする必要はないのですが、英語力の高い生徒が、その流暢さのみによって議論を支配するということはなく、C1レベルの言語熟達者ならではの批判的・創造的思考力によって、スリリングでしかも和やかな雰囲気のディスカッションが展開されていました。
ここ数年富士見丘を受験する帰国生が増えているのは、こういった授業の口コミが広がっているからでしょう。帰国生に限らず、選抜クラスに入る実力を持った英語が得意な生徒にとって、少人数で高度なディスカッションが展開できるこのような環境は他のどの学校にもそうはないものだと言えます。人気が上がっている裏にはやはり理由があるということを再確認しました。