私学人から見た大学入試改革の道(4)

§4 大学入試改革の根本問題 ①

吉田先生: 「達成度テスト」の導入によって、知識偏重型の学力選抜から幅広い教養や生徒自身の才能や意欲を考慮した選抜に転換することは理想的。特に今まで教育改革のモデルであったはずの国公立大学でAO入試など多様な入試の実施が行われてこなかったことを(下記資料参照)振り返れば、第4次提言は、重要な発想である。

学力優秀生がどうのこうのというわけではなく、逆に学力において頑張っている生徒、受験学力以上の興味・関心の領域で頑張っている生徒の両方の学びの姿勢を、国公立大学が評価しようとなることは、AO入試や推薦入試も生徒獲得機能のほかに生徒が学んできたことを評価する本来の機能も回復することになるだろう。

(「第4次提言参考資料」から)

しかし、それには、形式的に大学入試の制度を改革するだけでは理想は実現できない。内実としての内容も変えなければならないのだが、それには小中高全体の教育課程も変えなければならない。

そしてそうするためには実は2つの根本問題がある。それをいかに解決するかである。1つは、第4次提言では、大学入試という大学の入り口が中心的な話題であり、第5次提言で予定されているのは、小中高の教育のシステムの問題が中心になるだろうが、肝心の大学の4年間の具体的な話がで議論されていない。

だからグローバル人材を育成するといっても、各大学が具体的なグローバル人材像をいかに描き、その人材を育成するために4年間に何をどのようにシラバスなどで作っていくかということが明快になっていない。

ここが解決すれば、形式的に「達成度テスト」を行うだけではなく、その内実も詰まってくるし、小中高の教育課程の改訂や改革も進むだろう。

今のところ、グローバル人材を育成するとなっているのに、大学側がIB(国際バカロレア)やそれに相当する学びを一条校で行ってきた生徒を積極的にとりたいという話になっていない。実に不思議である。

それは、今話をしたが、大学側が明快にグローバル人材像やその育成の方法を計画していないため、当然そのために必要なIBなどで学んできた内容を大学側が組織としてリサーチしていないからだ。

だから、結果的に、実は今後大学がどのようなグローバル人材を育成しようと、その人材が大学で研究していく際に必要としている、リサーチ力やプレゼンテーションの能力、そして思考のスキルを身につけている可能性が高いことにまだ気づいていないのだと思う。

それゆえ、高校側から日本語IBの話を大学側に説明し、受け入れるように門をたたいているのが現状で、本筋ではない。その筋が通ったとき、大学入試の形式と内実の両方が動き出すだろう。

大島先生:今の話は、もし日本の大学が、イギリスの大学とコミュニケーションをとり、ファンデーションの目的について議論すれば、すぐに明快になるはずだ。ファンデーションに進む外国人は探究活動をするわけだが、それは英語を学んだり、日本の多くの大学が行っている入学前講座のような知識の確認を行うわけではない。

それらはファンデーションに入る以前の話で、英語はIELTSで、できれば6.5(TOEFL iBTに換算すると80程度)はがんばって学んできてほしいと要求されるし、日本の学習指導要領で学んできた知識量はすでに大いに役に立つという前提に立っている。

つまり、ファンデーションでは、大学で研究するときに必要な探求や思考のスキルをトレーニングする。リサーチ能力、ディスカッション能力、エッセイの能力、プレゼンテーション能力、科学的ものの見方など。

ここまで明快になっているのだから、日本の学習指導要領も、グローバル人材を育成する大学に接続する入試の内容の輪郭を明白にできるのではないか。

平方先生:大学側がグローバル人材を育成する能力や資質がある生徒を選抜できるようにするために、入学してきた学生をどのようなグローバル人材に育てるのか、そのためにシラバスなどのプログラムをどのようにするのか、内実が明快になっていないということを解決することがいかに重要か、事ある度に、話題にし議論をしていくことが必要だろう。

そこが明快にならなければ、入試の内容が本当に変わらないし、変わっても、その入試に合格するスキルだけを追わないように、小中高の教育課程と授業が変わっているかどうか常に話し合っていかねばならない。

明治の近代教育以降続いてきた伝統的な価値観や方法を転換するには、恒常的な議論が大切になるだろう。

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