2日間に渡って、明海大学浦安キャンパスで、同大学ホスピタリティ・ツーリズム学部主催のサマースクールが行われている。オールイングリッシュでレクチャー、ディスカッション、グループワークなどのハードなアクティビティが行われる。
大学の講義やアクティブラーニングを丸ごと体験する。ハワイの観光について、マーケティングの切り口で学際的に研究するのである。イングリッシュイマージョンではなく、グローバルイマージョンそのものであるが、多くの中3と高1の富士見丘生が挑戦。1日目を取材した。by 本間勇人 私立学校研究家
(サマースクールは、明海大学浦安キャンパスの図書室で開催。講義スペースとグループワークスペースなどアクティヴィティごとに分かれている贅沢な環境)
内苑孝美教授(ホスピタリティ・ツーリズム学部長)からの挨拶は、グローバルな学問が行われている同学部らしく、ウィットに富んだ話だった。隣接のディズニーランドの話がフックになり、参加者のマインドセットを行ったのである。ディスに―ランドも今回のテーマであるハワイにしても、多くの人々がいかに魅力を共有できるのか、それはマーケティングや心理学などの学際的な問題であるという2日間のサマースクールのトリガーとなった。
今回のサマースクールのミッションテーマは、「ハワイに旅行する日本の若者の数を増やすにはどうする?」。もちろん、この具体的な学びを通して、観光産業のシステム、経済のシステムという背景、さらにグローバルな動きを考えることがねらいである。
レクチャーは、ハワイ大学のラッセル・ウエ ノ教授を招いて行われた。ハワイの観光をテーマに、ハワイ大学の授業そのままを体 験できるグローバルイマージョンの環境をこの2日間のサマースクールのために準備されていたのだ。明海大学は、海外の提携大学とネットワークを築いているが、ハワイ大学もその1つ。
すでに、生徒は、厚手のハワイの観光についての英語の資料がPDFで配布されていて、それを理解したうえで、授業に立ち臨む。このような反転授業スタイルは、欧米の大学では当たり前で、そこからグローバルイマージョン体験が始まっていた。
ラッセル教授の講義の構造は、極めてシンプル。まずそれぞれの生徒が反転授業で、マイイメージを膨らましてきているから、ハワイの多様な観光のスポットを多くのビデオを活用しながら講義。ビデオを見る授業ではない。ビデオを流しながら、具体的な観光産業の展開の視点を生徒といっしょにメタ認知していく。こうして、ハワイの観光産業の実態をダウンローディングしながら、メタ認知を刺激していく。マイイメージが、パブリックイメージに広がり共有できる流れになっているのだ。
そして、次にハワイの観光産業が、世界からクライアントを呼び込むマーケティングのスキルを、これまたビデオを活用して講義をしていく。今度は、先にダウンローディングの中で、気づいただろう生徒たちのメタ認知を、観光のためにつくられたビデオに当てはめて検証していく。
つまり、ラッセル教授は、マーケティング手法を一方的に講義するのではなく、生徒と共に手法を創り上げていくのである。講義でありながら、アクティブブレインを生成する授業デザイン。
講義のあと、チームに分かれてワークショップを行い、実際に役立つ企画案を編集、創造していく準備としての意味もあったと思う。それにしても、大学の講義は、たんに方向性を示すものではない。実際に役立つ視点=考え創出するスキルを共有するものである。
白熱授業は、いったん終わり、脳に栄養を補給するため、ランチタイムとなった。観光産業に多くの優秀な人材を輩出する明海大学だけあって、学食スペースというより高級レストランというスペースで、生徒たちはランチをとった。
ランチ終了後、ラッセル教授の白熱授業は再開。海外では、質問や提案を出さないのは、フリーライダーとしてルール違反だから、生徒たちはいろいろな質問を考え、もちろん英語でラッセル教授とやり取りをした。
富士見丘学園の理長長補佐・校長補佐の吉田成利先生は、明海大学の講師でもあり、今回のサマースクールのプロデューサ―。吉田先生ご自身、イギリスやアメリカの大学院やロースクールで学び博士号を取得している。
そういう経緯もあって、今回はラッセル教授ともコラボレーション。生徒たちにもっとシンプルな英語で質問してみようと、英語で生徒たちとやりとりをしたり、英米流儀のインプロ手法で無茶ぶりをして、質問が出てくるようにファシリテーションを務めていた。
ラッセル教授と魅力的な観光を生み出すマーケティング視点を共有できたところで、明日に向けて効果的なプレゼンエーションとは何かについて、三輪祥宏教授による講義があった。もちろん英語でである。
ここでも、プレゼン内容を編集する視点、オーディエンスを巻き込む方法論など、ポイントタッチで整理されたスライドで明快に英語で解説があった。
そして、いよいよグループワーク。ファシリテータは、明海大学の教授陣。なんて贅沢な!もちろん、英語でディスカッションや編集制作は進行していた。
図書室は、ラッセル教授や三輪教授が講義をしたレクチャースペースだけではなく、そのすぐ隣は、グループワークスペースになっている。開放的にリラックスして話し合えるような空間がデザインされている。
富士見丘の英語科教諭の田中先生も、パーティスペイティブオブザーバー(参与的観察者)として、生徒たちを支援していた。
本格的なワークショップは、2日目に持ち越される。ラッセル教授と共有したメタ認知、すなわち、観光領域として、文化的リソース、スポーツ、音楽、アート、食、環境、経済、マインド等以外に何を新たに提案するのだろうか。
イベントやアクティビティ以外に新しいコンテンツはいかなるものを発想するのだろうか。
そのために、どんなコミュニケーションや新しいネットワークをつくるのだろうか。
なんといっても、ハワイの観光のマインドコンセプトは、自由×冒険×恋以外に何を掲げるのだろうか。
今回のテーマ「ハワイに旅行する日本の若者の数を増やすにはどうする?」をどのように考えるのだろうか?しかし、これはすでにラッセル教授とのディスカッションの中にそのヒントがあった。頻繁に、もしあなただったらどうする?というやり取りがあったのである。テーマの中のフレーズ「日本の若者」は、要するに、もしあなただったら、どうすると置き換えられるだろう。
自分たちが行きたいドリームハワイを創ってしまえばよいわけである。2日目のグループワークは白熱することになるだろう。それに、すばらしい効果的なプレゼンテーションで幕を閉じるだろう。
そして、なんといっても、サマースクール終了後は、隣のディズニーランドで、アフター6パスが待っていることだろう。