第1回 21会カンファレンス 「21世紀型教育が未来を創る」①

第1回21会カンファレンスの第Ⅱ部は、パネルディスカッションPARTⅡから始まった。コーディネーターは高橋博先生(21会副会長・聖パウロ学園理事長校長)。パネラーは平方邦行先生(工学院大学附属中学校・高等学校校長)、渡辺眞人先生(共立女子中学高等学校校長)、白鶯訓彦先生(富士見丘中学校高等学校副教頭)。カンファレンスの前半の内容を振り返りながら、私学ならではの21世紀型教育の展望についての対話編。

教育政策の側面から平方先生が、教育パラダイム論の側面から渡辺先生が、海外研修のリサーチと歴史的パースペクティブの側面から白鶯先生が語った。(by 本間勇人:私立学校研究家)

高橋先生:カンファレンス前半を前提としてディスカッションしていきます。シナリオがない状態ですが(笑)、最終的には大きく展開するものに向けて、夢と希望を持った内容の展開になればと思います。さて、前半は21世紀型の授業が中心に話がありましたが、もう少し世界的視野を広げて、留学試験というものを21会校がどう受け入れていくのか、そこからいきましょうか。

平方先生:皆さんもご存じのように、先週の土曜日から関係者はIB(国際バカロレア)ウィークだといわれていて、広島女学院大学でシンポジウムがあり、火曜日、水曜日、木曜日とそれに関連した評議会の立ち上げ等、話を聞く会がありました。

しかし、多くの学校を含めて話すときは、IBO(国際バカロレア機構)の方は直接話をせず、フィルターを通しての間接的な話を学校関係者は聞いていました。昨日、実際にIBO担当の方と話した結果、実際に話している内容とは異なっていました。当然間接的な場合はバイアスがかかりますから、そこをクリティカルに読んでいかなくてはなりません。

とにかく、日本語でディプロマをやっていくことは確定しています。文科省はIBのテキストを日本語に訳すところまで決めていますね。平成27年(2015年)からスタートして、平成30年(2018年)に資格をとった人が初めての大学入試となります。今年の夏から日本語のワークショップを1人6万円くらいで受けられますが、文科省はディプロマを行う学校を16から200校に増やすとしています。いったいどのくらい時間やコストがかかるは明らかではありません。

またさらに驚いたのは、文科省で行っている平成26年、27年の大学入試制度について熟議する会で、質問をしたところ、大学の先生は日本語のディプロマを推奨していることを知らない。この日本語IBの話題が文科省から打ち出され、政財界でも話題になっている状況下で、知らないというのは問題です。ディプロマを習得した生徒が卒業したときに、受け入れ側が知りませんと言っているようなおかしな話です。これから急激にいろいろなことが整備されていきますが、まだまだこれからです。時代の流れと教育行政の流れの一貫性を見定めていく必要があるでしょう。

高橋先生:教育行政としてのIBの話の展開はそれとして、教育そのものの話として21世紀型教育のことについてはどう考えていけばよいですか?

渡辺先生:今日21世紀型と言えば、教育について、いろいろと説明がありますが、現在の社会の中では子供たちにとっては生き抜く、サバイバルの時代です。共に生きるまでには生き抜くという段階をいったん経ざるを得ない時代ですね。ですから、相も変わらず大学入試制度のテストで基礎力を磨くのはもちろんまだ大事で、その努力を判定することもしばらくはやらなければならないでしょう。

しかし、問答法といえば、ソクラテスまでさかのぼり古い方法ですが、それを読み返してみると、PIL、PBLといったような授業形態につながっていく。この不易流行の感覚が私立学校の21世紀型教育につながります。前半の話を聴いていて、教育とはいかなるものかということを今日改めて感じ入った。21世紀型授業や思考力テストという2つの紹介がありましたが、今後とも進めていかなければならない問題でしょう。

IBの話は、結局このような授業ができるかどうかにかかってきます。今のところ一部の授業の中で実施されている学校も多いでしょうが、深く広く浸透させていきたいと思っています。このことは、21会校のみならず、私学全体の今後の取り組み方が、生徒のためにどういう未来を描こうとしているかが試されていると言い換えることもできます。

白鶯先生: 本校は42年の留学の歴史があり、短期留学を近年は行っています。今春も3週間ほどイギリスとUAE(アラブ首長国連邦)に30人近い生徒と共に滞在しました。2週間滞在したイギリスでは姉妹校を訪問し、現地校の授業を受け、授業風景を拝見したところ、カルチャーショックを受けました。

どうしても授業は教師が生徒に授けるものだという固定観念がありますが、イギリスでは、授業は授けるのではなく、生徒と教師で一つの学びを作っていくという感じだったのです。私は世界史を教えていますが、求められる世界史の内容は膨大で、教えようとしてしまいがちです。ところが、授業をのぞいたら、生徒が教えていた。

生徒が教師からテーマを授かり、それについて他の生徒にレクチャーをしながら、インタラクティブにかつアクティブに授業を展開していました。それを目の当たりにし帰ってきたのです。こういう授業を生徒が肌で感じ、本校の教育や学びを進めていくことが大きな教育的効果としてあるのではと期待しています。

もう一つはUAE大学との交換会を行いました。UAEは特殊な国で、アラブ系の方が20%くらいしかいなく、あとは外国人です。もはや日本人もこういうグローバルな多様な社会の波に出ていかざるを得ないわけです。

こういうことを念頭に置くと、今後先ほど話していたPBLのような問題解決型の学びがカギになります。いろいろな価値観を持っている国々の人々と出会います。同じ国でも宗教や風習、習慣の違いがあります。この違いを超えて、何かを創造し、問題解決をしなければならない。そういうことを将来求められている中で中等教育、高等教育でPBL的な訓練を行うことは、未来を担う子供たちの育成となっていくと確信しています。

 

 

 

 

 

 

Twitter icon
Facebook icon