第4回21会カンファレンス SGT集合(1)

5月29日(金)、富士見丘6階ペントハウスで、第4回21会カンファレンスが開催された。毎年5月のカンファレンスは、1年間の21会のメインの活動をシェアするワークショップを行う。(本間勇人:私立学校研究家)

21会会長校である富士見丘学園の6階ペントハウスは、カフェスタイルで対話が盛り上がる最適な空間であり、21世紀型学びの空間のプロトタイプであるので、ここで21世紀型教育のビジョンのシェアと活動の元型を脱構築する場として最適なのである。

今回のカンファレンスのテーマは「21世紀型教育を創るSGT(スーパーグローバルティーチャー)」。昨今話題になっているアクティブラーニングでは、教師はファシリテーターでなければならないという20世紀型教育の延長上で語られることがほとんどであるが、21会校における教師にとって、ファシリテーターは多様なロールプレイの1つに過ぎない。

つまり、あるときはファシリテーターであり、あるときはコーディネーターであり、あるときはプロデューサーであり、あるときはデータサイエンティストであり、あるときはICTエンジニアであり、あるときはソクラテスさながらの対話術師であり。あるときは、プロジェクトリーダーであり、・・・とマルチロールプレイヤーである。

富士見丘の参与大島規男先生は、しかしながら、多様な役割やスタイルをデザインしながらも、SGTの本来の役割は、生徒といっしょに、世界を変える問いに気づき、発見するところから始めることなのだ。どんなにすばらしい探求レポートも、その端緒である問いが教師から設定されたものであっては、解なき社会でサバイブしていくことはできないからであると。

それでは、世界を変える問いかけの創出はいかにして可能なのか?21会SGTマスターである工学院の高橋一也先生が、まずは東大の日本史の問題と順天堂医学部の問題(いずれも写真を見て考える問題)を比較して、何が違うのか問答講義をした。もちろん、素材が違うとか、科目が違うとかではなく、問いのレベルが違うのだというSGTの問いを考える「知のマトリックス」を参加したSGTとシェアした。

「知のマトリックス」(いかなるものであるか具体的なものいついては、非公開)というのは、もちろん哲学者カントの認識のカテゴリーのメタファーであり、問いの発見は、問いの認識と同様暗黙知としての認識のカテゴリーを見える化するところからはじまるのである。

ワークショップに進む前に、中世に生まれた「煉獄」の背景を問う問題をSGTと考えた。知識・理解・応用の問いのレベルではみえない部分をロジカルシンキングとクリティカルシンキング、クリエイティブシンキングを活用して創発。すると、煉獄が実は活版印刷というイノベーションを生み出し、このイノベーションを拡大するためにあるいはそのイノベーションによって近代資本主義の根幹である貨幣経済都市が生まれてくるという壮大な近代世界史誕生のパノラマを開陳した。

そして、いよいよワークショップ。21会SGTマスターである聖学院の本橋真紀子先生が自ら撮影したミャンマーのインレー湖の写真を使って、MARCHレベルの問題を1題、そして10月25日にSGTみんなで実施する思考力セミナーの練習になるようにIB型思考力テスト問題(クリティカルシンキング/クリエイティブシンキング)を1つチームで創ろうというのがトリガークエスチョンだった。

ミャンマーの人口や産業の基礎データも配布されたので、写真の事実やその背景をめぐるMARCHレベルの問題はつくりやすい。しかし、IB型思考力の問いを生み出すのは難しい。

IB型思考力の問いかけは、クリエイティブであるけれど、知識も使わなければならない。知識を使うけれども、新しい知識に変容拡張していくおもしろい問いかけでもなければならない。

しかしながら、さすがはSGT。議論を経て問いをひねり出した。

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