八雲学園の次のステージの扉を高校生が開く
(左から、菅原先生、2人の指導員、衛藤先生)
英語祭が終了した時に、指導員のミッションを終えた高2生がインタビューに回答してくれた。
指導員:涙がとまりません。練習の時はなかなかできなかった演技も、本番では乗り越えてくれました。特に感情表現は見事でした。ご覧になってそう感じたでしょう。
私たち指導員は、高1生は中1生の、高2生は中2生の練習でアドバイスをします。私たちの担当のクラスは、前日一番台詞の長い役をするメンバーがやむを得ない事態があって、参加できなくなったのです。その逆境を、一夜で乗り越えたのですから、感動です。
衛藤先生:私たち教師の方では、他のクラスで同じ役をやる生徒に代役を頼もうという意見でまとまったのですが、生徒たちは、自分たちで乗り切る道を選択したのです。
指導員:中学のときは、まだまだ自分の内側からこういう表現の場の意味についてわかっていないので、反発したりするものです。いわゆるモチベーションがあがらないということですね。ところが、自分たちもそうでしたが、練習を積み重ね、本番を乗り切るたびに、自信をもてるようになります。そして先輩にお世話になったことに感謝し、今度は自分たちがそうなりたいと思うようになるのです。
これは英語祭に限らず、すべての行事で同じです。この伝統を、今回私たちも伝えられているとよいなあと思います。
それにしても教えるということの大切さに気付かせてくれる先生方に感謝しないではいられません。このような尊い仕事を私たちも将来できたらと思います。
菅原先生:行事の積み重ねは、満足感や達成感以外に、見守っていてくれた人へ「ありがとう」と素直に言える瞬間の積み重ねでもあります。私たちも生徒にこのような言葉を贈られて毎回感動をもらっています。
高3生による「八雲論」
また、百人一首大会のお昼時に、高3のKさんが「八雲論」を語ってくれた。Kさんは、すでに自己推薦で慶應義塾大学文学部人文社会学科に合格している。
Kさん:学校行事で一皮むけるとよく言われますが、その通りだと思います。私は声楽部だったのですが、イングリッシュ・パフォーマンスにも参加していました。参加した以上は一番台詞が長い役を演じたいと目標にしました。中3のときにその大役を果たせました。このように目標を自分で設定して挑戦できる機会がいっぱいあります。
また、今日の百人一首大会もそうですが、行事の準備の段階で、調べる作業が多いのも八雲学園の特徴です。私も百人一首関連の本はたくさん読みましたし、昨日も漫画ですが「うた恋い」を本屋で見つけて、「キターっ!」と思い購入したぐらいです。
興味と関心を掘り下げる行事の機会がとにかく多いのが八雲学園の特徴ですね。
そして、大事なことは、生徒どうしのつながりですね。行事はあらゆる準備で、協力しないと達成できません。調べたものを模造紙に書き込んで、張る作業一つとっても、とにかく行事が多いので、同時に色々な行事の準備をしていますから、時間が足りなくなります。しかし、時間がなかったからできないという理由は通用しないので、みんなで役割分担を考えて、先生方とも相談して、なんとか乗り切ります。
ドリル部などは、そのチーム作りや鍛錬、創り込みがものすごいですよ。部活というのは、伝統と自分たちの創作のバランスが大切です。伝統を壊すことはできないのですが、先輩と同じパフフォーマンスをするのは創造的ではないのです。ですから伝統を守りながら創造していくという点においてチームのつながりは濃いですね。
でも、こういう良い意味で葛藤を乗り越える体験や考えさせられる機会が多いのが八雲学園です。現代文の授業などでは、先生が一方的に話してここがどうでこうだという授業ではなく、生徒どうしの対話や議論のチャンスも多いですね。集団の中の個について考える授業は、私たちにとっては、部活や行事で活動するときにも役に立ちます。
もちろん、実際的に役に立つこともいっぱいあります。英語劇で台詞を憶えるわけですが、私は今でもその台詞を憶えています。仮定法という、そのときはわかりませんでしたが、時制の感覚が日本とは違うので、とても難しい考え方ですが、大学入試で出題された文章でも、「ハイキタこの文章」というぐらい応用できますね。
表現というのは、まずは言葉を憶えなくてはならないわけです。そのことの大切さはだんだんわかってくると思います。また、表現のときの精神力ですね。八雲学園には舞台にあがるチャンスが多いのですが、何百人もの前で発表するのです。何度挑戦しても緊張します。ですから、緊張しないようにすることではなく、緊張に耐えながら、ブレないで表現し続けるという精神力が鍛えられます。
こう話していくと、やはり八雲学園の教育は英語力でくくれないということですね。たしかに、八雲学園と言えば、英語ですし、サンタバーバラでの楽しく興味深い経験もいっぱいあって、充実しています。
しかし、英語よりももっと本質的なものがあります。それは「その人らしさ」を発見できる場だと思います。いろいろな機会がありますから、適材適所というか、それぞれ自分は何が得意かを見つけることができると思います。それが八雲学園の本質ではないでしょうか。
この「その人らしさ」とか「芯」があるから、いろいろな役割をしている仲間とブレないで協力し合えるし、これからも今まで逢ったことのないような新しい人と出会いたいと思っています。そのときにブレない自分や「芯」がないと、自分を表現しながら、他者とかかわることができないと思います。今年エール大学の学生の皆さんと交流した時のことは忘れることができませんね。
日本人とはわりと群れがちだし、画一的な考え方をもちやすいですが、それでは、国内外の新しい人たちと出会って協力して社会をつくっていくことができないでしょう。そういう意味で、私は八雲学園で「芯」とか「ブレない自分」を発見することの大切さを学んだと思います。先生方には本当に感謝しています。