東京女子学園理事長・校長 實吉幹夫先生 疾風怒濤の精神に返る(4)

§4 国内大学への進路選択もグローバル
 
實吉先生:これもまた教育行政の話になるが、「グローバル人材育成」という話になると、海外留学の一層の促進だとか、留学生30万人計画の実現という話になる。
 
 
(いつも生徒1人ひとりを励ます實吉校長)
 

 「グローバル」というのが、海外に留学する日本の学生にとっても、30万人の留学生にとっても、短期思考ではなく広い視野と長期思考で、ものごとを「現象」のみに翻弄されず、大局的に洞察できる力を身につけるためのものであるのなら、それはそれでよい。
 
 実際、東京女子学園の国際教育も、「世界の広さを知ってほしい。自分の可能性の大きさに気づいてほしい」というビジョンでプログラムをつくってきた。
 
 またそういう意味では国際教育は、進路指導とも密接に関係する。本校の進路指導の目標は、「輝きに満ちた未来を生きてほしい。自分を生かす道を見つけてほしい」である。
 
そのために、高校生にとって、今の日本の文化や価値観、ライフスタイルを規定しているものの1つである大学受験というものがあるのなら、それをどのように理解し、活かしていくかは避けて通れない。
 
 
(東京女子学園の校内予備校は、生徒にとって、自分が変わり、内発的モチベーションがアップする場である。)
 
 理解をしたうえで、海外大学にいくのはありだろうが、まずは国内大学に進んでから、何かの理由で海外大学にいこうとするのも選択肢としてありだろう。
 
 そして、そのようないまここでの自分の国の文化や価値観を学ぶことは、本来のグローバル教育ではないだろうか。
 
 大切なことは、海外大学の進路はグローバルで、国内大学への進路はグローバルではないという「現象」的な話ではない。海外や自国のバックグラウンドである文化や価値観、ライフスタイルなどを洞察できる大局的な視野こそ大切なことではないだろうか。
 
 
(昨年まで、校内予備校で受験勉強して大学に入学した先輩が、相談にのってくれる。高3生にとって、先輩アドバイザーは最も近くて尊敬する存在。)
 
 それが「自由」を生み出すのだと思う。「現象」に翻弄されているうちは、「自由」は規制されているのと同じ状況である。それでは、ものごとのバックグラウンドを大局的に考えることができない。
 
 社会に出たら、「現象」に翻弄されることばかりが多いだろう。そこでバックグラウンドを洞察できる力があれば、長期思考ができ、自分の可能性を未来に広げる方法を見つけることができるはずだ。
 
 そのような洞察力を、教養というのだが、中高の教育で最も大事なのは、「現象」的なものや「目先」のものに翻弄されず、バックグラウンドには何があるのか洞察できる教養を身につける教育が必要だ。
 
 
 それには、徹底的に自由を規制するルールや環境を払拭していく必要がある。その役目は我々教師にある。短期的な目先のルールで生徒の言動を抑えることは、大局的な判断をする自由を阻害する。
 
 本当の問題は、この自由を貫徹し、生徒が教養を身につけられる教育を実践できるかどうかにかかっている。
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