聖徳学園 グローバルリーダー育成ICTプログラム

11月6日、聖徳学園の山名先生の「なぜ、勉強するのか?」プログラムの前半が行われた。本サイトですでにその模様を掲載。12月4日は、その授業の後半が行われたので、再度取材。授業の展開の仕掛けは、前半と変わらないが、CMC(Computer-Mediated Communication)とFTF(Face-to-Face)の有効な統合が行われ、そのこと自体が今後グローバル人材を育成することになることに気づいた。画期的なICT活用のプログラムだったのである。

前半と後半の間はほぼ1ヶ月あったが、その間、世間では、文科省が大学入試一体型の学習指導要領の改訂作業にはいった話題で盛り上がり、各メディアは、一斉にアクティブラーニングとは何か、有効なICT教育とは何かなどについて取り上げ、教育現場の研修にもその波は及んだ。by 本間勇人:私立学校研究家

ある意味、ICT教育とアクティヴラーニングを組み合わせた山名先生の挑戦は、それに先行した先進事例である。今後ますます注目されていくだろう。

さて、前回5つのグループに分かれて、勉強することに賛成か否かその理由を議論した。1ヶ月前のことゆえ、そこに立ち戻って、自分たちが話し合ったことを確認する時間から始まった。

勉強することに賛成グループが3つ、勉強することに反対グループが2つというぐあいにまずは別れ、前回メモを書いておいたワークシートで、情報のシェアをした。

前回の情報をシェアし終えたら、今度は賛成派と反対派の生徒が混在するようにグループを再編した。この手法は、山名先生によると、ジグソー法とクロストークという手法ということだ。

再編グループで、改めて「なぜ、勉強しなければならないのか?」について議論。そしてその意思決定を各チームに配られたiPadに書き込んだ。すると、5つのグループのそれぞれの考え方が、電子黒板に写し出された。

1ヶ月前の意思決定とは違い、かなり本音が見える結果となった。ジグソー法によって、賛成派と反対派が必ずいる状況をつくることによって、賛成の理由と反対の理由を結合する考え方がでてきた。

実は、前回は、5つのグループのうち、3つのグループは、義務教育だから、自分たちの未来のために必要だから、社会人になるために大切だからといった予定調和的な意思決定が多かった。しかし、2つのグループは、勉強しなくても生きていけるから、一度きりの人生をむだにしたくないから、自分がやりたいことについてじゃまだからめんどうといった本音が語られていた。

山名先生は、「ジグソー法によって、同調圧力、つまり声の大きい生徒に従うというグループ活動はなくなるし、CMCを活用することによって、各グループに偏在している情報の非対称性がなくなり、シェアされることになるのは、従来の講義形式の授業ではあまり意識されてこなかったことです。しかし、このままでは、それぞれの生徒が持っている情報や想いのうち隠れたプロフィールを顕在化しただけで、突破口はまだ見出せません」と語る。

そこで、山名先生は、生徒たちが出した意思決定を1つひとつ電子黒板の画面でズームアップしながら、新たな問いを投げかける機転をきかした。「面倒だという本音があるのに、それでも勉強しなければならないと思うのはなぜか?なぜ学校に来るのか?」と、すると各グループで、すぐに議論が起こり、再度タブレットに自分たちの考え方を書き込んだ。

それらは、瞬時に電子黒板に映し出され、シェア。すると、生徒はみな愕然とする。最初未来のためだとか、社会のためだとか語っていたのに、実際には、親に言われるから、友達を作りたいから・・・と外発的モチベーションばかりが並んだからである。

静かに生徒1人ひとりを見つめながら、山名先生は、やっとスタート地点に立ったねと語りかける。今みんなは、自分の内側からでてきた理由で勉強しているのではなくて、ご両親や、友人や、成績などの外から規定される理由によって動かされているんだよと。「さて、どうする?」と本当の問題をシェアして、今後そこを忘れずにいっしょに学んでいこうと授業を終了した。

山名先生は、「道徳発達の段階からみても、中1のこの年頃は、まだまだモチベーションやインセンティブは外発的です。だから、逆にいくらそれではだめだと言ったところで、心に響きません。自分たちがどいう状況なのか、少し怖いですが、そこから目をそらさず、みんなで知る体験こそが、次への問題解決のための大きな契機となるでしょう」と語る。

今回のICTとジグソー法を活用したアクティブラーニングは、現在多くの教師が実践しては必ずぶつかる壁をクリアしている。CMCを活用して、情報のシェアをしても次のステージの問題が発見されないとか、FTFも、その効果は少人数でなければ現れず、結局大きい声の同調圧力に従う状況が生まれがちであるという壁である。

これらは、ある意味グループの意思決定の過程の質を向上させることによって、解決するから、CMCとFTFの両方をジグソー法的な手法でつないでいく山名先生のプログラムは実に有効である。

そして、何より重要なのは、隠れたプロフィールを顕在化し、本当の問題を見出す「問いかけ」である。現状では、その問いかけは教師が行う。問いの仕掛けが重要であり、この問いを生徒自らが自問自答できるようになることこそが、グローバル人材育成の基礎ではないだろうか。

今回山名先生のプログラムを理解するにあたり、以下の論文を読んで、確信した次第である。

 
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