21世紀型教育機構 新次元教育の挑戦(3)グローバル教育3.0

本機構が、21世紀型教育の実践をゴールにすることから、新次元へジャンプする跳躍台にシフトしたのには、時代の精神を読み解きながら、守るべきものは守り、変えるべきところは変えるという、理念と革新の両方の関係の最適化を試行錯誤してきた結果である。

【表1】

1980年代から2010年までは、まだグローバル教育1.0の時代だった。CEFRという基準は、すでに欧州評議会が作成していたが、これが今ほど、日本国内で、認知されるようになるには、もう少し時間がかかった。授業のスタイルも講義形式で、それに対し何の疑いもなかった。海外の研修も多くは語学研修どまりであった。インターネットも1995年ウィンドーズ95のインパクトを超えるものではなった。

思考力も、知識を憶えこみ、それを頼りに、与えられた文章やその他の情報を理解することこそが思考することだと思われてきた。それが如実に反映していたのが、センター試験である。

ところが2011年以降、SNSの浸透力やWiFiの広がり、スマホのグローバルな広がりはすさまじく、あっという間に、Web2.0の時代にシフトした。それまでのビジネスは、B2Bが中心だったのが、B2C、C2Cへの移行も多くみられた。インタラクティブなやり取りが、経済領域にグローバルに広がったのである。個人の時代への兆候でもあった。

また、ジャスミン革命の影響は良くも悪くもグロバリゼーションの次のステージを用意した。グローバリゼーションの光と影が、Webを駆け巡って、広く知れ渡ることにもなった。もはや一望監視装置ではなく、ネットワークは相互監視装置にもなったといわれるようになったのもWeb2.0の時代の特徴である。

こうなってくると、海外研修も、一方通行型ではなく、自分の思考力は応用・論理にまで高次思考が要求されるようになったし、意志決定も自分で判断しなければならなくなった。それが留学が広まった大きな契機だったのだろう。

英語力も4技能を駆使して、海外でプレゼンテーションできる力が必要とされた。サンデル教授の白熱教室やTEDという番組が、それに拍車をけることになったのは記憶に新しい。

このグローバル教育2.0は、2020年の大学入試改革にも大きな影響を与え、高次思考力、4技能英語など話題に事欠かなくなり、センター試験に代わり、大学入学共通テストに移行することになった。選択式問題のみならず、記述式問題も加わるのだから、たしかに高度な思考力が要求される気配が漂ってきた。

このグローバル教育2.0を受け入れるかどうか、教育現場は混乱も続いているが、21世紀型教育機構は、受け入れる前に、先に進んでしまった。そして、試行錯誤しながら取り組んでいるうちに、グローバル教育3.0という今までとは異次元の教育に遭遇し、そこに行き着いた自分たちのパワーに驚きつつも、さらに邁進することにした。

その象徴的な動きが、グローバルイマージョンという現象である。英語のイマージョンのレベルを超えて、海外と日本の生活の境界線がボーダレスになっているのである。グローバル教育2.0までは、一握りの生徒が留学の恩恵に浴することができたが、グローバル教育3.0では、海外に留学しようが、国内にとどまろうが、英語の授業以外の授業も英語で行われたり、ネイティブスピーカーの教師が10人前後も学園生活を共にしたりしている。

したがって、すべての生徒が言語のみならず文化や生活なども日常生活そのものがグローバルな状態になっている。一部のエリートのみが、グローバル教育を受けるのではなく、21世紀型教育機構の加盟校のすべての生徒が、いつでもどこでも丸ごとグローバルな生活に浸れるようになる。

フィリピンやメキシコの大統領が、必ずしもエリート教育を受けていなくても、個人の力量で選ばれる時代が、すでにやってきているが、これはグローバル教育3.0にシフトすることが必然的な時代の流れであること示す出来事でもあろう。

シンギュラリティ―やインダストリー4.0などを待つまでもなく、Web3.0はすでに到来している。AIはいたるところで活用され、将棋や囲碁、大学入試問題などの場で人間と対戦し、AIの勝利に、多くの人が驚愕してきたが、すでに株価の予想にまで活用されるようになった。自動車のシステムにも組み込まれ始めている。また、IoTは家電に組み込まれ、すでに日常生活が遠隔操作できるようになっている。 

授業も、オンラインシステムをアプリを活用して、海外と英語でディスカッションしながら進めらるようになった。リアルな空間だけではなく、ヴァーチャールな空間でも、グローバルイマージョンは展開している。

こうなってくると、CEFR基準でC1レベルの英語力が必要になるのは当然だし、ディスカッションや対話が授業をはじめとする知的な場で、不可欠になる。海外との交流は、当然世界の共通する問題であり、SGDsのグローバルゴールズを到達するには、自分たちは何ができるのかという対話になる。

具体的な解決策を論じるときに、批判的・創造的思考はもちろん必要だが、その実行プランには、STEAM領域のスキルが必要になる。いわゆるオーセンティックな教育が展開するようになる。

このようなグローバル教育3.0は、いますでに始まっており、今後ますます広がっていく。大学もその選択肢として海外にも広がる。知的好奇心は、多様な中でこそ豊かになり、アイデアもまたそうであるから、これは自然な流れだろう。

そうはいっても、日本の教育において、この流れは、まだまだ緩慢で、よどみかけてもいる。21世紀型教育機構の加盟校は、この流れを加速する突破力を発揮しようとしている。2018年を、「グローバル教育3.0」のターニングポイントとして宣言したのには、このような背景があったのである。

 

 

Twitter icon
Facebook icon