聖徳学園の「国際協力プロジェクト」は、高校2年生全員が1年間かけて開発途上国への支援を実行する活動です。各クラスで5人ほどのチームを編成し、JICA職員や開発コンサルタントなど様々な専門家の意見を仰ぎながら、担当した国への支援活動を実際に行うというPBL(Project Based Learning)で、毎年継続して取り組んでいます。
SDGsの好事例集として文部科学省のホームページにも掲載されている「国際協力プロジェクト」は、持続可能な開発目標として17のゴールが採択された2015年の国連サミットより前から取り組んできたものです。ですから、SDGsの目標から逆算的にアプローチするというよりも、個々の国や地域の問題にフォーカスし、そこから実行可能な問題解決を具体的に考えるという方法を取ってきました。結果としてそれが水や衛生、健康、貧困、といった解決すべき目標に向かう活動につながっているのです。
また、聖徳学園の「国際協力プロジェクト」はPBLのプログラムに落とし込んでいるという点で「持続可能な開発のための教育=Education for Sustainable Development(ESD)」の中でもひときわユニークな活動になっていると言えます。
それは、実際に現地の人々のために役立つという「成果」を重視しているところに特に顕著に表れています。実行可能なプランであることが大前提なのです。
私が訪問した10月3日には、ルワンダとモザンビークをそれぞれ担当しているクラスの生徒たちが中間報告をしたのですが、水質を良くするろ過装置の作成方法や、マラリアなど蚊が媒介する伝染病を防ぐための蚊帳を作成する方法をSNSで配信するなどといったプランが発表されていました。
限られた予算で支援活動を継続していくためには、コストを削るだけでなく、募金活動などで一般の人々に呼び掛けていくことも時に必要です。中にはクラウドファンディングなどを計画したグループもあったということです。もちろん資金調達への壁はそれなりに厚いものがあり、そういう社会の現実も知っていきます。
しかし、そのようなオーセンティックな課題に取り組んでいるところにPBLの学びの本質があります。当然評価も、プレゼンテーションや最終成果だけではなく、対話のプロセスを積み重ねたものになります。中間報告会はそのような形成的評価の一つとして、積極的に外部の人間からのフィードバックを活用する機会となっているのでしょう。
このように学外の専門家とのネットワークを活用している点も聖徳学園の「国際協力プロジェクト」の特色です。
モザンビークにせよ、ルワンダにせよ、ふだんニュースで報道されることがほとんどない国の状況を知るためには、現地に行ったことのある青年海外協力隊への取材が必須です。こういった隊員の体験談とインターネットなどによる基本情報を組み合わせて、生徒たちは現地の状況を想像し、その状況に合わせた支援策を考えるのです。なかには、ルワンダのリサーチをきっかけに興味をもってルワンダへの研修旅行に自主的に参加する生徒もいたということですから、いかにこのプロジェクトが生徒たちの「アクション」を引き出しているかが分かろうというものです。
こういうPBLのプログラムを育てるためには、将来を見通すビジョンや、信念を持って息の長い活動を続けようとする先生方の意志が必要です。なにしろPBLのプログラムというのはそう易々とは作り上げられるものではないからです。
聖徳学園では、人的リソ-スや経験そしてPBLの価値を重視する環境があるからこそ、「国際協力プロジェクト」が継続的に行われているのです。