2022年2月20日(日)に21世紀型教育機構(21CEO)「2021年度第2回定例会」がオンラインで開催されました。21CEO前身の「21会」発足から10年。その節目にふさわしい画期的な定例会になりました。21CEO公認のSGT(スーパーグローバルティーチャーズ)が選出され、21CEOの牽引力に若い先生方が加わったのです。
「21会」が発足した2011年は、東日本大震災によって、日本中で価値観が揺さぶられた時期でした。中学入試の世界もまた、「少しでも大学入試に有利な学校へ」という意識から「豊かな人生を歩むための学び」という新しい基準にシフトが起こった年でした。
すでにインターナショナルスクールなどでは、グローバリゼーションへの対応の必要性から21st Century Educationへの改革が1990年代頃から起こっており、世紀の変わり目において日本は完全に後れを取っていたのが明らかでした。当時新しい時代の教育の必要性を感じていた「同志」が集まって「21会」が産声を上げたのでした。
10年を経た今、21世紀型教育はあの頃よりも浸透してきてはいます。しかし、まだまだ十分ではない部分もあります。相対的なポジション争いではなく、自分の未来を創り出す場所、それが世界標準の「学校」です。21CEOはそのような「世界の学校」を目指してきたのです。
平方邦行理事長は冒頭挨拶で、21CEOが推進してきた思考コードを活用して、全国の先生に研修を開始していることをお話されました。そのお話の中で、教師は知識を授けるのではなく、主役である生徒をサポートする役割なのだと強調されました。SGTは、まさにそのような環境を創り出していく存在です。カリスマ型リーダーシップというより、時に生徒を見守り、時に生徒の横について共に歩みながら自己変容を媒介するリーダーシップに特徴があります。
今回のアワードで最優秀賞を獲得した文化学園大学杉並の染谷昌亮先生は、学校にSTEAMのプロジェクトの種を蒔き、それを広げながら生徒の豊かな学びを実現しています。その授業の進め方は、21CEOがSpesDen社と共同開発した「OkeDouPBL」の中で確認できます。
このOkeDou PBLは、PBLのアーカイブとなっており、アクティビティの種類と思考コードをタグ付けすることで他の先生方が授業を参照するときに検索しやすくなる機能を備えています。今回のアワードを受賞された先生方の授業は全てここから確認できます(今のところ会員校の先生方だけにアクセスは制限されています)。
※STEAM = Science, Technology, Engineering, Art, Mathmaticsの頭文字
※PBL= プロジェクトベーストラーニングの略
OkeDouPBLは、運営サポートの久保山皓平氏(SpesDen 代表取締役)と、タグ付けサポートの仲野想太郎氏(大学1年生)を中心に、アーカイブを拡大し、使い勝手をさらに改善しているところです。
今回の定例会では、首都圏中学模試センター取締役で教育研究所長の北一成様から2022年の中学入試総括の講演もいただきました。新しい入試が注目される中、生徒集めという観点から2科4科という従来型の入試に回帰する学校もあるが、思考力入試を実践して、アドミッションポリシーを21世紀型教育のカリキュラムポリシーと合致させる学校は結局受験生や保護者からの信頼を得ることになるというお話には、21CEOとしても力をいただきました。
SGTアワードを企画・推進してきた教育研究センター(聖学院・児浦良裕先生、工学院・田中歩先生、和洋九段女子・新井誠司先生、静岡聖光学院・田代正樹先生)からは、1年間の振り返りと次年度に向けたプランについて話がありました。次年度のことはいずれ別の機会に詳細をお伝えすることになりますが、より大きくインパクトのあるものになっていくことを予感させるものでした。
アクレディテーションの振り返りもありました。21世紀型教育の質保証を行うのがアクレディテーションチームです。アドミッション、カリキュラム、ディプロマにおける3つのポリシーに及ぶ詳細10項目について、32点満点のスコアで評価しています。スコア算出を外部に委託することで公平性を担保しながら各校の21世紀型教育の進展をスコア化しています。
授業は先生方にとって「聖域」とも言えるところですから、管理職の先生でもなかなか踏み込めない領域です。外部チームであればこそ、詳細に授業を見ることが可能になっています。このアクレディテーションこそは、21CEOがその質保証としてアピールしているところです。毎年サーティフィケートを発行して各校にお送りしているので、保護者の方も学校訪問をすればこのサーティフィケート(認定証)をご覧いただく機会があるはずです。
なお、2021年度のアクレディテーションは、株式会社フリップシルバーライニング代表取締役の福原将之氏、株式会社カンザキメソッド代表取締役の神﨑史彦氏、それに株式会社SpesDen代表取締役の久保山皓平氏にお願いしました。
2022年度以降の21CEOの動きについても定例会の中でお話をしました。21会発足の頃から理論的な背骨としてきた、ブルームタキソノミー(またその改訂版)、リフレクションやU理論、ダイアローグ(対話)、探究やPBLなどの学習理論、またリーダーシップや組織論、などなどMITやハーバードにつながる学びのエッセンスが21CEOの活動の底にあるということを確認しました。これは前事務局長の本間勇人先生(聖パウロ学園校長)のお力によるところが大きいのですが、もちろん現在でも自分達の状況に適合するように、新しい教育をリードするものとして最新理論を参照し続けています。このような理論的な枠組みを参照しているからこそ、日本の教育の現状を相対視できるという意味もあります。
定例会に参加いただいた各校のマネジメントの先生方からも、幾つもの卓見をいただき、21CEO全体がより向上できるような学習の機会となりました。ご参加いただいた各校の先生方,また関係団体の皆様、ありがとうございました。
2022年のさらなる飛躍に向けて
21世紀型教育機構事務局 鈴木裕之