佼成学園女子 乙女祭−パフォーミングアーツの祭典(2)

グラウンドステージから講堂へと移動すると、そこでは演劇部によるドラマが披露されていた。階段状に設置された可動式の座席にライトアップされた舞台。まるで本当の劇場にいるかのような気分に包まれる。

さすがに演劇部の生徒だけあって、ひとり一人の演技力のレベルは高い。発声や姿勢、各自の立ち位置の距離など、ふだんの熱心な練習ぶりが伺われる。

何よりも感心するのは、客席を埋め尽くすほどの観客が見守る中、動じるどころか、ここが見せ場とばかりに熱の入った演技を見せる、その舞台度胸である。観客の数はざっと400人ほどもいたであろうか。よくある「文化祭の演劇」といったスケールをはるかに超えている。

それでいて、終演後の生徒たちは、文化祭というイベントの一部を担う「ふつう」の高校生の一人に戻っていたのが印象的であった。

演劇部の後に登場した合唱部の演奏の間にも観客はどんどん増えてきた。ちょうどグラウンドステージの出し物が終了し、この講堂に人が集まってくるようにタイムスケジュールが組まれているようだ。

合唱部の歌声が響く舞台の袖では、MCを努めている生徒が合唱部の歌に合わせて一緒に口ずさむ光景が見られた。歌を全身で楽しんでいるのが伝わってくる。

観客と演者が同じ空間を共有しているという感覚が客席にも広がっていく。

それにしても、これほど観衆が集まってくるというのは、何か秘密があるのではないか。講堂の出し物のトリに「書道パフォーマンス」があるのも大きな理由の一つである。

しかし、それだけではない。

実は、佼成学園女子の文化祭初日の午前中は、校内限定の非公開イベントとなっていて、そこで各クラスの出し物を全校生が見るのだという。

つまり、全校生が他のイベントに目を向け、関心を寄せる仕組みができているのである。

なるほどと合点がいった。

生徒が成長する機会を見守る眼差しがあるから、人が集まるのだ。そういえばこの日は日曜日だったこともあり、佼成学園女子の英語ネイティブの先生が家族と思しき人とともに来校しているのを何組か見かけた。

見られることで生徒は成長する。見ていてあげることは教育の大きな役割である。

佼成学園女子が行事にこだわる理由の一端を垣間見たように感じた。

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