和洋九段女子にて第1回定例会を開催しました(4)

定例会における各校からの報告の続き(後半)です。

聖パウロ学園高等学校
 
聖パウロ学園の校長で、今年度から21世紀型教育機構の理事として復帰した本間勇人先生は、聖パウロの1年間の成果について話されました。教員全員がPBLを授業に取り入れ、全員が思考コードを駆使し、また、東京ドーム5個分の広さを持つ「パウロの森」を探究の場としながら、「自然」と「社会」と「人間の精神」がサーキュレートするモデルを若い先生方が中心となって創り上げることができた。マサチューセッツ大学アマーストという、世界大学ランキング250位くらいの大学にも合格者を輩出でき、そういう意味では、21世紀型教育機構が目指していることは概ね達成できたと振り返りました。
 
聖パウロ学園は小規模な学校で、だからこそ素早い変化が可能です。先生方には「全員が経営者、リーダーになれ」と言っているそうです。社会的資本が貧弱な日本においては「人的資本を豊かにする」ことが大切だと。そして、欧米では存在するが、日本に乏しいもう一つのことが「ミッション資本」。21世紀型教育機構が日本で突出するには、当面は海外に学ぶ必要があるというメッセージが今後の課題として私たちに投げかけられました。
 
 
富士見丘中学高等学校
 
富士見丘の佐藤一成教頭先生は、SGH(スーパー・グローバル・ハイスクール)からWWL(ワールド・ワイド・ラーニング)へと、8年間に及ぶ活動を実施してきた集大成として国際会議が今年度末に実施されることになっていると報告されました。昨年度は週刊ダイヤモンドのレバレッジランキングで1位に選ばれ、生徒数も増えてきた。このような良い流れというのは、探究や英語教育など21世紀型教育を実践してきた強みが活かせた結果であると、富士見丘が進んできた方向性に対する自信をのぞかせていました。教育研究センターの話を聞いていて改めて、SGT(スーパー・グローバル・ティーチャー)が、若手の先生に希望を与えるイベントであるという意義が再確認できた、今年度は、積極的に参加を促していくと宣言されました。
 
 
文化学園大学杉並中学・高等学校
 
 
染谷昌亮先生は、文大杉並で入試広報部長補佐、STEAMプロジェクトリーダー、そして理科主任という幾つもの役割を兼任する20代の若きリーダーです。校務で定例会に参加できなかった松谷校長先生や青井副校長先生に代わり、学校の現状とビジョンについて話してくださいました。文杉ではダブルディプロマコースが8年目に入り、当初は10数名だったコースも50名以上となり、来年には70名から80名程度になるだろうと柔らかな物腰で冷静に分析されていました。DDコース在籍生の進学先も4人に1人が海外大学となっていて、実績も安定してきた、それにつれて、中学にもダブルディプロマを設置してほしいという要望が大きくなってきたということです。その声に応える形で、DD7というクラスを今年度から新設、在籍生の英検取得級も上がり、受験者層も変わってきたという手応えを感じているそうです。中学部を充実させ、中高一貫校としての強みをもっと発揮できる方向性を目指し、STEAM教育、次世代教育開発部を学内に創設、新しい授業デザインのできる教員を学内で養成する仕組みも整えているということです。
 
 
八雲学園中学校高等学校
 
 
近藤隆平副校長先生からは、共学化5年目を迎え、受験生の男女比率も半々となって、女子校だったイメージから、すっかり共学校として定着してきたことが報告されました。一方で、現在の高校3年生は女子校時代に入学してきた生徒で、その学年に対しては最後まで女子校の生徒として接し、送り出していくつもりであることが表明されました。学校の現状を伝える際、生徒がどのような状態にあるかという目線で学校運営を考える気遣いが、近藤先生の優しい語り口調から感じ取れます。
 
昨年度までは海外研修が十分にできなかったが、昨年12月に1か月の留学プログラムを再開、実際に海外研修に参加した生徒の経験というのは、オンラインとは異なるものがあることを改めて実感したということです。今年は高校2年生と高校1年生が、本来中学3年生で行く海外研修に7月と8月に行ける方向で動いている、これでようやくコロナの遅れが取り戻せるとホッとしているとのことでした。
ラウンドスクエアの動きとしては、ニューヨークのある学校が自校の生徒を八雲学園に送りたいという声があり、新たな学校交流が始まりそうだということです。また今年度のRS国際会議はイギリスで開かれるのですが、その国際会議には共学化とともに開始した帰国入試で入学してきた生徒が初めて参加することになるそうです。いよいよ八雲学園の本領を発揮する状況が整ったことが予感させられるお話でした。
 
 
和洋九段女子中学校高等学校
 
 
中込真校長先生は、学校改革を開始して6年が経過し、その最初の入試で入学してきた生徒が現在高校3年生になったという振り返りからお話を始めました。本当によく育ったという感想を持っているということですが、その21世紀型教育で育った生徒たちの良さをどう伝えていけるかということが今後の課題だということです。学校内で生徒と接していると感じられる成長は、学校周辺にある大使館や会社の本社、大学の研究室など、さまざまな社会と繋がる力を身につける生徒たちの姿が証明していて、こういった環境を「Connected School」という呼び方で表現しているそうですが、そのことをもっともっと的確に表現してあげたいという中込先生の熱い思いが伝わってきました。
 
一方で、理数探究の教科書を作成することもあるという立場から感じるのは、専門分化が進んでいる大学の研究者たちが分野を横断するような広い領域を探究する学びに適合しているのかどうかという疑問だそうです。生徒たちはQRコードなどを活用して教科書を自分たちでどんどん読み進めるスキルを高めている一方で、教える側の意識がそれに付いていってないのではないかという不安が表明されました。さらに、大学入試の模試の作成に30年間携わってきたという立場から感じられるのは、図表を読み取る能力など、データサイエンスを意識した学びが少しずつ広がっているということです。
 
社会の変化を敏感に感じ、それを学校教育にどう取り込んでいけるかを考え続ける、中込先生のチャレンジ精神が伝わってきました。
 
(続く)
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