昨年4月から、戸板は不易流行をダイナミックに転回させた。今年の新高1からスーパーイングリッシュコース、スーパーサイエンスコースを立ち上げる。そして授業は講義形式から「相互通行型」にシフト。
そのために、この1年間、正解が一つでない重要な問題を多角的にディスカッションしながら考える授業を準備してきた。そして今年の入試問題に、その授業の考え方をアドミッションポリシーとする「思考力問題」を埋め込んだ。New Toita号はついに船出したのである。by 本間勇人:私立学校研究家
左から今井誠先生(入試広報部部長)、大泉洋幸先生(英語科)、川口亮先生(理科)原田啓志先生(進路・学習指導部部長)
失敗がおいしいと思うようになった。
川口先生:1年間でここまでこれたかというのが、今の実感です。最初はやはり自分との対決に苦しみました。講義形式の授業を捨てることができるのか?討議しながら展開できるのか?理科という世界で、正解が1つでないような問題を出題して、生徒を指導できるのか?今まで慣れてきたことを捨てるのには教師自身も生徒自身も勇気がいりました。
一番、不安だったのは、そのような相互通行型の授業や思考力問題に、生徒がどのように反応してくれるのか?はたして反応そのものがあるのだろうか?全く見通しが立たないので、授業のプログラムをあらかじめつくることができないのではないかと、たいへん不安でした。
しかし、実際いったん知識から離れて、まずは実験をして、その結果が何を意味するのか生徒といっしょに考えてみると、驚いたことに、すぐに手ごたえを感じました。
生徒は、失敗したら、解決するにはどうしたらよいのか、懸命にチャレンジするし、成功し理解できたときには、達成感が表情にあふれました。それをを見ていて、シラバスは、この生徒の思考錯誤の過程こそ仕掛けになるなと思いました。失敗がおいしいと感じるようになったのです。
大泉先生:英語の場合も似ています。昨年の夏に、トリガークエスチョンをつくりながら、組み立てていったのですが、そのトリガークエスチョンをつくるのが、難しかったですね。単語と文型を教えるのが中心だった授業が、科学や倫理の問題を考え、エッセイとしてしあげていくというのは、いかなることか手探りでした。
実際、いろいろな解答がでてきますから、1つひとつ対応していくのは、最初は骨が折れました。しかし、今では、考えるレベルがいくつか分類できるので、レベルに合わせて相互通行型の授業が可能ではないかと思えるようになりました。
それに、他の学校の先生の授業を見学して学ぶチャンスも増えました。今ではだいぶ既成概念が崩れたと思います。もちろん、私だけではなくて、英語科全体でそういう傾向になっています。
川口先生:そういう意味では、隣の芝生が青く見えだしました。同じ教科内でも、どんなトリガークエスチョンを用意しているのか気になりますし、他教科のことも気になります。相互通行型授業はどうなているのだろうと。
原田先生:それはもちろん、良い意味でです。ある意味、教師同士が競争し、切磋琢磨するようになった。そのためには、自分の腕を磨こうと自己マスタリーの作業が多くなった。これが時間を忘れて、生徒の学力向上に対する情熱に転化しています。今までもあったのですが、知識の定着のサポートが中心でした。
それが、いっしょに考え、生徒の思考力が広がっていくのをみるのが楽しくなりました。質の競争こそ一丸になることなのだと改めて実感しています。