桜丘のイノベーション 教育の質JUMP (1)

桜丘中学・高等学校(以降「桜丘」)は、「その背に翼を、その手にコンパスを」というビジョンを1つひとつ実現してきた。生徒はモチベーションを燃やし、未知の探究の道をたどり、仲間といっしょに自分たちの世界をつくっていく。「自分が世界を変えられると本気で信じる人たちこそが、本当に世界を変えている」という信念を持っている副校長品田健先生。iPad miniに、発想や学校、イメージすべてを内蔵し、もちろんネットにアクセスしながら、必要なものを「いまここで」抽出、再編集してプレゼンする。私学の中でも優れた教育イノベーターなのである。(by 本間勇人:私立学校研究家)

iPadが変えるもの

今春、桜丘は全教職員がiPadを手にした。一部の教師だけではなく、教師もアドミニストレターもみな。なぜなら、来春の新中1から、生徒も1人一台iPadを手にする。そのときの気持ちを共有するのは、桜丘の教職員全員でなければならないと、品田副校長は確信しているからだ。

たんじゅんにハードを共有するのではない。たとえば、メガネやコンタクトレンズは道具ではあるけれど、それはすでに身体の延長である。身体そのもの、感覚そのものである。iPadを共有するとときも、同じような感覚で翼とコンパスを身につけてもらいたいからだ。であるならば、同じウェアラブル感覚を共有するには、教職員等しく手にしなければならないはずということだろう。

では、iPadが変えるものは何だろう。言うまでもない、ものの見方や考え方・感じ方である。アドミッションオフィスの仕事をするときのものの見方考え方・感じ方が変わる。教師の授業に対するものの見方や考え方・感じ方が変わる。そして何より生徒の学びに対するものの見方や考え方・感じ方が変わるのである。

 

学び方が変わる

たとえば、桜丘が取り組んできた教育の中でも、SSノート(Self-Study Notes)は有名である。教師と生徒と保護者の対話が広がり、≪オープンマインド≫を開示する大切な教育であるし、生徒が≪自立≫していく過程が描かれる学びでもある。生徒は自分の学習のペースをつかみ、改善し、未知の探求へ翼を広げ、自らコンパスをつかって、世界を描き、決断するようになっていく。

毎年先生方が創意工夫をして、SSノート自体進化してきた。もうこれ以上進化する必要はないと思えるほどである。桜丘の良質な教育を担保してきた取り組みでもある。

しかし、品田先生は、このSSノートの一部をiPadに移植するというのである。アナログ思考とデジタル思考の関係性は、今後ますます重要になる。その準備をSSノートでしていくことは、その段階ではやくも生徒の学びに対するものの見方や考え方・感じ方のチェンジにつながるはずだ。品田先生ご自身、iPad miniと手帳の両方を常に携行している。

オープンマインドといっても、ノートである以上プライベートなこともパブリックなこともある。紙媒体のノートとデジタルなiPadの両方を活用することで、その使い分けをすることができるという。

iPadというデジタル領域にSSノートの一部をシフトすることにより、ネットにつながるから、仲間の中で優れた≪学びのモデル≫を共有できる。これはなかなか瞬時にはできなかったことであるから、「いまここで」相互に高め合うことが可能になる。

また、自分はどれくらいの時間勉強しているのか、仲間と比較することができる。ネットで先生方が瞬時に集計することができるからだ。何も競争を煽ろうというのではない。≪最適化≫を「自分で」意識することができる。そういう気づきが生まれてくることに品田先生は大いに期待しているというのである。

それから、デジタルの得意分野はソートという≪並べ替え≫である。これによって、自分の状況に応じて、学びの≪重みづけ≫ができる。並べ替えてみると、過不足が明快になるから、≪削るもの補うもの≫も自分で≪判断≫する≪自己マスタリー≫ができる。

そしてその行為こそ、自分の学びを≪再編集≫あるいは≪改革≫することである。

これからの学びは、学びの方法を自ら身につけることだが、それを教えられていたら本末転倒である。自ら気づいていかねばならない。その気づきの感覚を先鋭にする≪教育イノベーション≫が来春いよいよ起こるのである。

 

 

 

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