「思考力テスト×グローバル教育の挑戦」と題したパネルディスカッションのうち前半は、思考力テストについての取り組みを紹介していただいた。パネルに参加した学校はいずれも、21会が「思考力テスト」と呼ぶ入学試験を行っている。(かえつ有明では「作文入試」、佼成女子では「PISA型入試」、聖学院では「思考力テスト」、文大杉並では「A型テスト」)。これらのテストの狙いやその効果など、各学校の事例を当日のパワーポイントのスライドとともに報告する。なお、聖学院では当日ムービーを流したが、ここでは画像のみを紹介する。(by 鈴木裕之:海外帰国生教育研究家)
佼成学園女子 江川先生より
本校のPISA型入試というのは実生活で直面する様々な課題に対応できる能力を評価する入試問題。既存の学力観だけにとらわれない、教科横断型の思考力をみていく。基礎的な算数や国語の力も見るが、何事にも前向きに向かっていく生徒を求めている。
PISA型入試で入ってくる生徒にいえるのは、自ら学ぶ力と、仲間と学ぶ力、意欲がある。一般入試で入ってくる生徒と違うところを本校では良い部分として捉え、構成的グループエンカウンターという考えを取り入れながら、生徒同士や先生との対話を通して生徒の良い部分を伸ばしていこうという取り組みをしている。
文化学園大学杉並 窪田先生より
これはA型入試の問題例です。
江戸時代の廻船の絵を見て、船の積荷で工夫されている点を挙げなさいというもの。これをみたとき小6の受験生が頭の中でどのようなことを考えるのかが思考力のプロセスという点で醍醐味。絵と文字情報を元に、積荷がどこになにがあるのかをイメージし、乾いたもの・液体がどこにあるか、また、重さのバランス、船がどういう風なものだったのかなどを考え、文章化することが求められる。暗記された知識を問うだけでなく、日常生活の中で生徒が得た知識や知恵をどのように応用しているかを試す。
聖学院中 本橋先生より
2013年度より思考力テストを導入した。思考力テストのためのセミナーを行ったので、その時の様子のスライドショーを見てほしい。
レゴ・写真・文章などを題材として、発見・思考タイムを設け、まずは一人で考えてもらう。次にシェア体験といって、他の人に自分の意見を言ったり、相手の考えを聞いたりすることで新しい気付きがおこる。それに対して新しい問いが生まれ、問題を深く掘り下げることができる。最終的には自分の考えを100字に要約してもらう。大学生のチューターがそれを読み、コメントを書き、問いかけをする。それを生徒に返し、再び考えるきっかけをつくる。暗記型でなく、自分の知らなかったことでも、発見をしていきながら、その発見をまとめる力をみるテストになっている。
かえつ有明中 石川先生より
セミナーで生徒たちに前もって思考力テストというのはどういったものであるかを体験させるのは有意義なこと。一方的な解説ばかりなのは20世紀型授業の形だが、PILというのはこれに加えて、隣の人と今の内容がどうだったか考えてきてくださいというもので、お互いに新しい気付きがある。
PBLでは、例えば今日団体で来ている方々が会の内容を持ち帰って、それについて話し合い、議論をするというものになる。今後の授業の中でも取り入れられていくのではないか。そこに電子ボードで匿名&リアルタイムで生徒が思っていること考えていることが表示されるシステムができるとすごいことになる。世の中にはニコニコ動画やtwitterなどとしてもう存在するが、教育の場もそこまで進んでくるのではないか。そこまで進まないと本当には変わったと言えないのかもしれない。