工学院 思考力テストの準備完成(1)

来春中学入試で、工学院は「思考力テスト」を導入。12月7日(土)、入試本番模擬体験で、予想問題がお披露目された。一般入試の本番模擬試験と解説授業の中にきちんと織り込まれて開催。

全体でおよそ200名集まる中、同テストの会場も2クラスも開設する盛況ぶり。グローバル人材育成時代に重要な社会参加への関心を深め、問題を自分で判断して解決していく思考力が注目されている象徴的イベントとなった。

また、最近公表されたPISA2012の報告もあり、日本の教育改革の「思考力重視」路線に拍車がかかっている。時代を読んで、時代を牽引する工学院の21世紀型教育の全貌がみえてきた。by 本間勇人:私立学校研究家

素材選択こそ思想 授業の真髄は、はじめはおわりであり、おわりははじめである

今回の考える素材は、「サザエさんの家」と「ブロンディの家」。60年前の典型的な日本とアメリカの家を比較していく問いが設定されている。素材選択の理由について、有山先生によると、

「まずは生徒にとって身近な素材を選びます。それでも十分に知っているというわけではないので、問いかけによって、意外と知らない自分に直面します。関心を持っている生徒はより関心を広げ、今まで関心を持っていなかった生徒も、身近なものにこんなことがあったのかというのはある種サプライズですから、そこから関心が開けます」

また、萩原先生は、

「工学院の歴史的文化遺伝子には、建築デザインというのがあります。実際大学では日本で唯一の建築学部もあるぐらいですから。建築というのは、もともと生活に密着した空間づくりです。」

そして、平方校長は、日頃から、工学院の建築思想について研究していて、こう語る。

「かつて帝国ホテルを設計したことで有名な20世紀建築家の巨匠1人であるフランク・ロイド・ライトも、家は屋根や壁という物質ではない、人間の存在のすまう空間であると言ったのですが、これはライトが岡倉天心の思想の影響を受けているんですね。

この思想は、工学院の建学当初、立ち上げに大きくかかわった日本最初の建築家である辰野金吾やその師匠であるジョサイア・コンドルにも通じています。特にコンドルは本格的に日本画も描くほど、日本文化通で、それは日本の美術品の鑑識眼に優れていたライトと似ています。

工学院の21世紀型教育というのは、彼らのような天才の感覚を、グローバル市民みんなで共有することです。クリエイティブリーダーをたくさん輩出したいですね。」

(2012年、復元されたばかりの丸の内駅舎。設計は辰野金吾)

身近な素材でありながら、学校の文化遺伝子、そして歴史的パースペクティブから見通す未来という工学院の先生方の思想が詰まっている。入試問題は学校の顔であるという言葉通りの――つまりアドミッション・ポリシーが貫徹した――「思考力テスト」作成のプロジェクトが立ち上がったのである。

 

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