「思考力テストに埋め込まれた学習理論」
思考力テスト部会は、10月に実施された第1回第21会Webソクラテスセミナー(学習理論部会主宰)を受けて、「第1回21会Webダ・ビンチセミナー」を開催(2013年11月22日)。
ソクラテスセミナーで確認された学習は、生徒の興味と関心を立ち上げないで、いきなり知識を投げ込む講義型授業ではなく、生徒の興味関心を立ち上げる問題場面の設定から始まる。
その場面に生徒が参加することによって、生徒自らが問いを立ち上げる。そして、その問いを掘り下げていく思考のテクニックを共有する。
今回、思考力テスト部会では、本橋先生がご自分の学校「聖学院」で実施している「思考力セミナー」(2013年11月9日)の中に埋め込んだ「学習理論」を形式知化して報告。有山先生もご自身の学校「工学院」で実施している体験を適宜補足し、参加者と共有する会となった。 by 本間勇人:私立学校研究家
参加者:左から、菅原先生(八雲学園高等部部長)、伊藤先生(聖徳学園校長)、本橋先生(聖学院数学科主任・IB研究家)、有山先生(工学院司書教諭・都留文科大学講師)、大島先生(富士見丘教頭)
本橋先生:「問題場面の設定」「問いの立ち上げ」「思考のテクニック」の3つの要素が、私たちの学校で実施している「思考力セミナー」でどのくらい埋め込まれているのかみなさんとごいっしょに検証していきたいと思います。
もし、検証できたなら、21会にとって「21世紀型学習」とは何か、その「枠組み」を明快に隈取ることに寄与できると思っております。
さて、私たちの学校(聖学院)では、思考力セミナーとか思考力テストは、「発見体験」「シェア体験」「新たな問いの探求」「100字要約(振り返り)」という生徒たちの思考の過程のモデルにそって問いを投げていきます。
素材は、基本的に何でもよいわけです。思考というのは、特別な素材に適応する行為ではなく、生活のあらゆる領域で活用するわけですから。
ただ、生活の中で行っている思考は、そのつど振り返りながら思考しているわけではなく、習慣化しています。そして、いうまでもなくその習慣化の質によって、思考の能力の現れ方が違ってきます。
しかし、習慣化しているがゆえに、どこを改善すれば質を上げられるのか生徒自身はなかなか気づきません。ですから、習慣化してしまっている素材を提示すると、思考の過程を見える化できないのです。
そこで、できれば参加している生徒が知らない素材が望ましいわけです。
有山先生:その方が、「あれっ、いったい何が起こるのだろう?」という好奇心や興味関心を開きやすいですね。もちろん、「なんだ知っているよ」というところから出発しても、そんなところにつながるのかあ!という展開を用意しておけば、日常化した思考や先入観を砕けます。
伊藤先生:私たち(聖徳学園)でも、そういう「頭のフェイント」を授業の中で展開する力のある教師がいます。まさにそれですね。
本橋先生:そう、おっしゃる通りです。今回は、伊藤先生のおっしゃる「頭のフェイント」を「発見体験」の前に「アイスブレーク」という形式で仕掛けてみました。また有山先生のおっしゃる先入観を砕くために「クリッカー」という道具も活用してみました。
さて、今回の「アイスブレーク」ですが、くまもん、悟空、コナン君など16のキャラクターの絵(セミナーでは実際に配布されたが、著作権の都合で、終了時に回収された)を提示し、「好きなものを3つ選びなさい。なぜ選んだのか理由も書きなさい」という問いかけから始めました。
この段階では、まだまだ自分で問いを立ち上げる段階ではないわけですが、立ち上げたとき、思考を掘り下げられるように、「思考のテクニック」として、「因果関係」を考えるスキルを織り込んでいます。つまり、「I think・・・because・・・」という思考のフレームは、どの場面でも織り込んでいきます。
「思考力テスト」や「思考力セミナー」で大事なのは、「自問自答」や「対話」です。PIL(ピア・インストラクション)を自分の内側で行うか、パートナーと行うかの違いはありますが、最終的には内面で「自問自答」が行われなければ、思考は掘り下げられないでしょう。ただ、それがいきなりはできないので、パートナーが大切です。
ですから、アイスブレークは、チームビルディング一歩前のパートナーづくりがポイントです。そこで、書き上げたことろで、互いに自分の解答を相手にプレゼンしながら自己紹介していきます。
いきなり自己紹介しようでは、なかなか話し合えませんね。それは恥ずかしいという気持ちもあるでしょうが、自分の中に話したい内容があるかないかが一番大きな原因です。
有山先生:学びのパートナーは、私たちも大事にしています。「なんてったって、憧れの最近接発達領域」ですから。
菅原先生:学びのパートナーはたしかに重要ポイントです。私たちの学校(八雲学園)では、学びのパートナーはあらゆる場面で活躍します。
行事があるたびに、実行委員が活躍しますが、それ以上に、中1には高3が、中2には高1が、中3には高2がケアします。英語劇などの場合は、「指導員」と呼ばれている先輩がアドバイスしますが、この伝統はOGが誇りにしているぐらいです。
大島先生:そして、ゆるキャラからはいっているのが、実におもしろい。「サプライズ!」の予感を、生徒も持つだろうね。まさか学校の授業でキャラクター研究を続けるわけはないから、先ほど伊藤先生がおっしゃっていた頭のフェイントを生徒も予感して、次は何が起こるのだろうと。つまり「サプライズ」はすでに始まっている。
本橋先生:おっしゃる通りですね。半分以上はリピーターの生徒が参加していますから、今日は何が起こるのだろうとワクワクしています。参加者が多いのもそこにヒントがあるとも思っています。