「思考力テスト×グローバル教育の挑戦」と題したパネルディスカッションの後半は、文化学園大学杉並、聖学院、佼成学園女子が取り組むグローバル教育に話が及んだ(司会 かえつ有明 石川先生)。グローバル教育ということで提示される取り組みの中身は、もちろん各学校によって異なるが、その根底にはいずれも、21世紀のグローバル化社会を生きる生徒たちを見据える熱いまなざしがあった。(by 鈴木裕之:海外帰国生教育研究家)
窪田先生:本校では海外研修もたくさん行っています。しかし今回は、あえて日本国内で行っている取り組みを紹介したい。それは、英語劇への挑戦です。日本で劇と言うと、部活や行事でやるという印象が強いが、海外では、劇は通常の授業のカリキュラムとして成り立っています。人前での発声練習はもちろん、よりよい劇を作るために生徒同士が共同して学習を進めており、そのような学習を通してお互いの価値観を認め合うといったことがおこなわれています。
最初はコンテストへの参加が目的でしたが、劇をやることで次第に生徒がプラスに変わっていく様子が大いに見られたため、今では演劇指導という体系化した授業になっています。一年生はキリストの生誕劇・ロミオとジュリエットなどで慣れてもらい、2年生になると、秋のコンテストに向け、40~50分のオリジナルの劇を協力して作り上げていきます。オーディションで役者を決め、それに洩れた場合でも、照明係や大道具などの役割を担うことで、みんなで一つのプロジェクトを成功させようという気持ちで作業をしている。英語力・表現力も身に付くが、それ以上に、別々の個性を持った生徒たちがひとつの劇を組み立てる際に必要となる、論理的な力もついているようです。
司会(石川先生):IBでもドラマというのは重要な科目で、論理的思考を必要とするようですので、興味深い取り組みですね。
本橋先生:聖学院では20年以上前から海外研修を行っています。その中でも、生徒たちにとっていい意味で一番ショックが大きいのではないかと思われるタイの研修旅行のスライドをまとめましたのでご覧ください。
まったく違う文化・境遇・言葉の同年代の子どもたちと触れ、生徒は色々考える。幸せとは、学ぶ意味・生きる意味とはなにか。こういったことについて自分たちの視点から考える。これはすぐに答えが出るものではないけれど、向こうの子ども達とコミュニケーションをとりながら、そういうことも考える。中にはこの研修旅行がきっかけで医療の道や国際関係に進む子もいます。
司会:最近の男子は草食系などと言われていますが、行くと変わりますか。
本橋先生:はい。かなり刺激を受けて戻ってきます。
江川先生:女子の自立に向けてのアプローチとして本校が考えているのは3つの留学プログラムです。高校中期留学プログラムは高校2年生の1年間、留学クラス全員に参加させている。10年前は23名で始めたクラスが今年は46名になりました。
そして、鉄は熱いうちに打てということで、中学3年生に3ヶ月間の中期留学プログラムを行うことになりました。英語力を向上させ高校に持っていくわけですが、これはギャップタームの考え方を導入したものです。中学生の終わりから高校生になる頃は、中だるみ現象がありますから、この期間をむしろ活用してしまおうという考えです。
3つ目の留学としては、イギリスでの修学旅行と兼ねて高校での短期留学があります。また、最近のニュースとして、ロンドン大学SOASと提携することになりました。ここの担当が出張入試を行ってくれるというものです。
佼成女子が留学を重視するのは、グローバル教育という意味では、実体験が大切だという考えを持っているからなのです。
司会:江川先生の学校はもうひとつ、「英検まつり」というイベントがあり、これも英語の佼成の特長としておられましたが、今日は時間の関係で短くまとめていただきました。
司会:さて、グローバル教育のまとめということですが、見てきたように、それぞれの学校が色々な取り組みをしているわけです。こういった取り組みが、一つの学校としてだけではなく、お互いに共有することで大きな動きになるかもしれません。今後は、複数の学校が提携するなどといった動きも出てきていいのではないかと感じます。