キャリアガイダンスのものの見方・考え方の内的連関
キャリアガイダンスは、学年全体で行われる。授業がないときは、学年の先生方も参加する。ちょうど数学の授業を終えた五味先生が、4時間目のキャリアガイダンスのサポートにはいった。そのとき少しお話を聴くことができた。
五味先生によると、キャリアガイダンスは高校のプログラムだが、中学の進路学習ともリンクしているという。また年に最低でも2回面談があるが、そのときに「キャリア・ワークブック」は大変役に立つと。
「キャリア・ワークブック」は必要な情報がまとめられているだけではなく、ワークシートも織り込まれている。したがって、生徒が書いたものは、ポートフォリオとして活用できるのである。
そして五味先生は、キャリアガイダンスの興味深いところについてこう語った。
「このプログラムは、ものの見方・考え方、特にいまここでどうやって勉強したり、何を調べたり、なにを行ったらよいか、人間関係をどうのように形成するのかという自分事に直結するところが、生徒たちにも大切なプログラムになっている理由だと思います。
もちろん、いまここでだけにしか関心がなければ、現状で満足するだけですが、このプログラムは、将来どなっているのか、高校卒業の時どうなっているか、そしていまどうなっているのかというようにバックキャスティングの方法を活用しています。
ですから、未来や世界への関心をいだきつつ、今自分は何を選択して行動するかというプランをたてられるようになります。面談でもそこをアドバイスするケースが多いですね。
そして、キャリアプランニングのときのPDCAサイクルは、人生のいろいろなところで活用できますから、勉強するときも、部活をする場合も、行事を運営する際にも、適用できます。」
五味先生の語っていることは、たんにスケジュールとしてとか、プログラムのテーマどうしが学校の教育活動にリンクしていますということではない。
もちろんそのようにリンクしているのだが、「生き方という方法」と「学び方や学ぼうとする意欲、運営の方法など」が、生徒の内側で内的連関を生んでいるということではないだろうか。
また、古城教頭先生も、キャリアガイダンスは、生徒の内面に当然教科横断的な視点を養いますと語る。
「私は社会科を担当していますが、倫理社会だとアイデンティティ、政治経済だと労働問題や産業構造の変化などについて学ぶわけです。
また、歴史も時代の大きな転換として、グローバリゼーションやイノベーションなど時代を読むことを学びます。地理も産業や文化、自然、言語について学ぶわけです。
これらの学びは、キャリアガイダンスがなかったら、生徒にとっては客観的な知識の整理で終わっていたかもしれません。しかし、キャリアガイダンスがあることによって、これらの学びは、自分自身の生き方を考えたりイメージしたりするときに、生きた知識になります。
このような内面の教科横断的なものの見方・考え方を、東京女子学園では、見識とか教養と呼んでいます。」
古城教頭先生の言葉は、校長實吉先生の言葉とピタッと重なった。私立学校の教育哲学の奥深さが、そこに広がった瞬間である。
本学園は「人のなかなる人となれ」という言葉を教育理念としています。いろいろな人の交わる社会の中で、自己の存在を知り、「本当の自分を見つけ、社会の中で自己実現をめざしていく」ことです。一世紀以上の歴史と伝統に思いを馳せ、「生徒が主人公である学校」「生徒の夢が育つ学校」「預けて安心な学校」づくりをめざします。