文化学園大学杉並 難進グローバル入試 サンプル公開

9月14日(土)、文化学園大学杉並中学・高等学校(以降「文化学園大学杉並」)は中学校説明会を開催。思考力型テストである「難進グローバル入試」のサンプル問題を初公開した。21会校の中でも、先んじて海外大学直結のグローバルカリキュラムを構築した同学園は、21会校の特徴である思考力型の入試問題も完成。

文化学園大学杉並の思考力型テストを分析してみたが、なるほどグローバルスタンダードを意識して作成された問題だった。(by 本間勇人:私立学校研究家)

9月13日、第14回21会を文化学園大学杉並で開催。

グローバル教育における思考力の基準

グローバル教育は、イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、シンガポール、香港、フィンランド、アメリカ、そしてカナダの学校及びマイクロソフトやシスコなどIT企業と協働研究している21世紀型スキル教育が有名である。またOECD/PISAの論理、TOEFL、IELTS、英検、NHK英語講座などの規準になっているCEFRの論理、そのCEFRに基づいたCANdoリストによる英語教育などもグローバル教育の一環である。

グローバル教育といったときに、最も重要なのは、多言語や多文化、多様な価値を互いに理解し合う「世界標準」の規準である。互いに理解するには、認知活動、心理活動、身体活動が総合的にコミュニケーション活動が行われるわけだが、そのとき共通尺度がなければ、コミュニケーションが成立しない。

この世界共通尺度がなければ、海外の大学に相互に進学するにしても、うまくいかない。とりわけ、ヨーロッパで各国の大学を自由に行き来して学べるのは、CEFRをベースとする共通尺度があるからだ。アメリカと欧州もそれは可能だが、いったんTOEFLなどをCEFRで換算しなければならない。

ところで、このCEFRは言語の尺度だけではなく、認知の共通尺度でもあるから、たんに語学力だけではなく、歴史や文化、政治経済、科学の基礎である思考力を測る共通尺度でもあるのだ。このことはOECD/PISAの能力のレベル分けの尺度も同様である。そしてこの認知のレベル分けの世界共通尺度でいろいろな形で改善されながらも今も世界で活用されている考え方はベンジャンミン・ブルームのタキソノミーである。

※基本はブルームのタキソノミーだが、マルザーノのタキソノミーの考え方も活用しているので、「ブルーム型」とした。

ブルームのタキソノミーは、いろいろな改革案が世に示されているので、どれを活用するかは人によって違うが、先述したグローバル教育推進各国も、基本はブルームのタキソノミーであると考えてよいだろう。実際、次回の学習指導要領も、各国のグローバル教育をリサーチしたうえで、積極的にタキソノミーをベースにして考案されている最中である。

難進グローバル入試をタキソノミーで分析

a) 理科の光合成 知識→理解→応用

問1は知識問題であるが、感覚メモリーを作動させるのではなく、すでにデータベースメモリーとして整理されている記憶の棚から取り出してくるというワーキングメモリーの認知過程が中心。問2は、2つの現象の比較をして差異や共通性を推理し、その推理を要約。それを数式に置き換えるという理解のレベルの認知過程。問3は、因果関係や光の強さと光合成の3つの段階の関係を考える。一定になるのはどうしてかまで分析させてはいないが、その一歩前のレベルの応用レベルの認知過程を通過させる。

b) 国語は要約と変換

国語は説明文と物語の両方を出題。説明文をみてみると、4000字弱だから感覚メモリーから情報を引出し、いったんデータベースメモリーに収容するワーキングメモリーが作動しなければならない。そのワーキングメモリーが、データベースメモリーに収容していくときに、使う認知過程は、知識レベル・理解レベル・応用レベル・分析レベルすべての認知過程をフル動員する。それがきちんとできたかどうかをチェックする要約の問題が問1で出題されている。

また、文章中にある具体的な例と同質の例を考えさせる問題が問2で出題。具体例をいったん一般化し、今度はその一般化を他の具体例にあてはめるという認知過程。分析レベル。

c) 社会 絵から文章へテキスト変換

絵のメッセージを文章に変換する。ことばで書かれていない絵を分析するには、比較によって違いと共通点を明確にする。応用レベルの認知過程をテストしている。

 

d) 算数 理科の問題と同質視点が求められる

理科の光合成の問題とは全く違う領域であるが、自然現象におけるエントロピーやプラトー状態のようなものと重なるものの見方を一般化できるかどうかが問われている。理科と算数の領域を横断できるメタ認知の過程。

難進グローバル入試は「分析」までの認知レベルを求めている

一般的な模擬試験というのは、知識レベルと理解レベルまでの問題で構成されている。これが大学入試になると、応用と分析のレベルまで求められるようになる。しかし、これは認知レベルで、メタレベルではない。慶応大学のAO入試や公募推薦は、評価レベルまで求められるが、東大・京大の入試問題でも認知レベルの最高レベルとはいえ分析レベル。

ところが、留学したり海外大学の準備をしたりすると、メタ認知(総合レベル)や自己決定(評価レベル)まで必要となる。自分の考えたこと感じたことを議論したりプレゼンしたり論文にしなければならないからだ。2020年オリンピックが東京で行われるようになって、ますますグローバル人材育成時代は本格化した。

欧米がグローバル教育というとき、英語教育のことを指しているわけではない。メタ認知、自己決定までの思考力を養うことを目標としているのだ。もしここまでのレベルに到達しないと異文化どうしの葛藤や経済格差の問題の解決を平和に行うことができない。分析までのレベルは、閉じられた領域の中の特殊な認知である。一般化しない限り、価値観が違う者どうし、解決策を創造できない。問題解決が紛争ということになってしまうおそれがある。

それゆえ、グローバルシチズンとして、評価レベルまでの高次思考を養おうというのが世界の潮流である。

そしてその実践が、一朝一夕にできないことは、欧米諸国が検証済み。文化学園大学杉並は、それゆえ中学入試からその準備に取り組むのである。理解や応用より高次の分析レベルまでの思考力からスタートしようと考えているのではないだろうか。

中学入試の模擬試験が多くの場合、理解、あるいはせいぜい応用レベルまでで問題を構成するために、点数差をつけるために、その狭い枠の中で難問をつくる。それができれば偏差値は高い。しかし、そんな難問はグローバル教育では求められていない。知の視野をレベル6まで高める高次思考を求めているのだ。これは、論理的に道筋をていねいに追っていけば了解できる問題である。

難問の解法トレーニングすることと高次思考をトレーニングすることは、似て非なるものなのである。そして創造性は高次思考においてはじめて開放されるのである。

 

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