三田国際 異次元の授業全面展開(1)

三田国際学園は、今年4月から校名変更、共学校化、1条校でインターナショナルスクール化した。そのあまりにも独自のそれでいて普遍的な教育の志に、中高受験市場は共鳴共振し、中高合わせて400人以上の新入生が入学した。学園の全生徒の実に80%を占める。中学入試の応募者総数は2118人。前年が194名であるから、前年比1091.8%の大ブレイクである。

この奇跡は、首都圏の入試市場を騒然とさせたばかりでなく、その評判は関西圏にも轟いた。しかし、本当に驚くのはこれからなのだ。IB(国際バカロレア)やSGH(スーパーグロ-バルハイスクール)以上のグローバル教育の全面展開がスタートしたからである。そしてそれができるのは、言うまでもなく教師全員がSGT(スーパーグローバルティーチャー)だからなのだ。by 本間勇人 私立学校研究家

(10分休み時間の忙しい時に、中学の教師スタッフルームで。パッとスクラムを組んだ俊敏さ!学内にはSGTはこの倍以上そろっているというから驚きだ。)

三田国際はとくに取材にいきますと構えなくても、別件で立ち寄ったとき、ぶらり授業を覗くと、そこは別次元の学びが広がる。まるで、ドラえもんの「どこでもドア」を開いた時の感じだ。

高1の授業を見学しに扉を開くと、PBLスタイルの相互通行型授業が展開していた。「サルが人間に進化したのはなぜか?」というトリガークエスチョンが提示され、チームで話し合っていた。iPadで検索したり、資料集のページをめくったりしながら。話し合うことと調べることが同時進行でアクティブに行われていたのだ。

それにしても、つい3月まで女子校だったという面影はまったくない。違和感なく男女共学校そのもののシーンが広がってたのにはやはり驚きであった。

生態は環境の変化が影響するというナレッジクレイムを発見し、生態とは何か?人類誕生時の環境がどうであったのか?生徒どうしナレッジクエスチョンを立てては、調べ合っていた。ふと机の上の教科書を見たら、生物の時間ではなく、世界史の時間だった。

藤井先生は、ある一定の時間が来ると、なぜ環境が変わったのかナレッジクエスチョンをさらに深める問いを投げかけた。そのとき、世界史でありながら、地理や気象などのナレッジエリアを結びつけるという学際的なナレッジフレームを広げていった。

今回この授業でやりとりされていたトリーガークエスチョンから流れ出る一連の問いを

・ナレッジクレイム

・ナレッジクエスチョン(旧TOKではナレッジイシューと呼ばれていた)

・ナレッジエリア

・ナレッジフレーム

などというIBのTOKの問いの仕掛けを構築する用語で表現してみた。実は欧米のグローバル教育において、「問いの構造」というというのはあらゆる学問で重要である。コミュニケーションはQ&Aの連鎖と言っても過言ではない。TOKの用語で説明できたということは、SGT藤井先生の授業はまさにこの「問いの構造」がデザインされていたということを示唆するのである。

おもしろいと思うコミュニケーション、深まりゆく探求というのは、問いの質が立体的な構造になって、その構造がデノテーション的に広がりコノテーション的に深まっていくというダイナミックな展開が発生している。

アクティブラーニングは、ただ調べて、話し合っても、外面的なデノテーション型の問いだけが広がっただけでは、フロー状態(没入)という探究の身心の構えが生まれない。

私たちは子どもも大人も時間を忘れて没頭してしまうようなコトに魅力を感じ興味と関心が高なる。授業で扱うテーマは、すべての生徒にとって、はじめから興味と関心があるものではない。しかし、問いの構造が立体的に広がり深まるようにデザインされていたら、あるところから生徒は目を輝かして没入する。

この「問いの構造」のメタ認知としての研修を三田国際学園はSGTマスター田中先生のものとで着々と行ってきた。すべての教員がである。三田国際の奇跡に寄与した大きなエネルギーは、全員がSGTとしてNew Powerの教師力の熟達を求め続ける「学習する組織」となっているからではあるまいか。

 

 

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