2015年8月21日(金)、JICA地球ひろば(市ヶ谷)で、聖徳学園と順天学園の高校生によるすてきな「日本型グローバルリーダー」シンポジウムが開催された。
日本人は欧米人に比べ消極的だからもっと積極的に主体的に話し、活動し、世界を救うリーダーシップを発揮しなくてはならないという紋切型の考えをしてオリエンタリズムに陥いりがちな世の大人を尻目に、自分たちの言葉と頭で語り合った。
自分の体験と身近な部活や行事の中での人間関係の中に、グローバルなシーンでも通用するスキルと思いやりがあるのだと。by 本間勇人:私立学校研究家
聖徳学園はグローバル教育センター所長山名先生のもと国際交流活動を活発に行っているメンバーがいる。順天学園は、三井田先生が担当されているSGH校のプログラムの中でアジアをベースにするグローバル教育を実践している。そしてその活動の中で、互いに高大連携をしている杏林大学やコラボしているJICAで出会ったのであろう。
聖徳学園の伊藤校長によると、お互いにどのようなグローバル活動ができるのか、まずは対話から始めようということになったようだ。
シンポジウムは2部構成になっていて、第1部では、聖徳学園の2グループと順天学園の高校生が、それぞれの「日本型グローバルリーダー」についてアイデアをプレゼンした。
驚いたことに、高校生は、日本人や文化の今と今後を見通すパースペクティブを持っていたし、日本の弱みを強みに転化できることがリーダーの役割であるという考えを披露した。
日本のデメリットや弱みと思われることは、強みと実は表裏一体という発想。明治時代以来の外発的文明開化とはずいぶん趣が違う発想である。しかしそんな発想ができるのは、歴史的見識を自分たちの体験につなげたり、世界で活躍しているグローバルアスリートなどを結び付けたときに起こる化学反応のエネルギーが原因だろう。
それにしても、海外の体験の中で、教師に指示されるままに受動的に勉強するより、グループワークを中心とする学びの方が、主体性や考える活動が活性化することに気づいたと指摘されたことには、衝撃を受けた。アクティブラーニングの流れは、文科省の決め事ではなく、むしろ高校生が求めている学びそのものであるととらえ返すことが大切ではないかと思い知らされた。
第2部は、第1部のプレゼンを受けてさらにグローバルリーダーとは何かを掘り下げていくパネルディスカッション。コーディネーターの杏林大学の学生が論点を整理しながら見事にそれを仕切ったが、パネラーに単身アフリカで2年間青年海外協力隊としてマイクロファイナンスや現地の生活の支援活動をしていた女性も加わったため、グローバル化は欧米化だという先入観を打ち砕きながらの進行となった。
日本型グローバルリーダーとは、誠実に思いやりをもって出会った人々(それはグローバルもドメスティックも区別はない)の個性を引き出し、それを柔軟に生かしていけるスキル(言語)とマインドを育てていきたいという結論に到達した。
これはかつて内村鑑三が、最も尊い人材は、企業で成功する人材でも、作家でも、政治家でもない。「勇敢で高邁な精神」を持った独りの人間になることだという≪私学の系譜≫に見事なまでにつながっている。
またニューヨーク国連本部のギャラリーに掲げられてるノーマン・ロックウェルのモザイク画に刻まれている「自分のしてほしいことを他人にもしなさい」という宗教も民族も超えて共通する黄金律に通じる精神でもある。
日々の授業、部活、行事という身近な人間関係づくりの過程で1つひとつ誠実に思いやりをもって問題解決していく姿にこそ未来の世界に通じる日本型グローバルリーダーの輪郭が描かれていたのである。