佼成学園女子 人と交わり人に学ぶ(1)

佼成学園女子中学高等学校(以降佼成学園女子)は、「英語の佼成」と言われるほどに英語教育に力を入れている。今年は中学3年生における中期留学という新しいコンセプトを打ち出し、注目を集めている。しかし、佼成学園女子の21世紀型教育を支えているのは、英語だけではない。今回のインタビューでは、佼成学園女子が打ち出している3つの柱がいかに連関しているかということについて、江川昭夫教頭先生からお話を伺った。(鈴木裕之:海外帰国生教育研究家)

■「人と交わり人に学ぶ」という校訓の下、三つの柱、すなわち、「私×心」の情操教育、「私×世界」の英語教育、「私×未来」の進路指導、が打ち出されていますね。まずは佼成女子で重視している行事と情操教育についてお尋ねしたいのですが。

 女子の傾向として、「仲間とのかかわり」の中で勉強するのを好む生徒が多いということがあります。好き嫌いといった感情によって勉強に対するモチベーションが大きく変わってくるのも女子に多い特徴ではないかと思います。本校は女子校ですから、そういう女子教育の一つの柱として、集団の中で自分を磨いていくことを据えたわけです。学校行事というのは、特定の誰かだけではなく、集団の中のメンバー全員がお互いに協力し合いながら進めていく必要があります。乙女祭やスポーツフェスタなどの行事に力を入れているのは、「行事が人をつくる」という佼成学園女子の建学の精神の反映なのです。

具体的にはどのような行事に佼成学園女子ならではのこだわりがあるのでしょうか。

  例えば、1学期にスポーツフェスタを行い、2学期に乙女祭(文化祭)、3学期には合唱コンクールを行う、といった順番にも意味があって、体を動かすのが一番自然に友と交われるだろうということで、スポーツフェスタが最初に来ているわけです。次に、教養や興味・関心といった知的な側面、さらに合唱コンクールで「心」を一つにしようという流れになっているわけです。

 「英検まつり」も、本校にとっては学校行事です。全員が参加し、全員がそれぞれの目標を掲げてチャレンジすると言う意味で重要なのです。単に個人的な資格取得を奨励しているだけであれば、「まつり」とは呼びません。

 

パンフレットなどでSGE(構成的グループエンカウンター)という表現を目にするのですが、これはどういうことなのでしょうか。

 行事が人をつくると言ってみたところで、ただ行事を行うだけでは、効果が薄いでしょう。やはり、PDCA(Plan-Do-Check-Action)で、生徒自ら計画を立て、それを実行し、検証して、次の行動に活かすというサイクルが必要です。そのサイクルの中で生徒同士は話し合ったり、議論したりしながらお互いを認めていくわけです。情報や知識や物事の善悪ではなく、感情の交流を主とし、自己についての発見や他者の存在や他者との関係を確認し、行動の変容と成長を狙ったグループ体験とし、それをSGE(構成的グループエンカウンター:Structured Group Encounter )と呼んでいます。

  生徒ばかりではなく、教師の側でも、当然PDCAサイクルが求められます。佼成女子では、振り返りにあたるCを特に重視しています。

  例えばスポーツフェスタで振り返りを行うといったとき、何位になったとか、勝ったとか、負けたとか、といった結果で語られてしまいます。英検であれば、目標級に受かったとか、受からなかったなどといったことですね。

  しかし、こういう結果だけでは見えてこない面もあります。記録は出なかったけど、自分は満足だったなどといった反応です。そこで、行事の後に振り返りアンケートを取り、満足感などといった、なかなか外に現れてこない部分を数値化して分析できるようにしたのです。この基礎になっているものは、心理教育アセスメントのQ-Uアンケート(Questionnaire-Utilities:社団法人日本図書文化協会)というものです。この数値をもとにして、クラス単位あるいは学年全体などの傾向を探ったり、仲間と関われていない生徒を見出したりして、教師が次のアクションをする際の参考としているのです。もちろん、このアンケートを利用している他の公立・私立学校との比較もできるのです。

  これらの積み重ねで、生徒の学級満足度、保護者の学校満足度なども測れ、ひいては、「いじめ」対策の早期発見、早期対応の有効な手段として活用し、一定の成果を収めていると自負しています。

学校行事は、どこでも行われているものとしてつい見過ごしてしまいがちですが、お話を聞いていると「行事が人をつくる」というコンセプトを支えている考えは、中心にいる生徒を、周辺で先生がサポートしているという意味で、まさに21世紀型教育だと言えますね。

<佼成学園女子 人と交わり人に学ぶ(2)>に続く

Twitter icon
Facebook icon