佼成学園女子 人と交わり人に学ぶ(2)

■引き続き、英語教育についてお伺いします。私と世界の交わりということがパンフレットに書かれていますね。このあたりのことについて詳しく聞かせていただけますか。

 約60年前の創立の精神が「国際社会の平和に貢献できる人材の育成」でした。60年前と言えば、東西冷戦構造で世界が緊張していた時代です。この時代の国際社会は何よりも平和を希求していました。そういう国際社会に貢献できる人材育成が、佼成学園女子の英語教育の根底にあるわけです。ですから、佼成学園女子では、英語は、人と人とがつながるためのツールであるという共通認識があります。

■なるほど。世界の人と協力する精神というのは、さきほど触れておられた「全員が参加する」姿勢(「佼成学園女子 人と交わり人に学ぶ1」を参照)とどこか通じていますね。

  そうです。その部分は女子教育の根幹として大切にしているところです。そして、佼成学園女子が英語にこだわるもう一つの理由は、Transfer of learning (学習の転移)と呼ばれる概念と関係があります。これはある一つの教科が得意になると、それが他の教科にも波及して、すべての教科の学力の伸びにつながっていくという考えです。まずは1教科だけでも得意になってほしいというとき、佼成学園女子では英語を特別な教科として位置付けるわけです。

■生徒が英語好きになる工夫として、イマージョン(KALIP)もやっていますね。こちらの取り組みについてもお聞かせください。

 イマージョン教育は、文字通り「英語に浸ける」ことがポイントですね。女子の学びの特性を考えた時、たしかに、英語を「嫌い」にさせないことが大切ですから、英語への抵抗がなるべく少なくなるように、学年の低い段階から、音楽や美術といった技能教科で英語イマージョンを行っているわけです。

 当初は音楽と美術の専科の先生とNativeの先生で行っていました。ところが、専科の先生は英語のフォローが十分にできないケースもあるわけです。英語の説明が分からないとその生徒は英語が嫌いになって、せっかくイマージョンを取り入れた意味がなくなっていまいます。そこで考え付いたのが、「英語教員巡回制」と呼んでいるものです。要は、英語教員が例えば美術と音楽の教室を巡回するのです。英語の理解で困っている生徒は巡回が来るのを心待ちにするようになり、イマージョンの授業がより活性化されました。

英語は佼成学園女子の中で全教科をつなぐ働きをしている特別な教科です。「英語嫌いを作らない」というのは単なるスローガンではなく、そのために先生がいくらでも手助けをするということを意味しているのです。

■留学コースでは高校1年生の冬から高校2年生まで、1年間の留学プログラムがありますね。

 留学プログラムを始めた経緯からお話しましょう。英語に興味を持たせ、馴染んでもらうという意味ではイマージョンは効果的ですが、一方で、高校生くらいになると、英語でやり取りをする状況に不自然さを感じ出し、「それ日本語で説明した方が早いよね」といった反応になってしまうこともあるわけです。

 そこで、10年くらい前に、生徒の自立をどう促すかという別の課題への解決にもなるということで、高校生に1年間留学を始めようということになったという経緯があります。実際、1年間の留学で得るものは、英語力だけではありません。中でも一番大きな財産と言えるのは、人に対して感謝する気持ちを持って帰ってくることでしょう。親のありがたみ、友人や教師に対する感謝の念などを感じられるようになることこそ、自立の条件だと思います。そういう意味では留学プログラムは、英語力を育成するという以上の成果を上げていると言えます。

 佼成学園女子では今年46名が留学を果たしています。この10年間で2倍の数になりました。それだけ学校としての経験も蓄積してきて、やってきたことに自信も持っています。そこで、今年の新入生が中学3年生になったときには、中期留学(3ヶ月)という新しい試みにチャレンジします。もともと中学3年生の3学期は、高校への移行期と位置付けている時期で、ここにギャップタームの考え方を導入したのが中期留学です。思春期のこの時期に、高校に進学する意味合いを自覚させる基盤を提供するプログラムとして、自立の効果が期待できる留学を実施することにしたわけです。別の効果としては、高校留学が1年間という長期であるために躊躇していた人に対して、進路の決定にまだ余裕がある中学生段階の留学というオプションを提供できるのではないかと考えています。例えば、日本の大学の理系学部に進みたいが留学もしたいという際に、中学3年生段階の3ヶ月であれば、高2の時期を、大学受験に向けて対策する時期に充てることもできます。

 イギリスへの修学旅行なども含め、佼成学園女子には、短期・中期・長期の留学や海外研修プログラムが存在することになります。この中から選択できるということが、自分の未来の進路を考える上でもとても大切です。佼成学園女子では留学はあくまでも自分の未来を創るための1ステップなのです。今年の大きなニュースとしては、ロンドン大学との提携関係ができたことです。詳細はこれから少しずつ発表することになりますが、生徒にとって大いに励みになるのではないかと期待しています。

 

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