工学院 非日常の日常で成長

2016日2月12日(金)、工学院大学附属中学校が、新しい中学入試を実施すると聞き及んだので、取材に立ち寄りました。「新しい」とはどうことなのか?2月1日から5日くらいまでで、東京の中学入試は概ね終了するのに、これから第5回目の入試を設定するというのはどういうことなのか?平方校長に尋ねてみました。

すると、21世紀型教育の必要性を感じている受験生に、今の中学入試市場は機会を全開しているわけではないというのに気づいたというのです。今年の受験生には我慢をしてもらい、来年からという考えもあるけれど、2月いっぱい中学入試の機会を設けられるのでるから、隗より始めよと思い立ち、未来を創る意欲のある受験生に「難関思考力入試」を新たに開設する決断をしたと平方校長の強い意志を聴くことができました。by 本間 勇人 私立学校研究家

(高校1年のダンス部の生徒といっしょに。中央 校長平方先生)

校長室で、インタビューしていたのですが、ちょうど公立中高一貫校の合格発表の日で、同校は、そのタイミングで中学入試の手続きを終了していましたから、広報部長や事務章がひっきりなしに、校長室を訪れて、手続き者の情況報告がされていたようでした。

やはり、定員は確保されているのです。にもかかわらず、なぜ?と問うと、平方校長は、こう語りました。

「今年は激動の入試を中学受験生は通過したと思う。おそらく各学校の入試問題が、思考力型問題を織り込んでいたのだと思います。やはり考えるコトが大切だと受験生は身をもって感じたでしょう。そんなとき、2020年の大学入試問題のサンプル問題が文科省から提示され、メディアは一斉に中学入試問題の中の「思考力問題」に注目しました。中学受験しているときに、「思考力入試」の大切な情報が飛び交いました。そのため、自分の受験が終わっても、我が校の「思考力入試」を受けに来てくれた受験生が、結構多いのです。そして、これではないのかと生徒自身が感じたというのです。この情報をもっと先に知っていたらという感想を聞いて、今からでも、このような受験生のために門を開こうと決断しました」と。

この時期、定員確保のために追加入試を行うという常識を、まったくひっくり返した発想の新しい入試を実施するのだということわかり、これは素晴らしいことだと確信しました。選抜入試からいっしょに探究の道を歩こうという機会をシェアするためのいわば「オポチュニティー入試」へのパラダイムチェンジが起きているのです。

取材しながら、そのようなことを考えていると、社会科主任松山先生が訪れ、東京新聞を校長に手渡していました。なんと「東京新聞第13回新聞切抜き作品コンクール」で、同校高校1年生田島くんが最優秀賞を獲得したというのです。

すると、校長が同校サイトを開いて、ブログを見せてくれました。毎日のように、オーストラリアに3ヶ月留学した生徒12人から、順次レポートが送られてきています。この留学制度は、もう3年目で、これで高校生は30人以上が3ヶ月留学を体験し、グローバルな視野の中での「自分軸」を見つめるようになってきているということです。この「自分軸」という言葉を聞いて、なるほど同校では、毎日、生徒一人ひとりが「自分軸」を見つめられる時間を過ごしているのだとピンときました。田島くんもその一人で、見事に成果を出しました。

ブログを見ていると、どうたら今年の3ヶ月留学は、今まさに始まったばかりで、オールイングリッシュの現地の授業についていくたいへんさと挑戦する意識の高揚の葛藤が起きている局面であることが手に取るように伝わってきます。

 

地球の反対側でも、工学院生は、「自分とは何者か?」を発見するために挑戦せいているわけです。そんなことを思っていると、校長が、グローバルティーチャーTOP50に選ばれた高橋一也先生の授業などの取材に、バーキー財団から取材陣がきているから、取材の様子を見に行こうということになりました。

取材スペースに行く途中、帰りの時間だったのか、多くの生徒が校長に挨拶をしていましたが、その中でダンス部の生徒が校長先生と叫びながら、やってきました。そこで、すぐに写真を撮りましたが、このフラットでなおかつ校長をリスペクトする雰囲気に、教える教わるの関係ではなく、共に学ぶ教育へという平方校長の改革の意志が広がっている証拠であると感じ入りました。

(同校サイトには、私が帰途についた時には、はやくもブログで記事があがっていました。なんて快速俊敏な広報部!)

ダンス部と言えば、それこそ「自分軸」が徹底的に求められるます。表現のメンバーそれぞれの自己一貫性がないと、協働美が映えないからです。チームワークと自分軸のパラドクスを乗り越えたときに美と感動が生まれます。

そんなことに思いを馳せながら、歩いていくと、中1のハイブリッドインターナショナルクラスで取材が行われていました。

就職試験で、面接をしているシチュエーションで、自分とは何者かを表現し、それに対して、面接官よろしく、質問シャワーが浴びせられていました。もちろん、オールイングリッシュです。ここでも「自分軸」というキーワードがあてはまります。

やはり、工学院の日常の学園生活は、たしかに日常であり、日常でありません。非日常の日常です。「自分軸」とは何か?こんなことを意識するのは、日常生活に埋没していたのではできません。いかに非日常の日常の時空を学外・学内にデザインできるのか?これが21世紀型教育の本来性なのかもしれません。生徒1人ひとりの成長には、「自分軸」を見つけることができる非日常の日常時空が必要なのです。

工学院の「思考力入試」は、もちろん選抜機能も備えていますが、同時に思考を巡らしながら「自分軸」に気づく学びの脳内空間でもあります。選抜されるストレスよりも思考を経巡って「自分とは何か?」に没入していくことの楽しさに受験生は気づくでしょう。ここから工学院の非日常の日常の時空はマインドセットされているのです。だから、受験生は「思考力入試」で、新たな魅力を発見することになるのです。

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