和洋九段女子 日々バージョンアップの21世紀型教育

今春の中学1年生から、和洋九段女子は、本格的な21世紀型教育を実施。中学生全員1人1台のタブレットを使って授業に立ち臨む。つまり、3年後の2020年大学入試改革に直面する頃、同校の生徒は全員21世紀型教育を体験して、新たな局面に挑戦できる態勢が整うわけだ。

昨年10月フューチャールームで、水野先生のPBL型授業を拝見したが、今回は、今春入学した中1の授業を拝見。ついこの間小6だった生徒とは思えないほど、リサーチ、編集ディスカッション、プレゼンを明朗に行っていた。訪れるたびにバージョアンアップしている同校の先鋭的授業。好奇心、モチベーション、意欲、挑戦心・・・に満ちたキャンパス空間が広がっていた。by 本間勇人 私立学校研究家

Ⅰ トリガークエスチョンの役割

授業で取り組んでいたトリガークエスチョンは、世界の中から3つの都市を選び、5日間のワールドツアーの企画をたててプレゼンするというものだった。同校のグローバル教育に共感してきた生徒だから、自分たちの興味関心のある問いだった。中1のこの時期は、興味と関心から出発する体験が重要。つまり、Growth Mindsetが自動的に立ち上がるところから出発することは、学びの基本である。

生徒は、タブレットで、調べながら、プランをたてていくのだが、同時に、自分自身が3つの都市を取捨選択する視点を明らかにしていく。自分の興味と関心のあることをリフレクションしながら調べていくわけだ。もし3つの都市を予め決められていたなら、自分を振り返るプロセスが発動しない。

この問いをとらえ返すという内面の思考過程を通過することが実は楽しいのである。もちろん苦しいときもある。だからこそ、そこを突破したときの心の成長は凄まじい。

かくして、水野先生のこの時期のトリガークエスチョンの役割は、生徒の興味と関心のあるところからマインドセットして、実は本当の興味と感心のあることというのは、WhatではなくHowという思考過程にあるのだという気づきを待つ重要な意味があるのである。

もちろんWhatは重要だが、Howの重要性に気づいたら、自分がふだん興味と関心をもっていないWhatについても、取り組むHowの過程で関心のあることが生まれてくるはずだという期待を抱けるGrowth Mindsetが開かれている確率が高くなる。

Ⅱ 編集の役割

生徒は、最初は個人ワークに取り組んでいるのだが、次の段階は、チームワークに進む。そこでは、たがいにプレゼンし、分かち合う。もちろん、もっとここを聞きたい、このつながりがよくわかるとか気づいたことを語りあう。しかし、議論とまではいかないが、簡単な編集の入り口に立っている。しかし、ここでは極めて重要な編集の役割が果たされている。それは、互いに尊重するというマインドセットなのである。

議論とか編集というと、論理的思考だとか、根拠の妥当性だとか、表現の有効性だとかというチェックポイントがすぐに思い浮かぶが、実は最も重要なべーづは、相互尊重というGrowth Mindsetである。この役割が意外と軽視されているために、大人になってからでも、平気で失言が多くなったり議論を妨げる不快指数の高い態度をとるメンバーがいる会議にでたことがある人も多いのではないだろうか。

グローバル世界でコミュニケーションやダイアローグをしているときに、このような頑ななFixed Mindsetはルール違反とみなされる。さすが、同校のグローバル教育だ。木目細かいプログラム設計になっている。

Ⅲ エンパワーメント評価

チームワーク終了後、今度は全体でプレゼンテーション。ただし、チームの中で選ばれた代表がプレゼンテータ-になる。チームワークの時、全員が発表し合っているから、先生が選んだ生徒がプレゼンするのを聞かされるというやらされ感が避けられない活動とは全く質感が違う。

チームの中でたたえ合い、その中で私たちがお勧めするプレゼンテーションをというプロセスを経て全体プレゼンが行われる。

これが、他者の強みを称え、弱みを強みに転換させるエンパワーメント評価である。互いにエンパワーすることを21世紀型教育では大切にしている。1点刻みの評価で、君の学力はここまでだから、がんばりなさい、がんばらないと次にすすめないですよという従来の自己肯定感を削いでいく評価とは全くクオリティが違うのだ。

Ⅳ 多様な21世紀型教育

個人ワークの時に、他の教室も見学した。油絵具の香りに誘われて、美術室に行ってみると、当然、絵を描いているのだが、1人ひとり完全に自分の世界に没入している。これが、21世紀型教育における授業で重視している「フロー状態」という構えだと感動した。

2つのパソコンルームもフル活用されていた。

外から見ただけだが、ドキュメント作成の授業やリスニングの授業が展開していたのだと思う。

訪れた日は、定期試験前日だったということもあり、電子黒板を活用して大量の情報を振り返っていく授業もあった。20世紀型授業とはスピード感が俄然違う。

和洋九段女子のキャンパスの日常は、教科の授業と現代化リベラルアーツの教育が統合されていて、21世紀型教育のコアラーニングであるSTEAM(サイエンス・テクノロジー・エンジアリング・アート・マスマティックス)教育が広がっている。次回訪れたとき、どんなバージョンアップがなされているのだろうか、大いに楽しみである。

それに、おしゃれなカフェテリアに集う生徒の笑顔もまたすてきだった。

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