八雲学園は、ついにグローバル教育3.0に突入した。海外修学旅行、年に数度の交換留学などはグローバル教育1.0の段階で、1989年ベリリンの壁崩壊後広まった。英語力はA2(CEFR基準)で十分だった。21世紀に入って、2014年くらいまでは、さらに現地校の長期留学や多くの生徒の3か月留学などが加わった。グローバル2.0のステージである。英語力はB1くらいで十分だった。
そして2015年から今に至るまで、さらに海外大学進学の道が多くの学校で見られるようになった。グローバル高大接続準備教育が着々と進んだ。IBやBC州のプログラム、およびそのエッセンスは共有するも独自の21世紀型教育が登場した。
そして、ラウンドスクエアのような世界の私立学校200校強とのネットワークをつないでいるグローバルコミュニティとの連携が誕生した。この段階が、まさに八雲学園がララウンドスクエアと連携したようにグローバル3.0のステージなのである。英語力はC1を要求される段階でもある。
ラウンドスクエアについては、本サイトでも何度か取り上げているので、そちらを参照していただきたい。→「八雲学園 グローバル教育3.0に転換」
4月の末から6月初旬にかけて、オーストラリアから留学生が八雲学園で学んでいる。ホームステイは横山家。横山先生は、毎日留学生と家族と一緒に英語を話しながら、ラウンドスクエアのシステムを学んでいる。そして、つくづくラウンドスクエアとの連携の凄まじさに驚愕し、加盟校になったことの重大さに今更ながら気づいたという。
何が凄いのかというと、ラウンドスクエア加盟校は、自動的に姉妹校扱い。来月うちの生徒が日本に行きたいから留学させてくれないかというと余程のことがなければ受け入れるというのが互いのルールである。もちろん、受け入れた場合、同時にその学校に留学したいという生徒が八雲学園側から現れたら受け入れてもらえる。
すでに姉妹校であるケイトスクールもラウンドスクエアの加盟校であるから、同じように交流ができるのである。オーストラリアからの留学生が帰国すると、今度はロサンゼルスのパロロスバーデスの超エスタブリッシュ校の生徒が留学しにやってくる。そのあとは、カナダからやってくるという。
横山先生は「グローバル教育というならば、海外に学びに行くだけではなく、海外からも学びに来る教育環境をつくることが重要であると気づきました。1年間通して、海外から学びに来る超優秀生がいつもいる状態になるわけです。しかも1人2人ではなくなってくる。加盟校の生徒が修学旅行で突然やってくるときもある。昨年はケニアのエスタブリッシュ校から36名もやってきたんです。大事なことは、ウェルカムの精神なのですが、多くの八雲生が英語で対話ができるようにしておかねばなりません。
しかも、訪れるたびに、右往左往できませんから、国際センターとまではいきませんが、すぐに動けるように、生徒たちがラウンドスクエア委員会を開設しています」と熱く語ってくれた。
日本でラウンドスクエアのことを熟知している5人のうち1人に横山先生は入るだろう。
(留学生は、日本語も学びながら八雲生となんら変わらず授業を楽しんでいる。)
今回オーストラリアからの留学生は、今年4月に高校3年生5人が訪れた地域会議の場所バンバリーからの生徒。八雲生は国際会議や地域会議に訪れ、ディスカッションベースのミーティングを繰り返しながら、ホスト校のアドベンチャープログラムやボランティアプログラムにも参加してくる。そのとき親しくなったオーストラリアの生徒が日本に来たいということだったようだ。
地域会議に挑戦してきた高3生5人は、もちろんラウンドスクエア委員会のメンバー。国際会議や地域会議で行われるディスカッションは、Barazaとよばれていて、今回訪れたときも、6名が出会ったとき、さっとそのスタイルになって、八雲の生活は快適かとか日本語と英語の違いなどについて自然と対話が行われていた。
日本でただ一人ラウンドスクエアの名誉会員は榑松先生(英語部長)。ラウンドスクエアと日本の学校をはじめ世界の学校との懸け橋になっているグローバル教育の第一人者。八雲学園のイエール大学との国際芸術交流も榑松先生が結び付けた。
ラウンドスクエアの国際会議や地域会議に、八雲生が行く時に同行するのだが、そのときタブレットやスマホに生徒の様子を録画し、説明会などで紹介する素材もとってくる。今回もダークダイアローグ体験をしていた八雲生の姿を撮影してきていて、焚火だけが燃える暗闇の中で対話をするプログラムだったという。
静かな森の中で、ファシリテーターからの問いが投げられた後に続く長い沈黙を最初に破ったのが八雲生だったというのである。榑松先生は、その生徒のその挑戦する勇気がそこで生まれてからというもの、彼女がどんなに成長しているかを熱く語るのである。もはや榑松先生は、この機会に英語力をどう身に着けるかなど眼中にない。
将来間違いなく世界を動かしているだろう人材と自分の想いや考え、行いを通して交流することがどんなに得難い大切なものであるかについて着目しているのである。生徒も当然その重要性を感じている。榑松先生は、生徒が、自分もそのような価値ある存在になろうと感じて、どんどん成長しているが、このような体験がなければ、なかなかそのような意志は芽生えない。日本の受験英語教育ではなく、このような体験をいかにつなぎデザインしていくかがこれからは重要になるだろうと語る。
それには、コーディネーター、プロデューサ―となれる教師力育成も大事ではないかと。榑松先生の精神とスキルを継承する教師の数を八雲学園内に増やしていきたいと語る。八雲学園の加速する進化は、やはり教師力だったのである。