21世紀型教育機構にとって、生徒1人ひとりの価値を生み出す学校になることが新次元教育のゴールであるが、そのようなことはいかにした可能か?
最近では、アダプティブラーニングという学びやアダプティブリーダーという新しいリーダーシップについて語られることが多くなっており、実際にそのようなことが実践されている。
【図3】
その方法論やリーダーシップ観が、正しいかどうかはあまり問題ではなく、世界が個人に焦点をあてる時代がやってきたことを示唆する出来事であることは確かであろう。もちろん、今までも個人主義という言葉やそのような主義によって生きる人間は実在したし、今もいる。
ここでいう、個人の時代というのは、組織や社会のルールに反して自分勝手な言動をとる個人のことを言っているわけではもちろんない。個人主義というのは、あらゆるルールや価値観は相対的であるという信念に基づいている。
しかし、21世紀型教育機構の生徒1人ひとりの価値を生みだすというとき、それは2つの価値の関係が創造的存在者を生み出すことをいう。創造的であるがゆえに、オリジナルのアイデアを有する個人が成長していく。
その2つの価値というのは、一つは「普遍的価値」であり、もう一つは「有用な価値」である。
本機構は、「普遍的価値」は、「あなたがして欲しいことを相手にもしなさい」という聖書の言葉「ゴールデンルール(黄金律)」という価値を大切にしている。そのことは加盟校の規定の前文にも記載されている。
ただし、ここでいうゴールデンルールは、ニューヨーク国連本部のギャラリーに設置されているノーマン・ロックウェルのモザイク画「ゴールデンルール」に依拠している。このモザイク画にゴールデンルールが刻まれているのであるが、国連は、このルールは、キリスト教のみにとどまるのではなく、すべての宗教や民族、異なる価値観、異なる文化を越境して共通して通じるルールであることを認めている。
加盟校の建学の精神は、文言は違うが、この国連の意図を汲み取ることができるため、加盟校が共有する「普遍的価値」とすることにしたのである。
「有用な価値」とは、実生活の中で生徒1人ひとりが個人として家族や仲間、社会、世界のために何ができるのか、どう役に立つのかを重視した。人間どうしの関係の中で、役に立つ言動ができることは、そこに「価値」が生まれる。
「普遍的価値」は精神の価値であり、「有用な価値」は実生活、つまり広くは政治経済社会における自分の実際的な価値である。
生徒は成長して、中高を卒業した時に、精神としての価値を土台に、命を相互に守っていくための実際的な価値を自ら高めていくことができるキーコンピテンシーを身につけていく必要がある。
それが、「生徒1人ひとりの価値創造学校」としてのゴールであるが、そのためには、真空の中で飛ぶことはできない。実際には空気が必要である。このゴールを達成するための空気に相当する状況が、今やグローバル3.0という新しい時代のウネリである。だからこそこの状況をウケて、21世紀型教育機構は、グローバル教育3.0の教育環境を生み出すことにしたのである(【図3】参照)。