PBL

聖徳学園 国際貢献プロジェクト学習の成果

3月14日、聖徳学園で「日本にいながら出来る国際貢献」授業の成果報告会がありました。高校2年生全員が1年間かけて、担当する国の抱えている問題を分析し、自分たちができる貢献を行っていくというグループプロジェクトです。グループに分かれて実践してきた活動成果をクラスの代表者が発表しました。 By 鈴木裕之 :海外帰国生教育研究家

国際貢献するという気持ちが大切であるのは、ユネスコ憲章前文の有名な一節「心の中に平和のとりでを築く」を引くまでもなく、相互理解を通じた平和の実現につながるからです。一方で、国際貢献するという気持ちは、情報や知識の伝達のように簡単に届けられるものではありません。いくら講義によって「現実」を伝えたとしても、それが貢献という行動を起こすことに至るのは難しいものです。

聖徳学園のグローバル教育センター長の山名先生は、「人と人との繋がり」に注目します。そこにこのグループプロジェクトの眼目があります。さらにその「繋がり」は、外に出る体験ばかりではなく、想像力によって見えない他者にも及んでいくのだと語ります。

今回のプロジェクトで生徒たちが担当した国は、パナマ、インドネシア、ルワンダ、ミクロネシア、ラオス。名前は知っていても、実際に人々がそこでどんな生活をしているのかまでは、多くの人はよく知らないのではないでしょうか。山名先生は、JICA(国際協力機構)の職員と協力しながら、クラスごとに担当の国を割り当て、そこから生徒たちの探究心が湧き起こるような設定をしました。5つの国を比較して調べるのではなく、自分の担当国が決められるというのは、自分の生まれる国を選べないことと同様、ある種の「運命」とも言える前提です。それが定められるからこそ、その国の人々に感情移入し、真剣に問題点を探ろうとするのです。

それぞれ異なる国から支配を受けてきたこれらの国々を歴史的に見てみることも一つのアプローチとして興味深いことです。しかし、貢献という視点から考えるとき、歴史に問題の所在を求めても解決にはなりません。生徒たちは、それぞれの国が抱えている問題をどうすれば少しでも解決に近づけるのか、今自分たちが日本にいながらできることを現実に実行していくことに集中していました。そういう意味ではこの1年間のプログラムは、PBLのモデルであると言ってよいでしょう。

PBLの推進機関であるBIEのジョン・ラーマー氏は、PBLに必要な要素を4つ挙げています(EDUTOPIA「PBL: What Does It Take for a Project to Be "Authentic"?」より)。

  1. そのプロジェクトが教室を越えた現実世界のニーズを満たすか、または生徒の生み出したものが現実の人々に利用されること。
  2. そのプロジェクトが生徒の生活に関わりのあるトピックや問題(または近い将来彼らが直面する問題)にフォーカスされていること。
  3. たとえそのプロジェクトが架空の状況設定だとしても、現実的なシナリオやシミュレーションに基づいていること。
  4. そのプロジェクトが実際の現場で大人や専門家が使用するツールやタスクを伴っていること。

聖徳学園の国際貢献授業では、途上国の衛生に対する意識を向上するためにポスターを制作したり、途上国への関心を高めるためにブログやツイッター、ユーチューブなどのソーシャルメディアに記事や動画を掲載したりするなど、上記の要素を満たし、なおかつ現実社会にイノベーションを起こすレベルにまでチャレンジしていることが分かります。

「模擬国連」が国の代表として政策をシミュレーションし、交渉という政治的側面に意識を向けるのに対して、「国際貢献授業」は、一市民の視点からできることを考えるという点に特徴があります。同時に、自分一人ではできないことがことがあるという限界への気づきが、仲間や関係する外部団体との連携に繋がっていくという好循環を生み出しているのです。こういう活動を通して、中には国際政治の舞台に立とうとする生徒も出てくるのでしょう。聖徳学園では、両者のバランスがうまく配分されています。

高2生5クラスの発表が終わると、オーディエンスであった高1生とのグループディスカッションが行われました。このディスカッションによって先輩の経験が後輩たちに手渡されます。もちろん後輩たちが担当する国は先輩とはまた異なる国になるのかもしれませんが、国についての情報や知識よりも、もっと大切な気持ちが引き継がれるのです。

さらにこの気持ちはⅠCTによって増幅されます。ツイッターやYoutubeは彼らにとって、ポスターを作るのと同じ感覚です。それは、世界に一斉に配信されるという意味で大きな可能性を秘めています。当然リテラシーは磨かなくてはいけません。使う言語についても、日本語で発信するのでは効果は半減以下です。現地の人に届けるメッセージであれば、英語でも効果は薄いかもしれません。ですから、生徒たちは、現地の言葉やイラストを駆使してメッセージを伝える努力をしていました。

聖徳学園では、今年東京大学への合格者を輩出しました。PBLとグローバル教育、さらに英語やICTが組み込まれる学びが、大学進学準備という側面からも評価されるようになる日も近いのではないでしょうか。

「2018年度 様変わりする中学入試を予想する」をテーマとするセミナーが開催(後編)

首都圏入試の熱も冷めやらぬ2017年2月19日(日)、「第1回新中学入試セミナー」が和洋九段女子中学校高等学校にて、21世紀型教育機構の主催で行われました。先進的な取り組みである21世紀型教育を推進する学校の先生方が中心となり、「2018年度 様変わりする中学入試を予想する」をテーマに実施。
 
各校で行われている21世紀型教育の実践内容やその教育に対応する資質を測る入試について、それぞれの立場から見た講演やパネルディスカッションなどを開催。私立中高一貫校の先生方をはじめ、多くの教育関係者や受験生親子が一堂に会しました。(教育見届け隊ライター/市村幸妙)
 
 
(左から、山下氏、大橋先生、平方先生、石川先生)
 
 
【第Ⅱ部】パネルディスカッション:未来を動かす私立中高一貫校そしてC1英語と革新的授業
 
第II部はパネルディスカッションです。
パネリストは、
・平方邦行先生(工学院大学附属中学校・高等学校校長)
・大橋清貫先生(三田国際学園学園長
・石川一郎先生(香里ヌヴェール学院学院長)
・山下 一氏(首都圏模試センター 取締役統括マネージャー)がコーディネーターとして進行します。
 
パネラーの紹介の後、まずは各校がなぜ先進的と言われる21世紀型教育を推進するのか、その理由やきっかけが語られます。
 
大橋先生は、中学入試自体の大きな変化を感じつつも、学校教育はどこへ向かうのか、21世紀型教育とは?と考え突き詰めていったということです。21世紀を生き抜かなければならない子どもたちに21世紀型教育を行うことで、従来型の教育と比べて最大の違いは、「生徒自身が自分で物事を考えることにより、学びを深める必要性に気づくこと」と言います。この自分で気付き、能動的に動きだす仕組みや仕掛けは学校によってさまざまですが、この21世紀型教育という挑戦は、保護者の要請にも応えることになり、結果的に学校の価値が上げることにも通じると実感を伴った感想を伝えてくれました。
 
 
さらに、三田国際学園で呼ばれている“Soul”とは、21世紀教育を推し進める覚悟や意思、続けていくことで生まれる成果を学校内、保護者、生徒が共通理解することを指しているそうです。
 
平方先生は、2002年に海外の学校での授業を視察した際に衝撃を受けたそう。以来、講義型の授業では得られなかった成果を考え、もっと双方向性型の授業を行わねば、と21世紀型教育を研究してきました。
 
工学院大学附属で21世紀型教育が本格的にスタートしたのは2013年。まず着手したのは、「思考コード」の作成です。ブルームのタキソノミーなどの研究や研修を通じ、議論を重ねることで同校ならではの「思考コード」を作り上げました。
 
この際に非常に重要なこととして、20代後半から40代前半の若い教員たちが“本気”で学校を変えようとすること、その意識を共有することが、学校改革最大の肝であり、そのための人事を行ったことも話されました。
 
石川先生はまず、「カトリック校で言うところの“Soul”は“隣人愛”や“MFO/Man for Others”といった精神です」と、ミッション校としての考え方を示します。
 
「今までは言われてことをやればいい教育だった」として、「今後の教育で求められることは、社会に出た時に自己実現だけでなく、他者のために何ができるかという視点を持つこと。そのために必要なのは、自分はどう貢献できるのかを考える授業をALやPBLなどで学んで身につけていくこと」と言います。
 
だからこそ教育のあり方を一から考えたそうです。「教育の手法が変わることが大切なのではなく、私学だからこそ、一度立ち返って本気に考えて、生徒をどう育てるか、世界へどう送り出すかを考えることが教育の原点」と力強く語ります。
 
山下氏からは「思考コード」や「ルーブリック」についての説明が行われます。まず三田国際学園では21世紀型教育を具体的にどう取り入れ、実践しているのが大橋先生により語られます。
 
「インタラクティブな授業を行うことで、生徒自身が思考することの大切さを理解し、同時に互いを尊重するような人格教育が進んでいます。ただしこの授業を続けることで問題になってくるのは、いわゆる定期試験です。従来通りの知識を問うだけの試験では意味がありません」
 
三田国際学園では、ルーブリックの考えを授業や評価に落とし込むことで、定期試験も授業を反映した問題を課しており、成績の評価軸も一貫させることで有効性を高めています。同時に、生徒へはどんな狙いで何を学ぶのかをあらかじめ提示しているそうです。
 
次に「なぜ思考コードが必要なのか」と水を向けられたのは平方先生。日本の教育界についてのインパクトを含め説きます。
 
世界はすでに、過去の経験を当てはめても解決できない諸問題が広がり、イノベーティブな行動を起こさなければ、現状維持すらできない時代へ突入しています。その中でOECD/PISAの学力調査結果によって、チャレンジする子どもが極端に少なかったこと、インプットはできてもアウトプットする能力がないことが露呈し、教育界自体が受けたショックの大きさを語った平方先生。
 
知識・論理型の思考力を養成している日本の教育の限界について、果たしてこれでいいのだろうかと語ります。今後子どもたちが、AI社会の中で生きていき、20年後に社会で活躍するため、「未来に備える教育を求めた結果、中高の教育の中で協働的な学びも重視しながら創造性を獲得できるような授業の仕組みを作りました。そのために指標となる『思考コード』が必要でした」と話します。
 
山下氏は「中学入試問題でも、知識を問うだけでなく子どもたちがもともと持っている思考力や発想力、想像力といった才能を見るものが増えています」と話します。さらに、首都圏模試センターとして学校取材を続けていくなかで感じた、この「思考コード」の明確な定義付けがなければ、先生方の共有認識にブレが出てしまい、子どもたちや先生たち自身への評価も曖昧になってしまうという危険性を問います。
 
さらに石川先生へは、「思考コード」における基本的思考について説明を求める山下氏。石川先生は上記の工学院大学附属で使われている例題に基づいて解説します。
 
 
 
「大学入試でありがちなA軸の知識を深めていくような問題は、採点しやすい客観的知識です。さらにB3では信長の功績とその影響をサマライズすることで大抵の問題は構成されていました。どうなっていくかわからない将来に備えるためにこれから問われていくのは、C軸の創造的な力です」と力説したのち、よくある誤解として「いきなり思いつけばいいのではない」ということを注意喚起します。
 
信長の行いを知った上で(A)内容を正しく理解して(B)、創造する(C)ことができることがベストと話します。「知識を正しく覚えることに専念していた日本の教育。信長のことを考える時(C)に、知識(A)としては大切です。知識はなければいけませんが、こと細かく知っているからといって、創造性には結びつくわけではありません」と平方先生から合いの手が入ります。
 
山下氏はこうした教育の流れを追いながら、変動している大学入試についても触れていきます。
 
「石川先生の言う通り、現状はA軸が問われており、2020年の大学入試改革によりB軸へと広がって、各大学での個別の出題ではC軸まで出してくることになるでしょう」と現在過渡期にある大学入試についての見解を語ります。
 
次の話題は英語教育について。私立中高一貫校で目指しているという「C1英語」とは何なのでしょうか。平方先生はこう応えます。
 
「“CEFR”での言語使用者のレベル(基礎段階=A、自立した=B、熟練した=C)についてはもうだいぶ馴染みがあるのではないでしょうか」。グローバル化を目指す日本で、世界の中で自分の考えや意見を表明するためにどんな能力が必要なのか、語学教育を行うにあたって、“熟練”を目指さない教育はどうなのかといった提言がされます。
 
工学院大学附属でも中学生の早い段階でC1に到達している生徒が何人もいるそうです。大切なのは、何をどう学ぶのか、授業の展開次第で生徒たちの熟練度は変わります。
 
さらには、大学進学を見越した際の検定試験とどう向き合っていくのか、その見極めが重要という大きな問題提起を進めながらも、引き続き熟練した言語使用者を充実した授業で育てていくことを宣言されました。
 
さらに大橋先生が続けます。
 
「社会で活躍できる資質や能力をつけるために三田国際学園で行っているのは、双方向性授業を通じたコミュニケーション能力、ICTを使って得た情報を精査できる能力などを組み合わせた“自分で思考する能力”の育成です」。そのために必要なのが、英語をツールとして考え表現する、C1英語なのだと言います。
 
受験生から非常に厚い支持を受けている三田国際学園。大橋先生は人気校の学園長として「次の一手は?」とよく聞かれるそうです。そこでもやはり必要なのは「C1英語、PBL、そのためのルーブリック」とし、「すべての基準は『考えること』。学校を上げてやっているのです」とぶれない姿勢を見せてくれました。
 
香里ヌヴェール学院では、様々な教科を英語で学ぶイマージョン教育を行っています。石川先生は、同校で行われているイマージョン教育についてこう話します。
 
「イマージョン教育で誤解されがちなのは、単に英語に触れる時間を増やしているというわけではないことです。大切なことは、自分の頭で考え、それを表現する教育を受けて育ってきたネイティブの教員と触れ合うことで、同時にその姿勢を学べるということ。こうした教育の中身に着目する保護者の方が増えてきており、だからこそ本校も注目を集めたのだと思います」と教えてくれました。
 
山下氏は、C1英語とアクティブラーニングの綿密なつながりを指摘します。三田国際学園では、先にもある通り、何よりも大切にしているのが「生徒自身が思考すること」です。
 
大橋先生は「そのために先生方は、生徒が思考するように仕向けたり、刺激を与えるトリガークエスチョンを考えに考え、投げかけます。生徒たちはそこから様々なことを互いに学び取り、考えをまとめ、プレゼンテーションします」と言います。
 
この授業は生徒たちにとっても、非常に負荷の大きいものでしょう。生徒たちは「集中する」という覚悟を持って授業に臨むそうです。なお、この考えたり議論する姿勢は生徒たちの中に着実に根付いてきており、自宅に帰って保護者と議論する生徒が増えているそうです。教育の成果に大橋先生はうれしそうに話してくれました。
 
平方先生はこの話を受けて「我々教員は、これまでの講義型授業のあり方を反省すべきだと思っています。ややもすると、生徒を静かにさせて、板書を写させるという授業でしたが、これで生徒たちが本当に集中しているのか、学べているのか。まったく異なる思考に囚われている生徒がいたかもしれません」と話します。
 
つまり、講義型の授業の中には抑圧と従順の関係もありえたと言い、それにより学校嫌いを生み出していた危険性にも言及。その関係性を解放し、授業を活性化するのが双方向型授業と教えてくれました。
 
また、自分自身で考えることも重要ですが、他人の意見を聞くことでさらに思考はもっと豊かなものになる、だからこそ協働的にPBLなどで学ぶのだとその重要性を伝えてくれました。
 
平方先生は「ただ、1時限の中ですべてPBLではありません。レクチャーすることもありますし、PILを取り入れることもあります。そのバランスで授業が行われています。その時に、思考することが絶対に必要になります」と話します。
 
アクティブラーニング型の授業に関して、先ほどの「思考コード」でいえば、どのレベルで行うのかを石川先生が説明してくれました。
 
「一番取り入れやすいのはAで、例えば信長がやったことを調べて発表する。Bはまとめる力がつくので、Aに比べればまだ良いけれど、どちらも教師が行えばいいものである」とバッサリ。
 
アクティブラーニングで大切なことは、「正解のない問いを考えること」であると言います。「自分の意見だけでなく、人の意見を聞くことに妙味があります。答えのない問いから、何人かで最適解を探していくことが将来に役立つ力をつける、アクティブラーニングを取り入れる最大の効果なのでしょう。
 
最後に、各校の今年の入試の総括と参加者へのメッセージをいただきました。三田国際学園では、年々入試の難度が上がっており、入試前に行った受験生へのアンケートでも併願校が確実に変わってきているとのことです。
 
大橋先生は「保護者の方の学校への大きな期待感を受け止めています。偏差値で学校を選んでいない、パラダイムシフトが起きていることにより、現在があります。子どもたちの将来を考え、こういう力をつけるために、何を行うのかを明確にしてきた結果だと思っています」と話します。
 
工学院大学附属では、2月1日の受験率の高さ(午前は100%、午後もほぼ100%)と入学辞退者が出ていないため、クラス数を増やさざるを得ないことがうれしい悲鳴です。これは保護者の意識の変化と、未来へ備える教育を訴え続けてきた結果と捉えています。平方先生は、この教育の過渡期だからこそ、私立学校は子どもたちの未来を考え発信していかなければと熱く語ってくれました。
 
香里ヌヴェール学院は、小・中・高の入試を行っています。受験生数は、中学校は横ばいでしたが、小学校と高校では、大きく倍率を伸ばしました。これは今後の社会を我がこととして捉えている保護者の意識や21世紀型教育への期待値を表したものといえるでしょう。
石川先生は「授業がすべてだと思っています」と話します。授業のさらなる改革をしていくことをここで誓いました。
 
 
【第Ⅲ部】展望
 
第Ⅲ部は、日本の21世紀型教育を牽引する先生方によるプレゼンテーションからスタートしました。登壇したのは、工学院大学附属中学校・高等学校教務主任の太田晃介先生と聖学院中学・高等学校で21教育企画部部長の児浦良裕先生です。テーマは「中学入試を転換させる思考力入試そしてSGT(スーパーグローバルティーチャー)」です。まずは各校で行われている「思考力セミナー」の動画発表から始まりました。
 
聖学院では、レゴブロックを使い表現する「思考力ものづくり入試」と、総合力で考える「思考力+計算力入試」を行っています。
 
この入試を始める際、まず「どんな生徒に育てたいのか」、「なぜ思考力入試を行うのか」を教職員研修で先生方も実際にレゴを使って考え、表現したのだとか。さらに生徒をタイプ別に成長段階を考えました。それぞれの個性を持った生徒たちを多角的に評価し、潜在的な資質や能力を大切に育むためです。
 
 
(左から、児浦先生、太田先生)
 
実際の入試では、創造的思考やクリティカルシンキング、さらに協働的思考を見るものとし、振り返りを重視していきました。気づけたことや自分ならどうできるかといった視点がポイントとなったようです。
 
なお、聖学院では受験生1人に着き、6人の先生方で思考段階をグレード別に分けて判定します。聖学院のメタルーブリック(工学院ではこれを思考コードと呼んでいます)に基づいた思考力入試用のルーブリックを作成しています。
 
児浦先生は、「条件設定を通して、自分だったらどうする?というところから、創造的思考力で“思考のジャンプ”を試みてほしいと思います」と言います。さらに、思考錯誤する力や粘り強く考える力な度も問われています。
 
 
工学院大学附属の「思考力入試」は、先に平方先生が示した「思考コード」に基づいて作られています。iPadなどを使ったICTによるもの、図書館を使い資料などを読み解くもの、レゴを用いて自分自身の考えを表現してみることといった思考力入試が行われています。
 
同校でもやはり思考力入試を行う意味・意義を考えた結果、直面した問題に対して正解がない場合、最適解を見つけたり、新しい答えを作る力の必要性を重視。太田先生は「思考をステップさせる経験を積むことで、思考力を磨くトレーニングができたら」と言います。授業も当然、これらの考え方がベースになっています。
 
 
工学院大学附属の「思考6ステップ」は以下の通りです。
 
みつける
あつめる
分析する
まとめる
つたえる
振り返る
 
入試の際の評価は、「質と量」、「項目と内容」「理由と具現化」、「要約」などに分かれており、小学生の男の子たちでも先生方が目を見張るようなカテゴライズや発想力を見せてくれるそうです。
 
「思考力テストはただのテストにあらず。プロジェクト(物事)を進めるフレームである」という、両校共通の思いを掲げ、まとめられました。
 
 
これらは、問題を発見することから様々な試行錯誤や段階を踏んだ思考などを経て、最終的に振り返るまでのプロセスがここに集約されており、これらは生徒が社会に出てから問われ続ける力を養成することです。
 
児浦先生は、生徒たちに「井の中のたわけもの、大海へ出よう!」と日々こう言っているそうです。生徒たちが社会に出た頃、変容した社会でも自分ありに理解して思考をジャンプさせられるようなタフな実行力と行動力と思考力を身につけさせたいと言います。
 
最後に、司会の平方先生から「SGT(スーパーグローバルティーチャー)という自覚」について突っ込まれた太田先生。「自分が“スーパー”というつもりはないけれど」と前置きした上で、「新しい教育を考え、実践し、踏み込んで外へ出るという意味で、SGTは目指しています」と熱く語ってくれました。
 
 
今後、21世紀型教育に基づく思考力を、学校教育や入試に具体的に取り入れたいと思っている方々の参考になったプレゼンテーションだったと言えるでしょう。
 
 
第Ⅲ部、そしてこの会をまとめとして締めくくるのは、順天中学校・順天高等学校校長の長塚篤夫先生です。テーマは「世界を変える21世紀型教育そして理軒館」です。
 
順天中学校・順天高等学校は、自然の摂理に基づいて真理を探究する「順天求合」を建学の精神としています。SGH認定校であり、21世紀型教育機構のメンバーである同校ですが、長塚先生の話は、
 
・世界は変わるのか
・入試は変わるのか
・教育は変わるのか
 
という3つの変化について、問いかける大胆な提言から始まりました。
 
「“世界は変わってきている”と言われてもまだ懐疑的な方もいらっしゃるでしょう。しかしその変化はもう始まっています」と、以下にその根拠を示し始める長塚先生。
 
大胆な提言について、世界は変化してきていることを肌で感じつつも、まだまだ懐疑的な方が多いのでは?と問いかけます。
 
例えば20世紀から21世紀で産業構造の変化により、衰退した職業について。あわせてAIの台頭により、子どもたちが社会に出る際の職業の変化など、現在叫ばれているさまざまな問題をその変化の片鱗として伝えます。
 
 
その一方で、長塚先生が驚いたこととして披露してくれたのは「AIは学ばない」というお話し。知識を蓄積したり、検索することはでき、それを組み合わせることは得意だけれど、あくまでそれは「学ぶこと」や「創造」とは一致しないと言います。
 
だからこそあらゆる産業でクリエイティブは必要であり、それがなければ職業も衰退してしまうと警鐘を鳴らします。日本ではまだ注目されていないですが、世界では、「クリエイティブクラス」という新しい産業構造がすでに生まれているのですと。日本でも、その新しい産業をマネジメントしていける力をつけるために21世紀型教育が必要なのだ、学び方も変えなければならないのだと力説します。
 
世界の中で将来を生き抜くために子どもたちに必要な力を洗い出した結果、現在の学習指導要領の改訂も合わせた大学入試改革では、日本の教育が世界基準に近づいて行っていることを長塚先生は評価されています。その世界基準の教育について、先生が感嘆しているのは、国際バカロレア(IB)の考え方です。
 
「IBの考え方で感動したのは、子どもたちに求めるだけではなく、教師や親に“探究すること”を求めている点です。さらに評価基準がしっかりと確立されていることは本当にすごい! そこまできちんと徹底するから世界基準になるのだと思います」と笑顔で話します。
 
さて、話を戻すと今回の学習指導要領の改訂においての注目点は、学ぶ内容だけでなく、学び方も変えていくということです。
 
「日本人はこれまで、学びに向かう意欲を培うことが一番苦手でした。しかし、この学習指導要領では、“探究”を繰り返すことで意欲を涵養するだけでなく、生徒自身が生き方や考え方を身につけ、確立できるものになるのでは」と話します。日本の教育が、これまでのようなコンテンツ(知識)ではなく、コンピテンシー(資質・能力)を育てるものへ変容する大転機であると言います。
 
大学入試や公教育は、これらの学習指導要領に則って展開されるでしょう。一方私学は、「建学の精神に基づいたルーブリックを各校が作り、教育を展開していくことで、私学らしい教育が可能であり、それぞれが個性を発揮できる存在となる」と話します。それがまた選択される存在になり得るのだろうと、長塚先生の話を聞いて思いました。
 
これらが、世界を担う子どもたちを育成すべく、21世紀教育に“本気”で取り組む私学の目指す方向性です。現在の教育過渡期において、思考すること、選択することなどは重要なキーワードです。今後もこれらの動向を見守り、見届けていきたいと思いました。
 
 
 

正智深谷高等学校 いまここで3年後のアドバンテージを手中に

2016年度に21世紀型教育機構に加盟した正智深谷高等学校。その不退転の覚悟で臨む21世紀型教育改革の宣言が、本日3月3日の埼玉新聞に掲載。いまここという座標で未来の大航海を描くビッグイメージは、新入生に勇気と自信を内燃させるに違いない。by 本間勇人 私立学校研究家

このイメージは、同校サイトを開くとトップページにバーンと現れる。そして、校長加藤慎也先生の次のようなメッセージを読むことができる。

 

「昨今、社会から求められる学力が変わりつつあります。知識量よりも思考力。情報処理能力よりも情報編集能力。正解の無い問いに対する問題解決力。

そして2020年に控える大学入試改革。こうした社会の変化に対応するために平成30年度よりコース系統を大きく変更します。
 
今ある正智の魅力を失わず、今後求められる21世紀型教育に取り組む学校へと進化していきます。正智深谷高校発のイノベーションをお待ちください。 校長 加藤慎也」

 

世間は、わかってはいても、まだまだ知識を活用しつつも、1つの正解にたどりつく予定調和の受験知を鍛えることから抜け出ることができない。

ニーチェの「脱皮しなければ・・・」という有名な言葉も、所詮は知識レベルで、それを実行しようという勇気あるリーダーはまだ多くはない。

そんな中、加藤慎也校長と先生方は一丸となって、予測不能な地平線に漕ぎ出でる意思決定をした。その魂は、遠く人類が、ルネサンス、大航海、宗教改革に

立ち臨んだときの息吹と同期するだろう。2018年高校入試は、私学人渋沢栄一の故郷深谷で、再び疾風怒濤の嵐が吹くだろう。

正智深谷の受験知から探求智にパラダイムチェンジする動きは、高校受験生に希望の道標となるだろう。

工学院 13歳から世界跳躍へ

2017年3月1日、工学院大学附属中学高等学校は、公開セミナー「世界で活躍できる13歳からの学び」を開催。東京都私学財団助成金研究報告「iPadマイクロスコープを活用した生物実験による学習コミュニティの創出」の中間報告。しかも、この研究が可能となる前提の21世紀型教育改革の理念や実践授業も見学できる充実した内容だった。

ワークショップがあるため、参加者の人数が40名限定ということもあり、意識の高い参加者が集った。すなわち、自分たちも教育改革をやりたい、PBLのようなアクティブラーニングを実践したいから学びに来たという高感度で高い意識を抱いて、参加者は、大坂や静岡など遠方からもやってきていた。by 本間勇人 私立学校研究家

平方校長の「本校の教育改革」からスタートした。2020年大学入試改革が進もうが遅れようが、世界が大きく動いている時代である。子どもたちの未来に備える21世紀型教育を学校全体で取り組む覚悟で実践してきた4年間のロードマップを語った。そして、その改革のコアが、授業改革であり、改革を進めるに当たり世界標準のモノサシである「思考コード」を議論して創り、現在検証中であることを披露した。

シラバスは、「授業×テスト×評価」がセットになっていて、それが「思考コード」というモノサシに基づいて、デザインされている。この話に参加者は驚いていたが、セミナー終了時に、セミナーという活動全体のデザインそのものが、一貫して「思考コード」に基づいていたことに気づいて、感動した参加者もいた。

高橋一也教頭の講演「世界で活躍できる13歳からの学び」は、教科書、クラス、学校の枠をはみ出す新しい教育を語った。偏差値やブランド大学に縛られるのではなく、世界を見よう、そしてそのステージで何ができ、どのように貢献できるのか、そのための新しい学習スタイル、学習空間、多様なプログラムなどが必要であると。

実際に、中学棟で高橋先生は授業を実施したが、それを見学しに行った参加者は、たしかに掲示板や全面ホワイトボードの廊下の創意工夫が、なるほど学習空間とはこういうものかと感銘をうけていた。「授業外での学び」の重要性に心揺さぶられ、魅了され、しかし、自分の学校でやろうとしたとき、どうすべきなのか刺激をうけていた先生もいた。

しかし、何より、授業がすごかった。ある先生は、渋谷のスクランブル交差点でゲリラ豪雨が降ってきたときの混乱状況を、即興劇でしかも英語で演じることができるのだけでも驚いたが、そのとき、そこに居合わせた人々の性格特徴をつかまえながら感情を音声、表情、しぐさに表現していく授業の柔らかさに感動したと。

一見アドリブで行われているようだし、ロールプレイに到るまでの時間も短い。しかし、これは、もしここが世界というステージだったらとトランスフォームした時、周りの動きは自分を待ってくれない。まさに小さな世界のステージだったのだと思い知ったとき、「授業外の学び」の本当の意味が分かったような気がすると私にそっと語ってくれた。

有山先生の「デザイン思考」の授業も、SNSやタブレットを活用した授業がこんなにも有効であるのかと実感できたと語る先生もいた。しかし、実はこのデザイン思考は、授業前の仕込みがすごい。もし参加者が、バックヤードの話を聞いたら、21世紀型教育というのは、まさに舞台芸術さながらであることに気づいただろう。

福田先生の国語の授業は、小説の名言の自由なそれでいて哲学的な解釈の授業。画像と文章の中の言葉を結合することは一見自由だが、ただ自由では、カテゴリーミステイクを生み出してしまうので、そこをどのようにクリティカルシンキングで乗り越えるか、なかなかスリリングなプレゼンになる。

論理的な展開をたどっていくだけではなく、このカテゴリーミステイクを解決するという集合論的論理を考える学びは、実は創造性の翼を広げる跳躍台にいきつくことになる。

工学院の中学入試では、思考力入試を実施している。その対策講座として、説明会で「思考力セミナー」を行っているが、この体験ワークショップがファイナルアクティビティとなった。入試問題は学校の顔(アドミッションポリシー)であるから、この体験を通して、工学院の21世紀型教育改革のエッセンスを実感してもらう意図があったのだろう。

プログラムのテーマは「簡易顕微鏡NURUGOを使ったマイクロフォトグラファーになろう」。iPadにNURUGOを装着して、まずは写真を撮っていく。なかなかうまくいかない、どうしたらよいのか?そこでスタンフォード流儀のデザイン思考の創造力を刺激するインプロを挿入するなど、随所にリフレクションのループが仕掛けられている。

6つのステップをクリアしていく授業になっているが、各ステップでは、こまめにリフレクションされていて、全体を通してリニアではなく、ループ型のフローチャートになっている。ここにクリエイティビティが刺激される秘密がある。しかも、ワークショップ終了後にスーパーバイザーを務めた教務主任の太田先生によって、このステップがすべて「思考コード」に紐づいていることが明かされた。

今回公開された授業もすべて「思考コード」でシラバスが作成され公開されていた。ここにきて、参加者は、ようやく今回のセミナーがハウツーセミナーではなく、完全にビジョン型セミナーであることに気づいた。平方校長、高橋教頭の世界の変化という未来からバックキャスティングして、いまここで子どもたちが未来を手中にするための具体的な教育デザインがなされているのだ。「思考コード」という工学院軸が一気通貫している。ビジョンをシェアし、システマティックにそれでいて共感的なコミュニケーションがある学校。

アクティビティ進行中の合間に、すれ違う瞬間的な時間で対話がなされる学校。刹那の時間に、高校の改革のアイデアがブレストされるシーンもあった。

実に密なるコミュニティ、あるいは共同体的な絆が随所に感じられるシーンがいっぱいあった。

しかしながら、ただの仲良し集団ではない。今回のプログラムの一部始終を記録に残し、サイトや動画をつくって、発信しつつ、リフレクションができるように仕掛けるスーパーモニターである加藤先生の存在が大きい。学習する組織が進化するには、モニタリングシステムが極めて重要だ。このカリキュラムマネジメントシステムは、今回披露されなかった。もちろん、今のところ企業秘密なのだろう。

平方校長自身、生物の教師であり、美術の教師であり、技術の教師であり、彫刻家として群馬の名だたるアーティストである。そしてなんといっても、一般財団法人東京私立中学高等学校協会副会長、21世紀型教育機構副理事長として、日本の教育行政を動かす聡明な発言力・影響力を発揮している。

工学院が、ハウツー近視眼型改革ではなく、ビジョン実現型改革ができる「学習する組織」を形成できるのは、ミクロもマクロも統合できる聡明な校長のリーダーシップが極まりなくポイントであることが証明されたセミナーであった。

「2018年度 様変わりする中学入試を予想する」をテーマとするセミナーが開催(前編)

首都圏入試の熱も冷めやらぬ2017年2月19日(日)、「第1回新中学入試セミナー」が和洋九段女子中学校高等学校にて、21世紀型教育機構の主催で行われました。
先進的な取り組みである21世紀型教育を推進する学校の先生方が中心となり、「2018年度 様変わりする中学入試を予想する」をテーマに実施。
 
各校で行われている21世紀型教育の実践内容やその教育に対応する資質を測る入試について、それぞれの立場から見た講演やパネルディスカッションなどを開催。私立中高一貫校の先生方をはじめ、多くの教育関係者や受験生親子が一堂に会しました。(教育見届け隊ライター/市村幸妙)
 
 
 
 
今春2017年の中学入試で爆発的に実施校が増え、注目を集めた新入試――「思考力入試」や「英語入試」、「適性検査型入試」。
 
今回行われたこのセミナーでは、これらの新しい入試から2020年の大学入試改革の狙いを見定め、さらには日本と子どもたちの未来を支える21世紀型教育について実際に触れられ、理解できるものとなりました。参加した方々にとって、日々研鑽を重ねる先生方により行われている新しい教育の具体的な姿がより明確になったのではないでしょうか。
 
 
総合司会を務めたのは、工学院大学附属中学校・高等学校校長の平方邦行先生。
「従来通りの2科・4科入試に加えて、今年2017年度入試で激増した新しい入試、特に『思考力入試』や『英語入試』が、来年以降の教育界の変化を予感させるものなのではないか」と期待を寄せます。
 
2011年秋に発足した、この「21世紀型教育をつくる会」の経緯や概要について説明があり、さらに昨年9月12日に装いを新たに改組したことなどを報告。
 
「IBと同様のアクレディテーション機構として、各校が学校を上げて21世紀型教育に取り組むことを確認しました。欧米から受ける教育をなんとなくアレンジされたようなこれまでの日本の教育にくさびを打ちたいのです。日本の中から生み出された21世紀型教育を世界に発信したいという強い思いを持った団体です」と話す平方先生のことばに力が込められているのを感じました。
 
平方先生は、教育関係者に混ざって見受けられた受験生親子にもわかりやすいよう、講演の大切なポイントをまとめてくれました。
 
プログラムは「講演」、「パネルディスカッション」、「展望」の3部制で行われました。
第Ⅰ部の講演者は以下の3人の方々です。
 
【講演①】テーマ:2020年大学入試改革に影響を与える私立中高一貫校の教育
まず登壇したのは、21世紀型教育機構理事長であり、富士見丘中学校・高等学校理事長・校長の吉田晋先生です。
 
 
富士見丘は、SGH(スーパーグローバルハイスクール)として「サステイナビリティ=持続可能性」という観点などから、様々な社会問題を探究する課題解決学習に取り組んでいる学校です。
 
今回の講演では高大接続改革について、なぜ今行われる必要があるのか、社会構造から考える企業のあり方や大学選択、現状の受験生親子における中高選択の動機について、丁寧な解説が行われました。
 
同時に2020年を待たず今後の大学入試において、最大の目玉となっている英語入試と4技能の英語教育についての説明がなされました。文科省への提唱やさらには主体的に動くことのできない大学生の増加と、その原因・責任を高校に押し付ける大学の姿勢に対しても檄が飛びます。
 
だからこそ、この入試改革や高大接続改革には大きな意味を見出されています。「カリキュラムポリシー、ディプロマポリシー、アドミッションポリシーの3つのポリシーを大学が明確にしていくことで、受験生は大学名に捉われない、自分の将来や夢、目標に沿った大学選びが可能になります」と力強く語り、同時に「脱・偏差値」の考え方を提唱した吉田先生。
 
さらに富士見丘において「社会的グローバル人材として活躍できる教育を行っていきます」とより一層の教育の充実について宣言するのでした。
 
【講演②】テーマ:2017年中学入試分析と2018年の新展望
次に登場したのは、首都圏模試センター教育情報部長の北 一成氏です。主に新しいタイプの入試である「適性検査型(思考力)入試」と「英語入試」に焦点を当てた講演を行いました。
 
 
まずは今年2017年度入試の総括から。中学受験者数は、この4年間で少しずつですが上昇し続け、現在は首都圏では15%を超えていることが伝えられました。
 
なお、2月1日午前の実受験者数として発表されたのは3万7,201人。Web出願の増加により、一見受験者数は少ないように見えても実受験者数は増えていると北氏は指摘します。
 
注目すべきは、いわゆる従来型の2科・4科型入試の受験生数は減少傾向にあるということ。その減った人数を補っているのが、新聞やテレビ、ラジオなどでも話題になった「思考力入試」や「英語入試」といった新しい入試形態です。さらに、これらの入試の中でも形態は各校それぞれで、プレゼンテーション型や得意な科目を選択するタイプ、そして協働作業を行うものも出てきているということです。
 
 
来年度以降、これらの入試の導入を検討している学校が多いそうで、「来年以降もさらに増え続けるでしょう」と北氏は言います。
 
全体傾向としては、2020年の改革時期が不透明なため、大学付属校に人気が集まっています。またアクティブラーニングのメソッドが確立している学校は引き続き人気であることなどが、綿密なデータ収集や取材に基づき、具体的な注目校名と入試内容などが伝えられていきます。
 
そのなかには、この後のパネルディスカッションで登壇予定の大橋清貫先生が学園長を務める、三田国際学園の名前も上がります。
 
 
今春入試で125校が実施した「適性検査型(思考力)入試」について北氏は、「新しい入試は“希望の入試”です。これまで私立中学受験に関心を持たなかった保護者が私学へ目を向け、私学も豊かな資質と高い意識を持った生徒を迎えることができるためです。さらに、これらに関心を持つ保護者は、多くが大学入試の先を見据えている」と言います。
 
偏差値や大学合格実績などのデータに縛られず、我が子にあった学校選びを行い、私学も意欲のある子どもたちを受け入れる大きな機会となっていくのです。
 
【講演③】テーマ:21世紀型教育の果実そしてフューチャールーム
講演の部を締めくくるのは、21世紀型教育を今年度から本格的にスタートさせる和洋九段女子校長の中込 真先生です。今春の入試では、1897年に創立された伝統校が取り入れる21世紀型教育に受験生の期待が集まり、注目度の高い学校として人気が出ました。同校は今年生まれ変わり、歴史の1ページを新たに刻み始めます。
 
同校では、まずルーブリックで教育の指標となる示す方向性を探りました。最初は個人から始まって、その後に集団となり、最後は思考や発信力、対応力、通用する世界観も広がり深まりながら、世界へと広がっていくイメージなのだそう。
 
中込先生は「PBL(Problem based Learning)授業をすべての教科で取り入れ、自ら発信できる生徒を育成します。将来は社会に貢献できる女性に育ってほしいです」と笑顔で話します。
 
 
伝統校の和洋九段女子ですが、これまでの価値観も新たに位置づけし直し、時代に即した新たな息吹が吹き込まれました。
 
中込先生は、このルーブリックを整備したことによる良かったことの一つに、目指すべき道標があるため例えば学年ごとの研修旅行や文化祭などの学校行事でも「例年通り」ということばは使う必要がなくなったそうです。
 
また小グループにまとまりがちな女子の特色が、共感から協働へと、小さく育てて大きく飛躍させる学びの広がりのテコになることも改めて確認できるようになったということです。
 
学校としての大きな改革元年となった2017年、和洋九段女子はPBLとICTリテラシーを磨くこと、さらに充実した英語教育を掲げ、多様性を受容しながら飛躍する生徒たちを育てていきます。
 
 
なお、「フューチャールーム」とはPBLのための実験室のような視聴覚を中心とした教室です。同校を訪れた際にはぜひ覗いてみてください。
 
パワーポイントの画面をスマホなどで撮影する関係者や保護者が多数いたことは、現代らしい様相の会だったのでしょう。それらのエッセンスを惜しげもなく披露された講演者には今後とも発信を楽しみにしたいと思います。
 

 

 

富士見丘 SGH サスティナビリティ演習の成果

富士見丘は、SGH(スーパーグローバルハイスクール)アソシエイト校及び認定校として3年間プログラムを開発し実践してきた。慶応義塾大学理工学部や慶応義塾大学SFC、上智大学など多くの高大連携プログラムと同校の教員による「サスティナビリティ演習」という新教科プログラムがDNAのように相まって、相乗効果を生んでいる。
 
今回高2の生徒が1年間「サスティナビリティ演習」を行ってきて、いよいよシンガポール、マレーシア、台湾などフィールドワークに出発する前の授業を取材した。by 本間勇人 私立学校研究家
 
 
 
生徒は、マレーシアグループとシンガポールグループに分かれ、それぞれ3人ずつくらいのチームに分かれてプレゼンの練習をしていた。プレゼンをしていは、他のチームや先生方からフィードバックをしてもらい、プレゼン内容やパフォーマンスのブラッシュアップをしていたのだ。台湾へは、すでに一足先に旅立っているということだった。
 
一行は、各国のサスティナビリティ関連施設などを訪れ、説明を受けたり、連携高校との交流がメインになる。各チームのプレゼンを聞きながら、共通のコンセプトが見えてきた。
 
 
プレゼンは、日本の現状とマレーシア、シンガポールの比較スタディをしながら、互いの違いを見出していくのだが、その比較のポイントが各チームによってかなり具体的に絞られており、そのポイントにおける違いと共通点を見出していく。
 
幼児教育、都市づくり、経済成長と環境教育など、1年間サスティナビリティ演習で多角的に調べ考えていくトレーニングを経ながら、各チームが問題だと思ったことをいかに共創的に問題解決していくのかというのがコンセプトだったのだろうと推測させるに充分なプレゼン内容だった。
 
チームのプレゼンのあとに向こうの国の人と、このプレゼンを通して何を共有したいのか教えて欲しいと頼むと、間髪入れずに教えてくれる。私が尋ねたのは、彼女たちのプレゼンにその内容がなかったからではなく、プレゼンが、すべて英語で行われたので、私がついていけなかったからだけにすぎない。
 
「日本の都市とマレーシアの都市の比較をするのだけれど、どうしても向こうの都市のことについては経験が少な過ぎますから、先入観がどうしてもあります。だから、私たちの仮説を聞いてもらい、先入観を打ち砕いてもらうのと同時に、互いに環境にやさしい都市づくりの問題やその解決を考えられないかというのがポイントです。互いに共通する重要な問題をシェアできると期待しているし、シェアできたとき、本当の交流が生まれると思います。」
 
 
考えてみれば、富士見丘は、カリフォルニア州の修学旅行や3ヶ月留学、長期留学など海外体験は他校に比べ圧倒的に豊かであるが、互いに共通の自分たちの身近な問題であると同時に世界共通の問題でもある重要性を共有して、共創的問題解決をしていこうといのは、海外の学びのレベルがあまりに高すぎるではないか。
 
それにしても衝撃的なプレゼンテーションがあった。それは経済成長と環境教育の関係について論考して見事な英語でプレゼンしたチームがったからだ。
 
日本とマレーシアの経済成長率の比較をしながら、日本の先進性とマレーシアの発展途上の差を見せつける推移グラフから始まった。これは相手の国の生徒はなんて思うのだろうと、ドキドキしたが、その後すぐに、どんでん返し。なんともスッキリ爽やかな進行になった。
 
 
高度経済成長時期の両国の差があったが、その時、日本ではイタイイタイ病や水俣病のようなあまりに酷い公害問題が発生した。その問題解決を、環境庁がどのように対応したか、そして教育では何が行われたかを語り、現在日本は、環境にやさしい経済社会を創ろうとしており、私たちも教育で参画していると。教育では、環境問題について学ぶ機会が織り込まれているからだと。
 
マレーシアは、もはや日本に追いつき追い越そうとしている。そのとき、環境にやさし経済社会をはじめから作る準備をしておけば、日本のようにならない。
 
それに、教育といっても、知識を得るだけでは役にたたない。アクティブに行動しなくてはと。そして、私たちも3・11で震災被害を受けた釜石に実際にいって、市民の方々と語ったり、インタビューをしたりして、同じ日本人でもテレビや新聞だけではわからないことが余りに多すぎることにショックをうけた。
 
自然災害や環境問題についてもっと積極的にかかわらなければならないという私たちの意識がアンケートの結果でもはっきりでたとグラフをバーンと映し出した。だから、アクティブな教育は役に立つのだと。なんて説得力がるのだろう。
 
 
20世紀に日本は経済成長社会を目指してきたが、その矛盾を明快に論じ、マレーシアの行く末を気遣い、そうならにように私たちが何ができるかいっしょに考えましょうというプレゼン。
 
写真あり、グラフあり、フローチャートありで、見事なパワーポイントであった。また自分たちが共有する問題は、国連が採択したグローバルゴールズとも共通する。それほど重要な問題なのだと説得力ある事例を畳みかけるプレゼンでもあった。そして、さらに驚いたのは、母国語のように英語を語り、聴衆を共通の世界に巻き込むパフォーマンスだった。
 
 
さすがは在校生に帰国生がたくさんいる富士見丘だと思ったら、なんと富士見丘で英語を学んだ2人だった。休んでしまったもう一人の生徒は帰国生だったが、2人は違うのだと。
富士見丘の英語の環境は、一般生が帰国生と同じようなレベルになる環境を開発しているということを示唆しているのではあるまいか。
 
だから、帰国生が口コミで評判を聞いて富士見丘に入学してくるのだろう。いろいろ納得させられるサスティナビリティ演習の一コマであった。
 

工学院 21世紀型教育改革の基盤できる

2013年4月、平方先生は、工学院大学附属中学校・高等学校の校長に就任するや、21世紀型教育改革にとりかかった。IBやSGH、ブルームのタキソノミー、CEFRなどのリサーチやフィールドワークに教員を巻き込みながら、PIL×PBL型の授業改革を断行。
 
 
(工学院の教育改革の歴史と未来を語る平方校長)
 
 
2014年度にはいるや、教員全体でPBL研修を行い、そのためのプロジェクトも立ち上がった。そして、まずはじめに「思考コード」という基準作りを行った。このコードに従って、PBL型授業の見学をし、思考コードの軌道修正もした。この年の中1は、2017年に高1になるときに大きく改革ができるように準備がスタートした。この準備が、次の年のハイブリッド構想の設計図となった。高1の3ヶ月留学も開始した。このプログラムが在校生全体の意識を高める力にもなった。
 
2015年には、プロジェクトチームはiTeamというイノベーションチームに進化し、思考コードで定期テスト分析をするまでに進化。S-P表も活用し、授業改善、生徒の弱み強みの共有、問いの質のアップなど、データサイエンス的な議論が学内でできるようになった。
 
同時に英語教育もC1英語を目標に、ケンブリッジ出版のCLIL手法が埋め込まれているテキストを活用。中1のハイブリッドインターナショナルクラスが立ち上がった。帰国生や英語体験者が多く、英語ばかりでなく、数学、理科、社会もオールイングリッシュで展開することになった。
 
 
(思考コードベースの授業×テスト×評価の三位一体改革について語る太田教務主任)
 
2014年にスタートした「思考力テスト」のもとになったデザイン思考の新しい授業もパワフルになった。中学生全員iPadをもち、one to oneの授業展開も繰り広げられた。
 
何より、高橋一也先生(現教頭)がグローバルティーチャー賞トップ10入りして、学内全体の21世紀型教育改革は拍車がかかった。
 
2016年には、ハイブリッドインターは中1、中2にしか設置されていなかったが、その先駆けとなった中3の生徒も全員iPadを授業で活用するようになり、思考コードに基づくC1英語×PIL×PBL×ICT教育×リベラルアーツの現代化という21世紀型教育改革の方程式が完成した。
 
特に2016年は、iTeamを高橋一也教頭を中心に、TOK(田中英語科主任、太田教務主任、加藤学年主任兼eTeamリーダー)という3人の先生がリーダーシップを発揮し、学内全体にコーチングシステムを浸透させ、21世紀型教育改革を推進する「学習する組織」を持続可能なものにしている。その一環として、太田先生をリーダーとした若手教員のiTeamキャッチアップ研修も立ち上がって、日々研鑽自己マスタリーに励んでいる。
 
 
(英語教育について語る田中英語科主任)
 
2017年は、中学全体の21世紀型教育改革の基盤はかなり盤石になったので、いよいよ高校1年を手始めに21世紀型教育改革を本格的にスタートする。もちろん、忘れてはならないことは、この過渡期にあって、大学進路指導の改革も同時進行で行われていることである。高2、高3は改革の完成を待つことはできない。いまここでが最重要である。進路指導主任の新井先生が指導に集中し尽力し、21世紀型教育改革を未来につなぐ力技を遂行している。
 
2017年1月14日、2017年度中学入試のファイナル説明会が行われた。いつもの会場では収まりきれないほど多くの受験生親子が参加したので、急遽隣接の工学院大学の大講義室を活用。
 
この21世紀型教育改革の歴史を、平方校長が語り、次に教務主任の太田先生が、授業改革について具体的に語り、さらに英語科主任の田中先生が、英語教育改革の実際的な効果を生徒の活動の動画を使いながらスピーチした。
 
 
(思考力セミナーを主宰している高橋一也教頭)
 
同時に中高校舎の図書館では、PBLスタイルの「思考力セミナー」を高橋一也教頭をスーパーバイザーに思考力入試チームが実施していた。ある都市の気候現象のデータをもとに、都市の在り様を洞察していき、最終的には自分の考案するドリーム都市をレゴで作り上げるところまでいく。リサーチには、参加者はiPadも活用。
 
データリサーチから始まり、分析をしていき、発見した構成要素を論理的につないでいく過程を、個人ワークとグループワークを組み合わせながら歩んでいく。そして最後は自分の考えるドリーム都市をレゴでプロダクトするのだが、現実の都市とドリーム都市のギャップをクリティカルに考える過程も埋め込まれている。
 
このプロセスの中で際立っておもしろかったのは、分析段階で、クリエイティブシンキングを活用しているところ。分析だから論理的ではあるのだが、おもいきり仮説を挿入するから、そこはクリエイティビティが必要となる。
 
 
つまり、これはどういうことかというと、情報→理解→応用→論理→批判→創造という思考の次元をリニアー(直線的)に進むのではなく、クリエイティブシンキングを挿入して、ループあるいは螺旋を描きながら考えていくプログラムになっている。そう「プログラム」。コンピュータのプログラミングにも相当するフローチャートループが埋め込まれている。
 
2017年、思考コードにプログラミング思考が新たに加わる。STEAM教育やCLILもスタートする。隣接する大学のいわばSTEAM研究棟も新設され、そこを中高も共有できる。高1でもハイブリッドインターナショナルクラスが開設され、帰国生も入学してくる。新宿キャンパスの活用も検討されている。
 
 
(最終保護者会では、「英語入試」の傾向と対策について田中先生が説明。英語入試の受験予定者のために別室で行われた。)
 
そして、まだ企業秘密ではあるが、平方校長によると、日本初のプランが予定されているという。工学院の21世紀型教育改革はさらに進化する。なにゆえにこうなのか?教員のありたき「学習する組織」を協働して創るモチベーションや情熱が大きくなっているからだ。Growth Mindsetされた教師が外からもどんどん参画したいと応募してくる。もちろん、その魅力はTOKを中心とするITeamによる涙ぐましい創意工夫とプロデュースによるのである。(by 本間勇人 私立学校研究家)
 

聖学院 PBLの成果

昨今中学入試において、適性検査型入試や思考力入試は、トレンドになりつつあるが、すでに聖学院は、2012年から思考力テストに取り組んできた。なぜ取り組むことができたかというと、これもまた今でこそアドミッションポリシーとかカリキュラムポリシーという言葉が、中学入試においても使われるようになったが、当時から聖学院は、教育の内容を入試に反映させていた。
 
つまり、思考力入試を行うには、そこに反映される授業が展開していなければならないわけである。その頃、聖学院は、文化祭や物理部の高大連携、タイ研修旅行などに、プロジェクトマネジメント手法を取り入れ、授業にもPBL(Project based Learning)を導入する授業改革に着手していた。
 
アクティブラーニングが今のように喧伝されていない時代に、聖学院は、はやくも時代精神を読み解き、動きだしていたのである。そして、その成果は学内で着実に生まれている。by 本間勇人 私立学校研究家
 
 
 
2017年1月14日、聖学院講堂で、最終2017年度中学説明会が行われた。戸邉校長の「世界の最前列で輝く男子に」というスピーチに誘われて、中1と高2の在校生が登場。清水副校長とトークセッションが始まった。
 
飾らない自然体のトークは、まさに世界の最前線においても、オープンマインドで柔らかい共感的なコミュニケーションができる姿を示唆していた。どうして、このように成長するのかというと、その場の状況に合わせて、自分の考えを表現する場数を踏んでいるからである。そして、その場数のトレーニングがPBLという探究学習である。
 
 
今では、中学のロングホームルームは、すべてPBLスタイルで行われているし、多くの授業にもこのスタイルの授業は広がっている。もともと国語の授業などでは、毎回3分間スピーチが取り入れられていたし、単元の終わりの方では議論、ディベートが組み込まれてきた。それに、なんといっても同校の図書館が学びの拠点として機能しているために、PBLの浸透速度は速かったといえる。
 
説明会で登場してきた生徒だけに特別なのかというと、学内の多様なイベントやポスターセッションなどでの多くの在校生の活躍を見れば、すべての生徒が共通して醸し出しているコミュニケーションの雰囲気であることが了解できるだろう。これを教育の成果と言わずして、何を成果と言うのだろう。
 
もちろん、大学合格実績も成果の一つであるから、聖学院の進学実績の好調さで判断しても良い。しかし、人間としての姿と大学合格実績としての結果の両方が揃っている学校は意外と少ない。
 
さらに、説明会と同時開催された思考力入試対策講座である「思考力セミナー」も中学入試説明会の風物詩として、多くのメディアでも取り上げられるようになった。
 
 
同校の思考力入試は「ものづくり思考力」と「記号論的思考力」の2種類ある。前者は、自分の発想をデザインしながら考える過程を楽しむ思考力入試で、後者は言語や写真、図形、数字などの記号を素材として、自分の先入観や視点を転換して新たな自分を発見する過程に目を輝かせる思考力入試。
 
まさに知の世界の最前線で輝く体験ができるセミナーだし、入試なのである。受験であるから選抜機能はもちろんがあるが、それに挑戦することで受験生は自分の成長を受けとめることができる。ある意味才能発掘入試でもある。
 
今回は、立体図形をモチーフにした思考力セミナーが行われた。はじめに9つの立体が提示され、二つに分類するところからはじまった。分類の基準である視点によって、分け方は変わる。視点が変われば世界は変わる体験。
 
 
しかし、この程度のカテゴライズは、参加した小学生にとっては当たり前で、当たり前だと視点が変わればものの見方も変わるという考え方は、だから何なんだとなる。
 
そこで、実はこの9つの立体図形は、すべて同じであると考えることもできる、その理由はなにか議論してごらんと。生徒たちの間には、なぞなぞでも解くのかという不思議な気分が流れる。それぞれの図形に補助線を書いたり、もってきたモノサシをあててみたり、創意工夫するのだが、なかなかこれはという理由が見つからない。
 
それもそのはずだ。その創意工夫の行為そのものが、すでに硬い幾何の発想に規定されていたのだ。そんなとき、スクリーンに、マグカップがドーナツに、ドーナツがマグカップに変容する動画が繰り返し映し出された。
 
 
そして、アーとか、なるほどとか、生徒の歓喜の声があふれでた。ここでスーパーバイザーの本橋先生からトポロジーという現代数学の柔らかい幾何の考え方が解題された。
 
トポロジーという柔軟な「置き換え」は、ノーベル化学賞などの受賞者が、新物質の発見や作成の時に活用する考え方でもある。
 
つまり、聖学院の数学科にとって、数学は、領域横断的な数学的思考をベースにした授業を展開する教育を実施しているのであり、それが入試に反映しているのである。もちろん、80%は演習なので、安心して欲しい。同校中学入試にも一般的な算数の試験もある。
 
 
しかし、ここで大事なことは系統的な堅固な学習と既成の考え方を転換する柔軟な学習としての探究学習の両輪が、今後の中等教育では必要であるということなのである。
 
実際、IBやAレベル、APコースといった欧米の数学では、自然現象、政治経済、哲学、社会学、心理学、医療など様々な分野で実際に適用できるようにカリキュラムが組まれている。これをリベラルアーツの現代化と呼びたい。
 
2020年大学入試改革で、日本の数学の学習指導要領がここまで追いつくかというとおそらく難しいだろう。しかし、生徒の未来は、いまここから始まっている。学習指導要領の改訂を待つのではなく、すぐそこにやってくるAIやBT生活の大前提となるクリエイティブ社会に対応するには、独自のリベラルアーツの現代化に挑戦する以外に道はない。
 
 
聖学院の思考力入試やPBL型授業や教育活動は、その道を確固たる信念で歩んでいける大きな成果を生み出し、まさにその道のかなたに、「世界の最前列で輝く」人間に育っている聖学院の生徒の姿があるのである。
 

八雲学園 グローバルリーダー養成WS 英語教育の一環

八雲学園の教育は総合力ということを大切にしている。総合力とは、生徒一人ひとりが、多様な学びの環境や体験を通して、自分の世界を広め深めていくことである。もちろん、自分の世界とは独我論ではない。ウェルカムの精神を大切にしているのが何よりの証拠である。価値観や考え方、文化の違いを尊重しながら、自分の世界を世界中の人々が共感してくれる表現活動ができるリーダーシップ教育が、八雲学園の教育の総合力である。by 本間勇人 私立学校研究家
 
 
 
八雲学園の英語教育はあまりにも有名であるが、その教育がグローバルリーダーを養成するプログラムに連なっているという理解は意外と広まっていない。
 
中1にはいって、 すぐにレシテーションコンテストがある。英語力を育てる環境の1つであるが、学年全体、保護者の前で、自己表現に勇気をもって挑戦する機会でもある。
 
中2になるとスピーチコンテストに発展し、英語力にこんどは自分の世界を広げる作業がいよいよ本格的に始まる。
 
 
中学では、イングリッシュファンフェアといって、日本在住のネイティブスピーカーの講師80名とチームになって、いわば異文化交流カンファレンスを企画運営する。交流に参加する側であり、同時に運営する委員会集団でもあって、リーダーシップと個人の世界の両方に目配りする機会が開かれている。
 
文化祭や英語祭では、英語劇を行う。中3になるにつれて、ミュージカル風に発展するが、音楽ありパフォーマンスありで、自己表現のいわば総合芸術化が行われる。この段階では、英語力といより、人間と言語と芸術を総合的に体験することになる。
 
そして中3から高1になる春休みにサンタバーバラに全員で海外研修旅行に挑戦。姉妹校のケイトスクールの先生や生徒とも交流し、中3までに積みあげてきた英語力と人間力と自分の世界観を土台にコミュニケーションしてみる。
 
そして、ワクワク楽しい研修旅行を体験しながらも、ただそれだけでは本当の世界コミュニケーションができるわけではない。もっと英語力をもっと海外で勉強をということになる。毎年夏前に行うイエール大学との国際音楽交流で、その思いはますます募る。
 
 
そのモチベーションが、3ヶ月留学を生み、ラウンドスクウェアという世界のエスタブリッシュ私立学校400校のコミュニティのメンバー校になる機会もゲットした。
 
それは、いわば、世界の私立学校による世界会議で、そこで話し合うことは、文化交流のみならず、世界の問題を議論し、世界をよりよくするためには自分たちはどうしていくかというグローバルリーダーの資質を試されるビッグチャンスでもある。
 
そして、実際にそこに参加した勇気ある八雲生は、いくら歴史の知識や環境学の知識や政治経済の知識を持っていても、英語が堪能でも、世界に対する高い問題意識と自分なりのアイデアを持っていないと、議論に参加できない。参加できないということは貢献できないということと同じ意味なのだということを思い知らされて帰ってきた。
 
1人世界について思い巡らしているだけでは太刀打ちできない。やはりもっと勉強して、もっと議論する機会が欲しい。菅原先生と近藤先生は、すぐに彼女たちの想いをカタチにしようと奔走し、まずは有志が集まってグローバルリーダー養成WS(ワークショップ)をスタートした。
 
 
はじめ、身近な小さな出来事が世界の大きな問題につながっているという議論をしていこうと思ったようだが、先生方の期待を大いに裏ぎり、いきなり権力の弾圧の問題や家庭と社会の問題、なぜ不平等社会が生まれるのか、正義とは何か、高い意識のディスカッションがとびかった。
 
幾つかのグローバルゴールズ達成のためのフローチャートをチームで議論し、プレゼンもした。そして、まだまだ議論すべき新たな問題が生まれてきた。
 
菅原先生と近藤先生に、議論が自分の世界を掘り下げて行く経験がいかに大事か改めて実感できたので、このような機会をこれからもつくっていきましょうと大いに盛り上がった。
 
八雲学園の教育は、こういう体験の中から生徒自身の欲求にこたえる形で深まっていく。グローバルリーダー養成WS。また一つクオリティの高い教育が生まれた瞬間だった。
 

富士見丘 アクティブラーニングのスーパーモデル

富士見丘では、SGH(スーパーグローバルハイスクール)認定校として、プロジェクト学習のベースであるアクティブラーニングが学内に浸透している。SGHは高校のプログラムであるが、同校は中高一貫校の強みを活かして、中学でもそのエッセンスを実施。破格のアクティブラーニングのプロトタイプが完成した by 本間勇人 私立学校研究家
 
 
 
中学1年では、昨年からLHRの時間を使い年間8回ぐらいアカデミックスキル基礎講座を行っている。ベースはアクティブラーニングで、その特徴は次の5つ。
 
1) 思考スキルとして、「比較・対照」「理由・根拠」「抽象化」「カテゴライズ」などをプログラムの中に埋め込んでいる。
2) 知識は論理的思考のエネルギーとして、思考と分離しないで融合させている。
3) ディスカッションと個人ワークの時間のメリハリをつけている
4) 模造紙、ポストイット、ロイロノート、iPad、電子黒板などアナログとデジタルの思考ツールのバランスの良い組合わせをデザインしている。
5) 創造的思考、批判的&論理的思考、共感する力、協働する力、ICTリテラシーの5つのメタルーブリック(思考コード)をもとに、タブレッドによる自動リフレクションシステムを開発している。いわゆる≪higher order thinking≫が基礎になっている。
 
 
中1の7回目のアカデミック基礎講座のトピックは、「フローチャートづくり」。学びのパターンは、身近な体験を通して「フローチャート」の意味を見出すということ。具体から抽象へシフトすることで、今度は別の具体的な現象に応用・適用ができる。
 
美濃部先生によると、「とくにフローチャートは、授業でのみならず、行事や生徒会で活動を運営する際にも適用できるし、なんといってもICTによるプログラミングの基礎的な考え方だから重要なんだという実感を生徒と共有したい」ということだった。
 
 
部屋の掃除ついて話し合っているテキストを読んで、掃除の手順のフローチャートをまずは自分で考え、チームで一つのフローチャートを創っていく。個人の考えを明確にしてから、ディスカッションすることで、軌道修正することになるから、自分の論理をクリティカルシンキングすることにもなる。ここに多くの気づきが生まれる。
 
リフレクションの全体の結果をみると、カテゴライズは、前回よりも十分に行ったという結果になっていたから、フローチャートの意味・意義を生徒は体感していたことになる。美濃部先生のプログラムデザインの目的はうまくいった。
 
 
また、個人ワークで考えてまとめて、さらにロイロノートでシェアしたりしたから、一人ひとりは没頭したという反応が前回よりも強くでていた。アクティブラーニングはともすると拡散して終わりになる。それはそれでよいのだが、たとえ短くてもいったんまとめて抽象的思考に飛ぶことに没頭する瞬間をつくりたいという美濃部先生の想いと創意工夫はある程度達成された。
 
一方で、今回は、ICTリテラシーに関しては、調べたり編集したりするためには使わず、ロイロノートをおもにシェアするために活用したから、前回ほど反応は高くなかった。リフレクションは、すべての反応が高くなることが目的ではなく、授業の目的に応じて反応が高い領域とそうでない領域がでるのが健全である。
 
 
そういう意味で、今回の授業は美濃部先生と中1の生徒の協働作業として成功したといえる。アクティブラーニングは、この瞬時のリフレクションシステムによって、生徒一人ひとりの取組みの強みと弱み、授業の強みと弱みが、教師も生徒も共有できる。
 
 
活動というのは、あらかじめイメージをして、その過程の中で試行錯誤と軌道修正のフローチャートループが出来上がると、成長思考につながっていく。そして、このフローチャートループの連続が、多様な価値観やものの見方・考え方を尊重しつつ、最適解としての結論や新たな仮説を導くことになる。
 
 
(個人のリフレクションシートも瞬時に出る。学年全体の集計結果の一部。それぞれの項目には5つの小項目がさらにあり階層構造になっている)
 
不確実性の時代は、正解は1つではないが、それだけに独善的な考えに陥りやすい。そうならないように、ディスカションしたり、協働したりしながら、最適解を共有していくことによって、難局を乗り越えていくことができる。
 
 
(カテゴライズしたかどうかの小項目は、批判的&論理的思考の項目に属している)
 
富士見丘のアカデミックスキル基礎講座は、この難局乗り越え体験のシミュレーションの場でもある。おそらくここまでのフローチャートループを完成させたアクティブラーニング授業は、世界でも類をみないであろう。
 

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