富士見丘学園 学ぶコトは考えるコト(1)

富士見丘中学校高等学校(以降富士見丘学園)では、大胆かつ多様な学びのプログラムを実施している。そのうち「中学生のための哲学教室」と「自主探究5×2」という探究学習のプログラムは、それぞれ21会校が共通してイメージしているPIL型授業(Peer Instruction Lecture)、PBL型学び(Project Based Learning)のカテゴリーに入るのだが、同時に、そのカテゴリーをはみ出すほどパワフルである。

今回は「中学生のための哲学教室」を紹介したい。同学園の教頭大島先生と桜丘の副校長品田先生によるコラボスタイルの授業でもある。(by 本間勇人:私立学校研究家)

※PIL(Peer Instruction Lecture)型講義は、講義に対話を導入するタイプ。PBL(Project based Learning)の学びは、課題発見から問題解決までコラボレーションしながら探求するタイプ。

 

 

■3つの対話

昨年10月、「第84回京都大学高等教育研究開発推進センター公開研究会」で、ハーバード大学のエリック・マズール教授(物理学・応用物理学)は、「ピアインストラクション:深い理解を促進する」という題目で、講演とワークショップをパラレルに進行した。つまり、マズール教授の講演自体がピアインストラクション型だったのである。

いわゆる従来型の講義というのは、教師が一方通行的に情報を伝達し、それを生徒は受容し、理解していくというスタイルであるが、米国の教育シンクタンクやMITメディアラボなど多くのリサーチによって、講義形式ほど生徒が理解を促進しない方法はないという結論になっている。

そこで、マズール教授は、説明をする前に、質問をだし、それを隣同士(ピア)で対話して、教え合うというピアインストラクションをこまめに挿入する。そのあと講義をするのだが、ハーバード大学レベルであるから、すでにその段階で理解は促進しているということだった。実際に研究会の参加者もピアインストラクションをやりながら講演を聴いていったが、なるほど理解が促進することを実感した。まさにプラグマティズムの米国の面目躍如といったところだった。

しかし、今回の大島教頭による哲学教室は、参加者が中学生(1年生から3年生まで18名)。私も参加した京都大学の体験のようになるのだろうか。始まる前は少し心配であったが、それはまったく杞憂であった。というのも、そもそも「哲学教室」は講義ではない。まったく教えないで、生徒が理解を促進していくという学びの空間が展開していった。たしかに生徒同士が対話しながらというのは、ピアインストラクションであるから、ピアインストラクションというタイプには属するだろうが、対話はそれ以外に2種類あった。

1つは、大島先生と生徒との対話。もう1つは、品田先生と生徒の対話。生徒と生徒のピアインストラクションもいれると、3つの対話で哲学教室はデザインされていたのである。ある意味思考の3D構造になっているので、生徒たちは、自分の思考過程を立体的に映し出しながら、対話ができるようになっていたのである。

 

 

Twitter icon
Facebook icon