工学院 思考を工学する授業(3)

生徒たちがノートに自分の考えを刻み、島田先生に提示するアウトプットの時間は、もっとも知的交換に興奮する瞬間である。生徒の学びの意識の拡散と収束、収束と拡散を工学的にデザインするのが環境工学の授業であることがはっきりと了解できる時でもある。

アウトプット

島田先生は、1人ひとりの生徒とノートを介して対話した後、黒板に書かれたベストアンサーについて、コメントしていく。問題意識、認識方法を共有する時間である。生徒は仲間の考え方やその評価についてのコメントには真剣に耳を傾ける。ここに個とクラスのインタラクションの活性化が起こる仕掛けが横たわっている。

解題とネクストステージ

島田先生は、生徒たちの考え方にコメントをした後、さらに世の中の問題解決のさまざまな取り組みについてパワーポイントでテキストを表示しながら解題する。生徒たちは腑に落ちる。その瞬間である、次の課題としてレポート編集が言い渡される。さらに騒然となるのは想像するに難くないだろう(笑)。

工学院の環境工学の授業の肝は、まずは、生徒が自分の問題意識や考えを持つこと。そのあとに様々なものの見方や考え方に対峙。そしてその繰り返しが巧みであることこれである。それはまるでDNAのらせん構造のような授業のデザインで、21世紀型授業の工学発想のモデルである。

工学院の環境工学という授業

今回の授業見学と島田先生のインタビューを通して、環境工学の授業の特徴は3つあると感じた。

1)地球温暖化問題や外来種問題などを自然と社会と自分という3つの角度から考えつつ、そこに技術を結びつける授業。

2)技術を結びつけることによって、有用性、経済性、実現性という工学的発想を意識できるようになる。

3)環境問題を工学的に考えるという意味で環境工学であるが、学びという環境を工学的にデザインするという意味でも環境工学である。

この3つ目の「環境工学」に2重の意味があるという発見は、21世紀型教育を論じる時の嚆矢となるのではないか。そのような思いで、島田先生の序破急の展開で生徒のモチベーションを内燃させるイメージを図にしてみた。これをもって私の感想としたい。

 

 

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