今年5月31日、21会は第1回カンファレンスを開催。昨今は、グローバル人材育成競争に対応する様々な教育論争や政策論議が一段と喧しい。それら議論は言うまでもなく、玉石混交であるから、私立学校の時代の役割とコミットメントを大前提とすることをまず確認した。
そして、グローバル教育とイノベーション教育、そしてリベラルアーツを≪GIL≫と呼び、私立学校の独自でいながら世界標準を創り出せるような最先端のGIL教育を開発・実施していくことを宣言した。グローバリゼーションは一方で、時空を超える異次元的ともいうべきスピードで変化するため、目先の目的合理主義に陥りがちである。しかし、もう一方で、地球市民として全休的リーダーを育成する時代の要請の声も大きくなっている。
それゆえ、21会校は、教育改革幻想や学力幻想に右顧左眄せずに、世界の子どもたちの大切な人間の根っこを大切にする教育活動を常にリフレクション(反照)しながら、最適な≪GIL≫教育を切磋琢磨している。その21会校の近況活動をご紹介する。(by 本間勇人:私立学校研究家)
21会グローバル教育の根っこ
毎月1回から2回ぐらいの割合で21会のグローバル教育部会(GE部会)が開催されている。座長の江川先生(佼成学園女子教頭)は、GE部会の先生方と21会校それぞれの独自のグローバル教育の情報交換をしたり、互いに教育の質を高め合う勉強会を開催しているのある。
佼成学園女子では、中学から長期留学を実施していくことになるし、海外大学との提携も進めている。
文化学園大学杉並では、カナダのBCカリキュラムを導入し、いわゆるIB(国際バカロレア)に相当するグローバルプログラムを実施していく。
富士見丘では多彩な短期・中期・長期留学制度を構築し、海外大学との連携も進めている。
戸板では、米国の大学に射程を合わせたスーパーイングリッシュコースやスーパーサイエンスコースを開設する。
このように、GE部会のメンバー校は、独自のグローバル教育を行っている。互いに情報を交換し、そのエッセンスを21会校全体に発表して切磋琢磨しているのである。
この活動の過程で、実際に白鶯先生(富士見丘副教頭)は、英国やアラブ首長国連邦の海外研修の視察にいって、IBの学習者像の重要性について考えたという。また、島田先生(工学院教頭)も、今夏行われた日本語IBの教員研修に参加し、IB教員の資格を取得したが、やはりIBの10の学習者像は大切であり、これは生徒のみならず教員自身も学習者として学ぶべきところがあるという。
このIBの学習者像は、グローバルな全人教育のコンセプトであるから、当然青井先生(文化学園大学杉並)も深く理解し、学内外に学びの三層構造と称して、啓蒙されている。伊藤先生(戸板教頭)によると、同校もIBの教員研修に参加しているし、英語科がすでにIBの研究をしてきたこともあって、このような考え方は共有している。また戸板は、どちらかというと米国のAPコースのような高次思考を養成する双方向的な授業研修を、学内で相当行っているということだ。
そこで、江川先生はGE部会で議論しシェアしているIBのような全人教育の10の学習像を、21会の≪GIL教育≫の基礎とすることを今後も確認していきたいと、ビジョンの深化を行っていくことを考えているところである。
IBの10の学習者像
Inquirers 探究する人
Knowledgeable 知識のある人
Thinkers 考える人
Communicators コミュニケーションができる人
Principled 信念のある人
Open-minded 心を開く人
Caring 思いやりのある人
Risk-takers 挑戦する人
Balanced バランスのとれた人
Reflective 振り返りができる人
21会グローバル教育カンファレンス≪Change the World≫
6月28日、戸板で第13回21会が開催された。そのとき青井先生がGE部会を代表して、21会カンファレンスを海外で帰国生対象に行う企画を提案された。帰国生は、自分たちのグローバルな貴重な体験をリセットして中学受験や高校受験の準備に入るケースが多い。
これは学校や教育の情報が不足しているあるいは偏っていることが原因で、信頼性のある情報を提供し、帰国生の経験を活かせるような教育を選択するように啓蒙活動を行っていくことが必要であるとビジョンをプレゼンした。
21会ではワークショップ形式で、議論をし、今後もその提案を実現すべく対話を続けていくことにした。コンセプトは≪Change the World≫.。
もちろん、ここでいうWorldは表層的世界のことではない。自然、社会、精神というトータルな世界をよりよくしていけるように変えられる人材を創っていくことが目標である。それはIBの10の学習者像と重なるコンセプトである。