池末先生、金井先生、桑子先生の教科横断的な活動と広がり
2006年に始まった特別教養講座≪「明暦の大火と地形との関係」≫は、社会と国語と理科の教科横断的な学びが成立した。
仮名草子にでてくる明暦の大火の物語。しかしフィクションではなく、350年以上前に自分たちの生きている場所と同じ東京で起こった事件。私たちが何気なく歩いている街に、突然歴史的な事件にワープして、そこで繰り広げられる愛や憎悪、葛藤、嫉妬などなどの生き様を感じ取れるとしたら、それは生徒にとって興味付けは立ち上がるだろう。
実際、その後も時代を超える興味として歌舞伎や浄瑠璃に伝わった。それは今も村上春樹の小説にも繰り広げられているかもしれないし、シェークスピアにも通じる人間の捉え方かもしれない。想像しただけでもワクワクする講座である。
それを現在の都市に江戸を重ね合わせてそれぞれの生徒が探究心というスクリーンに映し出せるようにする特別教養講座なのである。
しかし、これは、明暦の大火が連続して起こった空間を何気なく歩いていて、気づくことはできないだろう。物語を再現するために、古地図と現代の地図を対照したり、実際に坂の傾斜角度を測ってみたり、散策ではなく、巡検というフィールドワークの手法を活用しなければならない。
教科横断型になるには、実は地理学、古典、気象学など、それぞれの先生が持ってる高度な専門性を発揮しなくてはならない。逆に言えば、学習指導要領レベルの範囲では、せいぜいICTや共通言語など道具を共有する程度で終わる。
しかし、専門性とは身近なところからぐっと深まる。生徒はこの知のジェットコースターに驚愕し、興味を抱くのである。受験勉強では、その深みがないから、興味がわかない。巧みな教師は受験勉強の合間にもその知のジェットコースターを立ち上げるのだろう。
物語から出て外を歩く。地図と現地を対照する。緩やかな傾斜のかなたに台地のあるのを地図で補う。すると風が起こる環境がイメージできる。しかし、さらに地球規模の気象現象ににながっていることに気づき始める。
身近な小さな空間が大きな地形に広がり、大きな現象につながり、自分の生きる時間を超えた壮大な歴史物語に到達する。
2012年の講座でも、ウニという小さな生物から人間、進化、宇宙、逆に素粒子と、時間とミクロとコスモスの壮大な時空を探究心のスクリーンに映し出している。