Created on June 16, 2014
2時限目の実技教科、そして3時限目の部活動、と時間をかけて体験するにつれて、文杉の「知性」と「感性」が磨かれるプロセスが徐々に明らかになってきた。
家庭科のお菓子作りやビーズを使った裁縫、美術の絞り染め、茶道、書道といった授業を見学して気づくのは、いずれの授業でも何かを教え込もうというよりは、一緒にいる時間を楽しもうとしていることだ。そこでは、先生そして在校生が奉仕する者として存在している。解説や説明・指示・確認を行う教師はいない。代わりに、何かを作り上げるために協力していく仲間(=奉仕者)がそこにいるのである。
お菓子作りをしている教室では、お菓子を焼いている間、在校生と受験生がこんな会話をしていた。「好きな芸能人っている?」「志村けんとかかな」「えっ。そうなんだー。お笑いが好きなんて意外だね…」
何気ない会話に、文杉らしさが満ちあふれている。フラットな関係と形容するのもはばかられる(つまりフラットであることをすら強要しない)ほど自然な人間の関係。相手がお客様だからとか、自分は先輩だからなどといった、気負うところがまったくない。お菓子を焼いたり、ビーズで模様を作ったりすることを心から楽しんでいる。そして、在校生は材料を持ってきたり、次に必要なことを準備する。先生は必要なくなったお皿を洗ったり後片付けをせっせと済ます。
各自がそれぞれの役目を当然のように果たしながら、みんなで楽しむのである。狭い意味での知性にこだわっていては決してたどり着けない境地だろう。
人に楽しんでもらうことが自分の楽しみでもあるという環境。
ここに文杉が楽しく笑顔でいられる秘訣がある。