進化する戸板中学校 戸板女子高等学校(1)

平成26年度から戸板中学校戸板女子高等学校(以降戸板)は、大きく進化する。その準備を今年開始したと聞き及んだ。そこで、入試広報部部長の今井誠先生に、どのように進化するのか、そのための準備とはどういうことを行っているのか尋ねた。すると、ちょうど社会科の会議で、その戦略を話し合っているので、立ち会ってはどうかと取材の提案を受けた。その自信とやる気に満ちた笑顔に、二つ返事で会議を見学させていただくことにした。会議の模様をお伝えしたい。(by 本間勇人:私立学校研究家)

※左から今井誠先生(入試広報部部長)、市川恵也先生(生徒指導部部長)、原田啓志先生(進路・学習指導部)、豊田良知先生(教務部部長)

今井先生が、なぜ社会科の会議を取材するように誘ったのか、その理由は社会科の教員は全員教育のそれぞれの柱の部長だったのである。社会科の会議が自ずと戦略会議になるわけである。戸板は平成26年から、大事業としてスーパーイングリッシュコースとスーパーサイエンスコースを設置する。

グローバル人材教育は時代の要請であるし、女子校として理科系女子を大胆に育成することは国際的な意味でも喫緊の課題。しかし、それと同時に基礎の基礎は、インタラクティブな授業によって、生徒の考える意欲を刺激することであると。今回の社会科会議のテーマは、「生徒が自ずから考えることが楽しくなる授業はいかにして可能か」であった。

会議は90分。4人で今回のテーマについてブレストしてから、戸板の社会科の授業の「ミッション」について議論した。そしてそのミッションを実現するためにはどういう授業をしてきたのか、その発展はどのようにしたらよいのか、社会科のすでにあるストックを棚卸しし、見える化した。最終的には、簡単な授業を行う教師のCan Do リストにまとめた。

そのリストは、同時に生徒が自己評価する項目でもある。なるほど生徒は自らの学ぶ力を見える化し、自分で改善していくことができる。なるほど、考える授業の準備が俊敏に具体化されていくプロセスに遭遇することができた。

 

■ミッション

社会科の大学入試問題は、まだまだ大量の知識を要する。そのため、社会科の授業を全面的に考えるチャンスに置き換えることはできない。しかし、はやくも次の学習指導要領では、一つのテーマにかかわる問題を多肢にリンク(主題編成型)していく構成主義的学習観を強調する動きがある。大学入試と新しい学習の流れの葛藤をどのように解決するか。社会科の会議そのものが、問題解決型の会議だった。

 

議論の中で、まず大前提は、知識を記憶させるだけの講義は行わないということだった。しかし、だからといって、毎回考える授業を行っていたら、生徒が学ぶ領域が狭くなってしまう。知識と思考のバランスをどうするのか侃々諤々。結果、時間配分や知識量の割合といった量の話では、解決はつかない。知識を学びながら同時に考えることにもなっているという授業の方法を創意工夫することが解決の糸口だろうということになった。何を教えるかの指導計画ではなく、何をどう学ぶのかの授業のプログラムであるという話に進化。量から質へというミッションが大きく広がった瞬間であった。

 

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