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アサンプション国際 校長哲学教室 さらに進化/深化

今年4月からアサンプション国際は、共学化、校名変更、21世紀型教育改革という大転換を果たした。すでにご紹介したイマージョン教育やPBLの授業も、速くも広がり深くなり始めている。
 
そんな中、同校の改革のエッセンスすべてが凝縮しているのが、江川校長哲学教室である。by 本間勇人 私立学校研究家
 
 
 
というのも、前年度行っていた校長哲学教室は、すべて女子生徒だったが、今回からは男子も共に参加して行えるようになっているし、学びのスタイルは、PIL×PBLであるし、プログラム最後の振り返りで自分を語るときは英語で表現するからである。
 
また、学びの空間も、ICT環境が完備しているフューチャー・ルームで行われた。そもそも、この哲学教室そのものが、リベラルアーツの現代化なのである。なぜ現代化であるかというと、哲学教室というと、プラトンからカントくらいまでの哲学者の考え方が基礎になるのが一般的である。
 
 
(まずはアイスブレイク。共感的コミュニケーションの足場作り)
 
しかし、アサンプション国際の哲学教室は、現代思想や心理学、社会学など学際的だし、扱う素材もアンチ専門分野主義で、新しい知の地平、つまり要素還元主義から関係総体主義へというパラダイム転換を基礎とした21世紀型教育の哲学がベースである。
 
今回も素材は、「ルビンの壺」「ドーナツとマグカップ」「グローバルゴールズ」。これらが一体どんな関係にあるのか?なぜ「ルビンの壺」と「ドーナツとマグカップ」が「グローバルゴールズ」に関係するのか?
 
モヤ感あふれる出る分かち合いとなったが、江川校長とアルベール先生のファシリテーションとフィードバックで、生徒は、偏った見方や先入観から解放されるGrowth Mindsetがまず必要なのだということにだんだん気づいていくことになった。
 
 
ルビンの壺の絵を見て、壺に見えたり、波に見えたり、ベルに見えたり、二人の向き合っている顔に見えたり、いろいろでてきた。しかし、江川校長がどうしてそのように見えるのか問うことにより、何に注目するかによって、その時の気分や感情によって、違うとか、経験に照らし合わせて見えてくるが、その経験が人によって違うから、それぞれ違うのでは?とか多様なアイデアがでた。
 
哲学教室では、正解を出すのが目的ではないから、ルビンの壺の関係総体主義的な考え方については、説明することはない。それは、生徒自身が何かの局面で、はたと思いつくことだから、それでよいのだと江川校長。実際、今プログラムの途中で、生徒は気づくことになる。
 
ドーナツとマグカップについては、これ以外にどう考えればよいのかわからない、いったい何を問いかけているのかわからないと生徒たちは口々に語った。そこで、インターネットでNHKのアーカイブ「トポロジー」をいっしょに見ることにした。
 
 
見終えたとき、生徒たちの驚きの表情は想像するに難くないだろう。分かち合いスタイルなので、一人ひとり感じたこと気づいたことを順番に語っていくが、参加者全員が、ものの見方や考え方のコペルニクス的転回に到ったのは言うまでもない。
 
穴の数で、図形をカテゴライズするとは?硬い幾何学の世界に自分たちはいるが、柔らかい幾何学の世界もあるのかあ?と。しかも、このトポロジー的発想が、新物質を創るときに、すでに役に立っていたり、宇宙のカタチを考える時に役に立つなんてと、角度を変えてみると、先入観が崩れるという実感に、感動する生徒もいたし、どこかまやかしがあるのではとクリティカルシンキングを発動させる生徒もいたり、知と感情の合力が生まれていた。
 
 
そして、「ところで」と江川校長哲学教室のストーリーはいいよいよ「転」の局面に到った。「みなさんが学んでいるグローバルゴールズの中に男女の差別をなくそうというのがあるが、ジェンダーギャップが激しい例としてアフリカが話題にのぼることが多い。ジェンダーギャップについて、日本と比べるとどんな状態だろう、予想してみよう」と新しい問いが投げられた。
 
全体的にアフリカの方が日本より男女格差は激しいのではないかという仮説が多かった。中には、日本も項目によっては、低いかもしれないが、それでもまだ男女格差は改善されつつあるのではないかというのもあった。
 
そこで、世界ランキングンの一覧表が配布され、見てみると日本は111位ととても低かった。項目によって違うから、各国の状況の違いを無視できないが、それにしてもなんて自分たちは、もっと考え直さねばならない。憶測だけではなく、情報やデータを収集することの必要性を強く感じたと生徒は語っていた。
 
 
こうして、最終問題は、グローバルゴールズを達成するために、先入観から解放されなければならい具体的なケースにはどういうものがあるか、チームで議論して、まとめてほしいというものだった。
 
各チームがプレゼンを終えるたびに、教育社会学者でもあるアルベール先生は、生徒とクリティカルシンキングの対話を深めた。
 
たとえば、ジェンダーギャップと教育の質は関係ないと思っていたが、データを見ると関係があるように思える。教育の質を上げれば、よい仕事につけるから、男女の格差は縮小するのではないかと生徒がプレゼンすると、アルベール先生は、たしかにそれは正しいけれど、教育の質を上げて、よい仕事につけたとしても、インドのようにそういう人材がアメリカなどに移住すると、インド社会そのものは善くならないというようなパラドクスも起こる。さてどうするのだと。
 
 
生徒は、あっ、ルビンの壺だと。1つのことだけ見ていて、そのほかの関係性を考えていなかったと。もっと、視野を広くして考えてみなくてはと。
 
最後のリフレクションでは、日本語だとたくさん言えるのに、英語だと限られる、もっと英語を勉強しなくてはとなり、江川校長は、そう気づいたのなら頑張れるねと、クリエイティブコーチングも見事に果たしていた。
 
 
アルベール先生は、これが言語の世界が思考の限界。もどかしさが、Growth Mindsetを生む善き欲望ですねと私の方を向いて目で語っていた。あの微笑が印象深かった。
 
身近なものが、あるいは関係ないと思っていたものが、世界の痛みと強く関係する根本問題にいたり、そこから自分は何をすべきか、自分の才能を引き出し、キャラクターをデザインしていく生徒。アサンプション国際のミッションは今まさに実現しようとしている。
 
 

三田国際 最強のPBL

三田国際学園は、校名変更し、共学校化し、先鋭的21世紀型教育を断行して4年目がスタートした。3年間で中高の定員1200名をパーフェクトに満たす奇跡を起こしたが、その背景には、最強のPBL(Problem based Learning)型授業を教師全員で共有し、日々研鑽を積んでいく研修システムが構築されているからである。

そして、そのエグゼグティブリーダーは、間違いなく田中教頭である。田中先生の授業プログラムは、ちょっとやそっとでは真似できない優れた仕掛けが緻密に設計されている。おそらくただ見学していても、驚嘆、感動、感銘をうけるているうちに、肝心のデザインされた仕掛けを見抜くことを忘れてしまう。それほど、見る者を夢中にさせる魅力的授業である。by 本間 勇人

また、麻布や開成同様、一般には三田国際の授業は非公開だから、ますます田中教頭のPBLデザインは、神秘のベールに覆われ、それがかえって三田国際の授業の魅力を増幅させているのだ。

しかし、機会あって、今回見学することができた。名古屋出張だったが、またとない見学を逃すまいと、急いで戻ってきた。ぎりぎり間にあい、教室にはいると、なんと近代国家成立に影響を与えた3人の啓蒙思想家を学んでいるところだった。

たまたま、単元がそこだっただけなのだろうが、この帝国の時代から、近代合理性へのパラダイム転換の生みの親たちの授業を行っているところに立ち会えたとは、なんとも不思議な感じがした。というのも、三田国際は、この近代合理性の限界がもたらした、現在の世界問題を解決する新しい教育=先鋭的21世紀型教育を断行しているのだが、結局のところ、その根拠として啓蒙思想家の根源的な発想をどう超えるのかという議論を授業中に行っていたからである。

ここまで徹底して、いまなぜ自分たちは先鋭的な21世紀型教育という環境を選択して学んでいるのかを、近代の超克という歴史的パースペクティブの中で位置づけているのである。歴史の中の自分、パラダイム転換の旗手三田国際、新し社会を創る自分たち。生徒は、自分、学校、社会といった包括的座標軸的視座で学んでいるのだ。

歴史を捨象した独りよがりな自分探しとしての進路指導ではなく、歴史の中の自分を見定め、歴史を創る自分をイメージ化する作業が、三田国際の田中教頭のPBL授業なのである。

なるほど、教頭兼学習進路部長である。日々の学習とキャリアデザインの統括リーダーの意味が了解できた次第である。

近代合理性、特にカントとヘーゲルをどう乗り越えるかは、ハイデガーやガタリ、デリダなどの現代思想家が取り組んだ大問題のはずであるのにもかかわらず、生徒たちは軽やかに立ち臨んでいた。

カントやヘーゲル、ハイデガーを理解するには、啓蒙思想家の論理的仮説である「自然状態」をいかに分析し、脱構築するかにかかっている。そんなことは、教科書にも書いていないし、現代思想家もあまり語らない。しかし、カントはそれを物自体に置き換えたし、ヘーゲルは自然状態の弁証法的成長が行きつく究極の頂点「絶対精神」としてとらえたし、ハイデガーは現存在が気遣いから遠ざけてしまう「存在」に置き換えたし、そのような固定した見方をリゾームという新概念に置き換えたのがガタリである。そして、そのようなすべての設定を脱構築しよとしたのがデリダだった。

要するに何を言っているのかわからないのが現代思想であり、これが現代思想の限界。それをあっさり乗り越えてしまうのが田中教頭のPBL型授業なのだ。

生徒に、まずは個人ワークとして、自然状態に自分が置かれたら、どなると思うかという自分事から出発させる。知識の確認ではなく、知識が生まれる思考のプロセスを遡る。

そして、そのようなことになる「自然状態」がいかなるものか仮説を立ててみようということになる。チームで侃侃諤諤議論をして、プレゼン。この過程は極めてナチュラルでシームレスに展開していった。

生徒から、理性というのは自然状態にあるのかといったなかなかいい質問も、その議論の合間ににでてきた。すると田中先生は、帝国から近代にシフトするというのは、こんな感じだと語った。転んで足を痛めたときバチがあたったと言っていた時代から、転んだのは平衡感覚がとれなかったからだと言える時代に。生徒はドット笑った。理性と自然状態の関係を一瞬にして理解したのであるであるが、このメタファーで笑えるという知的レベルの高さに驚いた。

あるときは、クレヨンしんちゃんというのアニメをメタファーに国家成立について語ったりもする。遊びと学びのダイアローグが回転しているのが、田中教頭のPBLだ。PBLのスタイルの真似はできても、メタファーや問いの投げ方の奥義までは真似できない。

自然状態の定義を各チームごとにプレゼンしたあとに、すかさずリアリスティックアプローチ手法のリフレクションを投げかける。みんなの発想は、結局啓蒙思想家と近かったのではないか?ということは、君たちが今考えた過程は、啓蒙思想家とシンクロしていたんだよとフィードバック。

そのとき、はじめて生徒たちは、啓蒙思想家を乗り越える立ち位置にいることに気づいたのである。先人から知識を学ぶ方法を学ぶだけではなく、先人の限界の地平に立つことを学ぶ学び。青春時代に背伸びをすることぐらい内発的モチベーションが燃えることは他にない。これが田中教頭のPBL型授業の奥義である。

そんなことをやって東大や京大や一橋大の問題が解けるのか?と疑問にもたれたれた方は、およそそれらの大学の入試問題を研究したことがないといえよう。田中教頭の射程内に収まった骨太の啓蒙思想についての問題がまんま出題される。ご安心あれ。

富士見丘 SGHプログラム4年目に突入

富士見丘学園は、SGH(スーパーグローバルハイスクール)のプログラムを実施して、4年目を迎える。この間に、多くの輝かしい実績を積み上げてきたし、模擬国連部の活躍に代表されるようなSGH以外のグローバルな教育活動も広がった。

そしてまた、今年も新高1のSGHプログラムが、心優しくもパワフルに始まった。by 本間勇人 私立学校研究家

(昨年、釜石フィールドワークを通して「環境とライフスタイル」を探究した新高2生の新高1生に向けたガイダンスシーン。ユーモアもあり探求へのモチベーションを共有。)

 SGHプログラムは、高1では「サスティナビリティ基礎」という授業と「釜石フィールドワーク」を通して、持続可能な社会を創造するにはいかにしたら可能かを探究していく。高2になると、フィールドワークがシンガポール、マレーシア、台湾とグローバルな拠点に拡張する。慶応大学や上智大学などの高大連携プログラムも展開する。

したがって、高1時代に、調べるスキル、コミュニケーションスキル、論文編集スキル、インタビュースキル、プレゼンスキル、クリティカルシンキングなどアカデミックな探究の基礎を学ぶ必要がある。

(昨年の慶應義塾大学SFCの大川研究室との高大連携プログラム。スカイプで海外の高校生と協働企画について議論しているシーン。)

そのスキルを釜石フィールドワークを通して鍛えながら、その探究のまとめのレポートやプレゼンテーションが成果物となる。新高2生は、自分たちが学んできた内容やそこに到るまでのさまざまな苦労や気づきについて語り、SGHとは何かガイダンスを行った。

新高1生は、内進生と高校から入学してくる生徒が共存しているから、4月スタートしたばかりでのガイダンスは、どちらの生徒にとっても新しい探究活動を共に行っていくというというのはアイデンティティ形成にとっても大事な行事。

したがって、このようなガイダンスの集まりを仲間にエールをおくり、プライドと自信を共有する機会とするのも忘れないのが高1の学年主任の遠藤先生。スポーツや芸術活動で活躍している生徒の自己紹介の場を集会に瞬間的に織り込んだ。

自己紹介を終えて席についた生徒が周りの生徒とハイタッチしている雰囲気は、富士見丘学園が大切にしている心である「忠恕」という互いに尊重し、受け入れ、高め合う精神が浸透している証しでもあった。

こうして、また富士見丘のSGHの新たなステージは始まった。新高1生は、10月の釜石フィールドに向けて、サスティナビリティ基礎という授業で、知の準備を行っていく。

(昨年の高2のシンガポールフィールドワークを通してまとめあげた探究のプレゼンシーン。)

1年後、この新高1生が、様々な賞を受賞し、大学の教授陣が息をのむプレゼンを行うように成長しているだろう。このように、先輩が自分の経験値を後輩に伝えていく心優しい絆は、同時に毎年パワフルなグローバルな知を生んでいく。

それは富士見丘の教育自体を大きく変容させる力にもなろう。

工学院 いまなぜカリキィラムリフォメーションなのか?

今年4月、高1のオリエンーションから始まって、様々な新機軸の実行に専念している平方校長と、要所要所で、かなり対話する機会をいただいた。校長の想いをまとめてみたい。by 本間勇人 私立学校研究家
 
 
(中2-Dのクラスで。哲学に!問いの探究に!カリキュラムマネジメントに!それぞれがぞれぞれのミッションを胸に)
 
2020年大学入試改革。これは日本だけの特別な話ではない。世界同時的に起きていることである。その改革の実行にどの国が速く着手できるかどうか。そして、その改革は雑駁に言えば、教育改革なのだが、正確には、カリキィラムそのものの改革なのだ。
 
大学の学部や学科が、よしあしは別として、新しい科学や学問領域を開拓せざるを得ない。第4次産業革命に対応できる専門知としての科学や学問は、20世紀と同じであるはずがない。
 
 
(中2-Dのクラスは四方の壁がホワイとボード。クラス目標「一人一人の個性を大切にして平和で明るいクラスをつくろう」が描かれている壁ボードにさりげなく、それを方程式に変換した痕跡があった!これも変化を生み出す創造的思考力。)
 
そうなると、そこに接続する高校の教育も変わる。英語を重視したり、理数系を重視したり、授業時間数を調整したり、経験主義的なカリキュラムにするのか系統主義的なカリキュラムにするのかということなども重要であるが、今までのカリキィラムのようにスキルと能力、まして既成の知識の習得や活用程度の改革では、いかにカリキュラムのフォームや時間数を変えたところで、第4次産業革命社会に対応する新しい科学技術や学問の領域を探究する活動に接続できないのだ。
 
知識がいらないとか、スキルや能力を重視すればよいという程度では高校生はうまく大学に接続できない。それでできる大学は、第4次産業革命に対応できない。大学に合格しても、生徒の未来を先送りするだけなのだ。
 
 
(2017年京都大学医学部特色入試の問いを探究。問いの作り方が、生徒の学力構造にどう関係するのか議論。)
 
何が重要なのか?それは新たな知識を生み出すスキルや能力の習得であり、その大前提である、新しい知識を生み出すコンセプトメイクやグランドデザインを描くという意味での創造的思考力なのである。
 
しかしながら、この創造的思考力は、個性あふれる才能そのものがエンジンだから、スキルや能力のように誰もがある程度等しく習得できるシステムではうまくいかない。
 
創造的思考力は、生徒一人ひとり違う才能から出発する。絵画や音楽、哲学、政治経済、ダンス、演劇、プログラミング、エンジニアリング、学問的探究などなど興味と関心が実はその生徒の才能の萌芽である。
 
そこから創造的思考を稼働させることによって、新しい絵画の手法が生まれたり、新しい響きが奏でられたり、新しい政治経済社会のコンセプトが生み出されたり・・・ということになる。
 
 
(グローバル社会は、多言語社会。高1のハイブリッドインタナショナルクラスは、工学院大学新宿キャンパスで中国語を英語で学んでいる)
 
たしかに今はポストモダンイズムの時代であるが、まだまだパラダイムそのものがモダニズムにとって変わったわけではない。歴史が変わるというのは意匠が変わるだけではない。その背景にあるものの見方や価値観、つまりコンセプトやグランドデザインが変わるとき、はじめて変わったということになる。
 
そんなことが起こるのだろうか。可能なのだろうか。それは、一人ひとりが個性を創造物に変えようと集合天才の動きができてやっと変わる。
 
 
(新宿キャンパスでは、哲学と数学の授業も。オールイングリッシュの授業。)
 
なぜ変わらなくてはいけないのか?グローバルゴールズの設定を何も感じない人はいないだろう。自分が20世紀型社会を安心安全な地帯だと思っているうちは、そのゴールは達成されない。あまりに多様で深い世界の痛みはおさまることがない。
 
それでよいのか?それでよいと思う人もいるだろう。しかし、なんとかしなくてはならないという人もいる。その数が多ければ多いほど、時代の変化を望む意識や声は大きくなるだろう。
 
しかし、そのとき、そう思っている人々の中のほんの一握りの天才が世界の痛みを解消する方法を編み出したところで、元の木阿弥なのだ。
 
 
そういう想いを持った人々が、みな個々の才能を創造的思考を通して、新しいものや価値観を生み出す必要があるのだ。そのウネリが臨界点に到達したとき、音を立てて時代は変わるのである。
 
だから、知識、スキル、能力を育成するカリキュラムだけではなく、才能を育成するカリキュラムが必要になる。才能までは、今までは考えられてこなかった。では、それはいかにして可能か?そこに挑もうとしているのが、校長平方先生をはじめとする工学院の先生方なのだ。
 
工学院の先生方は、幾つもプロジェクトに分かれ、才能を生み出すカリキュラムを開発しているのだが、今までのように知識、スキル、能力をブラッシュアップするだけでは、新しいカリキュラムは生まれない。
 
したがって、コンセプトやグランドデザインを描く方法を学ぶプロジェクトが立ち上がっている。それは哲学や問いを探究することに等しい。だが、なぜこんなプロジェクトが必要なのだろう。
 
それは、今年の高1から新しいカリキュラムリフォメーションが起こっているからである。この改革によって、八王子キャンパスにおいても新宿キャンパスにおいても、大学の教員や外部講師とコラボするカリキュラムが驚くほど増える。
 
その場合、工学院大学や外部の講師と工学院中高の教師のチームティーチングになる。そのとき教師は講師とコンセプトやグランドデザインについて、いつも話し合い、共有し、振り返り、改善し、深めていく対話思考が必要だ。
 
それゆえ、知識、スキル、能力を伝授する教授方法以外に新たなコンセプトやグランドデザインの創り方を生みだそうとしている。
 
人はとかくそんな迂遠な方法より目先のことにとらわれてしまう。工学院の先生方も例外ではないが、重要なことは、その状況から脱皮しようと、工学院の先生方は日々学んでいる。
 
コンセプトやグランドデザインの創り方のような果てしない物語に耐える段階から楽しみ、そしてそれを実践していくようになる学びを新しいカリキュラムの試行錯誤を通して生徒と共に学んでいる。
 
学びは、外部世界と自分の精神と他者のつながりを好循環なものにしていくことだ。それには多様な才能の開花が必要となろう。既存の知識の体系だけでは、そのつながりは分断される。
 
未来は、いまここでその分断をぶち破り、新しいつながりを生み出していく創造的思考にかかっている。平方校長をはじめとする工学院の教師に期待がかかるのは、こういうわけである。
 

東京女子学園 教師と生徒が学ぶ組織

今年3月、東京女子学園は、今までプロジェクト単位で行ってきた学習する組織が、一転して全体に広がった。それは、iPadが教師全員に配られたからだ。今のところは、企業が作成したWeb ベースの学習システムの活用方法を日々研鑽しているが、クラウド上の教材やアーカイブうなどを活用し、テストもできるから、たんなる技術面の話ではなく、授業や面談のあり方も大変化することになる。by 本間勇人 私立学校研究家

何よりも5月から生徒全員が所有するようになる。すると、授業風景はあっという間に一変するだろう。そのシーンは、デジタル・ネイティブの子供のいる家庭はだいたい想像がつくだろう。そして、そうでないときの授業に比べてワクワクする気持ちを抑えられないだろう。

しかし、本当のおもしろさは、これからなのである。現状の学習システムは、スキルと能力の徹底した管理システムで、大学合格実績を大いに向上するのに役立つだろう。ところが、昨今共学化の波がおさまらない時代だ。それだけでは、女子校としては、共学校を突き抜けることができない。波に押し切られてしまう。

特に、日本社会は、先進諸国の中で、女子の社会進出は低く、ジェンダーギャップの格差もありすぎる酷い社会だと世界から観られている。グローバル社会にあって、何よりこの汚名を払拭しなければならないときに、それが唯一可能な女子校という拠点が消えていくのはなんとももったいない。

哲学の土台のある東京女子学園であればこそ、そこは極めて重要なミッションだ。

実は、東京女子学園は、この抑圧社会日本を幸せに導く教育のプログラムが潜在的にある。それは昨年、プロジェクトチームが中心となってつくった「地球思考コード」である。これは、東京女子学園が教育で行っていく思考力の広さと深さのチャートになっている。つまり、知識・スキル・能力のみならず1人ひとりの才能を開発する教養の幅を示唆している。

授業やテスト、面談は、このコードに紐づいて行われるのだが、昨年まではそれはすぐにできなかった。なぜなら、それにはICTによって、地球思考コードごとに成績推移が集計される必要があったからだ。

今回の教師も生徒もiPadを1人1台使えるようになったことで、このことが可能になる。もちろん、その開発には涙ぐましい研究と研鑽が必要だ。しかし、それは教師にとっても生徒にとっても未知との遭遇を意味する。まだ、どこの学校でもそれを行っていない。だからこそ、挑戦する価値があるのだ。

授業という「いまここ」での未知との遭遇。それは教師と生徒が共に学ぶ格好の場である。そして、その場は、日本社会の女性の生き方の希望の灯火となろう。それは、日本社会全体にとって善き知らせである。

工学院 前人未到の新教育イノベーション始まる

工学院大学附属中学校・高等学校は、前人未到の新教育イノベーションを開始した。戦後の学習指導要領の歴史は、J.デューイの経験主義教育とJ.S.ブルーナーの系統主義教育の両極の間を振り子のように行ったり来たりした。その過程でデューイの考え方やブルーナーの考え方は形骸化して、問題解決能力か知識暗記力かという浅薄な二元論に陥った。

21世紀型教育ビジョンを映し出している工学院は、どちらか一方を選択するのではなく、生徒の成長、生徒の生き方、生徒の変容、生徒の才能などに目配りした複合的な学びの理論やそれが育成される環境イノベーションを揃えてきた。by 本間勇人 私立学校研究家

(左から、奥津先生、岡部先生、松山先生、平方校長、島田先生、株式会社メイツ副社長伊藤氏)

新高1は、4月1週目、2泊3日のオリエンテーションを行ったが、その際のリフレクションは、タブレットやラップトップで入力、チェックボタンの項目は、瞬時に、スプレッドシートに書き込まれ、個人別、クラス別、男女別などの集計もまとまる。その段階でGrowth Mindsetの状態が、どうだったか先生方は共有できる。生徒と共に手ごたえを感じ、新高1の学園生活が始まったのである。

2週間後、上記写真のカリキュラムマネジメントチームが集まって、200字記述のデータ分析結果も掛け合わせて、生徒一人ひとりの状況やクラスの状況などをリフレクションをした。夏前にもう一度集計するから、生徒の変容など様々な特徴があらわれてくる。ふだん接している先生方のリアルな感覚と生徒が自己リフレクションしたときの感覚のマッチングを行うのだ。

このシステムは、今年一年行ってプロトタイプができるが、外部スタッフとのコラボレーションによってそれは可能になった。パッケージ商品を導入するのではなく、教師や生徒の実態に合わせて、リサーチ機能コンテンツをデザインし、分析システムをプログラミングしていく。教育コンテンツとエンジニアリングとデザイン思考。綿密かつ効率の良い会議システムの流れによって可能になる。

リアルスペースにおける会議は1時間と決め、その前後で、共有ファイルや共有議事録に書き込みながら、課題意識をシェアして立ち臨む。議論は、何を解決し、次にどう生かすか。さらに何を行うか。

カリキュラムマネジメントシステムとは、「思考コード」をベースに知のマネジメントをしていくことだが、その知を限りある時間の中で、生徒が最大限力を発揮できるようにする舞台裏の強力なサポートシステムこそが重要である。

この領域は外からなかなか見えない。授業という領域で、21世紀型教育の教育イノベーションは華やかに見えるが、それは氷山の一角。水面下にあるサポートシステムは複雑複合的。学習理論とカウンセリングマインド。データサイエンティスト的視点、そしてエンジニアリング頭脳。これらが効率よく循環するシステムが欠かせない。言うまでもなく、この部分は、今までの学校になかった新教育イノベーションである。

 

アサンプション国際と香里ヌヴェール学院 本機構に加盟

大阪カトリック2校であるアサンプション国際と香里ヌヴェール学院が、いよいよ21世紀型教育機構に加盟。両校は、昨年、21世紀型教育改革、共学校化を宣言し、PBL、イマージョン教育、ICT教育の研修を行ってきた。その過程で、カトリックの精神であり、国連のあらゆる宗教、民族、性別を超えた共通の理念でもあるman for othersというMFOマインドを共有し、世界の痛みを解決するグローバルシチズンシップというメンタルモデルをもった学習する組織が出来上がった。

そして、今春、その両校の協働改革は、小学校と高校の大人気という結果を導いた。もちろんこの改革は始まったばかりである。来春小学校、中学校、高校とすべてにおいて大反響を得るべく日々熱心に取り組んでいる。

そのインパクトはすでに、関西圏の教育に子どもたちの未来のための21世紀型教育改革をという大きなウネリを生み始めてもいる。

大阪カトリック2校の21世紀型教育改革のトータルリーダーは、聖パウロ学園の理事長であり、21世紀型教育機構の副理事長でもあり、何といっても、日本カトリック学校連盟会長である高橋博先生が辣腕をふるっている。

(高橋先生は、ご自身の学校である聖パウロ学園の21世紀型教育改革の研修のファシリテーターも行っている。)

アサンプション国際中学校・高等学校の校長は、江川昭夫先生。自ら英語の教師として、校長哲学対話をアルベール先生と実施。英語も使って生徒と対話する実践的改革を行っている。

香里ヌヴェール学院の改革リーダーは、石川一郎学院長。「2020年の大学入試問題(講談社現代新書)」「2020年からの教師問題{ベスト新書)」の執筆でも有名で、日本全国を飛び回って講演活動もされている。最先端の21世紀型教育を香里ヌヴェール学院の先生方と共に創っている。

21世紀型教育機構加盟校は、東京から埼玉、静岡、大阪へと全国に広がり始めた。この21世紀型教育改革を断行することは、子どもたちと共にいまここで未来を手に入れることを意味する。全国に広がること。それは希望が同時に拡大することである。

「2018年度 様変わりする中学入試を予想する」をテーマとするセミナーが開催(後編)

首都圏入試の熱も冷めやらぬ2017年2月19日(日)、「第1回新中学入試セミナー」が和洋九段女子中学校高等学校にて、21世紀型教育機構の主催で行われました。先進的な取り組みである21世紀型教育を推進する学校の先生方が中心となり、「2018年度 様変わりする中学入試を予想する」をテーマに実施。
 
各校で行われている21世紀型教育の実践内容やその教育に対応する資質を測る入試について、それぞれの立場から見た講演やパネルディスカッションなどを開催。私立中高一貫校の先生方をはじめ、多くの教育関係者や受験生親子が一堂に会しました。(教育見届け隊ライター/市村幸妙)
 
 
(左から、山下氏、大橋先生、平方先生、石川先生)
 
 
【第Ⅱ部】パネルディスカッション:未来を動かす私立中高一貫校そしてC1英語と革新的授業
 
第II部はパネルディスカッションです。
パネリストは、
・平方邦行先生(工学院大学附属中学校・高等学校校長)
・大橋清貫先生(三田国際学園学園長
・石川一郎先生(香里ヌヴェール学院学院長)
・山下 一氏(首都圏模試センター 取締役統括マネージャー)がコーディネーターとして進行します。
 
パネラーの紹介の後、まずは各校がなぜ先進的と言われる21世紀型教育を推進するのか、その理由やきっかけが語られます。
 
大橋先生は、中学入試自体の大きな変化を感じつつも、学校教育はどこへ向かうのか、21世紀型教育とは?と考え突き詰めていったということです。21世紀を生き抜かなければならない子どもたちに21世紀型教育を行うことで、従来型の教育と比べて最大の違いは、「生徒自身が自分で物事を考えることにより、学びを深める必要性に気づくこと」と言います。この自分で気付き、能動的に動きだす仕組みや仕掛けは学校によってさまざまですが、この21世紀型教育という挑戦は、保護者の要請にも応えることになり、結果的に学校の価値が上げることにも通じると実感を伴った感想を伝えてくれました。
 
 
さらに、三田国際学園で呼ばれている“Soul”とは、21世紀教育を推し進める覚悟や意思、続けていくことで生まれる成果を学校内、保護者、生徒が共通理解することを指しているそうです。
 
平方先生は、2002年に海外の学校での授業を視察した際に衝撃を受けたそう。以来、講義型の授業では得られなかった成果を考え、もっと双方向性型の授業を行わねば、と21世紀型教育を研究してきました。
 
工学院大学附属で21世紀型教育が本格的にスタートしたのは2013年。まず着手したのは、「思考コード」の作成です。ブルームのタキソノミーなどの研究や研修を通じ、議論を重ねることで同校ならではの「思考コード」を作り上げました。
 
この際に非常に重要なこととして、20代後半から40代前半の若い教員たちが“本気”で学校を変えようとすること、その意識を共有することが、学校改革最大の肝であり、そのための人事を行ったことも話されました。
 
石川先生はまず、「カトリック校で言うところの“Soul”は“隣人愛”や“MFO/Man for Others”といった精神です」と、ミッション校としての考え方を示します。
 
「今までは言われてことをやればいい教育だった」として、「今後の教育で求められることは、社会に出た時に自己実現だけでなく、他者のために何ができるかという視点を持つこと。そのために必要なのは、自分はどう貢献できるのかを考える授業をALやPBLなどで学んで身につけていくこと」と言います。
 
だからこそ教育のあり方を一から考えたそうです。「教育の手法が変わることが大切なのではなく、私学だからこそ、一度立ち返って本気に考えて、生徒をどう育てるか、世界へどう送り出すかを考えることが教育の原点」と力強く語ります。
 
山下氏からは「思考コード」や「ルーブリック」についての説明が行われます。まず三田国際学園では21世紀型教育を具体的にどう取り入れ、実践しているのが大橋先生により語られます。
 
「インタラクティブな授業を行うことで、生徒自身が思考することの大切さを理解し、同時に互いを尊重するような人格教育が進んでいます。ただしこの授業を続けることで問題になってくるのは、いわゆる定期試験です。従来通りの知識を問うだけの試験では意味がありません」
 
三田国際学園では、ルーブリックの考えを授業や評価に落とし込むことで、定期試験も授業を反映した問題を課しており、成績の評価軸も一貫させることで有効性を高めています。同時に、生徒へはどんな狙いで何を学ぶのかをあらかじめ提示しているそうです。
 
次に「なぜ思考コードが必要なのか」と水を向けられたのは平方先生。日本の教育界についてのインパクトを含め説きます。
 
世界はすでに、過去の経験を当てはめても解決できない諸問題が広がり、イノベーティブな行動を起こさなければ、現状維持すらできない時代へ突入しています。その中でOECD/PISAの学力調査結果によって、チャレンジする子どもが極端に少なかったこと、インプットはできてもアウトプットする能力がないことが露呈し、教育界自体が受けたショックの大きさを語った平方先生。
 
知識・論理型の思考力を養成している日本の教育の限界について、果たしてこれでいいのだろうかと語ります。今後子どもたちが、AI社会の中で生きていき、20年後に社会で活躍するため、「未来に備える教育を求めた結果、中高の教育の中で協働的な学びも重視しながら創造性を獲得できるような授業の仕組みを作りました。そのために指標となる『思考コード』が必要でした」と話します。
 
山下氏は「中学入試問題でも、知識を問うだけでなく子どもたちがもともと持っている思考力や発想力、想像力といった才能を見るものが増えています」と話します。さらに、首都圏模試センターとして学校取材を続けていくなかで感じた、この「思考コード」の明確な定義付けがなければ、先生方の共有認識にブレが出てしまい、子どもたちや先生たち自身への評価も曖昧になってしまうという危険性を問います。
 
さらに石川先生へは、「思考コード」における基本的思考について説明を求める山下氏。石川先生は上記の工学院大学附属で使われている例題に基づいて解説します。
 
 
 
「大学入試でありがちなA軸の知識を深めていくような問題は、採点しやすい客観的知識です。さらにB3では信長の功績とその影響をサマライズすることで大抵の問題は構成されていました。どうなっていくかわからない将来に備えるためにこれから問われていくのは、C軸の創造的な力です」と力説したのち、よくある誤解として「いきなり思いつけばいいのではない」ということを注意喚起します。
 
信長の行いを知った上で(A)内容を正しく理解して(B)、創造する(C)ことができることがベストと話します。「知識を正しく覚えることに専念していた日本の教育。信長のことを考える時(C)に、知識(A)としては大切です。知識はなければいけませんが、こと細かく知っているからといって、創造性には結びつくわけではありません」と平方先生から合いの手が入ります。
 
山下氏はこうした教育の流れを追いながら、変動している大学入試についても触れていきます。
 
「石川先生の言う通り、現状はA軸が問われており、2020年の大学入試改革によりB軸へと広がって、各大学での個別の出題ではC軸まで出してくることになるでしょう」と現在過渡期にある大学入試についての見解を語ります。
 
次の話題は英語教育について。私立中高一貫校で目指しているという「C1英語」とは何なのでしょうか。平方先生はこう応えます。
 
「“CEFR”での言語使用者のレベル(基礎段階=A、自立した=B、熟練した=C)についてはもうだいぶ馴染みがあるのではないでしょうか」。グローバル化を目指す日本で、世界の中で自分の考えや意見を表明するためにどんな能力が必要なのか、語学教育を行うにあたって、“熟練”を目指さない教育はどうなのかといった提言がされます。
 
工学院大学附属でも中学生の早い段階でC1に到達している生徒が何人もいるそうです。大切なのは、何をどう学ぶのか、授業の展開次第で生徒たちの熟練度は変わります。
 
さらには、大学進学を見越した際の検定試験とどう向き合っていくのか、その見極めが重要という大きな問題提起を進めながらも、引き続き熟練した言語使用者を充実した授業で育てていくことを宣言されました。
 
さらに大橋先生が続けます。
 
「社会で活躍できる資質や能力をつけるために三田国際学園で行っているのは、双方向性授業を通じたコミュニケーション能力、ICTを使って得た情報を精査できる能力などを組み合わせた“自分で思考する能力”の育成です」。そのために必要なのが、英語をツールとして考え表現する、C1英語なのだと言います。
 
受験生から非常に厚い支持を受けている三田国際学園。大橋先生は人気校の学園長として「次の一手は?」とよく聞かれるそうです。そこでもやはり必要なのは「C1英語、PBL、そのためのルーブリック」とし、「すべての基準は『考えること』。学校を上げてやっているのです」とぶれない姿勢を見せてくれました。
 
香里ヌヴェール学院では、様々な教科を英語で学ぶイマージョン教育を行っています。石川先生は、同校で行われているイマージョン教育についてこう話します。
 
「イマージョン教育で誤解されがちなのは、単に英語に触れる時間を増やしているというわけではないことです。大切なことは、自分の頭で考え、それを表現する教育を受けて育ってきたネイティブの教員と触れ合うことで、同時にその姿勢を学べるということ。こうした教育の中身に着目する保護者の方が増えてきており、だからこそ本校も注目を集めたのだと思います」と教えてくれました。
 
山下氏は、C1英語とアクティブラーニングの綿密なつながりを指摘します。三田国際学園では、先にもある通り、何よりも大切にしているのが「生徒自身が思考すること」です。
 
大橋先生は「そのために先生方は、生徒が思考するように仕向けたり、刺激を与えるトリガークエスチョンを考えに考え、投げかけます。生徒たちはそこから様々なことを互いに学び取り、考えをまとめ、プレゼンテーションします」と言います。
 
この授業は生徒たちにとっても、非常に負荷の大きいものでしょう。生徒たちは「集中する」という覚悟を持って授業に臨むそうです。なお、この考えたり議論する姿勢は生徒たちの中に着実に根付いてきており、自宅に帰って保護者と議論する生徒が増えているそうです。教育の成果に大橋先生はうれしそうに話してくれました。
 
平方先生はこの話を受けて「我々教員は、これまでの講義型授業のあり方を反省すべきだと思っています。ややもすると、生徒を静かにさせて、板書を写させるという授業でしたが、これで生徒たちが本当に集中しているのか、学べているのか。まったく異なる思考に囚われている生徒がいたかもしれません」と話します。
 
つまり、講義型の授業の中には抑圧と従順の関係もありえたと言い、それにより学校嫌いを生み出していた危険性にも言及。その関係性を解放し、授業を活性化するのが双方向型授業と教えてくれました。
 
また、自分自身で考えることも重要ですが、他人の意見を聞くことでさらに思考はもっと豊かなものになる、だからこそ協働的にPBLなどで学ぶのだとその重要性を伝えてくれました。
 
平方先生は「ただ、1時限の中ですべてPBLではありません。レクチャーすることもありますし、PILを取り入れることもあります。そのバランスで授業が行われています。その時に、思考することが絶対に必要になります」と話します。
 
アクティブラーニング型の授業に関して、先ほどの「思考コード」でいえば、どのレベルで行うのかを石川先生が説明してくれました。
 
「一番取り入れやすいのはAで、例えば信長がやったことを調べて発表する。Bはまとめる力がつくので、Aに比べればまだ良いけれど、どちらも教師が行えばいいものである」とバッサリ。
 
アクティブラーニングで大切なことは、「正解のない問いを考えること」であると言います。「自分の意見だけでなく、人の意見を聞くことに妙味があります。答えのない問いから、何人かで最適解を探していくことが将来に役立つ力をつける、アクティブラーニングを取り入れる最大の効果なのでしょう。
 
最後に、各校の今年の入試の総括と参加者へのメッセージをいただきました。三田国際学園では、年々入試の難度が上がっており、入試前に行った受験生へのアンケートでも併願校が確実に変わってきているとのことです。
 
大橋先生は「保護者の方の学校への大きな期待感を受け止めています。偏差値で学校を選んでいない、パラダイムシフトが起きていることにより、現在があります。子どもたちの将来を考え、こういう力をつけるために、何を行うのかを明確にしてきた結果だと思っています」と話します。
 
工学院大学附属では、2月1日の受験率の高さ(午前は100%、午後もほぼ100%)と入学辞退者が出ていないため、クラス数を増やさざるを得ないことがうれしい悲鳴です。これは保護者の意識の変化と、未来へ備える教育を訴え続けてきた結果と捉えています。平方先生は、この教育の過渡期だからこそ、私立学校は子どもたちの未来を考え発信していかなければと熱く語ってくれました。
 
香里ヌヴェール学院は、小・中・高の入試を行っています。受験生数は、中学校は横ばいでしたが、小学校と高校では、大きく倍率を伸ばしました。これは今後の社会を我がこととして捉えている保護者の意識や21世紀型教育への期待値を表したものといえるでしょう。
石川先生は「授業がすべてだと思っています」と話します。授業のさらなる改革をしていくことをここで誓いました。
 
 
【第Ⅲ部】展望
 
第Ⅲ部は、日本の21世紀型教育を牽引する先生方によるプレゼンテーションからスタートしました。登壇したのは、工学院大学附属中学校・高等学校教務主任の太田晃介先生と聖学院中学・高等学校で21教育企画部部長の児浦良裕先生です。テーマは「中学入試を転換させる思考力入試そしてSGT(スーパーグローバルティーチャー)」です。まずは各校で行われている「思考力セミナー」の動画発表から始まりました。
 
聖学院では、レゴブロックを使い表現する「思考力ものづくり入試」と、総合力で考える「思考力+計算力入試」を行っています。
 
この入試を始める際、まず「どんな生徒に育てたいのか」、「なぜ思考力入試を行うのか」を教職員研修で先生方も実際にレゴを使って考え、表現したのだとか。さらに生徒をタイプ別に成長段階を考えました。それぞれの個性を持った生徒たちを多角的に評価し、潜在的な資質や能力を大切に育むためです。
 
 
(左から、児浦先生、太田先生)
 
実際の入試では、創造的思考やクリティカルシンキング、さらに協働的思考を見るものとし、振り返りを重視していきました。気づけたことや自分ならどうできるかといった視点がポイントとなったようです。
 
なお、聖学院では受験生1人に着き、6人の先生方で思考段階をグレード別に分けて判定します。聖学院のメタルーブリック(工学院ではこれを思考コードと呼んでいます)に基づいた思考力入試用のルーブリックを作成しています。
 
児浦先生は、「条件設定を通して、自分だったらどうする?というところから、創造的思考力で“思考のジャンプ”を試みてほしいと思います」と言います。さらに、思考錯誤する力や粘り強く考える力な度も問われています。
 
 
工学院大学附属の「思考力入試」は、先に平方先生が示した「思考コード」に基づいて作られています。iPadなどを使ったICTによるもの、図書館を使い資料などを読み解くもの、レゴを用いて自分自身の考えを表現してみることといった思考力入試が行われています。
 
同校でもやはり思考力入試を行う意味・意義を考えた結果、直面した問題に対して正解がない場合、最適解を見つけたり、新しい答えを作る力の必要性を重視。太田先生は「思考をステップさせる経験を積むことで、思考力を磨くトレーニングができたら」と言います。授業も当然、これらの考え方がベースになっています。
 
 
工学院大学附属の「思考6ステップ」は以下の通りです。
 
みつける
あつめる
分析する
まとめる
つたえる
振り返る
 
入試の際の評価は、「質と量」、「項目と内容」「理由と具現化」、「要約」などに分かれており、小学生の男の子たちでも先生方が目を見張るようなカテゴライズや発想力を見せてくれるそうです。
 
「思考力テストはただのテストにあらず。プロジェクト(物事)を進めるフレームである」という、両校共通の思いを掲げ、まとめられました。
 
 
これらは、問題を発見することから様々な試行錯誤や段階を踏んだ思考などを経て、最終的に振り返るまでのプロセスがここに集約されており、これらは生徒が社会に出てから問われ続ける力を養成することです。
 
児浦先生は、生徒たちに「井の中のたわけもの、大海へ出よう!」と日々こう言っているそうです。生徒たちが社会に出た頃、変容した社会でも自分ありに理解して思考をジャンプさせられるようなタフな実行力と行動力と思考力を身につけさせたいと言います。
 
最後に、司会の平方先生から「SGT(スーパーグローバルティーチャー)という自覚」について突っ込まれた太田先生。「自分が“スーパー”というつもりはないけれど」と前置きした上で、「新しい教育を考え、実践し、踏み込んで外へ出るという意味で、SGTは目指しています」と熱く語ってくれました。
 
 
今後、21世紀型教育に基づく思考力を、学校教育や入試に具体的に取り入れたいと思っている方々の参考になったプレゼンテーションだったと言えるでしょう。
 
 
第Ⅲ部、そしてこの会をまとめとして締めくくるのは、順天中学校・順天高等学校校長の長塚篤夫先生です。テーマは「世界を変える21世紀型教育そして理軒館」です。
 
順天中学校・順天高等学校は、自然の摂理に基づいて真理を探究する「順天求合」を建学の精神としています。SGH認定校であり、21世紀型教育機構のメンバーである同校ですが、長塚先生の話は、
 
・世界は変わるのか
・入試は変わるのか
・教育は変わるのか
 
という3つの変化について、問いかける大胆な提言から始まりました。
 
「“世界は変わってきている”と言われてもまだ懐疑的な方もいらっしゃるでしょう。しかしその変化はもう始まっています」と、以下にその根拠を示し始める長塚先生。
 
大胆な提言について、世界は変化してきていることを肌で感じつつも、まだまだ懐疑的な方が多いのでは?と問いかけます。
 
例えば20世紀から21世紀で産業構造の変化により、衰退した職業について。あわせてAIの台頭により、子どもたちが社会に出る際の職業の変化など、現在叫ばれているさまざまな問題をその変化の片鱗として伝えます。
 
 
その一方で、長塚先生が驚いたこととして披露してくれたのは「AIは学ばない」というお話し。知識を蓄積したり、検索することはでき、それを組み合わせることは得意だけれど、あくまでそれは「学ぶこと」や「創造」とは一致しないと言います。
 
だからこそあらゆる産業でクリエイティブは必要であり、それがなければ職業も衰退してしまうと警鐘を鳴らします。日本ではまだ注目されていないですが、世界では、「クリエイティブクラス」という新しい産業構造がすでに生まれているのですと。日本でも、その新しい産業をマネジメントしていける力をつけるために21世紀型教育が必要なのだ、学び方も変えなければならないのだと力説します。
 
世界の中で将来を生き抜くために子どもたちに必要な力を洗い出した結果、現在の学習指導要領の改訂も合わせた大学入試改革では、日本の教育が世界基準に近づいて行っていることを長塚先生は評価されています。その世界基準の教育について、先生が感嘆しているのは、国際バカロレア(IB)の考え方です。
 
「IBの考え方で感動したのは、子どもたちに求めるだけではなく、教師や親に“探究すること”を求めている点です。さらに評価基準がしっかりと確立されていることは本当にすごい! そこまできちんと徹底するから世界基準になるのだと思います」と笑顔で話します。
 
さて、話を戻すと今回の学習指導要領の改訂においての注目点は、学ぶ内容だけでなく、学び方も変えていくということです。
 
「日本人はこれまで、学びに向かう意欲を培うことが一番苦手でした。しかし、この学習指導要領では、“探究”を繰り返すことで意欲を涵養するだけでなく、生徒自身が生き方や考え方を身につけ、確立できるものになるのでは」と話します。日本の教育が、これまでのようなコンテンツ(知識)ではなく、コンピテンシー(資質・能力)を育てるものへ変容する大転機であると言います。
 
大学入試や公教育は、これらの学習指導要領に則って展開されるでしょう。一方私学は、「建学の精神に基づいたルーブリックを各校が作り、教育を展開していくことで、私学らしい教育が可能であり、それぞれが個性を発揮できる存在となる」と話します。それがまた選択される存在になり得るのだろうと、長塚先生の話を聞いて思いました。
 
これらが、世界を担う子どもたちを育成すべく、21世紀教育に“本気”で取り組む私学の目指す方向性です。現在の教育過渡期において、思考すること、選択することなどは重要なキーワードです。今後もこれらの動向を見守り、見届けていきたいと思いました。
 
 
 

「2018年度 様変わりする中学入試を予想する」をテーマとするセミナーが開催(前編)

首都圏入試の熱も冷めやらぬ2017年2月19日(日)、「第1回新中学入試セミナー」が和洋九段女子中学校高等学校にて、21世紀型教育機構の主催で行われました。
先進的な取り組みである21世紀型教育を推進する学校の先生方が中心となり、「2018年度 様変わりする中学入試を予想する」をテーマに実施。
 
各校で行われている21世紀型教育の実践内容やその教育に対応する資質を測る入試について、それぞれの立場から見た講演やパネルディスカッションなどを開催。私立中高一貫校の先生方をはじめ、多くの教育関係者や受験生親子が一堂に会しました。(教育見届け隊ライター/市村幸妙)
 
 
 
 
今春2017年の中学入試で爆発的に実施校が増え、注目を集めた新入試――「思考力入試」や「英語入試」、「適性検査型入試」。
 
今回行われたこのセミナーでは、これらの新しい入試から2020年の大学入試改革の狙いを見定め、さらには日本と子どもたちの未来を支える21世紀型教育について実際に触れられ、理解できるものとなりました。参加した方々にとって、日々研鑽を重ねる先生方により行われている新しい教育の具体的な姿がより明確になったのではないでしょうか。
 
 
総合司会を務めたのは、工学院大学附属中学校・高等学校校長の平方邦行先生。
「従来通りの2科・4科入試に加えて、今年2017年度入試で激増した新しい入試、特に『思考力入試』や『英語入試』が、来年以降の教育界の変化を予感させるものなのではないか」と期待を寄せます。
 
2011年秋に発足した、この「21世紀型教育をつくる会」の経緯や概要について説明があり、さらに昨年9月12日に装いを新たに改組したことなどを報告。
 
「IBと同様のアクレディテーション機構として、各校が学校を上げて21世紀型教育に取り組むことを確認しました。欧米から受ける教育をなんとなくアレンジされたようなこれまでの日本の教育にくさびを打ちたいのです。日本の中から生み出された21世紀型教育を世界に発信したいという強い思いを持った団体です」と話す平方先生のことばに力が込められているのを感じました。
 
平方先生は、教育関係者に混ざって見受けられた受験生親子にもわかりやすいよう、講演の大切なポイントをまとめてくれました。
 
プログラムは「講演」、「パネルディスカッション」、「展望」の3部制で行われました。
第Ⅰ部の講演者は以下の3人の方々です。
 
【講演①】テーマ:2020年大学入試改革に影響を与える私立中高一貫校の教育
まず登壇したのは、21世紀型教育機構理事長であり、富士見丘中学校・高等学校理事長・校長の吉田晋先生です。
 
 
富士見丘は、SGH(スーパーグローバルハイスクール)として「サステイナビリティ=持続可能性」という観点などから、様々な社会問題を探究する課題解決学習に取り組んでいる学校です。
 
今回の講演では高大接続改革について、なぜ今行われる必要があるのか、社会構造から考える企業のあり方や大学選択、現状の受験生親子における中高選択の動機について、丁寧な解説が行われました。
 
同時に2020年を待たず今後の大学入試において、最大の目玉となっている英語入試と4技能の英語教育についての説明がなされました。文科省への提唱やさらには主体的に動くことのできない大学生の増加と、その原因・責任を高校に押し付ける大学の姿勢に対しても檄が飛びます。
 
だからこそ、この入試改革や高大接続改革には大きな意味を見出されています。「カリキュラムポリシー、ディプロマポリシー、アドミッションポリシーの3つのポリシーを大学が明確にしていくことで、受験生は大学名に捉われない、自分の将来や夢、目標に沿った大学選びが可能になります」と力強く語り、同時に「脱・偏差値」の考え方を提唱した吉田先生。
 
さらに富士見丘において「社会的グローバル人材として活躍できる教育を行っていきます」とより一層の教育の充実について宣言するのでした。
 
【講演②】テーマ:2017年中学入試分析と2018年の新展望
次に登場したのは、首都圏模試センター教育情報部長の北 一成氏です。主に新しいタイプの入試である「適性検査型(思考力)入試」と「英語入試」に焦点を当てた講演を行いました。
 
 
まずは今年2017年度入試の総括から。中学受験者数は、この4年間で少しずつですが上昇し続け、現在は首都圏では15%を超えていることが伝えられました。
 
なお、2月1日午前の実受験者数として発表されたのは3万7,201人。Web出願の増加により、一見受験者数は少ないように見えても実受験者数は増えていると北氏は指摘します。
 
注目すべきは、いわゆる従来型の2科・4科型入試の受験生数は減少傾向にあるということ。その減った人数を補っているのが、新聞やテレビ、ラジオなどでも話題になった「思考力入試」や「英語入試」といった新しい入試形態です。さらに、これらの入試の中でも形態は各校それぞれで、プレゼンテーション型や得意な科目を選択するタイプ、そして協働作業を行うものも出てきているということです。
 
 
来年度以降、これらの入試の導入を検討している学校が多いそうで、「来年以降もさらに増え続けるでしょう」と北氏は言います。
 
全体傾向としては、2020年の改革時期が不透明なため、大学付属校に人気が集まっています。またアクティブラーニングのメソッドが確立している学校は引き続き人気であることなどが、綿密なデータ収集や取材に基づき、具体的な注目校名と入試内容などが伝えられていきます。
 
そのなかには、この後のパネルディスカッションで登壇予定の大橋清貫先生が学園長を務める、三田国際学園の名前も上がります。
 
 
今春入試で125校が実施した「適性検査型(思考力)入試」について北氏は、「新しい入試は“希望の入試”です。これまで私立中学受験に関心を持たなかった保護者が私学へ目を向け、私学も豊かな資質と高い意識を持った生徒を迎えることができるためです。さらに、これらに関心を持つ保護者は、多くが大学入試の先を見据えている」と言います。
 
偏差値や大学合格実績などのデータに縛られず、我が子にあった学校選びを行い、私学も意欲のある子どもたちを受け入れる大きな機会となっていくのです。
 
【講演③】テーマ:21世紀型教育の果実そしてフューチャールーム
講演の部を締めくくるのは、21世紀型教育を今年度から本格的にスタートさせる和洋九段女子校長の中込 真先生です。今春の入試では、1897年に創立された伝統校が取り入れる21世紀型教育に受験生の期待が集まり、注目度の高い学校として人気が出ました。同校は今年生まれ変わり、歴史の1ページを新たに刻み始めます。
 
同校では、まずルーブリックで教育の指標となる示す方向性を探りました。最初は個人から始まって、その後に集団となり、最後は思考や発信力、対応力、通用する世界観も広がり深まりながら、世界へと広がっていくイメージなのだそう。
 
中込先生は「PBL(Problem based Learning)授業をすべての教科で取り入れ、自ら発信できる生徒を育成します。将来は社会に貢献できる女性に育ってほしいです」と笑顔で話します。
 
 
伝統校の和洋九段女子ですが、これまでの価値観も新たに位置づけし直し、時代に即した新たな息吹が吹き込まれました。
 
中込先生は、このルーブリックを整備したことによる良かったことの一つに、目指すべき道標があるため例えば学年ごとの研修旅行や文化祭などの学校行事でも「例年通り」ということばは使う必要がなくなったそうです。
 
また小グループにまとまりがちな女子の特色が、共感から協働へと、小さく育てて大きく飛躍させる学びの広がりのテコになることも改めて確認できるようになったということです。
 
学校としての大きな改革元年となった2017年、和洋九段女子はPBLとICTリテラシーを磨くこと、さらに充実した英語教育を掲げ、多様性を受容しながら飛躍する生徒たちを育てていきます。
 
 
なお、「フューチャールーム」とはPBLのための実験室のような視聴覚を中心とした教室です。同校を訪れた際にはぜひ覗いてみてください。
 
パワーポイントの画面をスマホなどで撮影する関係者や保護者が多数いたことは、現代らしい様相の会だったのでしょう。それらのエッセンスを惜しげもなく披露された講演者には今後とも発信を楽しみにしたいと思います。
 

 

 

聖徳学園 進化する「AL × ICT」

聖徳学園では、2015年以降、生徒全員がiPadを1台ずつ所持し、さらに全教室に電子黒板を設置するなど、ICTを本格的に取り入れていることで注目されています。その聖徳学園で、「アクティブ・ラーニングを実践するタブレット端末活用授業の開発研究-教科ごとのタブレット端末を活用した双方向型授業の開発研究―」と題した発表会が行われました。中1から高2まで様々な授業が行われていた中で、私は中学1年1組の英語基礎コース(宮林幸恵先生)、中学2年2組の歴史(涌島訓先生)、そして中学2年3組の国語(久保圭司先生)の授業を見学してきました。(高木美和:早稲田大学1年  21世紀型教育機構リサーチャー)

まず見学したのは中学2年生の国語です。今回の題材は「走れメロス」。どの学校でも取り扱う有名な作品ですが、ここで興味深かったのは、授業の進め方です。授業の最初に、「メロスの問題解決能力について30秒で発表できるようにまとめること」が目標として掲げられ、この目標に沿ってディスカッションやプレゼンテーション、そして評価という流れができていました。

 
久保先生は授業開始直後に3、4人のグループを編成し、今までで一番苦労した経験についてグループ内でディスカッションさせます。「走れメロス」の主題に関連するような経験を思い出させることで、授業内の対話が活発になっていくのが分かります。
グループの発表者として代表が選出されると、次にタイムキーパーなど、一人ひとりに違う役割が与えられました。そのことでグループ内の連帯感も生まれ、全員が積極的に授業に参加することに繋がっていくのです。
このグループワークに活用されていたのが、ロイロノートです。話し合った内容をその場で送信することができ、生徒と先生が考えを瞬時に共有するツールとして活用されていました。
そしてロイロノートは、もう一つ、評価の明確化という役割にも活用されていました。国語という科目は、何を学んだかわかりづらい教科だからこそ、目標を明確にしておくことが重要だと久保先生は授業の最後にお話されていました。ルーブルック評価の観点を配布することで、最初の目標がどの程度達成されたのかということが、最後に確認できるという構成になっていたのです。ICT機器が単に独立したツールとしてではなく、授業構成や授業の狙いをより効果的にする役目を果たしていることに気づかされました。
 
 
 
次に見学したのは、中学1年1組の英語基礎コースです。Alice and Humpty Dumptyを題材にして、グループワークが行われています。先生は各グループに大きい紙とポストイットを渡しており、大きい紙には穴埋め問題が、ポストイットには単語が書いてあります。生徒はグループで話し合いながら正解を導き、その結果をiPadで撮影して先生にロイロノートで送っていました。
結果を受けとった先生から、今度は生徒に解答が送られ、全員で答え合わせをします。先生はすべてのグループがそこまでできたことを確認してから今度はその文章を読んで録音するように指示しました。
さきほどの国語と同様に、このクラスでも生徒一人ひとりに役割が与えられていました。一人が英文を読んでいる間、別の生徒が録音しているといった様子を見ていて、発音まで記録できる点にICTの可能性を感じました。英語のクラスでは、ロイロノート以外に、Quizletなどのアプリも利用して発音やイメージを活用した単語力の補強を行っているようです。
ICTの活用により、生徒が楽しく授業に参加するだけでなく、反復練習することも楽しみながら行えるようになっています。また、先生の側からすれば、生徒一人一人の達成度が容易に確認できるという利点があります。
私自身、英語教師を目指す身として、とても参考になる授業でした。
 
 
 
最後に中学2年2組で行っていた歴史の授業を見学しました。歴史といえば先生が教壇に立って教科書に沿った内容を板書し、それを生徒がノートに書き写すというイメージです。とても静かな授業風景を想像しながら教室へ入ると、その先入観はまんまと覆されました。他のどの教科よりも生徒たちが活発に発言していたのです。5、6人のグループに分かれて話し合いがすでに始まっていて、覗いてみるとみんなiPad片手に教科書で何かを探しているようでした。
この授業の目標は「帝国主義とはなにか?条約改正はどのように達成されたのか?」という問いに答えることで、その目標は、いつでも生徒が確認できるように電子黒板に写されています。
ともすると先生が一方的に年号や主要人物を教える受け身の授業になりがちな歴史の授業ですが、ここではロイロノートを通して送られた何枚かの写真をヒントにして、人物の名前、なにをしたのか、その活動が他にどう影響したのか、といったことを歴史的な順序を並べ替えながら理解を深めるというグループワークになっていました。まるでパズルを一つ一つ組み立てるようで、生徒が主体的に取り組む学びがそこに展開されていました。今回は時間が足りなかったため行われませんでしたが、いつもは授業の最後にグループごとにたどり着いた結論を先生に送り、電子黒板上でそれを発表する場を設けるそうです。
最後は、先生お手製の小テストがClassiというアプリに送信され、生徒全員の知識の定着を確認するという授業構成になっていました。
 
 
今回見学した授業ではいずれもICTを活用することで、従来の授業ではかなわなかった学びが展開されていました。生徒たちは自分たちのペースに合わせてiPad内のファイルを行き来したり、先生は生徒から送られてきた課題を簡単に記録したりすることができます。また、グループワークの成果は生徒間で共有もできるため、授業外での学びにも有効です。歴史の授業でも見受けられたように自分で情報を探して処理する、情報処理能力を培う勉強もICTとアクティブ・ラーニングを組み合わせることで可能になりました。インターネットが普及し情報にあふれた現代で情報処理は絶対的に必要なスキルであり、それを生徒たちに指導するのは教師の役目ともいえます。つまり「ICT×アクティブ・ラーニング」は今後教育者にとって避けては通れない道であり、そして聖徳学園はそれをいち早く実践に移したと言えます。
これに加え、すべての授業に共通するものが3つありました。キーワードは「目標、時間、役割」です。先生は毎回必ず生徒たちに授業で達成すべき目標を明記することでなにをするべきか一目でわかるようにしていました。また、ディスカッションの時間やスピーチの時間などを決めてタイマーをセットすることで時間内に達成する集中力を鍛え、一人ひとりが役割を担うことで責任感を与えました。私はこれら3点が学校という場に限らず生きていく上で必ず必要な人間力につながるものだと感じました。企業に入るにしても海外で生活するにしても必要なスキルです。アクティブ・ラーニングの中で、主体性を伸ばし、知識の活用を図っていく上で、聖徳学園が行っている「ICT×アクティブ・ラーニング」の学びはとても有意義なものだと感じました。
 
 

 

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