ICT

桜丘 ICTオープンスクール 未来に翔く(1)

7月17日、桜丘でICTオープンスクールが開催された。教育関係者や全国から集まった学校の先生など、総勢200名近くの見学者で賑わった。ICT先進校の地位を確立した桜丘にとって、iPadを使った授業はすでに日常の風景となっている。ICTリテラシーを自然に身につけながら、未来を切り開く創造性を発揮する生徒の様子を取材した。 by 鈴木裕之:海外帰国生教育研究家

1時限から3時限まで、それぞれの時間帯で10教室を超える会場で授業やプレゼンが行われ、見学者はそれぞれ見たいイベントへと向かう。iPadを使った授業を実際に生徒が受けている教室だけでなく、これまでICTを活用してきた部活やホームルームの実践報告、またロイロノートなどのシステム面の説明をしてくれる教室など、まさにICTオープンスクールという名の通り、ICTに関するすべてのノウハウをオープンにしていこうという桜丘の意気込みが感じられる。

授業をしている教室を覗いて驚いたのは、昨年取材で授業を見学した時に比べ、先生も生徒もipadを格段にうまく使いこなしていることであった。

オープンスクールというイベントのためだから特別に使っているのではなく、ふだんからiPadを100%活用していることは一目瞭然。何しろ手際がよいのだ。

リーディング教材を映しだしたかと思うと、英単語のフラッシュカードに切り替えたりするなど、黒板に書きこんでいてはとてもできないスピード感のある解説が行われる一方で、生徒の方は、時にはリサーチのツールとして、時には書き込みのノートとしてiPadを活用している。

リサーチツールとしてのiPadの可能性もさることながら、ノートとしてのiPad利用も大きな可能性を秘めている。

化学の授業では、生徒たちがスタイラスペンや自分の指を器用に使ってiPadに解答を書き込んでいた。

その解答を先生が自分のiPadに集め、ホワイトボードに映し出しながらチェックする。

化学式では、書かれる数字の大小がその式の意味を変えてしまうので、生徒の手書き答案を先生がチェックする。一人一人のノートを見回るより、一度に生徒全員が共有できるので効率的である。

「生徒が答えをiPadに書き込み、その画像を先生に送信、先生がそれを集め、特定の生徒の解答を映し出す」ー 書いてしまうと何ということもないようなことであるが、これを実際にさらりとやってしまうことのできる環境が用意されている学校はそう多くはないはずである。iPadが全員に配られるだけでは十分ではない。桜丘のICT教育に威力を発揮しているもう一つの秘密がロイロノートである。このアプリを利用していることで、iPad同士のコミュニケーション、あるいはコラボレーションが非常にやりやすくなっているのだ。

基本的な環境を設定したら、あとは先生や生徒にその利用は任せる。これが桜丘のICTを推進する品田副校長先生の基本方針である。ロイロノートを多用する先生もいれば、その他のアプリを使う先生もいる。そのバリエーションの豊かさが、生徒のICTリテラシーを高めることに寄与している。次の記事では、そのバリエーションについて触れてみたい。

 

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桜丘 iPadが学校にやってくる

7月15日、桜丘中学・高等学校で、<iPadが学校に来ると教職員と生徒はどうなるのか>というテーマで、学校公開イベントが開催された。iPad導入を果たした桜丘を一つの事例として公開することで、他校の教職員や一般企業の方々とともにICT教育のあり方を考えていこうという意欲的な試みである。学校生活での様々な側面でiPadが浸透しつつある様子を取材した。  by 松本実沙音 (TES社リサーチャー:東京大学文科二類)

 
桜丘中学・高等学校では、今年度の5月より中学校一年生及び高校一年生の生徒全員に iPadを配布した。専任の教職員には、昨年度の5月からiPadが導入されており、ホームルームや授業で実際に使われている。教職員の方々は、iPadの活用方法は生徒たちと一緒になって模索していったと話していた。iPadを導入する目的や使用方法などを最初から限定するのではなく、「まずはやってみる」「iPadそのものに触れながら活用方法を考えていく」という姿勢で、生徒と教職員が手を携えてきたのだ。
 
ホームルームで生徒は iPadをどのように使用しているのか、あるクラス担任の先生が話してくださった。
例えば、MC(桜丘では、日直当番の人のことをMCと呼ぶ)は、連絡事項をクラスへと伝達する際、連絡掲示板の写真を iPadで撮り、それを読み上げる。今までなら、連絡掲示板の内容をわざわざメモに書き込まなければなかったのが、iPadのおかげで時間短縮につながっている。 更に、その写真をリマインダーとして、他の生徒のiPadへと送ることもできる。「全員が iPadを持っている」ことの強みは「共有」できることにあるだろう。
また、プリント管理をiPad上で行うことができるため、紙のプリントを忘れてしまっても、友達のiPadからデータを送ってもらい、アプリケーションを用いてそれに書き込むこともできる。
このように、iPadは生徒達にとって、作業の効率化をはかるツールとしてまずは機能している。
 
先生のお話で印象的だったのは、iPad同士をつなぐネットワーク上のシステムを用いて、授業のプリント配布・連絡事項の伝達・アンケート・小テストなどが行えるようになったという利便性に加えて、そのことがクラスのコミュニケーションの質を変えたという点である。
体育祭でクラスのオリジナルTシャツをデザインするというイベントでのこと。従来は、デザインが決まると係の者と担任とT シャツプリント業者の間での作業となってしまい、「クラスでTシャツをつくっている」という風に認識できなかった。しかし、iPadとネットワークを利用することで、作業の進捗状況をデータ化して報告したり、Tシャツの色デザインのサンプル画像をアップロードして人気投票を行ったりすることが可能になったという。
個々のメンバーが「クラス」という全体を強く意識し、コミュニティへの帰属意識を強くしたのではないかとお話されていた。連絡事項の伝達の速さ・正確さも格段に向上したとのことだ。
 
 
中学一年生の英語の模擬授業では、Quizletを用いた授業を見学させて頂いた。Quizletとは、「単語カード」を作成・共有・テストできるネット上のサービスのことである。単語カードの表に日本語が書いてあり、クリックするとそれがめくれて、裏に書いてある英単語が現れる仕組みである。単語カードの内容でMatchingゲームやテストを行うこともでき、生徒たちは自分の好きな方法で学習が進められるのだ。
このQuizlet、実は私が暮らしていたオーストラリアの私立高校でもよく使っていた。私の場合、選択授業の中国語のクラスでこれを利用した。中国語の単語を暗記するのに、ノートに単語を一つ一つ書き写すよりも遥かに効率が良いので、Quizletばかり使って勉強していた記憶がある。そんなことを懐かしく思い出しながら、iPadを利用するということが、世界中の教育リソース、学習コンテンツを利用する可能性に開かれることを意味するのだと改めて認識させられた。 
 
高校生の模擬授業は、数学と科学を見学させて頂いた。どちらの授業でも、ホワイトボ ードに先生のiPadの画面が映し出され、それにホワイトボードマーカーで書き込んだりして授業を進めていた。生徒達もそれぞれのiPadを机の上に置き、授業を受けていた。生 徒たちには授業の前日またはそれ以前から、データとしてプリントがすでに行き渡ってい るので、アプリケーションを使用してそれにメモを取ることが可能だ。しかし、興味深かったのは、生徒達がiPadとノートの両方を同時に使っていたことだ。どうやら、授業で使 っているプリントも紙媒体でも配られているようである。それを、例えば途中式が多い数 学の問題を解く際にはノートを使う、といった形で、使い分けているのだ。
 
最後の 質疑応答の時間に、「iPadとノートの使い分けはどのように決まっているのか」という質問があった。それに対する答えは、「授業を行う先生が基本的なルールを決めるのだが、 高校生に対しては、基本的には自分の使いやすい方を自分で選択させるようにしている」ということだ。iPadで全てのプリントを管理したい場合はそれで良いし、プリントに手書きで書き込みたい場合はそれで良いとのことである。紙媒体のプリントも、書き込み終えた後に写真を撮ってしまえば、再度データとしてiPadで管理できるので、紛失した場合も対応できるからだ。
このように、iPadを全面的に導入したからといって、紙媒体を使った勉強・授業の形がなくなるわけではない。むしろ、iPad上か紙媒体か、選択する機会が与えられたことで、より自分にあった勉強方法を見つけ出すきっかけを生徒たちに与えている。更に、全員がiPadを所 有しており、ネットワーク上で全員と繋がることができるからこそ、コミュニティとして の結束が固くなる効果もある。情報の伝達のスピード・正確さが増したことによって、あらゆる作業が効率化され、無駄を省くことが可能になった。
 
今回の学校公開では、「とりあえずやってみる」ことの大切さと、iPadという一見高度なテ クノロジーを持つものに挑戦する際の姿勢のお手本を見ることができた。1年間の試行錯誤の上、教職員方と生徒達が一緒になって見つけ出したiPadの活用方法は、これ からも更に新たな発見を経て、進化していくはずである。 

桜丘 未来への翼とコンパス(3)

数学のクラスを覗いてみる。ここでもiPadを使った授業が行われていた。

この教室でも先生の笑顔と元気な声が印象的だ。一人一人に渡されたiPadからは楽しげな電子音が鳴り、子どもたちは教科書を読むように、あるいはノートに何かを書き込むようにiPadを使いこなしている。

説明会で強調された「教育環境」というのは、やはりこういうことだったのだ。iPadは意識されない道具=環境となり、学習者が主体となる。

そこでシェアされる体験は教科内の知識に留まらない。

楽器の鳴らし方や指使いも。そして、スイングや捕球の仕方も。

知識は獲得の対象としてあるのではない。その場に参加した者がシェアし、いつでも参照できるものとして開かれているのである。

そう考えると部活動も授業も同じ時限で行われている意味も分かってくる。何を学ぶかということだけが大切なのではない。誰とどんなふうに学んでいくのか、その教育環境全体に目を向けるのが桜丘の21世紀型教育の神髄であろう。

桜丘 未来への翼とコンパス(2)

体育館での説明会が募集要項の話になるところで、子どもたちは授業・クラブ体験に移動。この日は全部で16の体験イベントが行われた。期待と緊張が入り交じった面持ちで子どもたちはお目当てのイベントへと向かった

「世界の食卓」というタイトルに誘われて、社会科のクラスにふらりと入ってみた。先生がにこやかに迎えてくれ、子どもたちもリラックスしているのが一目で分かる。

机に置かれているシートに自分の好きな食べ物を記入し、自己紹介をする。先生、先輩そして受験生と続いた。

自己紹介が一通り済むと、在校生と受験生それぞれにiPadが渡される。先生の指示に従ってアイコンを操作すると、そこには1枚の写真。写っているのはどこかの国の食卓だ。

チームで打ち合わせを行う。先輩が気づいたことをパートナーである受験生に相談。自分の知っている料理や素材を見つけては、どこの国のものかを検討する。

授業の始まりからわずか15分程の間であったが、21世紀型授業が展開されていることはすぐに分かった。机の配置。先生の立ち位置。そして「I DO YOU WATCH」「I DO YOU HELP」から「YOU DO I HELP」「YOU DO I WATCH」に至る、学習者を中心とした授業展開。さらに、生徒が知らない知識を授けるのではなく、生徒が知っている知識を利用して授業を展開する手法。このような授業の達人が何も偉ぶることなくそこに居るということに感動すら覚える。

この後チーム対抗戦が行われ、自分たちの判断の前提となった知識や推論の検証がなされた。体育館での募集要項の説明が終わり、保護者も体験イベントに合流する。

チーム対抗戦といっても、勝敗を競うわけではもちろんない。笑いと好奇心に包まれた雰囲気はそのままだ。ここではiPadはノートや教科書と同じ一つの道具、あるいは環境の一部である。

先生も在校生も子どもも親も、「主体的に学ぶ教育環境」をシェアしているのである。

 

桜丘 未来への翼とコンパス(1)

6月22日に行われた桜丘の中学校説明会は、あいにくの雨模様での開催であったにもかかわらず、来場者は体育館に用意された座席を埋め尽くすほど盛況であった。そしてそこで提示された中身も21世紀型教育が浸透しつつあることを印象づける新しい試みに満ち溢れたものであった。 by 鈴木裕之:海外帰国生教育研究家

説明会の司会を務めたのは「キャンパス・ナビゲーター」と呼ばれる在校生。大勢の保護者を前に、堂々と開催の宣言をした。続いて音楽が流れ出し、バトン部のパフォーマンスが始まった。

正直、桜丘の説明会の始まりの意外性にまずは驚かされた。説明会といえば理念や教育方針の説明から始まって・・・という先入観を抱いていたわけだ。しかし、パフォーマンスを見ているうちに、学校を語るのは先生だけではなく、生徒も語るべきだし、生徒が自分たちの活動を披露する説明会があっても当然であるという気分になってきた。桜丘の学校説明会は、授業体験・クラブ体験をセットにした学校全体を体感するイベントなのである。

ほどなくパフォーマンスが終了し、校長の平先生の説明が始まった。

平校長は、写真をふんだんに利用したスライドを使い、イメージに訴えかけるようなスタイルで桜丘の教育についてプレゼンテーションを行った。

今年から入学した生徒全員に配られることになった iPad も早速自らが使っている姿を披露する。教職員にはすでに1年前に配布され、授業に活用するための準備期間となっていたとのことだ。

iPadを学びのツールとしながらも、桜丘ではICTのハード面だけを重視しているわけではない。仲間とのコラボレーション、コミュニケーションを成立させるための学び合いの教育環境を成立させるという前提があり、そのためにICTを利用するというスタンスなのである。

副校長の品田先生は、動画を挟み込みながら、21世紀型スキルの重要性についてTEDさながらのプレゼンを行った。

品田先生のプレゼンにおいても教育環境の重要性が語られた。桜丘において教育環境とは、施設などのハード面だけではなく、生徒が自立して能動的に学習できるようになるためのすべての条件を指している。

もちろんiPadもそのような教育環境の一つだ。iPadは、私たちを取り巻くデジタルネットワーク社会の象徴である。21世紀に必要な教養は「翼」に、そして未来を切り開く判断力は「コンパス」に。桜丘ではビジュアルや象徴を用いながら、生徒に未来への鳥瞰的な視点を授けているのである。

文化学園大学杉並 知性×感性のスパイラル(3)

全国でも珍しいなぎなた部が練習する道場を覗いてみた。

練習中の部員の一人がさっと案内に立ち、写真を見せて説明を始めてくれた。なぎなた部は、コシノジュンコ氏主催のファッションショーとのコラボをするなど、戦闘技術としてだけではなく、精神的な修養を目指しているのだ。ファッションショーが精神的な修養につながるというのは戸惑いを感じるかもしれないが、顧問の佐藤智尚先生によれば、こういうコラボを実際に行い、世界一流の人や企業に接すると共通するものに気づくのだという。それは「隙がない」ことだと。もちろんここで言う「隙」というのは、気の弛みとでもいう意味である。この隙のなさこそがなぎなたにおける修養、不如意を破ること(すなわち如意)に通じるという。

佐藤先生は、満面の笑みで楽しそうに説明を続ける。剣術における「理合」の考えや、文武両道の本来の意味についてなど。

お話を伺っているうちに、文杉の「グローバル」が日本的な伝統にしっかりと根ざしたものであることを確信した。世界から注目を集めるファッションリーダーのコシノジュンコにせよ、あるいは武士道の精神を英語で伝えた新渡戸稲造にせよ、グローバルな人材は、世界につながろうとする精神と日本的な感性を両立させている。

 

文化学園大学杉並で始まるダブルディプロマへの取り組みは、単に海外の基準を日本に持ち込むということにとどまらず、日本のスタンダードを世界に知らしめる大いなる挑戦にもなり得るのである。

文化学園大学杉並 知性×感性のスパイラル(2)

2時限目の実技教科、そして3時限目の部活動、と時間をかけて体験するにつれて、文杉の「知性」と「感性」が磨かれるプロセスが徐々に明らかになってきた。

家庭科のお菓子作りやビーズを使った裁縫、美術の絞り染め、茶道、書道といった授業を見学して気づくのは、いずれの授業でも何かを教え込もうというよりは、一緒にいる時間を楽しもうとしていることだ。そこでは、先生そして在校生が奉仕する者として存在している。解説や説明・指示・確認を行う教師はいない。代わりに、何かを作り上げるために協力していく仲間(=奉仕者)がそこにいるのである。

お菓子作りをしている教室では、お菓子を焼いている間、在校生と受験生がこんな会話をしていた。「好きな芸能人っている?」「志村けんとかかな」「えっ。そうなんだー。お笑いが好きなんて意外だね…」

何気ない会話に、文杉らしさが満ちあふれている。フラットな関係と形容するのもはばかられる(つまりフラットであることをすら強要しない)ほど自然な人間の関係。相手がお客様だからとか、自分は先輩だからなどといった、気負うところがまったくない。お菓子を焼いたり、ビーズで模様を作ったりすることを心から楽しんでいる。そして、在校生は材料を持ってきたり、次に必要なことを準備する。先生は必要なくなったお皿を洗ったり後片付けをせっせと済ます。

各自がそれぞれの役目を当然のように果たしながら、みんなで楽しむのである。狭い意味での知性にこだわっていては決してたどり着けない境地だろう。

人に楽しんでもらうことが自分の楽しみでもあるという環境。

ここに文杉が楽しく笑顔でいられる秘訣がある。

文化学園大学杉並 知性×感性のスパイラル(1)

文化学園大学杉並の教育の質は、全国にその名を轟かせるファッション・ショーや、文化部・運動部の全国大会レベルの活躍に表れている。「感動」をキーワードに、狭い意味での知性にとどまらず、身体的・運動的な能力、あるいは空間デザインにまつわる感性をも磨く文杉の21世紀型教育は、2015年度に開設を予定されているダブルディプロマ取得のコースによって、桁外れの卓越性を発揮することになりそうだ。オープンスクールでの様子からその一端をお伝えする。 by 鈴木裕之:海外帰国生教育研究家

文杉のオープンスクールは、実際の学校生活をシミュレートする形態で進められた。ホームルームの時間は学校説明会、1時限目は5教科授業の体験、2時限目は実技教科の授業体験、さらに3時限目が部活動体験という構成になっていて、文杉で育まれる知性や感性の広がりが時間割上に表現されている。多様な活動の場を通して一人一人の個性が発揮される環境なのである。

 
ホームルーム(=全体説明会)は、校長の松谷茂先生の話でスタート。文杉の目指す「感動の教育」と新しい取り組みについて触れられた。
文杉では今年度からグローバルコースの生徒全員がタブレット端末を持ち、校内は無線LANでつながっている。また、全教室に電子黒板を導入するなど、ICTが充実。
さらに、来年度からスタートするダブルディプロマ取得を目指すコースでは、高校生を対象に数学や理科などの教科もオールイングリッシュで授業が進められる。カナダでの5週間のホームステイを除き、ほとんど日本にいながらにして、カナダの高校卒業資格と日本の高校卒業資格の両方を手にすることができるようになる画期的なプログラムである。
こういった新しい取り組みを説明する一方で松谷校長先生は、日本語で身につける教養の重要性についても強調した。特に中学生時代を日本語によって感性を磨く時期として位置づけ、自立した女性を育成するという女子教育の基本を語った。価値あるものに取り組み「感動のスパイラル」を生み出す精神は変わらない。
 
ホームルームに続いて1時限目は5教科の授業体験。国語・数学・社会・理科・英語からどれか一つを選択して受講する。
理科では、まずは喉を潤しましょうとサイダーが配られ、その後、今飲んだサイダーの炭酸はどんな気体なのかを確かめる実験が行われた。
最初は緊張気味だった受験生も、在校生の優しいサポートでだんだん打ち解けてくる。
 
 
あらゆる場面で、先生と在校生の信頼関係が分かる。授業中に先生がボケ役で、生徒がツッコミ役をするなどというのも、普段から良好なコミュニケーションが行われている証である。
 

英語の授業では、ハワイに旅行に行くという設定で、両替をしたり飛行機の機内で映画を見たりという状況をシミュレーション。その中で触れる英語表現について学習するという仕掛けであった。

オープンスクールだから特別な授業をしているわけではない。文杉のでは常にこういった工夫を授業に取り入れることになっているのだ。

「わかる授業の徹底」−先生方の努力が生徒にも伝わるので信頼関係が構築されていくのである。

 

聖徳学園 Global Issuesに立ち臨むリーダー育成(2)

高2で化けるリーダーシップ

3学期も終わろうとしているこの時期、中3の英語の授業では、基礎力、理解力、構造把握力をトレーニングし、“Global Issues”をテーマに学びを広げていた。つまり、生徒たちは、適用・応用段階まで登っていた。それが、高2になると、世界の問題を分析し、そこに自分の価値観と照らし合わせて、解決方法を選択判断するという、統合力にまでジャンプしていた。

高2の山田先生の英語の授業は、ディベートの準備段階だった。論題は「ホームレスに金銭的支援はするべきか」。まさに、小野先生の連邦プログラムの問題と通底する“Global Issues”である。

たしかに、具体的事例や事象は違うが、貧困をどのような公共政策において解決していくか、重要なディシジョンメイキングの段に立たされる問い。なるほど、伊藤校長や小林先生が、自分の判断をどうやって世界の普遍的な問題につなげられるか、グローバルスタンダードの葛藤問題を解決できるのか、そこに挑めるリーダーを育成したいという想いが、山田先生の授業の中にしっかり埋め込まれているではないか。

その日聖徳学園で行われた21会(21世紀型教育を創る会)の定例会の冒頭で、伊藤校長はこう挨拶された。

「21会校15校の中で、今回SGH申請にチャンレンジした学校は7校。これは21会のコンセプトやビジョンを体現している出来事だと思います。本校も挑戦してみて、自分たちのやってきた教育をきっちり棚卸し、振りかえることができました。

同時に次なるステージがはっきりみえたわけです。それは先生方とも同じ想いだと思いますが、日本という国のローカルルールを世界に押し付けるリーダーを育成するのではなく、普遍的なルールを世界の人々と対話し、いっしょに創造しながら、磨き上げていけるリーダーを育成することだと思います。いっしょに突き進みましょう」と。

そして、山田先生は、そのようなグローバルリーダーを育成するコアの心性や能力を、英語の授業の中で展開していたのである。プロジェクト型学習(PBL)は、たんに効果的学びのスタイルだというわけではない。

「いろいろな価値観や多様なものの見方を出し合えるし、それをある程度整理するために、分類やマッピングなど最適な方法を創意工夫できます。しかし、同時にこの作業自体が、すでにディベート思考のモデルになっています」と。

つまり、方法論を学ぶことが精神的にも考える点においても内生的成長を促す多重構造としてプログラムされている。

また、いろいろな場面で「選択判断」にせまる。もちろん論題に対して、肯定か否定か、そしてその理由は何かなど対話して、電子黒板で整理していくのであるが、生徒がプレゼンする時、英語を活用するのか日本語を活用するのかまで選ばせる。

ローカルルールから脱却するには、選択の意思決定という、自己決定が重要である。そして、それは自己責任のみならず、他者への責任を引き受けることでもある。山田先生の授業で議論する生徒の姿は、そのまま国際会議で活躍する姿に重なった。

 

 

聖徳学園 Global Issuesに立ち臨むリーダー育成(1)

聖徳学園には、スーパー・イングリッシュ・ランゲージ・ハイスクール指定校だったり、東京私立中学高等学校協会研究協力校として、「平成25年度ICT公開授業研究会」を実施してきたり、国際教育とイノベーション教育の実績がある。

多様な海外研修のプログラムも豊富であり、「個性、創造性、国際性」を育成し「聖徳太子の精神」を大切にしてきたのである。その築き上げてきた土台の上に、今回スーパーグローバルハイスクールの申請を行い、国際的な問題を解決するアクションを起こす新しいグローバルリーダー育成に挑んでいる。

今回、第16回21会定例会の会場になったに、6時間目の授業を見学する機会を得た。ふだんの授業の中に、しっかり新しいリーダー像を描くプログラムが埋め込まれていた。by 本間勇人:私立学校研究家

小野先生の中3の英語の授業では、そのものずばり“Global Issues”をテーマにしたプロジェクト型学習が行われていた。米国の「補助的栄養支援プログラム(SNAP)」を調べてきて、小野先生と生徒が問答するスタイルの授業。連邦プログラムを学ぶというより、それをモデル、あるいはきっかけとして、世界の痛みをシェアし、どのように解決すべく活動できるのか、今までの海外研修の次のステップにジャンプするプログラムのようだ。

しかも、それが総合学習とか特別講座で行うのではなく、英語の授業の中で行われているのだ。

電子黒板で、写しだされた映像を見ながら、小野先生から問いが投げかけられる。まずは事実は何か、問題は何か、制度とは何かなどmatterをおさえる問いが投げかけられる。たとえば、フードバンクとは何か?すると、調べてきた生徒がプレゼンをする。ここで大事なのは、正確に説明できることよりも、プレゼンする勇気だったり、プレゼンにエールを贈る仲間づくりだったりする。

今回SGH申請のチームをけん引しサポートした小林昭文先生は、こう語られた。

「聖徳学園のリーダーシップは、コントロール型を目指しているわけではない。

1人の人間だけがリーダーになる教育ではなく、生徒1人ひとりがそれぞれリーダーになる機会をいかに見つけられるか。

その気づきを授業の中で展開していきたいわけです。もちろん、まだこういうものだという定義はできあがっていません。それはこれから試行錯誤していくことによって見えてくると思います。」

なるほど、小野先生の授業の中に、1人のヒーローをつくるのではなく、生徒1人ひとりに勇気をシフトしていく学びが埋め込まれていた。

もちろん、英語の授業であるから、文法や表現の勉強もする。

このように、英語の基礎力と主題編成型のプログラムが1時間の授業で収まるのは、実は電子黒板という優れた武器を有効活用しているから可能なのである。それがはっきり理解できたのは、藤戸先生の別のクラスの中3の授業を見たときだ。英語の構文の授業が行われていた。

今までの構文の授業だと、黒板に英文を書いて、それから分析するから、量的にはそれほどでもない。しかし、藤戸先生の授業は、電子黒板を自然体で活用しているから、どんどん英文が湧いてくる感じなのである。そして、構文を勉強するためのわかりやすい例文を分析するのではなく、文章そのものを分析していくから、たんなる文法の学習というわけではない。

英文全体を見ながら、一文に照準を合わせて分析し、また全体を眺めるという、俯瞰と集中による内容理解のプロセスを見える化していく授業だと了解できた。しかも、まるで、方程式をどんどん解いているようで、構文の構造、文と文の関係を論理的に読むとはどういうことなのか、それが見える化できるのが、電子黒板の優れたところだと実感。もちろん、そのように活用する藤戸先生の創意工夫が大前提である。

 

 

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