八雲学園 英語祭 英語教育の総合力

12月14日の土曜日、八雲学園で「English Fair」という、“英語の”文化祭が開かれた。体育館で中学校1、2年生の英語朗読劇及び英語劇が上演されていた一方、校舎の方ではクラスごとに模擬店や展示が開かれていた。今回私は、劇・模擬店・展示など盛りだくさんの「English Fair」を取材させて頂いた。by 松本実沙音さん(21会リサーチャー:東大文Ⅱ)

オールイングリッシュの文化祭

“英語の”文化祭とは一体なんなのか。誰もが思い浮かべるであろう中学校の文化祭を、全て英語にしたものが今回の「English Fair」である。「English Fair」の、英語を徹底して使うという姿勢は、次のような点に表れていた。

まず、通常の文化祭では来場者は日本の通貨を用いて模擬店で飲食物やグッズを買う。八雲の「English Fair」では、まず両替所にて日本円を「YAKUMOドル」という通貨に両替しなければならない。海外でまず日本人観光客が日本円を外国通貨に両替するのと同じように、「English Fair」でもそれをしなければならないのだ。

次に、校内アナウンス及び体育館での進行も、全て英語で行われる。英語のアナウンスのあとに日本語のアナウンスもされるが、あくまで英語がメインである。

また、展示ポスターなども英語と日本語両方の物が用意されていた。例えば、「梅ちゃんパーク」という展示では、日本ならではの遊びやゲームの紹介がされていた。けん玉やだるまさんが転んだなど、決まった英語の名前が存在しない遊びも、丁寧に英訳されていた。

最後に、飲食物の販売をしている模擬店でも、なんと接客は英語で行われる。誰でも注文できるようにパンフレットには「How to Order」という項目が用意されており、お客様相手に生徒達は堂々と英語で接客を行っていた。

このように、「English Fair」では、英語の使用が徹底されていた。普段英語を使わない生徒達がいきなり英語でしか文化祭に参加できないというのは、かなり神経を使うことのように思えるが、八雲の生徒達は楽しそうに積極的に参加していた。展示教室に入った時など、「Hello!」「Welcome!」などと元気良く挨拶してくれたのが印象的であった。

英語劇で成長する

体育館で一日を通して上演されていたのは、中学一年生による英語朗読劇と、中学二年生による英語劇だ。それぞれのクラスが「ハイジ」「ピーターパン」「サウンド・オブ・ミュージック」など、誰もが良く知る作品を短くアレンジした上で再現していた。

中学一年生の朗読劇はパワーポイントを使いその場面を後ろのスクリーンに映しながらの上演。中学二年生は、小道具や衣装を使ってそれぞれの役を表現していた。

文化祭では中学三年生が英語劇を発表するのだが、私はそれも観させて頂いているので、中学一年生から三年生へと上がっていくにつれて、生徒達が確実に成長していく様を想像しながら今回の劇を観ることができた。

実際に、生徒に具体的な練習方法を伺ってみたところ、演技の練習では主に英語の発音、強弱のつけかたなどを徹底して覚え込むそうだ。

確かに、台詞の強弱や英語の発音によって表現できるニュアンスなど、学年があがるにつれて明確にわかるようになっていったように思う。そしてその集大成が、今回高校生の有志が演じ切ったミュージカル「グリー」。もちろん英語で。

八雲学園の英語教育の思慮深さ

英語朗読劇・英語劇をいくつも観ていて、私は、台詞を覚える作業はどのように行っているのだろうかとふと疑問に思った。単語の暗記作業のように覚えるのとは要領が違う。周りの登場人物の動きも同時に把握する必要がある上、英語劇は全身を使って自分の役を表現するので、筋道を立てて台詞を覚えなければいけない。

「英語」という科目において、理想は生徒が内容を理解し、問題を解くことである。しかし、受験勉強の必要性から、テクニックを意識せざるを得ない側面が「英語」という科目にはつきまとう。つまり、特定の知識の詰め込みでなんとかなってしまう場合が存在するのだ。

しかし、英語劇において、暗記は最初のステップにすぎない。そこから、その役らしく振る舞うことを学ぶ必要がある。英語の台詞から、その役の意図や感情を汲み取るプロセスが必要不可欠となる。これは、本来「英語」という科目で必要とされている、「理解する」という過程を再現しているのではないか。

更に、劇中の役に対して「(自分の役は)何を考えているのか、どのような感情を抱いているのか、それらの思考がどのような行為に結びつくのか」と問うことは、私たちが外国人相手にコミュニケーションをとろうと試みる際に、文化や言語の壁を想像力に頼りながら乗り越えようとする姿勢にも共通しているように感じられる。

(10月の文化祭のときの中3の英語劇)

中学一年生から三年生にかけて英語の劇を三度程経験することで、八雲の生徒たちは、中学三年時の春に行く二週間のアメリカ旅行に必要な、外国人と円滑なコミュニケーションをとる基盤をつくりあげていっているのではないか。

「English Fair」を通して、八雲学園の英語教育に対する思慮深さを感じられた一日であった。

 

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