聖パウロ学園 ポストボーディングスクール(3)
夏期合宿のプログラムを構成する大きな要素は、「自学自習」という個人ワークと「授業」という対話型自己探求の2つ。「自学自習」は、先生から与えられた問題を解くというものとは意味合いが違う。毎日「夏期合宿日誌」をつけて、自分の学び方、何を学ぶのか、どこまで達成できたのかを振り返って、自学自習によって自己成長を果たす実践の場である。
夏期合宿のプログラムを構成する大きな要素は、「自学自習」という個人ワークと「授業」という対話型自己探求の2つ。「自学自習」は、先生から与えられた問題を解くというものとは意味合いが違う。毎日「夏期合宿日誌」をつけて、自分の学び方、何を学ぶのか、どこまで達成できたのかを振り返って、自学自習によって自己成長を果たす実践の場である。
4日目、午前の2時間目の授業から取材にはいった。1日勉強しているわけだから、4日目はさすがに疲れてきているだろうと思って、授業を覗いたら、先生方はもちろんのこと生徒も真剣そのもので、集中力と適度な緊張感が持続しているその姿に驚かされた。
かつて全寮制だった聖パウロ学園。その寄宿舎というリソースを活用して、新しいボーディングスクール(寮制学校)型のプログラムを開発した。もちろん通学制の学校であるが、時期に応じた合宿勉強を実施するのである。昨年から高2・3生のために6日間の夏期合宿を開始。
好評だったため、今年6月高1にも2泊3日のプログラムを実施してみた。これもたいへん好評で、2泊3日タイプの宿泊学習を数回体験して、高2になってから6日間の夏期合宿につなげる壮大なプロジェクトが立ち上がっている。
ボーディングスクールではないが、ボーディングスクールのエッセンスを凝縮させた、いわば、ポストボーディングスクールとして他に追随を許さない新しい学びの体験の場となっている。by 本間勇人:私立学校研究家
(女子生徒が宿泊する寄宿舎「パウロハウス」。イタリアから持ってきた山荘。パウロの森に小さなおしゃれな空間があった)
イタリア修学旅行の準備としての調べ学習のプレゼンを見学したあと、高1の総合学習の時間を見学。英語講読、プレゼンテーションのトレーニング、茶道、華道と4つのクラスに分かれて行われていた。
そして、イタリア修学旅行の準備は、高2に入ってから始まるのではなく、高1に入学したときから始まっていることに気づき、壮大なイタリアプロジェクト学習に感動した。
調べ学習は、目の前に驚きの成果を広げた。フィレンツェ関連の知識が世界史の教科書を超えて、次々とリンクして広がっていったからでもあるが、それ以上に探求の精神の喜びがあったからである。
つまり、エニグマを見つけ、その解に行きつく過程を共有するというメンタルモデルをシェアする場であったということ。しかもそのエニグマは近代とキリスト教の謎めいた関係性に行きつくのである。ダビンチコードの旅さながらだったのである。
聖パウロ学園は、高校だけの学園。3年間で、進路指導も、グローバル教育も、教養教育も、総合的な教育を行う。中高一貫校であれば、ゆるやかに6年かけて成長をサポートするところだが、同学園は、それを3年間で行う。そのため、進路指導は、同時に総合的な教育になり、グローバル教育は同時に進路指導にもなるという高密度の実践をしている。
高密度の高校教育とはいかなるシステムか?そしてそれはなぜ可能なのか?聖パウロ学園は、自己否定感に悩んでいる多くの高校生が、かけがえのない価値を見出して自己肯定感を膨らませて人生の旅に出る勇敢で高慢な精神を持った人に変わる教育を行っている。いわば教育の原点に立っている学園である。このことを年間通して取材をし証明してみたい。by 本間勇人:私立学校研究家
学びの過程は、数学や言語の授業でも
本田先生:私は数Ⅲを担当しています。数Ⅲは、ひたすら微積の計算なので学びの過程がないように思われますが、実は数Ⅰ、数ⅡBで身につけた数学的道具を適用するので、多様で多角的な考え方ができます。ある意味本格的な数学的楽しさがあるわけです。
学びの過程が価値を生む
倉橋先生:かけがえのない価値は、聖パウロ学園の教育全体で作られます。生徒1人ひとりがこの総合的な教育の中で、それぞれに居場所を見つけて、それぞれの大切な価値を見出すわけです。一般には、その学びの場はイベントや部活とされ、授業はあたかも知識を優先する場として説明されがちです。
しかし、聖パウロ学園の場合、この豊かな自然や宿泊施設、イタリア修学旅行などでかけかがえのない価値を発見する準備は、授業の中にも埋め込まれています。かけがえのない価値ゆえに、発見もまたそう簡単ではありません。あらゆる教育のチャンスをその発見の場にしたいと思っています。
聖パウロ学園は、高尾山に連なる森のキャンパス、宿泊施設、イタリア修学旅行という他校にはない学びのスペースに恵まれている。したがって、同学園の学びの質は測り知れなく豊かで、かつ独自のプログラムが展開している。
高橋博先生(理事長校長)、倉橋和昭先生(副校長)、本田佐和子先生(数学科教諭)、松原由典先生(生徒指導部長)が、聖パウロ学園の学びの質の可視化についてミーティングをしているシーンに立ち会った。大変興味深い話し合いだったので、一端をご紹介したい。by 本間勇人:私立学校研究家
毎年聖なる力が宿る高尾山を訪れる人は多い。しかし、その自然の懐に聖パウロ学園という人間の本質を保守し、将来子供たちが様々な問題に遭遇したときに、何よりもそこでかけがえのない生きる意味を見出して解決できる本当の学力が身につく教育を実施している私立高校があるのを知る人は少ない。
それだけに、知る人ぞ知る人気校でもある。その聖パウロ学園が、進学校化する数多くのカトリック校の中で、カトリック教育の原点に帰る活動を開始する。カトリック学校のミッションは、生きる意味の深さを自ら創り出す本当の学力を子どもたちが身につけられるようにすることなのではないかと。by本間勇人:私立学校研究家
(高橋博理事長・校長 国連で、あらゆる民族あらゆる宗教あらゆる政治経済の信条を乗り越え手をつなぐルールであるとされる聖書の黄金律の言葉の空間で。)
21世紀型教育を通常授業で実現するには?
自己肯定感は学ぼうとする力を生み出す授業で
日本語IB、スーパーグローバルハイスクールの大きな教育改革の波が到来している。しかし一方で、高校受験市場では、中学受験市場とは違い、都立の進学重点校などに見られるように、大学合格実績が高いところに人気があるという価値が鮮明である。
また、私立学校は公立人気に押されて、魅力アップのためにさまざまな改革を行う学校が多いという幻想も広まっている。ところが、このような価値意識が、自己肯定感の低い高校生を大量に生み出している可能性を示唆するデータも研究者のリサーチによって提出されている。
解なき未来社会で自分で考え、自信をもって、ともに生きていける青年を育成するために高校入試ルネサンスを掲げる聖パウロ学園高等学校校長高橋博先生、工学院大学附属中学校・高等学校校長平方邦行先生に聞いた。 by 本間勇人:私立学校研究家
八雲学園の新年度のスタートは、大切な意味のある「とき」である。4月には入学式、新入生歓迎会、オリエンテーション、5月にはいり中3の合宿研修、中1は6月に催されるレシテーションコンテストの準備にはやくもとりかかる。各学年の芸術鑑賞なども目白押し。
また、この時期は、高1生の中で選抜された生徒の3ヶ月留学の事前学習も始まっている。この高1生は、新年度に入る前の2月に、つまり、中3の段階で全員サンタバーバラ研修に、15日間行っている。3月には、高校生は、大学に合格したばかりのOGによる進路チュータリング・ワークショップにも参加している。
2月から5月にかけて、全学年が、八雲学園の教育の4本柱「英語教育」「芸術鑑賞」「チューター方式」「進路指導」の環の中にすでにいる。すなわち、今年1年間の教育の準備が十分になされている。そして5月の末から6月の初旬の時期に、エール大学の女性コーラスグループ「Whim's Rythm」が訪れる。音楽を通して国際交流を行うのだが、同時に八雲生にとっては、4本の教育を基盤に、1年間の新たな目標とモチベーションを抱く大切な出発点でもある。(本間勇人/私立学校研究家)
(エール大学女性コーラスチームと八雲学園の声楽部が合唱するシーン)
いよいよコンサートが開催。YakumoとYaleの音楽交流は盛り上がった。共鳴もした。共振もした。互いに称える拍手と「イエー!!」「ヒューヒュー!!」というエールもホールに響き渡った。なぜエール大学だったのか。なぜハーバードでもコーネルでも、プリンストンでもなかったのか。
近藤校長や榑松先生は、謙遜して偶然だと語る。しかし引き合うには、響き合う共通の音楽コードが必要である。奇しくもコンサートは、その引き合う「Y&Yコード」を互いに奏でる結果となった。
八雲学園がエール大学のコーラスチーム“Whim'n Rhythm”と音楽交流をするというのは、最も新しい概念の意味での「プロジェクト学習」でもある。八雲学園の感性教育という教育の総合力がaction perspectiveのベースを育成している。従来のプロジェクト学習は、言葉をコミュニケーションのツールとして活用して終わっていた。
しかし、プロジェクトとは、未知の世界の舞台で、自ら全身全霊表現を放つことである。そこではもはや言葉はコミュニケーションのツールの段階を超えて、行動するものの見方・考え方となって表現力の本質に変容している。
今回も八雲生全員は、近藤校長から、エール大学の学生をウェルカムの精神で迎えよというテーマが与えられた。ウェルカムの精神を体現するとはいかなることか。それがエール大学のコーラスチームと共にコンサートを開催するというアクションになった。そのアクションの一コマを垣間見た。by 本間勇人:私立学校研究家
今年も、八雲学園はエール大学のコーラスチームとさらにパワフルに優雅に音楽国際交流を行っている。エール大学のコーラスチーム“Whim'n Rhythm”は、ボストンツアーや世界ツアーの演奏旅行で、世界のパースペクティブを受容し、世界精神の創出のためのボランティア活動を行っている。
この時期はチームのうちエール大学を卒業したメンバーによる2か月の卒業演奏世界ツアー。東京の八雲学園から交流は始まった。初日のスナップをご紹介しよう。by 本間勇人:私立学校研究家
(最後は、軽音楽部と交流。アカペラでジャズポップスを披露。軽音楽部のロックに、魂を揺さぶられ、音楽は世界共通言語であるとノリにのった。)
SGH活動報告会の第1部プレゼンテーションが終わると、階段を降りてポスターセッションの会場に移動しました。SGHの研究発表に加えて、留学報告や科学研究発表をするグループもあり、14のグループが3つの教室に分かれ、それぞれのテーマで発表を行いました。
3会場とも生徒たちは興味深い発表を行っていましたが、やはりこの日はSGHの会場が最も賑わっていました。発表する時間や質問する時間を設定していたのでしょう、時折ベルの音が鳴るのですが、発表する生徒も質問をする参加者も内容に夢中で、ベルの音も耳に入らないほど活発に質疑応答をしていました。
順天高等学校は2014年にスーパーグローバルハイスクール(SGH)に指定を受けました。その時に掲げた構想名は「グローバル社会で主体的に活躍する人材育成のための研究開発」です。2月20日に行われた活動報告会では、GLAP(グローバルリーダーズ・アクションプロジェクト)を通して活動してきたSGHクラス生の成果が、生徒たち自身のプレゼンテーションとポスターセッションで見事に示されていました。 by 鈴木裕之:海外帰国生教育研究家