PBL

工学院の進路指導(2)中高時代の学びが大学で役に立つ

昨年に続き、今春の卒業生たちも、それぞれ「合格体体験記」を後輩のために残しました。この分厚い冊子を編集した進路指導部主任新井利典先生は巻頭言でこう語っています。

「今年度は17名の卒業生が執筆を引き受けてくれたたため、100ページを超える大作となりました。・・・これを読む在校生は、卒業生からのメッセージだと捉え、自分の学びに生かしてほしいと思います。」

「一人一人の個性が違うように、学び方も人それぞれです。自分自身の勉強方法は、周りのアドバイスに謙虚に耳を傾けながら、自分自身で模索するしかないのです。そのことを忘れずに、先輩たちの経験を参考にしてみてください」。

Q:中高時代の部活や自分なりの学び方を模索した経験は、大学に入って生きていますか?

菅谷:そうですね。コンピュータ関連の企業に就職したいと思っているので、そのために今は、基礎的な数学や物理の勉強は継続的に行っていますね。理系の場合は、研究室に入って、そこから研究室のネットワークで就職していきますから、基礎的な学びをベースに本格的に研究していきます。そういう意味では、受験科目で数学と物理はとっていたので、直接役に立っています。また、研究という点では、ユーザーではなくつくる側の視点に立って、興味を抱いて学んでいった体験は役に立つだろうとは思います。

ただ、思っていた以上に大学の講義は難しいですね。ある意味壁です。

Q:それは新たな分野が出てきたということですか?

菅谷:そういうことではなく、高校時代と大学時代では、やはり先生方の教え方が違っているということかなと思います。高校時代は、正解の出す過程も含めてかなり丁寧に取り組むことができました。正解のない課題論文のような学びも、そうはいっても先生はアドバイスやサポートしてくれましたが、大学は丁寧には教えてもらえないですね。自分で文献を探して理解していかなければならないけれど、そもそも解答を丁寧に解説してくれている文献がないことが多いです。

だから、自分で考えたり深く探究する高校時代の学びは、役に立ちますが、高校と大学では、考えてみれば当たり前ですが、レベルが違いすぎるかもしれません。でも、それを乗り越えれば、何かが見えてくるだろうし、そうでない場合は、ちょっと困りますね。

いずれにしても目先のことだけこなして満足するような勉強は高校時代はやめたほうがよいと思いました。

早川:今、自分は法律を勉強していますが、やはり紛争のケースメソッドは、正解がないので、多角的な視点から自分で考えていく必要があります。数学を学んでいたし、受験も数学だったということもあり、論理的に考えていくという中高時代の学びは、そのまま役に立っています。

Q:法律のイメージは、判例をある程度参考にしたり、条文を暗記したりすれば、解決するという感覚なのですが、いかがですか?

早川:もちろん、判例や条文は大切ですが、紛争や事件は、パターンは似ていても、やはり違うところがあり、判例や条文を暗記したからといって、そのまま適用できるというものではありません。そんな小手先の勉強をしていくと、立ち行かなくなるという実感はあります。それにロースクールに進学する学び自体が、昔の司法試験とはだいぶ違って、かなり正解のない問題をいかに解決するかという探究に重きが置かれています。

木戸:中学のころから教師になりたいと思って、自分の部活や勉強の文武両道という信念を貫いてきたことは、やはりそのまま役に立っています。それができるには、好きなことを見つける・興味のあることを見つけることが大切だということも、今の教育の勉強の中で、間違っていなかったと確信しています。

ただ、好きなことが見つけられないとか、興味のあることがわからにという生徒が多いということもわかってきました。そのような生徒をどう導くか、今そこに一番関心があります。

Q:やはり木戸くんは、大学入学半年にして、教師としての自覚がでてきているということですね。それにしても、現役の教師もそれは難しいと思っていることでしょう。どう解決しようと考えているのですか?

木戸:ありがとうございます。それは、やはりいろいろな体験や遊びを共にしながら、対話していくことだと今は思っています。体験や遊び、学びを通して、その生徒が得意だったり、好きなことだったり、そんなところが必ず現れてくると思います。そこから出発して導いていくことができたらと思います。もちろん、どこかで手を離さなければならないのですが、そのタイミングは一人一人違うので、持続して生徒が学んでいける様子を見守ることは必要だと思います。子供たちが、新しい自分に出遭えたらよいかなと思っています。

Q:それは、木戸くん自身がロールモデルということですね。早川くんも菅谷くんの場合も同じですね。こんなに善きロールモデルの体験が、重要だとは改めてすごいなと思いました。最後に、受験勉強というのはみなさんにとっては、価値あるものでしたか?

菅谷:もちろん、ありました。自分は、追い込みという方法はとりませんでした。コンスタントに計画的に勉強していくことで、メンタル面が安定するので、時間とか計画とか大事にしていました。過去問を解いていくときも、闇雲に解くというよりも、合格点をとるためにどの問題からはじめ、極端な場合は、捨てる問題を判断する時もありました。問題の難易度を見極めることは重要でしたね。時間配分と優先順位を念頭に置いていたのだと思います。

早川:自分の場合は、菅谷くんのように、コツコツやるタイプではなく、やる時はやるし、やらない時はやらないというタイプでした。さすがに、高3のバレーの部活を6月に終えたときからは、追い込みをかけました。自分は、英語は中学のときにすでに英検2級をとっていたので、油断したというコトもあります。

数学は得意というほどではなかったですか、社会に比べればなんとかなるなと思っていたので、数学に力を入れました。英語の成績もがくっと下がった経験もして、得意科目でもちゃんと勉強しなければということを学びましたね。現代文に関しては、しっくりこなかったという意識がありました。そういう意味では、受験勉強は自分を知る意味でとても価値があったと思います。

木戸:自分は国公立を目指していましたから、センター試験一筋で学びました。センター試験は英語の方が現代文より攻略しやすかったですね。英語の長文と現代文の長文の問いの作り方が違っていて、英語の方がより客観的な理解を促す問いが配列されているのに、現代文は、作問者の意図がどうしても反映していて、それを見抜くということが必要になります。

早川:そうだと思う。論文を書く場合は、フォームがあるし、自分の考えを展開していくからやりやすいけれど、現代文の読解は自分と作問者のズレがあるときがありますよね。

木戸:そうなんです。作問者もできるだけ、客観的に作成しているとは思いますが、100%、意図を排除することはできないと思います、だから、もっと自分の考えを論述するような問題が出題されるような改革の方向性はいいのではないかと思います。

菅谷:問題の難易度の妥当性というのもあります。自分は、そういう観点で思い切って捨てるという判断を大事にしたと思います。

Q:そんな批判的な分析ができたというのは受験勉強は価値があったということですね?

早川:クラスの友人と、学びの方法や入試問題の分析方法をよく話し合いました。そういう価値は得難いと考えています。高校の勉強が意味があるかという疑問についても話し合ったことがあります。目の前の受験勉強を避けないで、そこを通して、自分で考える学びを見つけられると考えます。

木戸:やはり、部活動と受験勉強の文武両道という体験は、大切で、いろいろな人間関係や自分の技術をどう向上させるかなど、考える機会はいっぱいあります。受験勉強の向こうにあるものが価値がありますね。

菅谷:自分の好きなことから、学んでいくという体験は裏切らないと思います。受験勉強を通して、自分のやりたい道を探して欲しいと思っています。

 

 

工学院の進路指導(1)自分で踏み出すきっかけ

工学院大学附属中学校・高等学校(以降「工学院」と表記)といえば、グローバル教育とSTEAM教育を土台とした21世紀型教育です。しかし、今春同学院の歴史始まって以来の大学合格実績を出した学年は、まだ全面的に21世紀型教育改革システムが展開していない学年。
 
ただし、探究論文という21世紀型教育の中核的な学びの一期生ということもあり、興味と関心のあることについて、自分で考え、探究の道を、やはり自分で踏み出していく学びの習慣が浸透していたのです。
 
ある意味、これこそが21世紀型教育の肝で、現在、工学院がこのような新しい教育を展開できているのは、卒業生が自分で自分の道を踏み出す精神的なミーム(文化遺伝子)があったからだともいえます。
 
学校に限らず、イノベーションが成功する組織には、精神的な文化遺伝子ともいえる伝統が核としてあるからです。3人の卒業生との対話がそれを明らかにしてくれました。
                          by 本間勇人 私立学校研究家
 
 
(左から新井先生、木戸くん、早川くん、菅谷くん、平方校長)
【座談会参加卒業生】
木戸直輝 都留文科大学 教養学部 学校教育学科
菅谷遼太 法政大学 理工学部 電気電子工学科
早川拓未 中央大学 法学部 法律学科
 
Q:進路を決定した時期やそのきっかけになったのは何だったのですか?
 
木戸:私は、高1の段階で、教師になる道を決めました。もともと中学のとき部活と勉強の両立を目指すことを教えてくれた先生との出会いで、教師という仕事の重要性が気になっていました。
 
部活は軟式野球部だったのですが、工学院入学後も軟式野球部に入部しました。部活と勉強の両立をやり切るには、その部活は最適だったからです。
 
 
そんな思いが、高1のキャリアガイダンスである適性検査を受けて、その結果ではっきりと出てきたので、確信を持ちました。
 
その適性検査は、自己を見つめるデータや自分の将来の仕事の適性、学問選択の診断の参考データでした。
 
早川:自分は、なかなか進路が決まらなかった方だと思います。文系というのは決まっていたのですが、何になるかという進路先よりも、部活やいろいろな視野を広めることに興味と関心があったからだと思います。
 
ですから、高2になって志望校をいよいよ決める段階になって、迷っていたら、先生から声を掛けられました。具体的な指示はまったくなかったのですが、自分のやりたいことは何かについて、耳を傾けてくれました。その先生との話の中で、見えてきたのだと思います。
 
 
自分たちの学年から、高1から高2にかけて課題論文(現在は「探究論文」)を作成する機会が課せられました。自分のやりたい学問と社会の関係を考えることのおもしろさや論理的に考えることの重要性に気づくきっかけになりました。
 
自分の論文の担当の先生に個別に指導してもらえたのですが、解答を教えてもらうということは全くなく、調べ方や視野の広め方、編集の仕方、考え方を学べたと思います。
 
とはいえ、社会科の模擬試験の結果はあまりふるわず、暗記することよりも、数学という論理的に考えていけばよい科目が好きでした。入試も、英語と国語と数学で受けることにしました。
 
菅谷:自分は幼いときから決まっていたような気がします。ゲームが好きで、遊びながら、ゲームの仕組みが気になりました。そのうち、業界を驚かすようなゲームが次々登場するたびに、ゲームを作ることへの魅力を感じるようになりました。しかし、ゲームはお金がかかりますが、そんなにお金は使えないので、ゲーム機をたくさん買うことはできませんでした。
 
それで、中学頃からパソコンでゲームをやるようになりました。たぶん、パソコンを使ったことが、ゲームやコンピュータの仕組みの方に興味が移っていったのだと思います。ただ、進路や志望大学をはっきりと決めたのは、高1の文理選択のときでした。
 
Q:幼いころからだいたい決まっていたということは、早川くんが語っていた課題論文もゲームやパソコンに関して探究していったのですか?
 
 
菅谷:いやまったく違っていて、人工甘味料でした。コーラが好きだったので、興味と関心があるもの中からテーマを決めました。
 
Q:今、全く違っていると言ったけれど、どこか菅谷くんの理工系の道を歩く何かと結びつくような気がするけれどどうでしょうか?
 
早川:たしかに、ゲームやパソコンと人工甘味料という素材は違うけれど、その素材の背景にある仕組みについて、紐解いて論理的に導いていく、考えていくという点では、その姿勢は同じだと感じます。
 
木戸:それに、やはり好きなもの興味があるもの関心があるものを通して学んでいるというところは共通していると思います。深い学びにもっていく姿勢があると思います。
 
菅谷:どうでもいいことからはじまっていると思っていたけれど、2人にそう言われれば、なんだか照れくさいけれど、そういうものかなと。たしかに、ゲームを楽しんだり、コーラーを飲んでそれで終わりにするのではなく、作る側の目線で眺めている自分がいると思います。
 
Q:一般的に、進路について語るとなると、受験結果とか参考書はどんなものを使ったとか、勉強の作戦はどうしたかなどとなるものです。ですから、進路に対する自分の内面をここまで語れるというのはなかなか得難いと思います。今みなさんが話をしてくれたような進路に対する姿勢に工学院の先生方はどんな影響があったと思いますか?
 
木戸:もちろん、そういう基本的な内容も「合格体験記」に詳しく書きましたが、そうですね。工学院の先生は、何かをこうしろという指導はしなかったですね。自分が好きなものや興味があるものを大切にしてくれました。
 
早川:自分もそう思います。やはり自分で考えることを大切にしてくれました。論理的に考える過程も重視してくれましたし、情報はもちろん提供してくれました。具体的に指示するということは、先ほども語りましたが、なく、だいたいのことを教えてくれるというか、大枠は示してくれたと思います。
 
菅谷:そうですね。自分の担任の先生は、自分にとって必要なタイミングで必要なことを言ってくれるというタイプでした。自分では、みんなから見たらどうでもいいようなことをやっているなあと思いながらも、先生はそれを受け入れてくれていたと思います。
 
Q・木戸くんは、教師になると決めているということですが、今話に出たような工学院の先生はモデルになるのですか?
 
木戸:もちろん、教師像というのは、工学院の先生と重なると思います。私は、やはり子供が好きなものや興味のあるものから始めて、深く考えていく姿勢を大切にしたいと思います。
 
そして、何といっても体験は大事ですから、部活と勉強が両立できる環境を設定できる教師の情熱が理想です。私たちのときはまだでしたが、これから大学入試改革や学習指導要領の改訂がありますが、自分が教えることになる生徒は、そういう学びができる環境になります。教育原理などを学んでいるとそういうことがはっきり見えてきます。
 
早川&菅谷:木戸は、いい教師になるよ(笑み)。ほんとうにそう思った。(つづく)
 

聖徳学園 創立90周年を起点に教育の質向上へ(2)

今回、夏期教員研修のプログラムの中で見学したのは、上智大学言語教育センター教授藤田保先生による「2020大学入試改革・これからの英語教育と教科間連携について」です。藤田教授は、言語学、バイリンガル教育の研究をされていますが、今回の改訂学習指導要領にもかかわっており、小学校の英語教科化の方法や実践など英語教育についても研究しています。

特に上智大学で行われているCLILという新しい英語教育の研究・開発・提唱者でもあり、CLILが小学校・中学校の現場に広がる契機もつくっています。

(13号館ラーニングコモンズにて)

また、今回の大学入試改革で大きな話題になっている外部英語検定試験の導入についても文科省にアドバイスもしています。上智が中心になって入試利用しているTEAPについても上智大学言語教育研究センター特任教授吉田研作先生と共に研究をしています。

さらに、今回の研修の前日カンボジアから帰国したように、同国で、<STPC(Summer Teaching Program Cambodia)>というボランティア活動をしている上智大学生のアドバイスもしている実践家でもあります。

このように、藤田先生は、幅広く多様な研究・開発・実践活動をグローバルに展開しているわけですが、実は聖徳学園の国際教育、STEAM教育などにおいても教師と生徒は多様でグローバルな探究活動を行っています。ですから、伊藤校長は、藤田先生の研究・開発・実践活動と聖徳学園の教育活動の相乗作用が生まれることを期待し、藤田先生に年間通してのアドバイスを依頼しています。

今回は、2020年大学入試改革とそれに伴う学習指導要領改訂において、従来と大きく変わる点をまず確認しました。幾つかある中で特に重要なのは、学力の3要素の明確化とその実現のための授業の変化です。3要素とは「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」「主体性・多様性・協働性」がそれですが、これを実現するために、「主体的・対話的で深い学び」というアクティブラーニングが導入されます。

藤田先生は、教科としては英語の話を中心に進めるわけですが、今回の大学入試改革と学習指導要領改訂では、あらゆる教科に共通して、学力の3要素は求められているし、「主体的・対話的で深い学び」が現場に浸透するように方向付けられていることを確認していました。

これは藤田先生がかかわっているCLILという英語の教育方法が念頭にあったと思います。CLILは、英語のみならずいろいろな教科でも活用できる教育であるからです。しかも、今回「深い学び」とあるのは、「主体的・対話的な」活動、英語で言うならばコミュニケーション活動が、実生活の中で活用されることが必要になってくるということです。

その重要性がイメージしやくするために、カンボジアでの<STPC>についてケースメソッドを紹介しました。上智大学の学生が、どのようにカンボジアの子供たちと英語を学ぶのかそのプログラムを例に挙げたのです。

ここで、紹介されたのは、単語や文法といった知識を身につけることに偏らずに、英語を使おうという意欲を高めることを重視するコンセプトで実施されているプログラムでした。また、意欲を高めるために、カンボジアと日本の舞踊やパフォーマンスの違いの比較文化を行い、実際にカンボジアのプロを呼んで、鑑賞するなど英語を超えた内容を導入したり、実際に活用したりするアクティビティが埋め込まれていました。

授業と授業を超えたフィールドでの教育活動、英語と他教科のコンテンツにおける綿密な結びつきの創意工夫など、シナジー効果が生まれるケースメソッドです。おそらくこれは、伊藤校長にとっては、聖徳学園でもすでに始まっているという確認ができたと同時に、さらにシナジー効果という質をあげる大きなカギがあると確信したことでしょう。

そして、最後に進路の在り方の大きな変化が起こることが告げられました。それは「テストに出るから勉強する」から「勉強しているからテストで測られる」へ転換するというものでした。従来は、入試科目に関係ない教科や探究は、勉強しないという風潮があったが、授業で学んだこと、国内外のフィールドで学んだこと、4技能の英語を学んだことなど、すべてが評価の対象になるということでしょう。

「主体的・対話的で深い学び」を行ってきた、いわばポートフォリオすべてが評価対象になるわけです。学びの中で多くの時間数を占めているのが授業です。この授業の質がさらに向上し、国際教育やSTEAM教育などと結びつき、シナジー効果が生まれるようにすれば、教育の質向上は期待できます。

いよいよ伊藤校長の授業を中心とする教育の質向上のビジョンが実現の道を走り始めたのです。

                           (私立学校研究家 本間勇人)

 

 

聖徳学園 創立90周年を起点に教育の質向上へ(1)

昨年2017年、聖徳学園は創立90周年を迎え、その記念事業の一環として、21世紀型教育の多様な学びの空間を備えた13号館を新しく建設しました。1階は、オープンでのびのびとした雰囲気のラーニングコモンズで、ICTを活用したSTEAM教育をベースとしてPBL活動ができるようになっています。

各フロアーも、Active Learning Roomを初め、300人程度を収容でき、軽スポーツも可能な多目的ホール、音楽室、美術・技術室、物理実験室、Global教育のための演習室など充実した学びの空間が設けられています。動画の作成・編集のためのスタジオ、本格的な茶室「幽玄庵」もあり、多様な文化活動を行える学びの場が広がっています。

聖徳学園の校長伊藤正徳先生は、「このような多様な21世紀型教育の空間が完成したということは、当然ながらそこで実際に教育活動が行われるていることを意味しています」と語ります。同学園は、もともと国際教育は盛んでしたが、地域と海外を結ぶ実際的な国際教育プログラムが展開するまでになっています。また、SGDsと関連する国際教育も展開しています。

ICTも授業や探究活動、STEAM教育など、あらゆる局面で活用されています。創立90周年を機に、いわばグローバル教育とSTEAM教育の多様なプロジェクトのプラットフォームが13号館になっているといえます。

しかしだからこそ伊藤校長先生は、「国際教育、ICT教育、STEAM教育が豊かに展開している今こそ、各教科の授業の質と教科横断的なつながりを充実したいと考えているのです」と熱く語ります。そこで、今年の夏、2日間にわたり教員研修を実施しました。プログラムは以下のような内容でした。

「e-portfolioの活用について」「聖徳学園のICT活用実践報告とApple Distinguished Schoolに向けて(学校改革本部長 品田健先生による)」「 東京大学入試問題検討会 英数国理社(各分科会開催)」「実技系教科学習会」「新学習指導要領とSDGsについて(校長伊藤正徳先生による)「夏期宿泊行事報告 中3カナダ研修、中3ニュージーランド研修 高校セブ島研修 2018中国北京市国際高校生サマーキャンプ 高校シリコンバレー研修など」「hyper-QUを使った学力を支える学習集団づくり(講師:早稲田大学教育・総合科学学術院教授 河村茂雄 先生)」「聖徳幼稚園・聖徳学園小学校の教育(幼稚園園長・小学校長 和田知之先生)」「2020大学入試改革・これからの英語教育と教科間連携について(講師:上智大学言語教育センター教授藤田保先生)」
 
 
たしかに、プログラムは多角的にぎっしりと詰まっています。しかし、教育活動の共有、eポートフォリオのシステムと大学入試改革における評価の転換、新学習指導要領の分析と適用、エビデンスに基づいたクラス運営、教科連携と英語4技能の関係など、立体的なプログラムになっており、これまでの活動の積み上げを前提に、今後ヴァージョンアップをしてこうというビジョンとその実現の意志が明快に表現されています。
 
 
 

21世紀型教育機構シンポジウム 理想的なネットワークを紡ぐ創造的リーダーシップ

9月2日(日)に行われる「21世紀型教育静岡シンポジウム」は、地球人の子供たちの未来土壌を、教育から耕していこうという壮大なヒューマンプロジェクトです。私たちは、20世紀においてこの未来土壌を地球規模で荒らしまくってきました。そこでそれを阻止するプロジェクトが国連やユネスコを中心に実行されてきました。

現在では、SGDsが当面大きなプロジェクトです。2020年東京オリンピック・パラリンピックも同じ思いがあるでしょう。しかし、その広がりの速度で、2030年から2040年の近未来土壌は浄化され回復するでしょうか。そうなることを、願うばかりですが、あくまで感覚ですが、楽観視している人は過半数を占めていないでしょう。

そこで、21世紀型教育機構は、授業1つひとつの中で、未来土壌を自然と社会と精神が好循環していけるような精神と知恵とそして創造的リーダーシップを生徒1人ひとりが自分の才能を通して主体的に生み出していける環境を創ることにしたのです。

授業1つひとつは、たしかに小さい存在ですが、しかし、多くの国で学校は存在します。授業も存在します。学校の授業は、人類全体の細胞のようなものです。であれば、細胞が活性化してつなげる活動をしていけば、臨界点に達したところで、一気呵成に人類の未来土壌の生態系は好循環になり回復するはずです。

(創造的リーダーの特徴は、自分の想いや行動を公にシェアする本を出版できるというコトです。)

この細胞が、今や東京ばかりではなく、埼玉、大阪と広がり、静岡にも飛びました。まだ全部がつながっているわけではありません。しかし、各エリアで、細胞が増えつがっていくことで、希望のバトンはどんどん渡されていくのです。

この理想的なネットワークの静岡の仕掛け人は、星野明宏先生(静岡聖光学院常任理事・副校長)です。星野先生は、この数年で、静岡聖光学院をラグビーを通して全国ネットワークにつなぎ、授業そのものを21世紀型教育機構につなぎました。つなぐには、強引につなごうとしても、効果は生まれません。ファシリテーターとして徹することが必要です。

これによって、静岡聖光学院は、グロース・マインドセットされ、教師も生徒も探究という深い学びができる授業を形成しています。授業によって深い学びができるのでも、深い思考ができるのもなく、そのが逆をやってのけているのです。教師と生徒の深い探究という学びとそこで生まれ出る深い思考力が、授業をつくっていくのです。

(静岡聖光学院は、イートン・カレッジと語学研修のみならず、グローバルアスリートどうしの国際交流の絆をがっちり結び付けたのです。)

これができるや、星野先生は、田代副教頭先生をはじめとする多くの先生方に、ファシリテーターをエンパワー(委譲)していきます。ご自身は、ディレクターとして、ファシリテーターの動きをマネジメントしていきます。しかし、ディレクターというポジショニングは、その授業を生み出す知の資源を学内で共有するだけではなく、学外にも共有するメディア戦略をマネジメントします。

これによって、小さな細胞は、広がっていきます。ですから、1人何役にもなりかねませんが、ドキュメントスタッフによってサイトやSNSで学内外にあふれでる深い学びや思考の教育の条件をシェアしていきます。すると、公共のメディアがやってきて、ニュースとして外に情報が流れ出ます。共感共鳴する人々が増えていくのです。

そんな広がりをディレクションしていると、グローバリゼーションの時代ですから、海外にネットワークは広がります。それが、イートン・カレッジやハロー校、マレーカレッジへと太い絆がうまれるこにつながっていったのです。

ここまでくると、静岡聖光学院のディレクターでは収まらず、自治体から招聘され、静岡全体のサポートもするようになりました。これで、東京と静岡のエリアは、21世紀型教育によって、生徒1人ひとりがソフトパワーを発揮する希望が見えてきました。

21世紀型教育機構のメンバーは、1人ひとり星野先生のように創造的リーダーシップを有している先生方がたくさんいます。今回のシンポジウムで登壇する先生方は全員そうです。創造的リーダーシップは、ロイヤルコペンハーゲンやレゴのようなグローバルブランドを生み出したデンマークでは、当たり前のように唱えられています。

その条件は、情熱と謙虚です。既成の枠の限界ギリギリでエッジを利かせつつも、枠内外の他者の感じ方や考え方を限界線上に乗りながらで耳を傾け、両方をつなぐために限界線を変容させていきます。細胞がそうなように、開放系と閉鎖系のバランスをどうとるかです。開放系だけでは、自分がなくなります。閉鎖系だけでは、生きていけません。

創造的リーダーシップは、変容への情熱と謙虚さによって合理的に判断できる2つの能力の使い分けが巧みだと言い換えることもできます。人類の子供たちは、だれもが創造的リーダーシップを発揮することができます。そのためには、創造的リーダーシップに満ちた多くの仲間といっしょに学んでいくのが有効です。

 

9月2日(日)21世紀型教育機構 思考力セミナー

9月2日(日)、静岡聖光学院で、21世紀型教育機構は、思考力セミナーを行います。同機構加盟校は、国際バカロレア(IB)やアドバンスとプレイスメント(AP)が行っている高次思考(higer order thinkig)を学べる独自かつ世界標準のプロジェクト学習を実施しています。参加対象は、小学校5年生と6年生です。

(今回の思考力セミナーの学びの空間。リニューアルされた静岡聖光学院の教室。)

独自というのは、その高次思考体験を、子供の成長に応じて体験できるようになっていることです。高次思考体験というのは、難しい問題をやるということではありません。固定概念や学びの過程で直面する壁を乗り越えることができる体験をすることができます。

学びのスタイルは、PBLというプロジェクト学習で、3Rかから3Xへジャンプする探究学習(3R:Reading=読み、wRiting=書き、aRithmetic=そろばん 3X:eXplorer=探求、eXchange=議論、eXpress=表現)です。この3Xのサイクルがプロジェクト学習の肝であり、高次思考を育てていきます。

未知のコトをリサーチし、議論し、気づいたコト、発見した課題をまとめる編集、プレゼンなど行っていきますから、その道のりはスリリングです。悩むことも多いでしょう。没入している時間も結構あります。しかし、そこで挑戦している自分が、楽しんでいることにやがて気づきます。MITメディアラボでは、この厳しくも楽しんでいる状態を【Hard Fun】と呼んでいます。ワクワク探究にのめりこんでいく学びこそ、2020年大学入試改革以降の社会が求めている人材の仕事のやり方、研究の仕方の土台でもあります。

さて、今回は、プロジェクト学習(PBL)で、数学的思考体験をします。今STEAM教育の重要性が叫ばれていますが、中でもMathは、極めて重要なポジショニングを占めています。政治経済の分野も、アートの分野も、医療の分野も、もちろん工学の分野も、見事に数学的思考力が必要とされています。

2020年大学入試改革が実施される2021年春の大学共通入学テストで、早稲田大学政治経済学部は、数学Ⅰ・数学Aを必須教科とするほどです。いよいよ、文系・理系の境界線が突破される学際的な学問の世界が前面に出てくるわけです。

そういうわけで、今回は、静岡聖光学院の数学科主任の植田先生が中心となってPBL型数学的思考体験のプログラムを作成・実施します。そして、このタイプの学びの最先端を実施し、多くのメディアでもその挑戦が注目されている聖学院の21教育企画部長・数学教諭の児浦先生、同校数学科主任の本橋先生が、開発過程からコラボしています。

中身については、当日のお楽しみです。ワークショップは、サプライズが基本です。ただ、21世紀型教育機構の数学的思考をベースとしたSTEAM教育のプロトタイプが、今回3人の先生方のご協力で完成しました。

このPBLを体験することは、アインシュタイン体験やニュートン体験をすることにもなるし、MITメディアラボの所長で、数学者でもあり、レゴ教育の創始者でもあるシーモア・パパート教授の思考体験をすることにもなります。今現代の魔法使いとメディアで騒がれ、メディアアーティストであり、筑波大学学長補佐でもある落合陽一氏の思考体験もすることになります。落合陽一氏は中高時代、世に有名な数学の天才児でした。そして、あのジェダイの修業にも通じます(笑み)。すべての潜在的才能の子供たちが、アインシュタインやニュートンと同じように高次思考を体験し、身につけることは可能なのです。
 

予測不能な時代。だからこそスリリングで楽しい未来に高次思考の自由な翼を広げましょう。すてきな学びの空間で探究の世界にいっしょに挑戦!しましょう。


 

 

 

静岡聖光学院 新キャンパス 9月完成 シンポジウムで見学

2018年9月2日(日)、静岡聖光学院で、「第2回21世紀型教育機構静岡シンポジウム」が開催されます。同校は、今年創立50周年を迎え、グローバル教育、PBL型授業など教育全般のイノベーションを行い、キャンパスのリニューアルも行っています。昨年から教育イノベーションは始まり、今年9月1日には、新しい教育空間は完成する予定です。

(完成イメージの予定図)

今回のシンポジウムでは、教育のイノベーションの一環であるPBL型授業を体験できる「思考力セミナー」も開催します。その体験は、新キャンパスで行われます。

(予定図)

生徒が成長する授業を体験し、成長をサポートする学びの空間として新キャンパスを、シンポジウムで見学できます。2020年大学入試改革によって学習指導要領も変わりますが、それは新しい授業、新しい教育空間を必要とします。

(探究に没入できるおしゃれな図書館はすでに完成)

教育は、精神と身体と環境の相互作用で行われます。教育が変われば、授業や学びの空間も変わります。授業や教育空間が変わらないまま、カリキュラムが変わっても、十分に新しい学びの目標を達成することはできません。

(予定図)

ですから、2020年を前に、その準備をする必要があります。ほとんどの学校がその準備ができていない中、いちはやく静岡聖光学院はそのj準備を着々と行っています。9月2日のシンポジウムで、新しい教育の質とそれを生み出す新キャンパスを体験しましょう。

 

 

八雲学園のスーパービジョン

予測不能な時代がやってきたと昨今喧しいが、正解が1つでない不確実な時代の到来という意味では予測ができているとポジティブに考えるのが八雲学園である。
 
したがって、同学園のミッションは、そのような予測不能で不確実な時代にあっても、八雲生が、時代に翻弄されないタフな心身を身につけ、ポジティブな世界を創る精神を身につけ、世界の痛みを共有できる感性を身につけて羽ばたいていけるトータルな21世紀型教育を実践することである。 by 本間勇人 私立学校研究家
 
 
 
そのような八雲生が、大学に進み、社会に出たときに、グローバルな社会貢献をしている姿が見えている。そういうスーパービジョンを八雲学園の教師も生徒も共有している。それは決して抽象的なことではない。
 
たとえば、卒業生が教育実習にやってきて、世界のエスタブリッシュな私立学校からやってきた交換留生と英語で対話しながら、学園生活を楽しんでいる姿を、日常的にみることができるからだ。
 
毎月のように世界各国から交換留学生が来ていて、在校生や教育実習で戻ってきたOGと英語で対話しているシーンが日常的になっている学校は、インターナショナルスクールであれば、可能だろうが、ふつうの一条校であるのかといえば、ほとんどないと言っても言い過ぎではない。
 
 
このことが可能なのは、実は八雲学園が「ラウンドスクエア(以降RSと表記)」という世界各国のエスタブリッシュな私立学校180校が所属しているコミュニティの加盟を許されているからだ。
 
国際バカロレア(IB)というシステムは、スーパーグローバルエリートを輩出する組織で、最近広く認知されるようになったが、このIBを創設したクルト・ハーンが、グローバルな政財界人育成より、さらに人間力に焦点を当てたエスタブリッシュな教育を行う同士を集めたいと結成たのがラウンドスクエア(RS)である。
 
ハーンは、ナチの迫害に命をかけて戦った。だからこそ絶対平和の世界をつくる未来の本物のエリートを生み出す環境を創りたいという想いを有していた。そのハーンの想いが込められているIB以上の教育力をもったコミュニティ、それがRSであるといえるかもしれない。
 
このコミュニティの加盟校は、みな同士であるから、明日八雲学園に行きたいのだけれどといえば、もちろん待っているよという関係なのである。
 
年に1度の国際会議やエリア会議が行われ、そこに加盟校の生徒が集い、互いの学校のプログラムの体験や議論を通して、世界を変える意志と精神を共有していく。
 
八雲学園は、この世界トップクラスのコミュニティと活動を共にするようになったのだ。この極まりなく重要な教育について、一般には、まだ気づかれていないが、心ある受験シンクタンクや情報誌、経済誌は取り上げるようになってきた。
 
しかし、宣伝のためにRSとコラボレーションしているわけではないから、右顧左眄せず八雲学園は邁進している。同コミュティには、もちろん、近い将来世界を動かす政治家や経済人、学者になる人材ばかりが存在しているのである。当然、八雲学園もそうなる使命が、RSに加盟できる条件なのである。
 
したがって、加盟したいからと言って、気持ちだけで加盟できるわけではない。その使命を実現できるかどうか審査されて、認定されなければ加盟できないのである。
 
 
だから、八雲学園はここに到達するまでに、様々なプログラムを猛スピードで積み上げてきた。事前事後を合わせて9カ月の留学システムも充実させてきた。英語力だけではなく、英語で世界の問題解決を思考して発信する力がRSでは求められるからだ。
 
そのためには、ハイレベルなディスカッション能力とエッセイライティングの能力、そしてプレゼンテーション能力がなければならない。そこで、UCサンタバーバラで、英語力と思考力をトレーニングする八雲学園独自のプログラムをデザインしてきた。
 
この9カ月留学は高1と高2の生徒が12人選抜されるかなりのレベルを要する。何せ八雲学園は最終的にはCEFR基準でC1レベルの英語を目指していて、海外大学で英語で議論ができる状態まで成長する生徒の環境を整えているのである。
 
もちろん、全員がそうなるわけではないが、すべての生徒にその挑戦は開かれている。そして、ただ頑張れ!と促すだけではなく、八雲の姉妹校でありRS加盟校でもあるケイトスクールで3週間学べる高校生用の留学プログラムも創っている。
 
 
また中3には、全員がサンタバーバラの八雲レジデンスを拠点に、UCサンタバーバラで2週間の短期留学プログラムも用意されている。
 
全員が一定水準の英語力をトレーニングし、さらに英語力をC1レベルまで伸ばしたい意欲の高い生徒には、その機会が開かれているのである。
 
また、全員が一定水準の英語力を有しているからこそ、RS加盟校から交換留学でやってきた留学生と日常生活を楽しめるのである。そして、楽しむだけではなく、そこで刺激を受けて、海外に目を向ける生徒も新たにでてくる。この中学から高校までのレベル別留学プログラムとRSの交流は大きな相乗効果を生んでいるのである。
 
 
八雲学園のグローバル教育の優れている点は、もう一つある。それは一年中、英語を活用する行事が満載になっているといいうということなのである。英語は普段から活用しなければ上達しない。授業や行事、留学という立体的なグローバル教育3.0のシステムが完成しているのが八雲学園のグローバル教育なのである。

富士見丘 Global Immersionの挑戦

2日間に渡って、明海大学浦安キャンパスで、同大学ホスピタリティ・ツーリズム学部主催のサマースクールが行われている。オールイングリッシュでレクチャー、ディスカッション、グループワークなどのハードなアクティビティが行われる。

大学の講義やアクティブラーニングを丸ごと体験する。ハワイの観光について、マーケティングの切り口で学際的に研究するのである。イングリッシュイマージョンではなく、グローバルイマージョンそのものであるが、多くの中3と高1の富士見丘生が挑戦。1日目を取材した。by  本間勇人 私立学校研究家

(サマースクールは、明海大学浦安キャンパスの図書室で開催。講義スペースとグループワークスペースなどアクティヴィティごとに分かれている贅沢な環境)

内苑孝美教授(ホスピタリティ・ツーリズム学部長)からの挨拶は、グローバルな学問が行われている同学部らしく、ウィットに富んだ話だった。隣接のディズニーランドの話がフックになり、参加者のマインドセットを行ったのである。ディスに―ランドも今回のテーマであるハワイにしても、多くの人々がいかに魅力を共有できるのか、それはマーケティングや心理学などの学際的な問題であるという2日間のサマースクールのトリガーとなった。

今回のサマースクールのミッションテーマは、「ハワイに旅行する日本の若者の数を増やすにはどうする?」。もちろん、この具体的な学びを通して、観光産業のシステム、経済のシステムという背景、さらにグローバルな動きを考えることがねらいである。

レクチャーは、ハワイ大学のラッセル・ウエ ノ教授を招いて行われた。ハワイの観光をテーマに、ハワイ大学の授業そのままを体 験できるグローバルイマージョンの環境をこの2日間のサマースクールのために準備されていたのだ。明海大学は、海外の提携大学とネットワークを築いているが、ハワイ大学もその1つ。

すでに、生徒は、厚手のハワイの観光についての英語の資料がPDFで配布されていて、それを理解したうえで、授業に立ち臨む。このような反転授業スタイルは、欧米の大学では当たり前で、そこからグローバルイマージョン体験が始まっていた。

ラッセル教授の講義の構造は、極めてシンプル。まずそれぞれの生徒が反転授業で、マイイメージを膨らましてきているから、ハワイの多様な観光のスポットを多くのビデオを活用しながら講義。ビデオを見る授業ではない。ビデオを流しながら、具体的な観光産業の展開の視点を生徒といっしょにメタ認知していく。こうして、ハワイの観光産業の実態をダウンローディングしながら、メタ認知を刺激していく。マイイメージが、パブリックイメージに広がり共有できる流れになっているのだ。

そして、次にハワイの観光産業が、世界からクライアントを呼び込むマーケティングのスキルを、これまたビデオを活用して講義をしていく。今度は、先にダウンローディングの中で、気づいただろう生徒たちのメタ認知を、観光のためにつくられたビデオに当てはめて検証していく。

つまり、ラッセル教授は、マーケティング手法を一方的に講義するのではなく、生徒と共に手法を創り上げていくのである。講義でありながら、アクティブブレインを生成する授業デザイン。

講義のあと、チームに分かれてワークショップを行い、実際に役立つ企画案を編集、創造していく準備としての意味もあったと思う。それにしても、大学の講義は、たんに方向性を示すものではない。実際に役立つ視点=考え創出するスキルを共有するものである。

白熱授業は、いったん終わり、脳に栄養を補給するため、ランチタイムとなった。観光産業に多くの優秀な人材を輩出する明海大学だけあって、学食スペースというより高級レストランというスペースで、生徒たちはランチをとった。

ランチ終了後、ラッセル教授の白熱授業は再開。海外では、質問や提案を出さないのは、フリーライダーとしてルール違反だから、生徒たちはいろいろな質問を考え、もちろん英語でラッセル教授とやり取りをした。

富士見丘学園の理長長補佐・校長補佐の吉田成利先生は、明海大学の講師でもあり、今回のサマースクールのプロデューサ―。吉田先生ご自身、イギリスやアメリカの大学院やロースクールで学び博士号を取得している。

そういう経緯もあって、今回はラッセル教授ともコラボレーション。生徒たちにもっとシンプルな英語で質問してみようと、英語で生徒たちとやりとりをしたり、英米流儀のインプロ手法で無茶ぶりをして、質問が出てくるようにファシリテーションを務めていた。

ラッセル教授と魅力的な観光を生み出すマーケティング視点を共有できたところで、明日に向けて効果的なプレゼンエーションとは何かについて、三輪祥宏教授による講義があった。もちろん英語でである。

ここでも、プレゼン内容を編集する視点、オーディエンスを巻き込む方法論など、ポイントタッチで整理されたスライドで明快に英語で解説があった。

そして、いよいよグループワーク。ファシリテータは、明海大学の教授陣。なんて贅沢な!もちろん、英語でディスカッションや編集制作は進行していた。

図書室は、ラッセル教授や三輪教授が講義をしたレクチャースペースだけではなく、そのすぐ隣は、グループワークスペースになっている。開放的にリラックスして話し合えるような空間がデザインされている。

富士見丘の英語科教諭の田中先生も、パーティスペイティブオブザーバー(参与的観察者)として、生徒たちを支援していた。

本格的なワークショップは、2日目に持ち越される。ラッセル教授と共有したメタ認知、すなわち、観光領域として、文化的リソース、スポーツ、音楽、アート、食、環境、経済、マインド等以外に何を新たに提案するのだろうか。

イベントやアクティビティ以外に新しいコンテンツはいかなるものを発想するのだろうか。

そのために、どんなコミュニケーションや新しいネットワークをつくるのだろうか。

なんといっても、ハワイの観光のマインドコンセプトは、自由×冒険×恋以外に何を掲げるのだろうか。

今回のテーマ「ハワイに旅行する日本の若者の数を増やすにはどうする?」をどのように考えるのだろうか?しかし、これはすでにラッセル教授とのディスカッションの中にそのヒントがあった。頻繁に、もしあなただったらどうする?というやり取りがあったのである。テーマの中のフレーズ「日本の若者」は、要するに、もしあなただったら、どうすると置き換えられるだろう。

自分たちが行きたいドリームハワイを創ってしまえばよいわけである。2日目のグループワークは白熱することになるだろう。それに、すばらしい効果的なプレゼンテーションで幕を閉じるだろう。

そして、なんといっても、サマースクール終了後は、隣のディズニーランドで、アフター6パスが待っていることだろう。

 

 

21世紀型教育機構 新次元教育の挑戦(3)グローバル教育3.0

本機構が、21世紀型教育の実践をゴールにすることから、新次元へジャンプする跳躍台にシフトしたのには、時代の精神を読み解きながら、守るべきものは守り、変えるべきところは変えるという、理念と革新の両方の関係の最適化を試行錯誤してきた結果である。

【表1】

1980年代から2010年までは、まだグローバル教育1.0の時代だった。CEFRという基準は、すでに欧州評議会が作成していたが、これが今ほど、日本国内で、認知されるようになるには、もう少し時間がかかった。授業のスタイルも講義形式で、それに対し何の疑いもなかった。海外の研修も多くは語学研修どまりであった。インターネットも1995年ウィンドーズ95のインパクトを超えるものではなった。

思考力も、知識を憶えこみ、それを頼りに、与えられた文章やその他の情報を理解することこそが思考することだと思われてきた。それが如実に反映していたのが、センター試験である。

ところが2011年以降、SNSの浸透力やWiFiの広がり、スマホのグローバルな広がりはすさまじく、あっという間に、Web2.0の時代にシフトした。それまでのビジネスは、B2Bが中心だったのが、B2C、C2Cへの移行も多くみられた。インタラクティブなやり取りが、経済領域にグローバルに広がったのである。個人の時代への兆候でもあった。

また、ジャスミン革命の影響は良くも悪くもグロバリゼーションの次のステージを用意した。グローバリゼーションの光と影が、Webを駆け巡って、広く知れ渡ることにもなった。もはや一望監視装置ではなく、ネットワークは相互監視装置にもなったといわれるようになったのもWeb2.0の時代の特徴である。

こうなってくると、海外研修も、一方通行型ではなく、自分の思考力は応用・論理にまで高次思考が要求されるようになったし、意志決定も自分で判断しなければならなくなった。それが留学が広まった大きな契機だったのだろう。

英語力も4技能を駆使して、海外でプレゼンテーションできる力が必要とされた。サンデル教授の白熱教室やTEDという番組が、それに拍車をけることになったのは記憶に新しい。

このグローバル教育2.0は、2020年の大学入試改革にも大きな影響を与え、高次思考力、4技能英語など話題に事欠かなくなり、センター試験に代わり、大学入学共通テストに移行することになった。選択式問題のみならず、記述式問題も加わるのだから、たしかに高度な思考力が要求される気配が漂ってきた。

このグローバル教育2.0を受け入れるかどうか、教育現場は混乱も続いているが、21世紀型教育機構は、受け入れる前に、先に進んでしまった。そして、試行錯誤しながら取り組んでいるうちに、グローバル教育3.0という今までとは異次元の教育に遭遇し、そこに行き着いた自分たちのパワーに驚きつつも、さらに邁進することにした。

その象徴的な動きが、グローバルイマージョンという現象である。英語のイマージョンのレベルを超えて、海外と日本の生活の境界線がボーダレスになっているのである。グローバル教育2.0までは、一握りの生徒が留学の恩恵に浴することができたが、グローバル教育3.0では、海外に留学しようが、国内にとどまろうが、英語の授業以外の授業も英語で行われたり、ネイティブスピーカーの教師が10人前後も学園生活を共にしたりしている。

したがって、すべての生徒が言語のみならず文化や生活なども日常生活そのものがグローバルな状態になっている。一部のエリートのみが、グローバル教育を受けるのではなく、21世紀型教育機構の加盟校のすべての生徒が、いつでもどこでも丸ごとグローバルな生活に浸れるようになる。

フィリピンやメキシコの大統領が、必ずしもエリート教育を受けていなくても、個人の力量で選ばれる時代が、すでにやってきているが、これはグローバル教育3.0にシフトすることが必然的な時代の流れであること示す出来事でもあろう。

シンギュラリティ―やインダストリー4.0などを待つまでもなく、Web3.0はすでに到来している。AIはいたるところで活用され、将棋や囲碁、大学入試問題などの場で人間と対戦し、AIの勝利に、多くの人が驚愕してきたが、すでに株価の予想にまで活用されるようになった。自動車のシステムにも組み込まれ始めている。また、IoTは家電に組み込まれ、すでに日常生活が遠隔操作できるようになっている。 

授業も、オンラインシステムをアプリを活用して、海外と英語でディスカッションしながら進めらるようになった。リアルな空間だけではなく、ヴァーチャールな空間でも、グローバルイマージョンは展開している。

こうなってくると、CEFR基準でC1レベルの英語力が必要になるのは当然だし、ディスカッションや対話が授業をはじめとする知的な場で、不可欠になる。海外との交流は、当然世界の共通する問題であり、SGDsのグローバルゴールズを到達するには、自分たちは何ができるのかという対話になる。

具体的な解決策を論じるときに、批判的・創造的思考はもちろん必要だが、その実行プランには、STEAM領域のスキルが必要になる。いわゆるオーセンティックな教育が展開するようになる。

このようなグローバル教育3.0は、いますでに始まっており、今後ますます広がっていく。大学もその選択肢として海外にも広がる。知的好奇心は、多様な中でこそ豊かになり、アイデアもまたそうであるから、これは自然な流れだろう。

そうはいっても、日本の教育において、この流れは、まだまだ緩慢で、よどみかけてもいる。21世紀型教育機構の加盟校は、この流れを加速する突破力を発揮しようとしている。2018年を、「グローバル教育3.0」のターニングポイントとして宣言したのには、このような背景があったのである。

 

 

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