C1 英語

文化学園大学杉並 IBディプロマ修了者も驚嘆するダブルディプロマ(1)

文化学園大学杉並(以下、文杉)を訪問しました。ダブルディプロマコースの成果を知る上で、IBとの比較も有効な視点になるだろうと考え、欧州のインター校で昨年IBディプロマを取得した高木美和さんに取材してもらいました。 by 鈴木裕之:海外帰国生教育研究家

久しぶりにインターナショナルな雰囲気に触れて、とても新鮮で刺激になりました。自分はIBを修了したこともありDD(ダブルディプロマ)には興味がありましたが、実際に見学してみて、日本で行われているとは思えないほど自然に英語が飛び交っている授業に正直驚きました。 by 高木美和:早稲田大学教育学部1年

 
 
最初に入った高校2年生の教室では、3つのグループに分かれて、それぞれパソコンを囲んでプレゼンテーションの準備をしていました。先生に対する質問はもちろん、グループ内の会話も英語で行われています。トピックは第一次世界大戦で、カナダとの関わりから大戦の影響を考えているのが印象的でした。
 
 
大戦の前期、中期、後期をそれぞれのグループでまとめ、グループのメンバー同士が違うグループから情報を入手し、それぞれの持っている情報をシェアする「ジグソー法」と呼ばれるスタイルで学んでいました。どの生徒もリラックスした心地よい雰囲気の中で、まじめに取り組んでいます。
 
次に入ったのは高校1年生の教室。BCプログラムの校長であるダン先生が「Planning」という授業を行っていました。
この授業は、生徒の視野や可能性を広げることを目的に、多種多様な仕事について知るというもので、IBディプロマでもこのような授業を経験したことはないため、非常に興味深く拝見しました。職業のイメージを高校生の段階で持てるのは有意義ですし、同時にうらやましいとも感じました。
 
この日はLawyer(弁護士)についての授業でした。生徒たちは輪になって並べられた椅子に座り、ダン先生と対話します。まずダン先生が口を開いて尋ねたことは、「弁護士って何をする人?」でした。
となり同士で話し合った後、それぞれの生徒が考えたことを発表します。
 
 
この授業の運び方はダン先生が意識するアクティブラーニングの一つです。先生が前に立って、「弁護士とはこういうことをする人だ」と説明するのではなく、逆に生徒たちに質問を投げかけていくのです。「Answerではなく、Questionを与えることが生徒の学びをサポートすることにつながる」と、授業後のインタビューでおっしゃっていました。
日本の生徒は人前で自分の意見を発表することをあまりしない、そしてそこで間違えることを嫌うとよく言われます。しかし、この授業を受けている生徒にはそれはまったく感じませんでした。それはなぜか。ダン先生によると、DDには4つのルールがあるからだそうです。このルールこそが生徒が進んで発表をする秘訣なのです。
 
DDの4つのルール
1.I can do it (私はできる)
2.It’s okay to make mistakes (間違えてもいい)
3.It’s okay to say “I don’t understand” (わからなくてもいい)
4.Someone’s always there to help (助けてくれる誰かはいつもそばにいる)
 
先生方の働きかけによりこのルールは生徒たちに浸透し、自由に発言する力が身についていると感じました。実際、分からないときにはその場で説明を求める生徒が何人かいました。英語でコミュニケーションするとき、分からなくてもそのまま流してしまうことは、経験上よくあることですが、文杉の生徒たちは、質問することが学びに繋がるということをしっかり理解しているのだと思います。そしてこれが短期間で英語を飛躍的に上達させた一つの理由でもあるのでしょう。すでに英検1級が2名(1次試験合格者)と準1級が3名という実績があるそうで、近い将来全員が準1級を取得できるとお話されていたのは、決して誇張ではないと感じます。このような4技能を測定する英語資格は大学進学などの明確な指針となる以上に、コミュニケーションが不自由なくできるようになるための目標になり得るところに私は価値を感じます。海外での生活を通して感じたのは、正しい文章を読んだり書いたりすること以上に、人を相手にしたときに瞬時に言葉が出てくることの重要性です。議論はあっという間に次の展開へと移っていきますから、いちいち立ち止まって正しい表現を考えていてはついていくことができません。文杉の生徒にはこういった「英語で議論する力」がついていると実感しました。
 
 
ダン先生はこれまでにも様々な国で授業を行い、校長として17年間生徒を教え続けてきたそうです。そんなダン先生は文杉の生徒が一番優秀だと太鼓判を押していました。その理由は数学と化学の成績にあります。バンクーバーの生徒と同じ試験を受けさせた結果、文杉の生徒が平均点で彼らを上回ったのです。(全BC州カリキュラム45校で1位)勤勉な日本人の性格も一つの理由ですが、BC州が世界で初めて文杉で試みたCo-teachingも理由の一つです。Co-teachingとは、同じ授業を英語と日本語の両方で行い徐々に生徒たちが英語だけでも理解できるようにしていく授業です。クラスを見学させていただいた際も外国人の先生と日本人の先生の両方が生徒たちのグループワークを見て回り、生徒が苦労している部分を説明していました。驚いたのは生徒たちが使っている教材がすべて英語で書かれた、分厚り海外のものだったことです。通常日本語でやるような生物の勉強を彼女たちは辞書の力を借りながらもしっかり行っていました。
 
 
もう一つ海外の仕組みによく似ていると感じたのがassessment rubricを使った評価法です。文杉の廊下を歩いていると生徒たちの作ったポスターなど様々な課題が目に入ります。それぞれまるで違う題材について作られているように見えるそのポスターには明確な評価基準がありました。これはIBと同じ仕組みで私にも馴染みがあり少し懐かしさを感じました。
まだ海外での学校生活にそれほど慣れていないころ、なんでもいいから論文を書きなさいと言われ困ったことがありました。内容は思いついてもどこからどう書けばいいのか本当に手も足も出ない状態でした。それをサポートするのがこの評価基準です。構成力、分析力、単語力など細かくレベル分けされ、それに沿って生徒は自分が興味の持てる議題についてまとめる。これは自ら学ぶという姿勢を引き出させるのに最適な方法だと私自身の経験でも感じました。
 
DDは日本と海外の履修科目を両方こなす必要があるということで、最初は、生徒たちにとっては負担も大きいのではないかと思いながら授業を見学させていただきました。しかし、むしろ自ら学ぼうという姿勢が一人ひとりの生徒から感じられ、私自身よい刺激を受けました。また、日本とカナダのバイカルチュラルな教育環境は、日本人としての美徳も忘れず、グローバル社会にも適応できる人材を育てるのに最適だと感じました。 (続く)
 

 

富士見丘 模擬国連部 C1英語レベルの頼もしさ

今年の4月、富士見丘中学高等学校(以降「富士見丘」)は「模擬国連部」を立ち上げた。高校生が「国連大使」になりきって決議案を出し、他の国と交渉する「模擬国連」の活動に参加する機運が学内で盛り上がった。

同校はSGH校であることもあって、在校生は持続可能な開発を中心にグローバルイシューへの関心が高い。また、SGHプログラムや多彩な高大連携プログラムによって問題解決能力、英語によるプレゼンテーション力など日頃から学んでいる。「模擬国連」の教育プログラムと同期するのは必然的な流れだったことだろう。

夏の合宿を経て、活動はさらに進化していく。その部活動の1コマをご紹介する。(by 本間勇人 私立学校研究家)

 

今年4月に立ち上げたばかりであるが、すでに夏の合宿のあとのコンクールで(上記写真)、入賞するなど、成果があらわれている。その進化の速度に驚き、部活動を見学させてもらった。

(夏の合宿の様子)

すると、そこには、異次元の光景が広がっていた。英語でリーダーシップをトレーニングをしているのかと思えるほど、ネイティブスピーカーの先生や吉田成利先生と英語でディスカッションをしていたのである。

(吉田成利先生は、同校の校長補佐であると同時に、明海大学の研究者で、ロンドン・キングス・カレッジやシカゴ大学で研究し、法学博士Ph.Dを取得している憲法学者。つまり、富士見丘の模擬国連部は、いわば法科大学のゼミと同じレベル。いや、日本の大学の学部のゼミと大きく違うのは、オールイングリッシュだということ。この違いは極めて重大事である)

一般に、模擬国連の活動は、選ばれた数名の生徒が挑戦するが、富士見丘は部活動で行っていくから、相当の人数がメンバー。にもかかわらず、全員が英語で、「決議案」を組み立てるために、ディスカッションし、ライティング活動を行い、プレゼンテーションするのである。

しかも、国連が掲げるグローバルゴールズを解決するために議論をするのである。この重要性はわかるだろうか?NHKテキストのサイトで、CEFR基準が簡単に次のように紹介されている。

C1
 
広範で複雑な話題を理解して、目的に合った適切な言葉を使い、論理的な主張や議論を組み立てることができる
 
B2
 
社会生活での幅広い話題について自然に会話ができ、明確かつ詳細に自分の意見を表現できる
 
B1
 
社会生活での身近な話題について理解し、自分の意思とその理由を簡単に説明できる
つまり、富士見丘の模擬国連部の英語のレベルはC1レベルの環境ということ、わかりやすく置き換えれば、「英検1級」ということなのである。世の中には、CEFRテストは存在しないから、スコア化できないが、模擬国連部のメンバーが、TOEFLやIELTSに挑戦したら、相当な成果をだすことだろう。
 
 
(生き生きと英語で対話するメンバー)
 
吉田理事長・校長も、部活を見学しに来て、「ところで、この今の高度な英語でのやりとりは、100%理解しているのか」と尋ねると、当然ですと反応があったのにも驚いた。というよりも、珍しく校長が日本語でたずねたので、生徒たちが、一瞬戸惑ったぐらい、英語圏になっていたのだ。
 
 
吉田校長は、自ら堪能な英語力の持ち主である。これまで、日本の英語教育を、自らが英語を駆使して牽引してきた。在校生の海外留学先の契約も、提携校に単身乗り込んで交渉してきた。イギリスやオーストラリア、米国西海岸の研修旅行も自ら率いてきた。
 
しかし、SGH校として、教師が一丸となって動き始めると、吉田校長が行ってきたことが、校長補佐吉田成利先生を中心に、多くの先生方にエンパワーメント(権限移譲)される展開になってきたのである。英語で交わされているディスカッションのさ中に、ふと校長は自然に日本語で話してみたいと思ったのではないか。もはや、自分が先頭にたたずにも、教師と生徒がこんなにC1英語を使っているのだからと。
 
 
生徒が「議決案」をプレゼンすると、すぐに吉田成利先生が、丁寧にコメントを返す。もちろん英語でだが、この方式こそ、イギリス流儀のチュータリング方式である。
 
 
2020年大学入試改革に伴って学習指導要領の改訂作業が進んでいる。その中で最も話題を呼んでいるのが、アクティブラーニングであるが、この富士見丘の模擬国連の活動こそ、深いアクティブラーニングのロールモデルだろう。何といっても、英米の名門大学院のゼミ形式がそのまま展開しているわけだから。

八雲学園 C1英語の学びの環境 着々

八雲学園の英語教育は、CEFR基準でいうC1レベルの学びの環境を設定し、実際にB2からC1レベルの生徒が、毎年50人くらい育っています。C1レベルの生徒というのはどんな感じか、帰国生も含めて日本人ばかりの生徒がいる中高一貫校では実感できないかもしれません。

しかし、八雲学園には、イエール大学やケイトスクールの生徒が訪問し、国際交流が行われますが、イエールやケイトの生徒をもてなすには、すでに八雲学園が英語のレベルC1を目指さなければ、このような国際交流を行おうと思いも及ばなかったでしょうし、そもそも相手にされなかったでしょう。(本間勇人 私立学校研究家)

(米国超名門校の典型的なソクラティックメソッドによるゼミスタイルの学び。ケイトスクールのサイトから)

イエール大学が、300年以上も歴史がある米国の名門大学で、アイビーリーグのメンバー大学であることは、有名です。一方米国の高校となるとまだまだどこの高校が名門なのかさえ、日本では知られていないのが現状でしょう。

ケイトスクールは、イエールをはじめとするアイビーリーグやMIT、スタンフォード、UCバークレーなど世界大学ランキング100位以内の大学に入る生徒ばかりが通う高校です。一学年75名で、全寮制の学校ですから、学費や生活費など合わせると、年間600万円弱かかります。

いわゆるノーブレス・オブリージュの生徒であることが大前提の生徒が通う共学校です。ですから、女子校である八雲学園も安心してケイトスクールの男子生徒をホームステイで受け入れます。

ですから、こちらから交流を申し込んで、はいわかりましたと了承してくれるような高校ではないのです。八雲学園が中学再開して以来の交流が続いているのは、ケイトスクールが日本中の高校をリサーチした結果、ケイトスクール側から八雲学園に交流を申し込んできたのです。

それは、茶道や武道に代表される日本人の高い精神性が養われる学校だとケイトスクールが認めたからです。C1レベルというのは、英語に限らず、実は言語活動そのものが、そのような高い精神的活動ができるレベルのことを意味し、たんにTOEFLなどの英語資格試験のスコアが高いことを意味しているわけではないのです。

ケイトスクールの生徒は、箱根に行ったり、京都に行ったり、2週間くらいのジャパントリップのスケジュールに、やりたいこと見たいことをギッシリ詰め込んでいます。それだけ貴重な体験に対し、貪欲で好奇心旺盛です。八雲学園の在校生やOGの家庭にホームステイしながら、八雲学園を日本文化や社会の学びの拠点として動いているのです。

私が取材に行った午後の時間帯は、八雲学園の先生方と茶道の体験をしていました。午前中は、空手の体験をしていたそうです。つまり、岡倉天心の「茶の本」や新渡戸稲造の「武士道」を貫いている「道」について学んでいたわけです。

お茶のお点前を体験している時には、途中まではきちんと正座していましたが、さすがにしばらくすると椅子に座ってお茶をたてていました。日本人も今や正座は得意ではないから安心してくださいと先生方の気遣いがすてきでした。

いずれにしても、ケイトスクールの生徒は全員日本語を学んでいる生徒が訪れているので、当然ですが日本語でやりとりしているのですが、なんとも不思議な茶室の空間となりました。それはともかく、ケイトスクールをはじめとする米国の超名門高校では、第二外国顔をいくつか学ぶのは一般的です。榑松先生によると、ケイトスクールの生徒も、日本への興味と関心のきっかけは、「ナルト」や「千と千尋の神隠し」などアニメだったようです。

その好奇心からもっと日本を知ろうと思うようになったときに、日本語を学ぶのは当然で、日本語を学ぼうとして学んだわけではないのです。もちろん、グローバル時代ですから、アジアやアフリカで活躍する夢もあるのでしょう。日本語以外に、中国語やフランス語も学ぶというのは、そういう理由もあるのです。

八雲の生徒は、中3のときサンタバーバラのレジデンスで1ヶ月ほど学びます。そのとき、各チームに1人ずつ、ケイトスクールの日本語を学んでいる生徒が、チューターの役を買って出てきてくれます。その彼らが、日本にやってくるのです。八雲の生徒にとって、英語を学ぶことは、大学受験勉強のためだけの目的ではなく、グローバルな世界で、相手の国の文化を学ぶための言語活動の一環であることを、チューターのケイトスクールの生徒と生活を共にしながら、実感してきているのです。

(お昼は、いっしょに調理をしてランチをしながら、会話が弾んでいました。引率の先生は2人で、1人は日本語は話さないので、八雲生は英語で会話。そのシーンです。)

もちろん、2020年大学入試改革によって、英語4技能の試験はB2以上要求されてきますから、八雲生にとってたいへんアドバンテージが高くなるわけですが、それは時代が八雲に追いついてきたということでしょう。

それにしても、ケイトスクールの生徒が箒や雑巾をつかって、八雲学園の生徒といっしょに掃除までしていました。彼らに尋ねると、これも日本の精神がやどっている行為だから、ぜひ経験してみたい活動の1つとして、予めプランしてあったそうです。

掃除に日本の文化の精神が宿るとはどういうことなのでしょう。私たち日本人が忘れてしまったかもしれない大切な心を、八雲学園の生徒はケイトスクールの生徒と見出し、共有しているのでしょう。それが両校の長い間の交流を可能にしている大きな理由であると確信に到った取材となりました。

文化学園大学杉並 新しい女子校モデルのインパクト(2)

DDコースの存在や活動が他のコースや学校全体に対しては何か影響を及ぼすということはあったのでしょうか。
 
青井先生:
教員の意識が変わりましたね。DDコースを始める当初は、帰国生でもない普通の生徒が英で科目の学習をすること、しかも日本の教科学習をしながらそれを進めることは無理だと考える教員もいました。ところが、この数ヶ月で英語でのコミュニケーションに困難を感じなくなっている現実を見て、考え方が変わってきたようです。そして実際にDDコースの授業を見学したり、アクティブラーニングの研修を行ったりと良いところを積極的に取り入れようとし始めています。
 
DDコースの授業を見学すると、みな口を揃えて、生徒がよく発言することに驚くのです。当てられなくても自分の意見が言えるのは確かにDDコースの生徒の強くなった点で、そういう姿を見ると本当に頼もしいというか、世界で活躍できる人材に育ちつつあると実感します。その雰囲気が教員を通して他のコースにも広がっていくような好循環も生まれつつあります。
 
それと、少しDDコースから離れますが、今後は文化学園大学への注目も集まるのではないかなという気がしています。これまでもファッションに関心のある人が付属である本校に入学し、ファッションショーなどで高い評価を得ていましたが、大学の方はファッション部門で今世界大学ランキングの2位になっているのです。海外から学ぶばかりではなく、世界に発信するという意味でグローバルな大学と言えますし、人工知能には真似のできないクリエイティビティを発揮するアートの分野ですから、その存在意義は高いと思うのです。
 
確かに、様々な才能が活かされるという意味で、今までにない女子校のモデルですね。海外大学進学、グローバル市民教育、C1英語、アクティブラーニングと何でも揃っている感じですね。
 
青井先生:
英検で言えば、DDコースは1級、CEFRでのC1レベル、難関進学は準1級、英語コースは2級というのがしばらくの間の現実的な目標です。今後の社会での英語の必要性を考えると、教員も英語Nativeにどんどんシフトしていく方向で考えないと対応できないかなと感じています。
 
思考力テストに関しても10数名の教員によるプロジェクトチームを編成して取り組んでいます。アクティブラーニングや探究型の授業を進める上で、科目の枠を超えたテストは必須になりますから、力を入れていきたいと思います。先ほどお話したカナダ方式の評価を導入する計画も進んでいるので、授業のあり方はこれまでとは随分変わっていくことになると思います。
 
(インタビューを終えて)
インタビューにお邪魔したのは、新年明けたばかりの1月4日。世の中はまだお正月気分の最中でしたが、青井先生はすでに前日の3日から学校に来て、諸々の準備をしているとのことでした。勢いのある学校というのは、このような先生方に支えられているのだということを確認しました。
 
1時間半に及ぶインタビューでも、青井先生の表情が自信に満ちていて、ダブルディプロマコースに対する確かな手応えを感じていることが伝わってきました。文大杉並の教育内容が新しい女子校のモデルとなってこれから深化していくのは間違いなさそうです。

文化学園大学杉並 新しい女子校モデルのインパクト(1)

文化学園大学杉並(文大杉並)は今最も注目すべき女子校の一つです。カナダブリティッシュコロンビア(BC)州のカリキュラムを取り入れたダブルディプロマコース(以下DDコース)は、文大杉並の教育を21世紀型教育の最先端へと連れ出しました。DDコース自体の魅力もさることながら、DDコースでの取り組みが、他のコースの生徒や教職員への大いなる刺激となり、学校全体にその影響が広がっています。BC州カリキュラムの導入を推進した中心人物である青井教頭先生にお話を伺ってきました。(聞き手&編集  鈴木裕之:海外帰国生教育研究家)

 
DDコースが2015年春に本格始動して、2学期が過ぎました。これまでの成果について教えてください。
 
青井先生:
 
当初の予想をはるかに上回る成果で、導入して本当に良かったと思っています。高校のコースではありますが、中学入試をするご父母からの反響も数多くあり、やはりグローバル社会への対応という意味での関心の高さをひしひしと感じています。反響は入学を希望されるご父母からばかりではなく、卒業後の進路先となる大学からも様々なオファーが来ており、驚いています。従来は本校のことをあまりご存知なかったような (笑)有名難関大学がいくつも、推薦枠のお話や入試制度についてのご説明をしてくださるようになっています。一体何があったのかと当惑しているほどです(笑)
 
さらに一番驚いているのは、生徒の変わりようですね。正直に言えば、カナダに5週間のホームステイをする夏までの間は、実際にダブルディプロマコースが機能するのかどうか、生徒自身も不安があったと思うのです。それがカナダから戻って来たあたりから、主体性が俄然変わってきまして、英語はもちろん、日本の教科でもどのコースの生徒よりも高い点を取っています。実力模試の結果などを見ても、クラスの半数の生徒が偏差値70以上を取るなど、めきめき力をつけているのが分かります。生徒がやる気になるとこんなにも力を発揮するのかと本当に驚いています。
 
 
生徒がそんな風に変わるのは、DDコースのどういうところに鍵があるのでしょう。
 
青井先生:
まずは「評価」の仕方ですね。BC州の評価の仕方は、他人と比べる相対評価ではありません。毎回の授業への参加から始まって、レポート・プレゼンテーションや提出物の出来、そして小テストの結果など、本当に細かく毎回の得点を記録し、その積み重ねが自分の到達度となってパーセンテージで示されるものになっています。こういった成果が本人も親もわかるようになっています。ですから定期試験だけではなくふだんの授業も真剣に取り組む必要が出てくるし、努力したことを先生はきちんとフィードバックしてくれるので、それがやる気にもつながっていくわけです。もちろんカナダから本校に来て教えてくれている先生が優秀だということも大きいのでしょうけど、いわゆる形成的評価が生徒の力を引き出しているというのは実感します。プロヴィンシャルテスト(BC州のディプロマ取得のための最終試験)の比重は2割しかなくて、あとの8割はふだんの授業における評価なのです。それで進める大学も変わってくるので、生徒は自然に日々の学習に力が入ってくるわけです。
 
 
 
鍵が「評価」にあるというのはまさにその通りかもしれませんね。お話を聞いていると、国際バカロレア(IB)との類似性も感じるのですが、BCカリキュラムとIBとの共通性や違いなどについても教えてください。
 
青井先生:
基本的にBC州カリキュラムはIBをよく研究していると思います。もともとカナダは多文化の社会ですから、国際性や多様性を重視する点でIBカリキュラムの考え方と近いのだと言えます。IBでは、Learner Profile(IBの学習者像)が有名ですが、BCカリキュラムでも、目指す生徒像は明確になっています。
 
「Educated Citizen」という概念がBC州教育省のホームページに出ていました。実は取材に来る前に少し予習してきました(笑)
 
青井先生:
そうですね。同じカナダでもオンタリオ州などのカリキュラムと比べると、より市民性の育成を重視しているように感じます。
 
生徒像の部分ばかりではなく、教科を越えたコアカリキュラムの存在もIBと似ている点です。例えば、クリティカルシンキングやクリエイティブシンキングといった、TOK(Theory of knowledge 知の理論)のような学びもしていきます。さらに、Planning 10という授業では、自分の未来を見据えながら学校以外のコミュニティに関わっていく活動をするのですが、いわゆるボランティアとは違って、教科学習やキャリア学習と結びつきながら自然に地域に関わっていくようなカリキュラムになっています。このようなところもIBカリキュラムに似ている点だと感じます。
 
 
一方で、BCカリキュラムはIBDPよりも、広い範囲の生徒をカバーできるのではないかとも感じます。IBDPは、比較的優秀な生徒でないとなかなかディプロマを修了できない印象がありますが、BCカリキュラムはその点はそれほどハードではありません。違いと言えばその程度でしょうか。いずれにしても、ふだんの学習の蓄積で大学進学の準備ができるというのは合理的ですし、本来の教育の姿なのだと思います。

 

三田国際学園 留学生が認める授業

三田国際学園は、スーパーイングリッシュコース(SE)の相互通行授業の浸透度、イマージョン率、ICT活用度はどんどんアップしている。そんな中、ここ4週間、ドイツから留学生Sさんがやってきて、国際交流の旋風を巻き起こし帰国した。英語が堪能で、SEクラスメイトと、英語でコミュニケーション。

しかし、そこで使われている英語は、たんじゅんにコミュニケーションの道具ではなく、すでに感性そのものそして思考そのものにシフトしていた。by 本間勇人:私立学校研究家

Sさんのインタビューには、SEクラスの担任緒方先生と級友がいっしょにサポートしてくれた。もっとも、緒方先生は、SE生が通訳するサポートに回り、基本は、SさんとSE生の対話になっていた。

SE生の通訳によると、Sさんは、日本が大好きになり、また来年も日本にやってきて、やがては日本の大学に入りたいということのようだ。

ドイツとのスクールライフの違いについてたずねてみたが、驚くべきことに、ドイツの教師はプレッシャーがきついが、日本の先生はフレンドリーで、親切で、解放的で、大好きだという。

また、おべんとうをみんなで食べるランチの時間は、ドイツにはなく、とても新鮮だったし、生徒どうしの一体感がすてきだったという。

茶道や、華道などの部活も体験して、たいそう気に入ったが、そもそも部活はドイツの学校にはないので、こういう機会がある日本の学校は大好きであると。

4週間はあっという間に過ぎ、SE生もさみしくなる。もっと思い出を作りたかったと別れを惜しんでいた。もちろん、プリクラは撮ったそうだ。なにせ、ドイツにはないものらしい。

それにしても、彼女たちのグローバルセンサーはたいしたものである。実は「おべんとう」なるものは、ヨーロッパでは、大人気で、「obento」とそのまま使われているぐらいで、日本の様々な弁当箱が買われている。

キュートで、カラフフルで、ヘルシーで、コンパクトで、何よりも宝箱を開ける感覚が楽しいというセンス。高校生の彼女たちのグローバル教育は、そのような生活センスに密着したところから、ビジネスが生まれるヒントにつながっていくのかもしれない。

Sさんは、明るく楽しくワイワイガヤガヤの雰囲気がなつかしく、三田国際の先生方や友達のことが大好きであると何度も強調していた。

今井先生は、

「Sさんの話を聞いて、がんばってやってきた相互通行型授業を評価してもらえたと認識しています。抑圧的でないという感想は、教師と生徒のコミュニケーションを大切にしていることを指しているでしょうし、ワイワイガヤガヤ楽しくて騒々しいというのは、PBL型のアクティブラーニングのことを意味しているのだと思います。留学生に受け入れられる、留学生を受け入れることができる授業を構築しているのだと実感できました」

としみじみ語った。

 

 

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