C1 英語

八雲学園 スペシャルグローバル教育(2)

八雲学園の教育の最もすてきなところは、最高の体験とそのシェアである。あらゆる行事における体験の成果は中1から高3まで全員で共有する。したがって、先行的に3ケ月留学体験をした先輩は、その体験のすばらしさを共有し、同時に学園全体の英語力のスキルアップ及び世界観を深堀するアカデミックスキルも共有していくことになる。
 
その共有はいかにして可能か?それは先輩が後輩に伝える機会を増やすということもそうだろうが、今回は先輩二人が榑松先生とドイツにまで飛んで、破格のプログラムを体験、そしてそれを共有できる段取りを行ってきた。by  本間勇人 私立学校研究家
 
 
 
 
その段取りのミッションとは、ドイツのハンブルグで行われたラウンドスクエア(ROUND SQUARE)の国際会議に参加し、英語で世界の高校生とパフォーマンスを楽しんだり、世界問題についてディスカッションするワークショップに参加したりして、八雲学園の世界的視野をもったグローバルリーダーシップの重要性をアピールすることだった。
 
そして、このアピールは、ラウンドスクウェアという教育コミュニティの一員に認定される大事な一局だったのである。認定のための手続きは3ケ月留学プログラムがスタートした3年前から行われてきたが、そのミッションがようやく果たされるときがきたのである。留学生の努力が実って、八雲学園はラウンドスクウェアのメンバー校となった。
 
このラウンドスクウェアの創設者はあのクルト・ハーン。氏は、IB(国際バカロレア)創設の中心人物だが、彼は新しいパブリックスクール(イギリスでいう名門私立学校)をも世界に広める教育哲学を実現した偉大な教育者である。
 
 
その新しいパブリックスクールを創ることに賛同した世界の名門校が集まって創設されたのが、ROUND SQUARE。八雲学園の姉妹校ケイトスクールもメンバー校だ。
 
3ケ月留学プロジェクトの行き着く先は、このコミュニティメンバー校になって、新しいパブリックスクール=新しいインターナショナル名門校になることだったのである。
 
このメンバー校になると、毎年メンバー校のうち一つの学校で行われるカンファレンスで、コミュニティの教育哲学を共有しなければならない。IDEALSという6つの教育目標があるが、それを1つひとつディスカッションしながら、異文化交流エンターテイメントも演出していく中高生世界会議だ。
 
いずれ、世界の名門校が、40カ国から八雲学園に集結して、国際会議が行われることになろう。これは相当大がかりなイベントになるから、準備も想定以上に大変で、生徒も教師も総がかりで企画し運営しなければならない。おそらく文化祭というスケールでは測れないだろう。
 
 
それに全員が英語でおもてなしをすることになるから、今まで以上に英語教育の充実が図られる。ホスト校となれば、模擬国連どころではないスケールで奔走することになる。
 
ドイツのラウンドスクウェア―国際会議に参加した3ケ月留学生2人は、多様な国の生徒といっしょのチームに分かれたから、現地では1人ひとりで挑戦せざるを得なかったという。
 
彼女たちから話を聞いて、特に印象深かったのが、たいていはおもしろい体験となったが、やはりディスカッションが難関だったということである。
 
1つのテーマについて、ただ自分の考えを述べるだけではなく、自分ならどのように世界に役に立てるのか、またプレゼンにむけて、自分は何に役に立てるのか、どんどん主張していかないと、非協力的だと判断されてしまうところが厳しかったと。
 
もちろん、日本人の特色をすでにある程度知っているから、サポートしてくれるメンバーもいるが、日本にいる場合のように甘えることはできない。そういう緊張感は、日本の英語学習では体験できない。
 
 
いかに自分たちが八雲学園の先生方に日頃からサポートしてもらっているのか実感できるとともに、独り立ちしなければ、世界では通用しないということも思い知ったと。
 
この貴重な体験は、いつの日か後輩が日本でのラウンドスクウェア国際会議のホスト校として活躍できるようになれば、できるはずである。
 
ロジカルシンキングやクリティカルシンキングはエッセイを書くためだけのスキルではなく、まさしくディスカッションの時に必要なのだと痛感したと語ってくれた。
 
 
とにかく、世界の名門校とは、たとえば、ボランティアも自分の身体を張って行うレベルで、何もかも破格であり、精神も頭脳も身体もすべて鍛え抜かねばならいということを実感したようだった。
 
最近では、ノーブレス・オブリージュという言葉を安易に使う学校も多いが、本当のノーブレス・オブリージュは、損得勘定や大学合格実績競争では測定不能である。我が国に必要なグローバルリーダーとは、年収いくら欲しいとか、学歴競争でどこに位置したいとか考えている低次元な発想では、もちろん成立しないだろう。ただ、そんな高邁な精神を養える教育はどこにでもあるものだろか?八雲学園以外に思い浮かばない。
 
 
八雲学園が、ラウンドスクウェアとの交流でまたスケールの大きい破格の教育実践の中でお手本を見せてくれることだろう。2017年の八雲学園は、今までと同じように考えていてはいけない。受験業界の常識では測れないダイナミックな教育実践が再び始まるのである。
 

八雲学園 スペシャルグローバル教育(1)

グローバル教育が加速度的に広がり、すっぽり日本列島を覆う中、他とは全く違う「唯一のスペシャルグローバル教育校」と呼べる立ち位置にある八雲学園。グローバル教育という名目で、帰国生の入学を推進し、その実東大をはじめとする難関大学に合格させることが本音の学校が多い中で、帰国生入試をあえて行わず、小学校での英語体験以外は特に英語教育を受けてこなかった一般生を対象に、グローバル教育を行っている。by 本間勇人 私立学校研究家
 
 
(2016年度の3ヶ月留学生)
 
 
極端に言えば、帰国生を積極的に取り入れている学校は、英語教育をほとんどしなくても帰国生が英語の実績をあげてくれるので、一般生は大学受験勉強をしていればよいということになりがちだ。
 
しかし、八雲学園は帰国生が一般入試で入ってきても、特別な授業を行うわけではなく、一般生が英語を学ぶ場でいっしょに学ぶ。ただし、押さえておかねばならないことは、特に帰国生がいなくても(とはいえ、一般入試で入学してきてはいる)、帰国生同様の英語力を身につける教育環境をつくっているという点で、最も英語教育において教師が創意工夫をしている学校といえるのだ。
 
帰国生がたくさんいれば、確かに、帰国生と一般生がシナジー効果を生み出すが、それがメインになっている学校は、教育を放棄していると言えば、言い過ぎだろうか。
 
その点、八雲学園は、一般生を受け入れ、生徒一人ひとりの言語感覚を覚醒させ、その上で、どんどん英語力が伸びる生徒と基本的なサポートが必要な生徒のそれぞれのニーズに応じた英語学習のプログラムをデザインしている。
 
スピーチコンテストやレティテーションコンテスト、文化祭での英語劇、英語祭、イングリッシュファンフェアーなど比類なき多様な英語環境は、生徒一人ひとりの英語という言語感性の違いを教師と生徒が共有できる場なのである。
 
そして、その場があるからこそ、自分の英語力に応じたグローバル環境を選ぶことができる。理系に進む場合、CEFR基準に換算すればB1に到達しなければならないが、それはアドバンスドクラスで十分に養われる。
 
毎年一学期にイエール大学と国際音楽交流が行われているが、八雲学園の生徒がイエール大学の学生に刺激を受けて、ミュージカル部を創りたいと思い立ち、自分たちで部活を創ってしまったというのも、その才能開花の1つである。
 
また、イエール大学のような海外大学で、世界に貢献する能力を磨き上げたいと思った生徒は、CEFR基準で換算すればC1レベルが必要。現状のオーナーズクラスでは、B2レベルぐらいまでで、このB2では、国公立大学、早慶上智レベルはカバーできるが、イエール大学のような海外大学はカバーできない。
 
八雲の先生方は、どこか外部からパッケージプログラムを持ってくることはしない。あくまで、生徒が欲求した場合、俊敏に動くことをモットーとしている。他の学校とはかなり違うある意味徹底した生徒ファーストな学校なのだ。
 
 
今年で3年目を迎える米国3ヶ月留学も、4年前にスタートしたイエール大学との国際音楽交流という環境を設定したことによって生徒の方から強い要望があったから作ったのである。
 
菅原先生によると、「不思議なもので、1年目より、2年目。2年目より、3年目とチャレンジする生徒の英語力が向上し、単純にTOEFLや英検などのスコアを上げるためというより、本格的に米国の大学生とディスカッションしたり、エッセイを書いてみたいという欲求が高まってくるため、毎年プログラムをブラッシュアップしなくてはならない」ということである。
 
実際今年3ヶ月留学を終えて帰国した生徒の事後学習プログラムでは、文化人類学的サーベイ手法を取り入れていた。いわゆるPBL(プロジェクト学習)で、最近ではアクティブラーニングと呼ばれている学びのスタイルで実施された。
 
 
たとえば、米国に留学に行く前の自分たちの先入観と留学中に多くの米国人にインタビューした後の米国のイメージを比較スタディーして、エッセイを書いていたかと思うと、留学中に、米国の方々に日本人についてのイメージをインタビューし、帰国後そのイメージとのギャップがどうして起こるのかエッセイを編集したりしていた。
 
いわゆる、ロジカルシンキング、クリティカルシンキング、クリエイティブシンキングという高次思考の領域で学ぶプログラムだ。
 
英語科主任の近藤隆平先生によると、「中学までに培ったウェルカムの精神が効を奏しています。先入観を素直に受け入れつつ、一方で何が現実と違うのかについてリサーチをするにも素直に相手の話に耳を傾ける姿勢は重要です。
 
アカデミックスキルが伴うまでの英語力(C1英語)は、英語のスキル習得だけではなく、また、現象としての世界を説明するだけではなく、そこで起こっている問題に気づき、どうしたらそれを解決するために自分は役に立てるのか、世界観も掘り下げて行く必要があります。それがなければ、ディスカッションはできませんし、エッセイも書けないでしょう。国内の大学受験だけを考慮すれば、こんなに広く深い言語感覚を養わなくてよいのですが、生徒が望むなら、何度でもトライアンドエラーします。プログラムもどんどん磨き上げていきます」と頼もしい。
 
英語に限らず、運動会、文化祭、芸術鑑賞などのプログラムすべてが、生徒と共に創り上げる八雲学園。生徒ファーストと教師の創造的リーダーシップが教育コミュニティを形成している。
 
 
なぜ八雲学園は楽しいのか?この生徒と教師の創造的なケミストリーが生まれ続けているからであろう。
 

富士見丘の教育改革の挑戦

富士見丘の教育改革には格別の意志が働いている。一般に中等教育段階の改革とは、自校の入試改革や授業システム、進路指導システムの改革を指し示す。
 
しかし、富士見丘の教育改革は、もちろんSGH(スーパーグローバルハイスクール)として、自校の教育のバージョンアップも大いに進めているが、大学付属校ではない有利な拠点であることを活かし、多様な高大連携プログラムを企画実行することによって、高大接続システムの改革モデルも射程に入れている。
 
つまり、中等教育の新しいモデル、高大接続システムのスーパーモデルを実現しようという格別な意志が同校に存在しているのである。by 本間勇人 私立学校研究家
 
 
 
12月18日(日)、爽やかな冬晴れの新浦安の地に、富士見丘生は集合し、明海大学に向かった。同校の校長補佐であり明海大学の専任講師である吉田成利先生や慶応大学や上智大学、シンガポールの高校などとの多様な連携プログラムを実施している先生方もいっしょだった。
 
今回の目的は、来春から始まる明海大学のホスピタリティ・ツーリズム学部ホスピタリティ・ツーリズム学科のオールイングリッシュの特別レクチャーに参加すること。吉田成利先生は法学や憲法を講義するのだが、もちろん英語をつかった講義を実施する。つまり、この新しい挑戦のために同大学に招聘された。
 
同時に、吉田成利先生は、ロンドン大学キングス・ カレッジで法学博士を取得しているが、シカゴ大学大学院をはじめとする豊富な海外研究生活を活かし、富士見丘学園の多様な(イギリス、UAE、オーストラリア、米国西海岸など)留学や研修システムづくりのサポートもしてきた。
 
 
(今回のイベント体験を通して気づいたことを、生徒と対話する吉田成利先生)
 
おそらくその流れを明海大学でも広げるのだろう。ご自身の経験からも、これからの日本の中高生や学生にとって、英語で海外の大学の授業を受けられる力が必要だと確信しているのだと思う。
 
実際、明海大学のホスピタリティ・ツーリズム学部でも、語学留学ではなく、海外大学の1年間必須の交換留学制度が実施される。当然海外では議論やエッセイライティングができなければならないから、たんなる英語技術の取得レベルや日本の大学受験レベルの英語力を身につけただけでは有用ではない。
 
 
(明海大学には、随所にホスピタリティの雰囲気が立ち上がるアフォーダンスの仕掛けの空間がある)
 
それ以上の英語を武器に探究活動や議論ができるレベルに中等教育と高等教育の接続システムを大幅に改革しなければならない。吉田成利先生は、そのような強い意志を持っているのである。
 
今回の明海大学における特別レクチャーは、その一環である。講義は、ハワイ大学のラッセル・ウエノ教授とセントラルフロリダ大学の原忠之准教授によって行われた。中2のグループと高1・高2のグループに分かれ、ローテーションして、2つの講義に参加した。
 
 
(富士見丘の生徒と英語で対話するハワイ大学のラッセル・ウエノ教授)
 
テーマは、それぞれ、ブランド・マネジメントとホスピタリティ・リーダーシップ。オールイングリッシュで講義がなされたし、問答も英語。質疑応答も英語。
 
驚いたことに、英語の力以上に、なぜ今観光業なのか、マネジメントとしてクリエイティビティが必要なのか、ホスピタリティが必要なのか、政治経済や産業構造、人口問題の変わり目という世界や時代認識が求められる大学の講義に、富士見丘の生徒が真剣に参加し、考え、質問をしていた。
 
そして、中高時代の授業とは明快に異なるのは、ホスピタリティー・リーダーの経験とサラリーの関係にまで踏み込む話題があること。大学に入ると、高大接続から産学接続の話になるのかと実感したことだろう。ところで、大学の先生のサラリーはどうなのだろう。富士見丘生の質問に、ユーモアを交えて応える先生のトークに、対話の柔らかさも感じるシーンもあった。
 
 
(軽快なリズムで講義をするセントラルフロリダ大学の原忠之准教授)
 
このようなイベントは、明海大学の英語で講義をする挑戦とCEFR基準でC1英語力を身につける英語の環境のみならずSTEAM×デザイン思考教育やアクティブラーニングの環境など良質教育を形成している富士見丘の挑戦とが出会ったからこそ実現されたのであろう。
 
実際、富士見丘の吉田理事長・校長、明海大学の宮田理事長、安井学長、草野学部長など多くの方がかかわり、今回の学びの機会を創出した。
 
吉田理事長・校長は、前回の中教審のメンバーでもあり、今回の文科省の高大接続改革システム会議のメンバーでもある。
 
 
(今、未来をいっしょに創っていく具体的イメージを生徒と共有する吉田晋理事長校長)
 
審議会などで助言したり各メディアで発言したりするだけではなく、実際に中等教育と高等教育の新しいあり方を実現しようとしている。なぜなら、改革が実現するまで、目の前の生徒の未来は待ってはくれないからだ。いまここに未来があるのだ。富士見丘の教師陣と明海大学の教授陣のコラボレーションが新たな日本の教育モデルを実現することに期待したい。
 

文化学園大学杉並 IBディプロマ修了者も驚嘆するダブルディプロマ(2)

同日私は文化学園大学杉並(以下、文杉)の中学生の授業も見学させていただきました。中学には、グローバルコースがあり、生徒が英語を上達させやすいように、入学時の英語レベルに応じてクラス分けをしています。

「伝え方」の基盤

最初に入った教室では机をすべて後ろに下げ、先生も交えて輪になって立って授業を受けていました。先生は生徒たちに英語で話しかけ、多くの生徒は互いに日本語で先生の言ったことを確認しあっていました。理解できている生徒が他の生徒たちをサポートしている場面もうかがえました。

さて、輪になって何をしていたかというと、こんなゲームです。まず一人の生徒が自分を指しmeといい、その後誰かを指してto youといいます。指された生徒は同じことを繰り返し、ランダムに回していくというゲームです。生徒たちは面白がってやっていました。次に先生は言葉なしでアイコンタクトとジェスチャーだけでやってみましょうと生徒たちに呼びかけました。目が笑っている生徒もいてとても楽しそうです。最後にアイコンタクトだけになりました。自分が指されたと勘違いする生徒もいたり笑い転げたりする生徒もいてなかなか続きませんでした。しかし終始先生も生徒も楽しそうで、教員と生徒の間に壁を感じない素敵な授業だと感じました。このゲームの意義はというと、アイコンタクトの重要性や相手に伝える力をつけることだと思います。私自身の海外経験でも多少英語がうまく話せなくても伝えようとする気持ちによってある程度コミュニケーションを取ることは可能だと感じています。逆にいくら話せても気持ちの籠っていない言葉は相手に伝わりにくいこともあります。つまり、英語に限らず言語を話すうえで基盤となる伝え方をこの単純なゲームを通して学んでいたのではないでしょうか。
 
 
自己紹介
 
次のクラスでは、一見「普通」の授業を行っていました。先生が前に立ち、生徒が一人ずつ自分の机に座っています。
 
 
しかし、よくよく見ると全員一台ずつiPadを持っています。表示されている画面はそれぞれ別の内容で、どうやら自分で作成したドキュメントのようです。すると先生は生徒たちを二人組にし、お互いにプレゼンテーションをしあうように言いました。内容は自己紹介。このような授業は私も何度か経験していますが、文杉の生徒ほど静かに相手の話を真剣に聞く生徒は見たことがありません。その理由はおそらく先生の指示が的確であることにあります。生徒にペアになることを指示する際、他にもいくつかプレゼンをする際の注意点について説明していました。椅子を向かい合わせにすること、アイコンタクトをすること、そして熱意(enthusiasm)を持って話すことでした。一つ目のクラスと同様、アイコンタクトを強調していたことが印象に残りました。
 
Creative writing
 
最後のクラスも同じように先生が前に立ち、生徒たちは机に座ってiPadを操作していました。しかし入った瞬間感じたちょっとした違いがあります。このクラスの生徒は他と比べ、飛び交う自然な会話が英語でした。先生に対しても積極的に英語で質問する生徒がいたので、より海外のクラスルームに近いものを感じました。
 
 
ここでも自己紹介をしているのかと思いきや、聞くと先生がネット上で見つけた誰かの写真を生徒に配り、その写真のみをもとに想像でその人のプロフィールを書くというものでした。このクラスの先生が重視していたのは創造力(creativity)です。そしてプレゼンではアイコンタクトと表情(facial expression)を意識するよう指示していました。感心したのは授業時間が終わったとき、生徒たちから「あー…」という残念そうな声が聞こえたことです。熱心に取り組む姿勢が垣間見られた瞬間でした。
 
3つのクラスに共通して、他の中学生の英語クラスと違う点を一つあります。それは生徒の多くが電子辞書や紙の辞書を持たないことです。その理由は、生徒同士がコミュニケーションをとる際、両者が理解できる単語を使ってほしいからだそうです。確かに辞書に頼りすぎると、「正しい」表現に囚われて、コミュニケーションの基本が忘れられてしまうのかもしれません。
 
中学生の授業では、英語で授業を行うための前段階として、生徒が英語を使うことに慣れるようにBody language(例:アイコンタクト、熱意、表情)を交えた授業が目立ちました。また、英語を苦手だと感じないように様々な工夫を加え、生徒が楽しめるような仕組みづくりがされていることも感じました。海外経験のある生徒も、今までずっと日本で暮らしてきた生徒も同じ教室で同じ授業を行い、そこで協力しあうことは理想的な環境だと思います。それが実現できているのが文杉です。正直今回の訪問で、驚き、同時に嬉しくなりました。文杉生の将来を見るのがとても楽しみです。
 

 

文化学園大学杉並 IBディプロマ修了者も驚嘆するダブルディプロマ(1)

文化学園大学杉並(以下、文杉)を訪問しました。ダブルディプロマコースの成果を知る上で、IBとの比較も有効な視点になるだろうと考え、欧州のインター校で昨年IBディプロマを取得した高木美和さんに取材してもらいました。 by 鈴木裕之:海外帰国生教育研究家

久しぶりにインターナショナルな雰囲気に触れて、とても新鮮で刺激になりました。自分はIBを修了したこともありDD(ダブルディプロマ)には興味がありましたが、実際に見学してみて、日本で行われているとは思えないほど自然に英語が飛び交っている授業に正直驚きました。 by 高木美和:早稲田大学教育学部1年

 
 
最初に入った高校2年生の教室では、3つのグループに分かれて、それぞれパソコンを囲んでプレゼンテーションの準備をしていました。先生に対する質問はもちろん、グループ内の会話も英語で行われています。トピックは第一次世界大戦で、カナダとの関わりから大戦の影響を考えているのが印象的でした。
 
 
大戦の前期、中期、後期をそれぞれのグループでまとめ、グループのメンバー同士が違うグループから情報を入手し、それぞれの持っている情報をシェアする「ジグソー法」と呼ばれるスタイルで学んでいました。どの生徒もリラックスした心地よい雰囲気の中で、まじめに取り組んでいます。
 
次に入ったのは高校1年生の教室。BCプログラムの校長であるダン先生が「Planning」という授業を行っていました。
この授業は、生徒の視野や可能性を広げることを目的に、多種多様な仕事について知るというもので、IBディプロマでもこのような授業を経験したことはないため、非常に興味深く拝見しました。職業のイメージを高校生の段階で持てるのは有意義ですし、同時にうらやましいとも感じました。
 
この日はLawyer(弁護士)についての授業でした。生徒たちは輪になって並べられた椅子に座り、ダン先生と対話します。まずダン先生が口を開いて尋ねたことは、「弁護士って何をする人?」でした。
となり同士で話し合った後、それぞれの生徒が考えたことを発表します。
 
 
この授業の運び方はダン先生が意識するアクティブラーニングの一つです。先生が前に立って、「弁護士とはこういうことをする人だ」と説明するのではなく、逆に生徒たちに質問を投げかけていくのです。「Answerではなく、Questionを与えることが生徒の学びをサポートすることにつながる」と、授業後のインタビューでおっしゃっていました。
日本の生徒は人前で自分の意見を発表することをあまりしない、そしてそこで間違えることを嫌うとよく言われます。しかし、この授業を受けている生徒にはそれはまったく感じませんでした。それはなぜか。ダン先生によると、DDには4つのルールがあるからだそうです。このルールこそが生徒が進んで発表をする秘訣なのです。
 
DDの4つのルール
1.I can do it (私はできる)
2.It’s okay to make mistakes (間違えてもいい)
3.It’s okay to say “I don’t understand” (わからなくてもいい)
4.Someone’s always there to help (助けてくれる誰かはいつもそばにいる)
 
先生方の働きかけによりこのルールは生徒たちに浸透し、自由に発言する力が身についていると感じました。実際、分からないときにはその場で説明を求める生徒が何人かいました。英語でコミュニケーションするとき、分からなくてもそのまま流してしまうことは、経験上よくあることですが、文杉の生徒たちは、質問することが学びに繋がるということをしっかり理解しているのだと思います。そしてこれが短期間で英語を飛躍的に上達させた一つの理由でもあるのでしょう。すでに英検1級が2名(1次試験合格者)と準1級が3名という実績があるそうで、近い将来全員が準1級を取得できるとお話されていたのは、決して誇張ではないと感じます。このような4技能を測定する英語資格は大学進学などの明確な指針となる以上に、コミュニケーションが不自由なくできるようになるための目標になり得るところに私は価値を感じます。海外での生活を通して感じたのは、正しい文章を読んだり書いたりすること以上に、人を相手にしたときに瞬時に言葉が出てくることの重要性です。議論はあっという間に次の展開へと移っていきますから、いちいち立ち止まって正しい表現を考えていてはついていくことができません。文杉の生徒にはこういった「英語で議論する力」がついていると実感しました。
 
 
ダン先生はこれまでにも様々な国で授業を行い、校長として17年間生徒を教え続けてきたそうです。そんなダン先生は文杉の生徒が一番優秀だと太鼓判を押していました。その理由は数学と化学の成績にあります。バンクーバーの生徒と同じ試験を受けさせた結果、文杉の生徒が平均点で彼らを上回ったのです。(全BC州カリキュラム45校で1位)勤勉な日本人の性格も一つの理由ですが、BC州が世界で初めて文杉で試みたCo-teachingも理由の一つです。Co-teachingとは、同じ授業を英語と日本語の両方で行い徐々に生徒たちが英語だけでも理解できるようにしていく授業です。クラスを見学させていただいた際も外国人の先生と日本人の先生の両方が生徒たちのグループワークを見て回り、生徒が苦労している部分を説明していました。驚いたのは生徒たちが使っている教材がすべて英語で書かれた、分厚り海外のものだったことです。通常日本語でやるような生物の勉強を彼女たちは辞書の力を借りながらもしっかり行っていました。
 
 
もう一つ海外の仕組みによく似ていると感じたのがassessment rubricを使った評価法です。文杉の廊下を歩いていると生徒たちの作ったポスターなど様々な課題が目に入ります。それぞれまるで違う題材について作られているように見えるそのポスターには明確な評価基準がありました。これはIBと同じ仕組みで私にも馴染みがあり少し懐かしさを感じました。
まだ海外での学校生活にそれほど慣れていないころ、なんでもいいから論文を書きなさいと言われ困ったことがありました。内容は思いついてもどこからどう書けばいいのか本当に手も足も出ない状態でした。それをサポートするのがこの評価基準です。構成力、分析力、単語力など細かくレベル分けされ、それに沿って生徒は自分が興味の持てる議題についてまとめる。これは自ら学ぶという姿勢を引き出させるのに最適な方法だと私自身の経験でも感じました。
 
DDは日本と海外の履修科目を両方こなす必要があるということで、最初は、生徒たちにとっては負担も大きいのではないかと思いながら授業を見学させていただきました。しかし、むしろ自ら学ぼうという姿勢が一人ひとりの生徒から感じられ、私自身よい刺激を受けました。また、日本とカナダのバイカルチュラルな教育環境は、日本人としての美徳も忘れず、グローバル社会にも適応できる人材を育てるのに最適だと感じました。 (続く)
 

 

富士見丘 模擬国連部 C1英語レベルの頼もしさ

今年の4月、富士見丘中学高等学校(以降「富士見丘」)は「模擬国連部」を立ち上げた。高校生が「国連大使」になりきって決議案を出し、他の国と交渉する「模擬国連」の活動に参加する機運が学内で盛り上がった。

同校はSGH校であることもあって、在校生は持続可能な開発を中心にグローバルイシューへの関心が高い。また、SGHプログラムや多彩な高大連携プログラムによって問題解決能力、英語によるプレゼンテーション力など日頃から学んでいる。「模擬国連」の教育プログラムと同期するのは必然的な流れだったことだろう。

夏の合宿を経て、活動はさらに進化していく。その部活動の1コマをご紹介する。(by 本間勇人 私立学校研究家)

 

今年4月に立ち上げたばかりであるが、すでに夏の合宿のあとのコンクールで(上記写真)、入賞するなど、成果があらわれている。その進化の速度に驚き、部活動を見学させてもらった。

(夏の合宿の様子)

すると、そこには、異次元の光景が広がっていた。英語でリーダーシップをトレーニングをしているのかと思えるほど、ネイティブスピーカーの先生や吉田成利先生と英語でディスカッションをしていたのである。

(吉田成利先生は、同校の校長補佐であると同時に、明海大学の研究者で、ロンドン・キングス・カレッジやシカゴ大学で研究し、法学博士Ph.Dを取得している憲法学者。つまり、富士見丘の模擬国連部は、いわば法科大学のゼミと同じレベル。いや、日本の大学の学部のゼミと大きく違うのは、オールイングリッシュだということ。この違いは極めて重大事である)

一般に、模擬国連の活動は、選ばれた数名の生徒が挑戦するが、富士見丘は部活動で行っていくから、相当の人数がメンバー。にもかかわらず、全員が英語で、「決議案」を組み立てるために、ディスカッションし、ライティング活動を行い、プレゼンテーションするのである。

しかも、国連が掲げるグローバルゴールズを解決するために議論をするのである。この重要性はわかるだろうか?NHKテキストのサイトで、CEFR基準が簡単に次のように紹介されている。

C1
 
広範で複雑な話題を理解して、目的に合った適切な言葉を使い、論理的な主張や議論を組み立てることができる
 
B2
 
社会生活での幅広い話題について自然に会話ができ、明確かつ詳細に自分の意見を表現できる
 
B1
 
社会生活での身近な話題について理解し、自分の意思とその理由を簡単に説明できる
つまり、富士見丘の模擬国連部の英語のレベルはC1レベルの環境ということ、わかりやすく置き換えれば、「英検1級」ということなのである。世の中には、CEFRテストは存在しないから、スコア化できないが、模擬国連部のメンバーが、TOEFLやIELTSに挑戦したら、相当な成果をだすことだろう。
 
 
(生き生きと英語で対話するメンバー)
 
吉田理事長・校長も、部活を見学しに来て、「ところで、この今の高度な英語でのやりとりは、100%理解しているのか」と尋ねると、当然ですと反応があったのにも驚いた。というよりも、珍しく校長が日本語でたずねたので、生徒たちが、一瞬戸惑ったぐらい、英語圏になっていたのだ。
 
 
吉田校長は、自ら堪能な英語力の持ち主である。これまで、日本の英語教育を、自らが英語を駆使して牽引してきた。在校生の海外留学先の契約も、提携校に単身乗り込んで交渉してきた。イギリスやオーストラリア、米国西海岸の研修旅行も自ら率いてきた。
 
しかし、SGH校として、教師が一丸となって動き始めると、吉田校長が行ってきたことが、校長補佐吉田成利先生を中心に、多くの先生方にエンパワーメント(権限移譲)される展開になってきたのである。英語で交わされているディスカッションのさ中に、ふと校長は自然に日本語で話してみたいと思ったのではないか。もはや、自分が先頭にたたずにも、教師と生徒がこんなにC1英語を使っているのだからと。
 
 
生徒が「議決案」をプレゼンすると、すぐに吉田成利先生が、丁寧にコメントを返す。もちろん英語でだが、この方式こそ、イギリス流儀のチュータリング方式である。
 
 
2020年大学入試改革に伴って学習指導要領の改訂作業が進んでいる。その中で最も話題を呼んでいるのが、アクティブラーニングであるが、この富士見丘の模擬国連の活動こそ、深いアクティブラーニングのロールモデルだろう。何といっても、英米の名門大学院のゼミ形式がそのまま展開しているわけだから。

八雲学園 C1英語の学びの環境 着々

八雲学園の英語教育は、CEFR基準でいうC1レベルの学びの環境を設定し、実際にB2からC1レベルの生徒が、毎年50人くらい育っています。C1レベルの生徒というのはどんな感じか、帰国生も含めて日本人ばかりの生徒がいる中高一貫校では実感できないかもしれません。

しかし、八雲学園には、イエール大学やケイトスクールの生徒が訪問し、国際交流が行われますが、イエールやケイトの生徒をもてなすには、すでに八雲学園が英語のレベルC1を目指さなければ、このような国際交流を行おうと思いも及ばなかったでしょうし、そもそも相手にされなかったでしょう。(本間勇人 私立学校研究家)

(米国超名門校の典型的なソクラティックメソッドによるゼミスタイルの学び。ケイトスクールのサイトから)

イエール大学が、300年以上も歴史がある米国の名門大学で、アイビーリーグのメンバー大学であることは、有名です。一方米国の高校となるとまだまだどこの高校が名門なのかさえ、日本では知られていないのが現状でしょう。

ケイトスクールは、イエールをはじめとするアイビーリーグやMIT、スタンフォード、UCバークレーなど世界大学ランキング100位以内の大学に入る生徒ばかりが通う高校です。一学年75名で、全寮制の学校ですから、学費や生活費など合わせると、年間600万円弱かかります。

いわゆるノーブレス・オブリージュの生徒であることが大前提の生徒が通う共学校です。ですから、女子校である八雲学園も安心してケイトスクールの男子生徒をホームステイで受け入れます。

ですから、こちらから交流を申し込んで、はいわかりましたと了承してくれるような高校ではないのです。八雲学園が中学再開して以来の交流が続いているのは、ケイトスクールが日本中の高校をリサーチした結果、ケイトスクール側から八雲学園に交流を申し込んできたのです。

それは、茶道や武道に代表される日本人の高い精神性が養われる学校だとケイトスクールが認めたからです。C1レベルというのは、英語に限らず、実は言語活動そのものが、そのような高い精神的活動ができるレベルのことを意味し、たんにTOEFLなどの英語資格試験のスコアが高いことを意味しているわけではないのです。

ケイトスクールの生徒は、箱根に行ったり、京都に行ったり、2週間くらいのジャパントリップのスケジュールに、やりたいこと見たいことをギッシリ詰め込んでいます。それだけ貴重な体験に対し、貪欲で好奇心旺盛です。八雲学園の在校生やOGの家庭にホームステイしながら、八雲学園を日本文化や社会の学びの拠点として動いているのです。

私が取材に行った午後の時間帯は、八雲学園の先生方と茶道の体験をしていました。午前中は、空手の体験をしていたそうです。つまり、岡倉天心の「茶の本」や新渡戸稲造の「武士道」を貫いている「道」について学んでいたわけです。

お茶のお点前を体験している時には、途中まではきちんと正座していましたが、さすがにしばらくすると椅子に座ってお茶をたてていました。日本人も今や正座は得意ではないから安心してくださいと先生方の気遣いがすてきでした。

いずれにしても、ケイトスクールの生徒は全員日本語を学んでいる生徒が訪れているので、当然ですが日本語でやりとりしているのですが、なんとも不思議な茶室の空間となりました。それはともかく、ケイトスクールをはじめとする米国の超名門高校では、第二外国顔をいくつか学ぶのは一般的です。榑松先生によると、ケイトスクールの生徒も、日本への興味と関心のきっかけは、「ナルト」や「千と千尋の神隠し」などアニメだったようです。

その好奇心からもっと日本を知ろうと思うようになったときに、日本語を学ぶのは当然で、日本語を学ぼうとして学んだわけではないのです。もちろん、グローバル時代ですから、アジアやアフリカで活躍する夢もあるのでしょう。日本語以外に、中国語やフランス語も学ぶというのは、そういう理由もあるのです。

八雲の生徒は、中3のときサンタバーバラのレジデンスで1ヶ月ほど学びます。そのとき、各チームに1人ずつ、ケイトスクールの日本語を学んでいる生徒が、チューターの役を買って出てきてくれます。その彼らが、日本にやってくるのです。八雲の生徒にとって、英語を学ぶことは、大学受験勉強のためだけの目的ではなく、グローバルな世界で、相手の国の文化を学ぶための言語活動の一環であることを、チューターのケイトスクールの生徒と生活を共にしながら、実感してきているのです。

(お昼は、いっしょに調理をしてランチをしながら、会話が弾んでいました。引率の先生は2人で、1人は日本語は話さないので、八雲生は英語で会話。そのシーンです。)

もちろん、2020年大学入試改革によって、英語4技能の試験はB2以上要求されてきますから、八雲生にとってたいへんアドバンテージが高くなるわけですが、それは時代が八雲に追いついてきたということでしょう。

それにしても、ケイトスクールの生徒が箒や雑巾をつかって、八雲学園の生徒といっしょに掃除までしていました。彼らに尋ねると、これも日本の精神がやどっている行為だから、ぜひ経験してみたい活動の1つとして、予めプランしてあったそうです。

掃除に日本の文化の精神が宿るとはどういうことなのでしょう。私たち日本人が忘れてしまったかもしれない大切な心を、八雲学園の生徒はケイトスクールの生徒と見出し、共有しているのでしょう。それが両校の長い間の交流を可能にしている大きな理由であると確信に到った取材となりました。

文化学園大学杉並 新しい女子校モデルのインパクト(2)

DDコースの存在や活動が他のコースや学校全体に対しては何か影響を及ぼすということはあったのでしょうか。
 
青井先生:
教員の意識が変わりましたね。DDコースを始める当初は、帰国生でもない普通の生徒が英で科目の学習をすること、しかも日本の教科学習をしながらそれを進めることは無理だと考える教員もいました。ところが、この数ヶ月で英語でのコミュニケーションに困難を感じなくなっている現実を見て、考え方が変わってきたようです。そして実際にDDコースの授業を見学したり、アクティブラーニングの研修を行ったりと良いところを積極的に取り入れようとし始めています。
 
DDコースの授業を見学すると、みな口を揃えて、生徒がよく発言することに驚くのです。当てられなくても自分の意見が言えるのは確かにDDコースの生徒の強くなった点で、そういう姿を見ると本当に頼もしいというか、世界で活躍できる人材に育ちつつあると実感します。その雰囲気が教員を通して他のコースにも広がっていくような好循環も生まれつつあります。
 
それと、少しDDコースから離れますが、今後は文化学園大学への注目も集まるのではないかなという気がしています。これまでもファッションに関心のある人が付属である本校に入学し、ファッションショーなどで高い評価を得ていましたが、大学の方はファッション部門で今世界大学ランキングの2位になっているのです。海外から学ぶばかりではなく、世界に発信するという意味でグローバルな大学と言えますし、人工知能には真似のできないクリエイティビティを発揮するアートの分野ですから、その存在意義は高いと思うのです。
 
確かに、様々な才能が活かされるという意味で、今までにない女子校のモデルですね。海外大学進学、グローバル市民教育、C1英語、アクティブラーニングと何でも揃っている感じですね。
 
青井先生:
英検で言えば、DDコースは1級、CEFRでのC1レベル、難関進学は準1級、英語コースは2級というのがしばらくの間の現実的な目標です。今後の社会での英語の必要性を考えると、教員も英語Nativeにどんどんシフトしていく方向で考えないと対応できないかなと感じています。
 
思考力テストに関しても10数名の教員によるプロジェクトチームを編成して取り組んでいます。アクティブラーニングや探究型の授業を進める上で、科目の枠を超えたテストは必須になりますから、力を入れていきたいと思います。先ほどお話したカナダ方式の評価を導入する計画も進んでいるので、授業のあり方はこれまでとは随分変わっていくことになると思います。
 
(インタビューを終えて)
インタビューにお邪魔したのは、新年明けたばかりの1月4日。世の中はまだお正月気分の最中でしたが、青井先生はすでに前日の3日から学校に来て、諸々の準備をしているとのことでした。勢いのある学校というのは、このような先生方に支えられているのだということを確認しました。
 
1時間半に及ぶインタビューでも、青井先生の表情が自信に満ちていて、ダブルディプロマコースに対する確かな手応えを感じていることが伝わってきました。文大杉並の教育内容が新しい女子校のモデルとなってこれから深化していくのは間違いなさそうです。

文化学園大学杉並 新しい女子校モデルのインパクト(1)

文化学園大学杉並(文大杉並)は今最も注目すべき女子校の一つです。カナダブリティッシュコロンビア(BC)州のカリキュラムを取り入れたダブルディプロマコース(以下DDコース)は、文大杉並の教育を21世紀型教育の最先端へと連れ出しました。DDコース自体の魅力もさることながら、DDコースでの取り組みが、他のコースの生徒や教職員への大いなる刺激となり、学校全体にその影響が広がっています。BC州カリキュラムの導入を推進した中心人物である青井教頭先生にお話を伺ってきました。(聞き手&編集  鈴木裕之:海外帰国生教育研究家)

 
DDコースが2015年春に本格始動して、2学期が過ぎました。これまでの成果について教えてください。
 
青井先生:
 
当初の予想をはるかに上回る成果で、導入して本当に良かったと思っています。高校のコースではありますが、中学入試をするご父母からの反響も数多くあり、やはりグローバル社会への対応という意味での関心の高さをひしひしと感じています。反響は入学を希望されるご父母からばかりではなく、卒業後の進路先となる大学からも様々なオファーが来ており、驚いています。従来は本校のことをあまりご存知なかったような (笑)有名難関大学がいくつも、推薦枠のお話や入試制度についてのご説明をしてくださるようになっています。一体何があったのかと当惑しているほどです(笑)
 
さらに一番驚いているのは、生徒の変わりようですね。正直に言えば、カナダに5週間のホームステイをする夏までの間は、実際にダブルディプロマコースが機能するのかどうか、生徒自身も不安があったと思うのです。それがカナダから戻って来たあたりから、主体性が俄然変わってきまして、英語はもちろん、日本の教科でもどのコースの生徒よりも高い点を取っています。実力模試の結果などを見ても、クラスの半数の生徒が偏差値70以上を取るなど、めきめき力をつけているのが分かります。生徒がやる気になるとこんなにも力を発揮するのかと本当に驚いています。
 
 
生徒がそんな風に変わるのは、DDコースのどういうところに鍵があるのでしょう。
 
青井先生:
まずは「評価」の仕方ですね。BC州の評価の仕方は、他人と比べる相対評価ではありません。毎回の授業への参加から始まって、レポート・プレゼンテーションや提出物の出来、そして小テストの結果など、本当に細かく毎回の得点を記録し、その積み重ねが自分の到達度となってパーセンテージで示されるものになっています。こういった成果が本人も親もわかるようになっています。ですから定期試験だけではなくふだんの授業も真剣に取り組む必要が出てくるし、努力したことを先生はきちんとフィードバックしてくれるので、それがやる気にもつながっていくわけです。もちろんカナダから本校に来て教えてくれている先生が優秀だということも大きいのでしょうけど、いわゆる形成的評価が生徒の力を引き出しているというのは実感します。プロヴィンシャルテスト(BC州のディプロマ取得のための最終試験)の比重は2割しかなくて、あとの8割はふだんの授業における評価なのです。それで進める大学も変わってくるので、生徒は自然に日々の学習に力が入ってくるわけです。
 
 
 
鍵が「評価」にあるというのはまさにその通りかもしれませんね。お話を聞いていると、国際バカロレア(IB)との類似性も感じるのですが、BCカリキュラムとIBとの共通性や違いなどについても教えてください。
 
青井先生:
基本的にBC州カリキュラムはIBをよく研究していると思います。もともとカナダは多文化の社会ですから、国際性や多様性を重視する点でIBカリキュラムの考え方と近いのだと言えます。IBでは、Learner Profile(IBの学習者像)が有名ですが、BCカリキュラムでも、目指す生徒像は明確になっています。
 
「Educated Citizen」という概念がBC州教育省のホームページに出ていました。実は取材に来る前に少し予習してきました(笑)
 
青井先生:
そうですね。同じカナダでもオンタリオ州などのカリキュラムと比べると、より市民性の育成を重視しているように感じます。
 
生徒像の部分ばかりではなく、教科を越えたコアカリキュラムの存在もIBと似ている点です。例えば、クリティカルシンキングやクリエイティブシンキングといった、TOK(Theory of knowledge 知の理論)のような学びもしていきます。さらに、Planning 10という授業では、自分の未来を見据えながら学校以外のコミュニティに関わっていく活動をするのですが、いわゆるボランティアとは違って、教科学習やキャリア学習と結びつきながら自然に地域に関わっていくようなカリキュラムになっています。このようなところもIBカリキュラムに似ている点だと感じます。
 
 
一方で、BCカリキュラムはIBDPよりも、広い範囲の生徒をカバーできるのではないかとも感じます。IBDPは、比較的優秀な生徒でないとなかなかディプロマを修了できない印象がありますが、BCカリキュラムはその点はそれほどハードではありません。違いと言えばその程度でしょうか。いずれにしても、ふだんの学習の蓄積で大学進学の準備ができるというのは合理的ですし、本来の教育の姿なのだと思います。

 

三田国際学園 留学生が認める授業

三田国際学園は、スーパーイングリッシュコース(SE)の相互通行授業の浸透度、イマージョン率、ICT活用度はどんどんアップしている。そんな中、ここ4週間、ドイツから留学生Sさんがやってきて、国際交流の旋風を巻き起こし帰国した。英語が堪能で、SEクラスメイトと、英語でコミュニケーション。

しかし、そこで使われている英語は、たんじゅんにコミュニケーションの道具ではなく、すでに感性そのものそして思考そのものにシフトしていた。by 本間勇人:私立学校研究家

Sさんのインタビューには、SEクラスの担任緒方先生と級友がいっしょにサポートしてくれた。もっとも、緒方先生は、SE生が通訳するサポートに回り、基本は、SさんとSE生の対話になっていた。

SE生の通訳によると、Sさんは、日本が大好きになり、また来年も日本にやってきて、やがては日本の大学に入りたいということのようだ。

ドイツとのスクールライフの違いについてたずねてみたが、驚くべきことに、ドイツの教師はプレッシャーがきついが、日本の先生はフレンドリーで、親切で、解放的で、大好きだという。

また、おべんとうをみんなで食べるランチの時間は、ドイツにはなく、とても新鮮だったし、生徒どうしの一体感がすてきだったという。

茶道や、華道などの部活も体験して、たいそう気に入ったが、そもそも部活はドイツの学校にはないので、こういう機会がある日本の学校は大好きであると。

4週間はあっという間に過ぎ、SE生もさみしくなる。もっと思い出を作りたかったと別れを惜しんでいた。もちろん、プリクラは撮ったそうだ。なにせ、ドイツにはないものらしい。

それにしても、彼女たちのグローバルセンサーはたいしたものである。実は「おべんとう」なるものは、ヨーロッパでは、大人気で、「obento」とそのまま使われているぐらいで、日本の様々な弁当箱が買われている。

キュートで、カラフフルで、ヘルシーで、コンパクトで、何よりも宝箱を開ける感覚が楽しいというセンス。高校生の彼女たちのグローバル教育は、そのような生活センスに密着したところから、ビジネスが生まれるヒントにつながっていくのかもしれない。

Sさんは、明るく楽しくワイワイガヤガヤの雰囲気がなつかしく、三田国際の先生方や友達のことが大好きであると何度も強調していた。

今井先生は、

「Sさんの話を聞いて、がんばってやってきた相互通行型授業を評価してもらえたと認識しています。抑圧的でないという感想は、教師と生徒のコミュニケーションを大切にしていることを指しているでしょうし、ワイワイガヤガヤ楽しくて騒々しいというのは、PBL型のアクティブラーニングのことを意味しているのだと思います。留学生に受け入れられる、留学生を受け入れることができる授業を構築しているのだと実感できました」

としみじみ語った。

 

 

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