PBL

聖学院 最高の授業(2)

伊藤大輔先生の高2の英語の授業。この学年は、最後のセンター試験世代。それゆえ、ミニテストをまず返却して、スコアの分布などデータ分析をきちんとして、それぞれの生徒のポジショニングを明快にしていきます。受験に向けてのマインドセットがきっちりしているのです。
 
しかしながら、同校が推進している21世紀型教育の新たな改革の波は、最後のセンター試験世代にも及んでいました。グーグルクラスルームを活用して、反転学習が導入されていたのす。だから、きっちりデータベース戦術で知識のマネジメントができていたのは新鮮でした。
 
 
たんたんと文法問題の解説を行っているように見えたのですが、言語の一般化と具体化の適応という思考過程を生徒とシェアしていく深い分析的な授業でした。それは、すでに自宅で生徒が問題を解き終わっている、あるいは通学電車の中でスマホで入力し終わっているからたっぷり時間がとれたということと関係があるかもしれません。
 
人と物の気持ちの関係や自動詞と他動詞の差異は、英文法の問題レベルを超えて、コミュニケーション能力というコンピテンシーを支える重要な言語感覚。
 
入試問題を通して、言語分析の視点を標準搭載していくのです。文法の授業ですが、授業を通して言語分析というクリティカルシンキングが身に着くようにデザインされています。現在、2020年大学入試改革に向けて4技能の英語が重視されていますが、言語分析、言語適用、言語創造という言語的思考のベースは、4技能英語においても必要。しかも、この言語的思考はクリティカルシンキングがベース。4技能を相互につなげ、深い学びを展開していけるかどうかは、やはり、この思考スキルを身につけているかどうかにかかっています。

 
伊藤先生が、説明の時、レファレンスデータも自在に活用できるのも、ICTを巧みに利用しているからです。Imaginary imaginable imagined imaginativeのような接頭語や接尾語の違いを分析する問題も、類似問題がテータベース化されているから、どんどん生徒に投げかけられていきます。伊藤先生はは、反転授業において、優れたコーチの役割を演じているのです。
 
選択肢の問題は、すべてデータで正答率がでるようになっていて、エンパワーメント評価として授業で活用されています。これができるのは、先述したように、反転授業が行われているからであり、グーグルクラスルームでホームワークが出されているからです。つまり、実はセンター試験世代の受験生だけれど、21世紀型教育を意識した戦略的な受験指導になっていたのです。データ英語トレーニングとでもいいましょうか。
 
そんなことを思っていたら、今度はグループワークにすみやかにシフト。、議論しながら問題を考えていきます。その議論で生徒が使う言語の用法は、単語や文の構造をクリティカルシンキングしながら論点を明らかにする言語活用です。
 
 
グループワークで議論を明快にでき、深めていくことができるには、クリティカルな視点を標準搭載されている必要があります。反転授業は、この思考環境を生徒の内面に創り出すことだったのです。この環境を活用して生徒の学びは展開していきます。このとき伊藤先生は共感的コミュニケーションによるファシリテーターになっていました。
 
伊藤先生は、現高2生が、最後センター試験世代の生徒だからこそ、受験指導という枠内で、21世紀型教育を戦略的合理的プログラムとして創意工夫していたのです。

聖学院 最高の授業(1)

21世紀型教育機構は、グローバル教育3.0のステージに向かって、学内外のネットワークを広げ、グローバルイマージョンの環境を学校でつくっています。聖学院も、タイ研修という生徒が自己開示し、他者の痛みを感じ世界精神を自ら生み出す規格外の教育を実施しています。また、都市デザインや東京パラリンピック支援、はちみつをつくりその利益を寄付する起業プロジェクトなど、多様な実践的教育を行っています。

入試においては、生徒の才能に応じた多様な思考力入試を開発・実施し、NHKや静岡放送など多くのメディアでも取りあげられています。

しかし、他の学校と大きく違うのは、このような規格外の教育活動が、日々の授業と結びついているというコトです。ふだんの授業がPBL形式で進行するため、一時間一時間の授業が、生徒自身にとって特別で新鮮です。いつも自分にとって特別な時間が待っている最高の授業が聖学院では行われています。by 本間勇人 私立学校研究家

(聖学院は2カ月に1度くらいの割合で、有志の先生が集まって、授業デザインの勉強会を行っています。PBL型のワークショップ形式で進み、静岡聖光学院の先生方や東大の研究者も参加しています。仕掛け人は、21教育企画部長児浦先生。)

児浦先生の数学の授業は、PBL(プロジェクト学習)型授業。空間図形の切り口を学ぶ授業は、ポリドロンで立体図形を組み立て、切り口のそれぞれの頂点をひもで結んでいきます。ポリドロンにひもを結び付けて、切り口の図形をイメージする創意工夫は、児浦先生自身のアイデアです。

二次元のポリドロンを三次元に変換し、点を結んで立体を切るから、三次元と一次元を結合して、二次元に変換するというトランスフォーメーションの連続が、触る感覚を通してイメージされていくのです。

児浦先生は、指は第二の脳であるという信念をもっていて、まずは指で触りモノをつくりながら、脳内にイメージを転写していく学びのプロセスを大切にしています。感覚と脳のコミュニケーションが生まれる数学の授業なのです。

そして、アプリを使って、サイバー上で空間図形の切り口をイメージを確認していくような授業展開。また、その思考過程を言語化することも忘れません。Yチャートという思考ツールを使うため、生徒は言語化するときにそのツールでサポートされます。

児浦先生は、PBLの最後は、きちんと講義をします。グループワークでは、様々な学びのツールや思考ツールを、生徒の考えるサポートメディアとするファシリテーターをやり、最後は教師のロールプレイもするのです。

この授業で、生徒たちは、数式を図式化、言語化、立体化など相互に変換し合います。一次元、二次元、三次元を自在に変換転換する作業もします。体験と定義の相互関係も発見していきます。数学的思考の醍醐味が1時間の中につまっているわけです。

生田先生の理科の授業。水素の化学的性質や生活の中でどう使われるかなど、トリガーになる対話からはじまります。また、水素を使った実験のリスクマネージメントの話も。クリエイティブテンションのマインドセットから始まるのです。この体験という実験は、危険も伴うスリリングな体験。知的な精神だけではなく、自律する精神も同時に養います。

そして、生徒の知的好奇心は、水素と火によってでる音を聞いたり、美しく水素が燃える様子を見たり、運動エネルギーに転換してプラカップロケットを飛ばしたり、多角的な視点で、水素の性質のアイデンティティを組み立てていく思考として成長していきます。

条件を変えての仮説実験。五感と思考と物質のアイデンティティの関係を結合する実験の過程。そして、水素の特徴をまとめ、気体という物質の概念へ駆け上っていく生徒たち。さらに、リフレクションとシェア。実験を通して科学的思考を生徒は標準搭載することになるのです。

 

聖徳学園 グローバル × PBL × ICT

聖徳学園は「国際協力プロジェクト」という授業を高2生全員が年間を通じて行っています。グローバル教育センター長の山名和樹先生がJICA職員や大学の先生など外部の専門家と協力しながら育ててきた聖徳学園独自のPBLです。今年もその中間報告会があるというので見学してきました。 by 鈴木裕之:海外帰国生教育研究家

聖徳学園の国際協力プロジェクトでは、実現可能な課題解決案を考え、それを実際に実行することがゴールとして設定されています。各国の課題をただリサーチして終わりにするのではなく、課題解決に向けた一歩を踏み出すところにこのプロジェクトの意味があります。

私が見学した日は、インドネシア担当のクラスとミクロネシア連邦担当のクラスによるプレゼンテーションが行われていたのですが、各国の課題の捉え方やその解決案、また生徒のプレゼンテーションスキルも格段に進化していました。

課題が深く掘り下げて捉えられているのは、先輩が行うポスターセッションにオーディエンスとして参加していることが大きく関係しているのでしょう。国際協力プロジェクトはすでに4年目を迎えているため、定例イベントのように聖徳学園の生徒の身近な問題意識となって根付いているのかもしれません。

情報の授業と協働することでICTをフル活用していることも特徴的で、動画を組み込んでプレゼンしているチームも目立ちました。SNSを利用した情報の拡散や啓蒙活動を解決案として提唱しているチームも多く、ICTの活用スキルが年々向上していることがよく分かります。

各チームが特定の国の課題をリサーチする中で、個々の課題が同じ根っこから出ていることに気付いていくというのも興味深い学びのプロセスです。水質汚染やゴミの大量廃棄などの環境問題、また肥満や伝染病など健康に関する問題など、いずれもグローバル経済によって引き起こされた影の部分です。そのマクロな構造的逆説を見据えつつ、ローカルな現実に心を寄せて課題解決への行動を起こしていくこと。そこに聖徳学園のPBLの真髄があるのでしょう。

Mita International is a School of Miracles. One that has never been seen before

On Saturday 29th September, Mita International Gakuen Junior and Senior High School (Mita International hereafter), held their Open Day. They are the only Apple Distinguished School (400 schools worldwide) in the Kanto region and they have published practical ICT classes for teachers to use across the country. 
 
The classes use iTunesU, a system that integrates virtual and real learning spaces. This enables all teachers and all students to develop their creative thinking skills in any subject during the classes. These lessons that use devices that enhance originality and creativity are now in full operation. 
 
Teachers traveled from across the country to participate in this event and they were all amazed. Until now, they had never seen a school use iPads and MacBooks to create tables, graphs, and essays, to contribute during class discussions. 
 
By using programming, we can make Sphero move like the droids in Star Wars. It was as though a purple flash was being emitted whilst moving, and as if magic was being used. 
 
At the subcommittee meeting, discussions were held about what can be done to enhance learning. This growth mindset has attracted a lot of attention to Mita International because there is an overlap between our mindset and our students’ mindset. 
 
by Hayato Honma, Private School Expert Researcher

In general, the lessons consist of inputting and editing the information to recreate X as knowledge. However, at Mita International School, the lessons are about producing creativity. When you input X, a new concept, known as Y, is created. The important part isn’t about x→ x or x→ y, rather it is about the process ( → ) of discovery and creating it yourself.

For example, even though you can use programming to manipulate Sphero’s rotational movements, there is more to the operation than just remembering the technical problems. For this reason, a creative mindset is necessary to learn programming and to be able to use it effectively. 

 

In other words, having the thinking ability to create the function, y=f(x), yourself, is more important than only being able to explain what the function does. 

 

By researching information about things of interest to you and then inputting that information into the function, you are able to clearly express your own thoughts because it is from your own perspective. There is a trick to the process for when you don’t know what is happening to the relationship of the function and you don’t know what the right thing to do is. In general, it isn’t possible to resolve an issue yourself in a creative way if you are only using the tools that other people have given to you. 

 

 

When the Renaissance introduced modern science, the Alchemist (錬金術師) created equations by clarifying them to each other. They devised an equation to see the relationship of the function. The aim of this was to see how to make human civilization and culture by using information that flows naturally. 

 

Newton was respected as one of the Fathers of modern science, but an Alchemist had a stronger image at that time. That said, Mita International isn’t exactly Mr. Yoichi Ochiai, but it wouldn’t be an exaggeration to say that it is now a school that makes miracles happen.

What is the association? The discussion is about the kind of tricks used to create this association. The class followed the process of; input → black box → output. The teachers seemed to have made the apps themselves and after a while, they were able to use the iPad to steadily input any numbers to process a new number. The next part of the discussion was about the black box in the equation. 
 
The lesson was about numbers and although the process of association and the process of calculation are different as objectives or as subjects, the lesson was about how mathematical thinking ability = algorithm = producing the relationship function. There is no substitute for having a logical thought process.
 
 
Programming, association processes, and equations are all different aspects of producing creative knowledge. The subjects are different and even the objects and materials may be different too. The function y=f(x) isn’t just knowledge production, it is creative knowledge production. To be able to do this, it is necessary to have the ability to find the relationship of the function and to have the ability to create a new concept. 
 

In the international class, we think about the Sustainable Development Goals (SDGs) by taking part in English discussions about the action that can be taken to improve various issues across the world. The ideal input of the function would be the information about global issues. The ideal output would be, what it means to truly be happy, which is the ultimate goal of life. Even if we could do this, it is important to know how to make the equation because there is a trick to implement to achieve the ultimate goal of happiness. 

The idea is that everything has a functional relationship. Bertrand Russell and Ernst Cassirer are just two examples of the many mathematicians and philosophers that have tried to solve these problems. But the 知恵の輪(ちえのわ), which is known as the wisdom ring in English, still hasn’t been solved. The wisdom ring is a disentanglement puzzle that has one set that connects and disconnects from other pieces. Removing the pieces and creating new patterns is a complex procedure that it is best achieved by trial and error. 
 
Nothing is impossible for a modern school like Mita International. They are making miracles happen. 

In the science lessons, they were experimenting to verify whether they could answer the trigger question, which was, what can be done to stop a bouncy object from bouncing. They continued with the experiment by using the same cylinder and just changing the conditions by filling the cylinder to the top. They created a video for monitoring purposes to record the outcome so that they could support their hypothesis during the presentation.

The results of y=f(x) are different because this lesson uses different materials to input various conditions to unravel the equation. 

In the art lesson, you could see what kind of image was being expressed when you input certain music. However, it wasn’t finished yet. The app was used to capture the images, which were then combined with music and movements. This made you think about the emotions you feel and ideas you imagine when you hear the music. It made you wonder how moving images are expressed in movies. 

In the English lessons of the medical science technology (MST) class, the students worked in teams to research information about each country. They expressed their thoughts which they shared with each other during the discussions. 

 
The reality is that, every class we asked, all reacted in a similar, agile way. What did this mean? You could start to see the reflection process in the e-portfolio through accessing iTunesU, whenever you like and wherever you are. The syllabus clearly states how you are learning, what you are learning and for what reason. 

 
Mita International’s meta-rubric may be simple but because of this, specific rubrics are developed in various ways with the same structure for each unit of each subject. A system of diffusion and convergence has been created, which is shared between the teachers and the students. So, that is the trigger question (input) and the result is the output. So there is a lesson that reflects this exactly to help with the learning of the PBL of the process. In other words, the function y=f(x) is the lesson. 

If you walked by the laboratory during break time, you could see the students in the MST class doing experiments. If you asked them what they were doing, they said they were experimenting to see whether they could find genes from places nearby, that could be useful for antibiotics in the future. To do this they analyzed the genetics of plants, which they collected from inside the school and from parks close to the school.

 

They politely explained the research method that they used in the genetics experiment but it was difficult to understand because it was too technical. The School Director, Kiyomichi Ohashi, had already informed us that the MST class is graded using the curriculum from the Advanced Placement (AP) program in America. From this, we understood that the students were experimenting at or above undergraduate level, which is truly amazing.

The last part of the Open Day was the subcommittee meeting. This was so that the teachers that participated could reflect on the lessons that they enjoyed the most. Within this meeting, Headteacher Jun Tanaka discussed with the participants about the definite possibility of all teachers and all students using iTunesU to create new lessons.

 

Under these circumstances, this School of Miracles is able to create lessons and a curriculum to create y=f(x). For this to happen, the theory of organizational management needs to be shared throughout the entire school and the actual method of sharing needs to be considered. It isn’t possible to only create x or to only create y because there isn’t a cultural capital of this new type of learning. Cultural capital is a term used in sociology that refers to the social assets an individual possesses, such as education, intellect, and style), which contribute to social mobility within the overall society. To become a culture, there needs to be the possibility of becoming sustainable. 

 

It isn’t just about supporting each individual teacher’s strength. So, it is important to work in teams and share the learning so that it becomes a routine. There is still a rough road ahead of us and there is a chance that we will crash. It is as though there is a mountain that can’t be moved. 
 
A number of participants gathered to discuss their ideas to ensure they do everything possible to make this a success. Following this discussion, Headteacher Tanaka thought of a new idea. This will be announced soon.

 

 

 

 

工学院 創造的緊張感を持続する組織(2)

工学院は、「挑戦・創造・貢献」を理念としています。この根本には「自由」があります。自由が前提だからこそ「挑戦・創造・貢献」が可能なのです。エントランスホールには「真理は自由にす」というグローバル精神が刻印されているぐらいです。

「自由」。もちろん、「自律」と表裏一体ですから、個人主義とは違います。「貢献」という理念がそれを支えています。さて、この意味での「自由」が、授業の中にも反映されているために、正解が1つでない問いが中心となる創造型PBL授業ができるわけです。つまり、「真理が自由にす」という自由が文化遺伝子としてあったからこそ21世紀型教育にも踏み出せたのでしょう。

工学院のPBLは、「自由」が基調としてあるので、「好奇心」「開放的精神」「探究心」が生まれてきます。まずは「好奇心」。興味と関心のあるところから出発します。しかし、授業は単元という決められた学習項目があらかじめ設定されています。

この制約された枠組みの中で、しかし、生徒1人1人が、はじめは興味はなかったけれど、あれあれっと好奇心が湧いてきたとなるように授業をデザインするのがPBLやPILなのです。なぜ興味や関心が、後から生まれてくるのか?それは多様な環境、多様な学習道具、そして、なんといっても「対話」があるからなのです。

多様な環境に関しては、世界中いろいろな場所でフィールドワークする機会があります。これについては、いずれまたインタビューしたいと思います。多様な道具とは、同校の図書館を訪れれば、ラインナップがずらりとあることに驚かされます。

レゴや3Dプリンターがずらり並ぶFab Labスペース。どちらも、ICTが背景にあるのは言うまでもありません。

もちろん、教養にとって大切な図書も。しかし、ちょっと少ないのではと思う方もいるでしょう。しかし、大丈夫。

電子図書として、クラウド上に書籍は無限に存在します。生徒は、パソコンやタブレットとIDカードで教養の世界を広げます。

英語の多読スペースでは、英語の文献がずらり。

もちろん、進路関連図書のスペースもあります。

これらすべてが、工学院の学習道具で、授業、探究論文、海外留学、国内外のフィールドワーク、プログラミングなど多様な学びで大活躍するわけです。

そして、多様な道具を活用するということは、自ずと授業の対話のスタイルも多様になります。

わかりやすいのは、グループワーク型の対話です。サークルという空間は、対話に適しているからでしょう。

生徒―パソコン―電子黒板ーwebーアプリ―教師というスタイルは、リアルには、普通のスクール形式ですが、脳内では複眼思考が飛び交う対話になっています。

ドラマトゥルギーな学びの空間が対話を生み出す時間にもなります。

英語のエッセイライティングの授業は、生徒と生徒の対話と生徒と教師の対話が交差して、思考に没入する空間が出現しています。

教科としての「数学」と「数学的思考」が交差するには、対話の機会を授業に取り入れます。いろいろな解法があることに気づくには、対話が最適です。しかし、なぜそのような違いがあるのかメタ的な教師による問いかけは、数学的思考を召喚します。

工学院のPBLは、目の前の問題の多角的な解法への気づきとなぜそのような多角的な解法が可能なのかというメタ的な気づきの複眼思考があるからシリアスで楽しいのです。多角的な解法を教え合うだけではなく、その思考を通して、他の問いの考えにつないでいくという世界の扉を次々と開いていく躍動感。それは、生徒1人ひとりの進路を切り拓くエネルギーに転換していくでしょう。

かくして、多様な学びの空間、多様な学びの道具、多様な対話のスタイルという複雑系が、シンプルに創造的思考のリズムとなって学内を満たしているのは、創造的な緊張感が背景にあるからなのです。

 

 

 

工学院 創造的緊張感を持続する組織(1)

工学院大学附属中学校・高等学校(以降「工学院」と表記)は、八王子という私立中高一貫校志望者が23区に比べかなり少ないエリアにあります。もともと日本の私立中高一貫校に進学する割合は、全国の同年齢人口の7%。一般には公立中学と私立中学の選択を考える家庭は少ないのです。

一方東京の23区は、区によっては20%近く進学を考える層がいる私立中学受験王国です。ところが、八王子エリアはというと、同じ東京都にありながら、全国レベル。東京における私立学校の経営としては、極めて不利な困難を極める立地条件です。

それがゆえに、このエリアでサバイブするために、先生方はイノベーティブな教育活動を徹底しています。by 本間勇人 私立学校研究家

(中学の理科の授業、Fab Labも備えた図書館で創造型PBL授業。工学院のPBL授業のプロトタイプ。)

このイノベーティブな教育活動は、しかし、並大抵のものではありません。23区で行われている程度のイノベーティブな教育活動では、差別化されませんから、その困難な立地条件を好条件に転換することは難しいでしょう。

そうなると、学内は、歴史的論理必然的に、質を高めるか結果を出すかという緊張感が生まれます。工学院としては、突出した21世紀型教育というビジョンを掲げて、「挑戦・創造・貢献」という理念を実現しようとしています。

しかし、その前に大学進学実績ではないかという議論が、巻き起こるのは世の常です。前者の中心は、創造型PBL(Project based Learning)授業です。後者は、戦略的PIL(Peer Instruction Learning)です。一般的には、アクティブラーニングと講義ということになるでしょう。

工学院は、このアクティブラーニングと講義の拮抗を解消し、PBLとPILという形で、生徒がどちらにおいても主体的に自律的に対話的に考えプレゼンできるような仕掛けを作っています。

とはいえ、それは理想的な平衡状態で、針が揺れるのが現状です。そのときに、PBLだけに偏るのか、PILという講義だけに偏るのか、それとも統合しようとするのか。もちろん、統合しようとします。それゆえ、学内は常に創造的緊張感が走っています。

これは、他校ではなかなかない状態です。どちらか一方に決めてしまうのが楽だからです。ところが工学院は、創造的緊張感を持続する道を歩んでいます。いばらの道ではありますが、その向こうには生徒にとってはもちろん、教師にとっても、学校にとっても、八王子エリアにとっても、最終的にはグローバルなエリアにおいても「希望」が待っているからです。

21世紀はある意味産業革命以来の大転換を意味するエポックメイキングな時代です。帝国や近代国家の歯車としての一員として背景にある個人ではなく、自由・平等・博愛を1人の力でも主張できる自律協働創発型人材の時代です。そのような時代は、それぞれ個人の考え方や価値観が衝突するのは当然です。

そのとき、違うもの同士がいがみ合い、互いを排除し分断を造るのか、創造的緊張感を発揮して、自律協働創造的な社会を創っていくのか。工学院は後者を選んだのです。

教務主任の田中先生は、「本校のビジョンはなかなか高邁なのです。ですから、立ち臨むには、Growth Mindsetが大切です。しかし、私たちだけがそうなっても、八王子エリアの教育文化とのギャップを感じたとき、やはり私たちも情緒的に不安定になって、ある意味パニックになります。すると、その立ち臨むテンションは萎えて、ビジョンを引き下げようという圧力が働くときもあります。

しかし、原点に立ち返り、再び創造的緊張感を共有し、ビジョンを確認し合います。そして、その実現の活動をするわけですが、創造的緊張感と情緒的緊張感は常に同居していますから、現実はそう簡単に進みません。

にもかかわらず、やらんくてはならないのです。そこで、私たちのこのビジョンの原点は思考コード創出でしたから、今年は、教員全員一人ひとりが、自分のやりたいことを思考コードで表現することにしました。

思考コードに刻まれたコンテンツは、1人ひとり違います。しかし、思考コードを共有するという意味では、個々の力を尊重しながらもベクトルは共通しているということになります。」

この個々違うけれど、大きなベクトルを共に歩むというアクロバティックな組織作りを田中先生は、教員と一丸となってやっているわけです。

ですから、田中先生と思考コードを中心になって創出した櫻坂先生の授業などは、戦略型PIL授業と創造的PBL型授業の両者を授業の中に丁寧に取り入れているのです。

しかも、プロジェクトというのは、あるテーマを客観的に追究するだけの作業ではありません。生徒自らが、自らを勇気をもって、その世界に投げ込み、根源的な問題に触れながら、自分の歩む道が拓かれる行為でもあります。つまり、プロジェクト型の学びは同時にキャリアデザインになっているのですが、櫻坂先生の授業は、そういう多層の意味があります。したがって、密度の高い授業で、ある意味学び=祭りになっていて、生徒はHard Funを体験しています。

工学院の進路指導(了)受験勉強を通して本質をつかむ

三人の卒業生の座談会を終えて、そこに立ち会った校長平方邦行先生と進路指導部主任の新井利典先生は、すぐにリフレクションしていました。新しいハイブリッドとしてのクラスやコース分けが完成したのは、今の中1から高1。高2はプレ改革期で、ハイブリッドインターコースが、週に一度工学院大学の新宿キャンパスで、大学の講義なども受講するようになりました。

したがって、今春の卒業生は、システムとしての21世紀型教育改革の影響は受けていません。しかし、今回の座談会を通して、その改革の精神的な良い影響があったのではないかと、先生方は手ごたえを感じつつ、一方で新たに洗練していく部分も発見し、対話がどんどん広がっていきました。

(左から進路指導部主任新井利典先生、校長平方邦行先生。二人の対話はさらに詰めていくポイントをめぐって、広がっていきました。)

平方:今回の座談会で、たしかにシステムや制度として、改革の影響を受けていないけれど、授業や「探究論文」という場で、教師とのコミュニケーションを通して、これらから必要となる英語4技能のトレーニングや論理的思考や創造的思考を身につける環境はあったのだと手ごたえを感じることができました。ICTも、今の高1までは、タブレットやラップトップ1人1台の環境になったけれど、電子黒板は、どのクラスでも活用できるようにはしていた。

だから、PBL形式の授業を全面的に展開はしていないけれど、教師によっては、すでに行っていた。そういう意味では、改革の文化的な背景や精神的な部分は、学内全体に広がっていたと感じました。

新井:たしかに、成長したと改めて実感しました。今日の3人の中には、彼らが高1の時に担任だった生徒もいて、あのときから比べて本当に大きく成長したと思います。私は、校長のように6年間全体をマクロの視点で眺めて改革を実行する立場ではなく、まずは高2・高3の進路指導のシステムを盤石にしようとしています。もちろん、それが高1や中学の教育活動に結びついていくようにしていくつもりです。

ただし、結びつくということは、受験体制/耐性の文化の再生産が好循環しだすことです。形式だけが表面的に動いても意味がないと感じています。それで、今年で2年目になりますが、「合格体験記・進学参考資料」をつくっています。先輩が後輩に伝え、再生産していくには言葉で伝えていくことが基本です。

平方:そういう意味では、これだけ自分の言葉で、受験勉強の体験や入試攻略の戦略について執筆できているということは、その文化の再生が生まれていることを示していると思います。おそらく、これはeポートフォリオの1つのモデルになるとも思います。また、考えてみれば、2020年の大学入試改革が工学院の改革のきっかけではなく、時代を読み取った結果、先駆け的に、初めから英語4技能へ移行したし、PBL型授業及び探究論文を通して深く学んでいく、自分で考えていく、自分の好きなものを見い出していくということを学内で共有はできていたと思います。

新井:今回の3人の生徒は、執筆もそうですが、自分の言葉で話すことができたし、よく考えて互いの話を理解し、ツッコミも入れられていましたから、たしかに、受験体制/耐性への文化の再生産が循環し始めていると思います。ただ、文化の再生産とは、在校生全員が、最終的にリフレクションが自分でできるようになるということですから、どの生徒もどこのクラスもどこの学年も徹底して実現できているかどうかといえば、まだまだこれからだと思います。

平方:英語の教科会議などは、英語でやっているし、ケンブリッジ英検を導入して、日本初のケンブリッジイングリッシュスクールにも認定されるようになりました。CLILという英語で教科横断的な学びができる手法も英語科を中心に広げています。ある意味、進路指導部の縦の線の循環と英語科のCLILやCEFRでハイレベルの思考力を学ぶ授業展開が水平に広がっています。多くの海外研修や体験もあって、自分の興味あるものや好きなものを見つけやすい環境にもなってきたと思います。

新井:たしかに、多様なプログラムで満ちています。やはり今日の菅谷くんではないけれど、はやめに自分の好きなものが見つかると、早い段階で、詳細な学部学科を調べるモチベーションがあがり、漠然としてではなく、明快に進む道が見えてきます。アドバイスもピンポイントでできるようになります。そうすると、その目標に向かって受験勉強にも力が入ります。木戸くんの場合もそうだったけれど、受験勉強を通して学ぶことを楽しめるようになります。

早川くんは、どちらかというと目標よりも先に、中学のころから成績がある程度よかったために、自分でも言っていましたが、進む道が決まるのが少し遅かった。だから、フワーッとしていた早川くんと、追い込む早川くんの変貌ぶりがなかなか興味深かったですね。しかし、3人の高3最後の受験勉強は、自分で戦略や作戦を組み立てて取り組んでいた。資質や素養が良ければ、それでよいというのではなくて、せっかくの素質を実現するのに活用するには、どうしても戦略的な学びは必要になります。

平方:好奇心や関心のあるものを見つける体験やプログラムは楽しいからね。ただ、体験やプログラムをやることが目的になってしまうと、深い学びにつながらないから、そこは注意が必要です。

新井:そうなんです。楽しいとかおもしろいには、やはり段階があると思うのです。娯楽的な楽しさの段階と知的でアカデミックな楽しさとは違いがある。そこは今日の3人はよくわかっていました。木戸くんは、教員になるための勉強をしているというより、すでに現場の教師という立場で語っていたし、早川くんも、法律の勉強をしているというより、紛争解決する側に立って語っていました。一番わかりやすかったのは、菅谷くんでした。ゲームやパソコンのユーザで満足するのではなく、創る側に立って語ってくれました。

平方:授業や研修も同じです。その向こうに深い学びを探究する楽しみを導けるかです。これは言うは易くなかなか難しい。

新井:そこですね。娯楽的な楽しさは、いろいろなことを結びつけて、それはそれで楽しいのですが、何でもよいと拡散分散して終わってしまいがちです。そこは、私たちも気を付けないといけません。もちろん、拡散はよいです。視野を広げるし、脳を活性化するのですから。しかし、そのあと収束して、いろいろ結びついたときに概念として最適化しなければ意味がありません。

この概念を生成することは、極めて創造的な作業だと思っています。菅谷くんは、自分でも言っていましたが、そこの詰めがないと、乗り越えられない学問のハードルがあります。そのハードルを乗り越える体験は、大学に入ってからでよいとは、私は考えていません。

受験勉強してそれで終わりという進路指導をしたくない理由はそこにあります。受験勉強を通して、拡散と収束の学びを身につけ、その反復が、だんだん螺旋階段を登っていくような感じになって、学問的に難しいハードルも乗り越えられる瞬発力や学ぶ力、考える力を身につけて欲しいと思います。

平方:そして、そうなることを、今日の3人だけではなくて、工学院の生徒すべてに望むわけだけれど、それには学内全体がそういう方向で動けるようにマネジメントしていくことが大切だと思っています。

新井:そうですね。私の言葉では、学ぶことが楽しいという文化の再生産ということに尽きると思います。がんばります。

 

 

 

 

 

 

 

工学院の進路指導(2)中高時代の学びが大学で役に立つ

昨年に続き、今春の卒業生たちも、それぞれ「合格体体験記」を後輩のために残しました。この分厚い冊子を編集した進路指導部主任新井利典先生は巻頭言でこう語っています。

「今年度は17名の卒業生が執筆を引き受けてくれたたため、100ページを超える大作となりました。・・・これを読む在校生は、卒業生からのメッセージだと捉え、自分の学びに生かしてほしいと思います。」

「一人一人の個性が違うように、学び方も人それぞれです。自分自身の勉強方法は、周りのアドバイスに謙虚に耳を傾けながら、自分自身で模索するしかないのです。そのことを忘れずに、先輩たちの経験を参考にしてみてください」。

Q:中高時代の部活や自分なりの学び方を模索した経験は、大学に入って生きていますか?

菅谷:そうですね。コンピュータ関連の企業に就職したいと思っているので、そのために今は、基礎的な数学や物理の勉強は継続的に行っていますね。理系の場合は、研究室に入って、そこから研究室のネットワークで就職していきますから、基礎的な学びをベースに本格的に研究していきます。そういう意味では、受験科目で数学と物理はとっていたので、直接役に立っています。また、研究という点では、ユーザーではなくつくる側の視点に立って、興味を抱いて学んでいった体験は役に立つだろうとは思います。

ただ、思っていた以上に大学の講義は難しいですね。ある意味壁です。

Q:それは新たな分野が出てきたということですか?

菅谷:そういうことではなく、高校時代と大学時代では、やはり先生方の教え方が違っているということかなと思います。高校時代は、正解の出す過程も含めてかなり丁寧に取り組むことができました。正解のない課題論文のような学びも、そうはいっても先生はアドバイスやサポートしてくれましたが、大学は丁寧には教えてもらえないですね。自分で文献を探して理解していかなければならないけれど、そもそも解答を丁寧に解説してくれている文献がないことが多いです。

だから、自分で考えたり深く探究する高校時代の学びは、役に立ちますが、高校と大学では、考えてみれば当たり前ですが、レベルが違いすぎるかもしれません。でも、それを乗り越えれば、何かが見えてくるだろうし、そうでない場合は、ちょっと困りますね。

いずれにしても目先のことだけこなして満足するような勉強は高校時代はやめたほうがよいと思いました。

早川:今、自分は法律を勉強していますが、やはり紛争のケースメソッドは、正解がないので、多角的な視点から自分で考えていく必要があります。数学を学んでいたし、受験も数学だったということもあり、論理的に考えていくという中高時代の学びは、そのまま役に立っています。

Q:法律のイメージは、判例をある程度参考にしたり、条文を暗記したりすれば、解決するという感覚なのですが、いかがですか?

早川:もちろん、判例や条文は大切ですが、紛争や事件は、パターンは似ていても、やはり違うところがあり、判例や条文を暗記したからといって、そのまま適用できるというものではありません。そんな小手先の勉強をしていくと、立ち行かなくなるという実感はあります。それにロースクールに進学する学び自体が、昔の司法試験とはだいぶ違って、かなり正解のない問題をいかに解決するかという探究に重きが置かれています。

木戸:中学のころから教師になりたいと思って、自分の部活や勉強の文武両道という信念を貫いてきたことは、やはりそのまま役に立っています。それができるには、好きなことを見つける・興味のあることを見つけることが大切だということも、今の教育の勉強の中で、間違っていなかったと確信しています。

ただ、好きなことが見つけられないとか、興味のあることがわからにという生徒が多いということもわかってきました。そのような生徒をどう導くか、今そこに一番関心があります。

Q:やはり木戸くんは、大学入学半年にして、教師としての自覚がでてきているということですね。それにしても、現役の教師もそれは難しいと思っていることでしょう。どう解決しようと考えているのですか?

木戸:ありがとうございます。それは、やはりいろいろな体験や遊びを共にしながら、対話していくことだと今は思っています。体験や遊び、学びを通して、その生徒が得意だったり、好きなことだったり、そんなところが必ず現れてくると思います。そこから出発して導いていくことができたらと思います。もちろん、どこかで手を離さなければならないのですが、そのタイミングは一人一人違うので、持続して生徒が学んでいける様子を見守ることは必要だと思います。子供たちが、新しい自分に出遭えたらよいかなと思っています。

Q:それは、木戸くん自身がロールモデルということですね。早川くんも菅谷くんの場合も同じですね。こんなに善きロールモデルの体験が、重要だとは改めてすごいなと思いました。最後に、受験勉強というのはみなさんにとっては、価値あるものでしたか?

菅谷:もちろん、ありました。自分は、追い込みという方法はとりませんでした。コンスタントに計画的に勉強していくことで、メンタル面が安定するので、時間とか計画とか大事にしていました。過去問を解いていくときも、闇雲に解くというよりも、合格点をとるためにどの問題からはじめ、極端な場合は、捨てる問題を判断する時もありました。問題の難易度を見極めることは重要でしたね。時間配分と優先順位を念頭に置いていたのだと思います。

早川:自分の場合は、菅谷くんのように、コツコツやるタイプではなく、やる時はやるし、やらない時はやらないというタイプでした。さすがに、高3のバレーの部活を6月に終えたときからは、追い込みをかけました。自分は、英語は中学のときにすでに英検2級をとっていたので、油断したというコトもあります。

数学は得意というほどではなかったですか、社会に比べればなんとかなるなと思っていたので、数学に力を入れました。英語の成績もがくっと下がった経験もして、得意科目でもちゃんと勉強しなければということを学びましたね。現代文に関しては、しっくりこなかったという意識がありました。そういう意味では、受験勉強は自分を知る意味でとても価値があったと思います。

木戸:自分は国公立を目指していましたから、センター試験一筋で学びました。センター試験は英語の方が現代文より攻略しやすかったですね。英語の長文と現代文の長文の問いの作り方が違っていて、英語の方がより客観的な理解を促す問いが配列されているのに、現代文は、作問者の意図がどうしても反映していて、それを見抜くということが必要になります。

早川:そうだと思う。論文を書く場合は、フォームがあるし、自分の考えを展開していくからやりやすいけれど、現代文の読解は自分と作問者のズレがあるときがありますよね。

木戸:そうなんです。作問者もできるだけ、客観的に作成しているとは思いますが、100%、意図を排除することはできないと思います、だから、もっと自分の考えを論述するような問題が出題されるような改革の方向性はいいのではないかと思います。

菅谷:問題の難易度の妥当性というのもあります。自分は、そういう観点で思い切って捨てるという判断を大事にしたと思います。

Q:そんな批判的な分析ができたというのは受験勉強は価値があったということですね?

早川:クラスの友人と、学びの方法や入試問題の分析方法をよく話し合いました。そういう価値は得難いと考えています。高校の勉強が意味があるかという疑問についても話し合ったことがあります。目の前の受験勉強を避けないで、そこを通して、自分で考える学びを見つけられると考えます。

木戸:やはり、部活動と受験勉強の文武両道という体験は、大切で、いろいろな人間関係や自分の技術をどう向上させるかなど、考える機会はいっぱいあります。受験勉強の向こうにあるものが価値がありますね。

菅谷:自分の好きなことから、学んでいくという体験は裏切らないと思います。受験勉強を通して、自分のやりたい道を探して欲しいと思っています。

 

 

工学院の進路指導(1)自分で踏み出すきっかけ

工学院大学附属中学校・高等学校(以降「工学院」と表記)といえば、グローバル教育とSTEAM教育を土台とした21世紀型教育です。しかし、今春同学院の歴史始まって以来の大学合格実績を出した学年は、まだ全面的に21世紀型教育改革システムが展開していない学年。
 
ただし、探究論文という21世紀型教育の中核的な学びの一期生ということもあり、興味と関心のあることについて、自分で考え、探究の道を、やはり自分で踏み出していく学びの習慣が浸透していたのです。
 
ある意味、これこそが21世紀型教育の肝で、現在、工学院がこのような新しい教育を展開できているのは、卒業生が自分で自分の道を踏み出す精神的なミーム(文化遺伝子)があったからだともいえます。
 
学校に限らず、イノベーションが成功する組織には、精神的な文化遺伝子ともいえる伝統が核としてあるからです。3人の卒業生との対話がそれを明らかにしてくれました。
                          by 本間勇人 私立学校研究家
 
 
(左から新井先生、木戸くん、早川くん、菅谷くん、平方校長)
【座談会参加卒業生】
木戸直輝 都留文科大学 教養学部 学校教育学科
菅谷遼太 法政大学 理工学部 電気電子工学科
早川拓未 中央大学 法学部 法律学科
 
Q:進路を決定した時期やそのきっかけになったのは何だったのですか?
 
木戸:私は、高1の段階で、教師になる道を決めました。もともと中学のとき部活と勉強の両立を目指すことを教えてくれた先生との出会いで、教師という仕事の重要性が気になっていました。
 
部活は軟式野球部だったのですが、工学院入学後も軟式野球部に入部しました。部活と勉強の両立をやり切るには、その部活は最適だったからです。
 
 
そんな思いが、高1のキャリアガイダンスである適性検査を受けて、その結果ではっきりと出てきたので、確信を持ちました。
 
その適性検査は、自己を見つめるデータや自分の将来の仕事の適性、学問選択の診断の参考データでした。
 
早川:自分は、なかなか進路が決まらなかった方だと思います。文系というのは決まっていたのですが、何になるかという進路先よりも、部活やいろいろな視野を広めることに興味と関心があったからだと思います。
 
ですから、高2になって志望校をいよいよ決める段階になって、迷っていたら、先生から声を掛けられました。具体的な指示はまったくなかったのですが、自分のやりたいことは何かについて、耳を傾けてくれました。その先生との話の中で、見えてきたのだと思います。
 
 
自分たちの学年から、高1から高2にかけて課題論文(現在は「探究論文」)を作成する機会が課せられました。自分のやりたい学問と社会の関係を考えることのおもしろさや論理的に考えることの重要性に気づくきっかけになりました。
 
自分の論文の担当の先生に個別に指導してもらえたのですが、解答を教えてもらうということは全くなく、調べ方や視野の広め方、編集の仕方、考え方を学べたと思います。
 
とはいえ、社会科の模擬試験の結果はあまりふるわず、暗記することよりも、数学という論理的に考えていけばよい科目が好きでした。入試も、英語と国語と数学で受けることにしました。
 
菅谷:自分は幼いときから決まっていたような気がします。ゲームが好きで、遊びながら、ゲームの仕組みが気になりました。そのうち、業界を驚かすようなゲームが次々登場するたびに、ゲームを作ることへの魅力を感じるようになりました。しかし、ゲームはお金がかかりますが、そんなにお金は使えないので、ゲーム機をたくさん買うことはできませんでした。
 
それで、中学頃からパソコンでゲームをやるようになりました。たぶん、パソコンを使ったことが、ゲームやコンピュータの仕組みの方に興味が移っていったのだと思います。ただ、進路や志望大学をはっきりと決めたのは、高1の文理選択のときでした。
 
Q:幼いころからだいたい決まっていたということは、早川くんが語っていた課題論文もゲームやパソコンに関して探究していったのですか?
 
 
菅谷:いやまったく違っていて、人工甘味料でした。コーラが好きだったので、興味と関心があるもの中からテーマを決めました。
 
Q:今、全く違っていると言ったけれど、どこか菅谷くんの理工系の道を歩く何かと結びつくような気がするけれどどうでしょうか?
 
早川:たしかに、ゲームやパソコンと人工甘味料という素材は違うけれど、その素材の背景にある仕組みについて、紐解いて論理的に導いていく、考えていくという点では、その姿勢は同じだと感じます。
 
木戸:それに、やはり好きなもの興味があるもの関心があるものを通して学んでいるというところは共通していると思います。深い学びにもっていく姿勢があると思います。
 
菅谷:どうでもいいことからはじまっていると思っていたけれど、2人にそう言われれば、なんだか照れくさいけれど、そういうものかなと。たしかに、ゲームを楽しんだり、コーラーを飲んでそれで終わりにするのではなく、作る側の目線で眺めている自分がいると思います。
 
Q:一般的に、進路について語るとなると、受験結果とか参考書はどんなものを使ったとか、勉強の作戦はどうしたかなどとなるものです。ですから、進路に対する自分の内面をここまで語れるというのはなかなか得難いと思います。今みなさんが話をしてくれたような進路に対する姿勢に工学院の先生方はどんな影響があったと思いますか?
 
木戸:もちろん、そういう基本的な内容も「合格体験記」に詳しく書きましたが、そうですね。工学院の先生は、何かをこうしろという指導はしなかったですね。自分が好きなものや興味があるものを大切にしてくれました。
 
早川:自分もそう思います。やはり自分で考えることを大切にしてくれました。論理的に考える過程も重視してくれましたし、情報はもちろん提供してくれました。具体的に指示するということは、先ほども語りましたが、なく、だいたいのことを教えてくれるというか、大枠は示してくれたと思います。
 
菅谷:そうですね。自分の担任の先生は、自分にとって必要なタイミングで必要なことを言ってくれるというタイプでした。自分では、みんなから見たらどうでもいいようなことをやっているなあと思いながらも、先生はそれを受け入れてくれていたと思います。
 
Q・木戸くんは、教師になると決めているということですが、今話に出たような工学院の先生はモデルになるのですか?
 
木戸:もちろん、教師像というのは、工学院の先生と重なると思います。私は、やはり子供が好きなものや興味のあるものから始めて、深く考えていく姿勢を大切にしたいと思います。
 
そして、何といっても体験は大事ですから、部活と勉強が両立できる環境を設定できる教師の情熱が理想です。私たちのときはまだでしたが、これから大学入試改革や学習指導要領の改訂がありますが、自分が教えることになる生徒は、そういう学びができる環境になります。教育原理などを学んでいるとそういうことがはっきり見えてきます。
 
早川&菅谷:木戸は、いい教師になるよ(笑み)。ほんとうにそう思った。(つづく)
 

聖徳学園 創立90周年を起点に教育の質向上へ(2)

今回、夏期教員研修のプログラムの中で見学したのは、上智大学言語教育センター教授藤田保先生による「2020大学入試改革・これからの英語教育と教科間連携について」です。藤田教授は、言語学、バイリンガル教育の研究をされていますが、今回の改訂学習指導要領にもかかわっており、小学校の英語教科化の方法や実践など英語教育についても研究しています。

特に上智大学で行われているCLILという新しい英語教育の研究・開発・提唱者でもあり、CLILが小学校・中学校の現場に広がる契機もつくっています。

(13号館ラーニングコモンズにて)

また、今回の大学入試改革で大きな話題になっている外部英語検定試験の導入についても文科省にアドバイスもしています。上智が中心になって入試利用しているTEAPについても上智大学言語教育研究センター特任教授吉田研作先生と共に研究をしています。

さらに、今回の研修の前日カンボジアから帰国したように、同国で、<STPC(Summer Teaching Program Cambodia)>というボランティア活動をしている上智大学生のアドバイスもしている実践家でもあります。

このように、藤田先生は、幅広く多様な研究・開発・実践活動をグローバルに展開しているわけですが、実は聖徳学園の国際教育、STEAM教育などにおいても教師と生徒は多様でグローバルな探究活動を行っています。ですから、伊藤校長は、藤田先生の研究・開発・実践活動と聖徳学園の教育活動の相乗作用が生まれることを期待し、藤田先生に年間通してのアドバイスを依頼しています。

今回は、2020年大学入試改革とそれに伴う学習指導要領改訂において、従来と大きく変わる点をまず確認しました。幾つかある中で特に重要なのは、学力の3要素の明確化とその実現のための授業の変化です。3要素とは「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」「主体性・多様性・協働性」がそれですが、これを実現するために、「主体的・対話的で深い学び」というアクティブラーニングが導入されます。

藤田先生は、教科としては英語の話を中心に進めるわけですが、今回の大学入試改革と学習指導要領改訂では、あらゆる教科に共通して、学力の3要素は求められているし、「主体的・対話的で深い学び」が現場に浸透するように方向付けられていることを確認していました。

これは藤田先生がかかわっているCLILという英語の教育方法が念頭にあったと思います。CLILは、英語のみならずいろいろな教科でも活用できる教育であるからです。しかも、今回「深い学び」とあるのは、「主体的・対話的な」活動、英語で言うならばコミュニケーション活動が、実生活の中で活用されることが必要になってくるということです。

その重要性がイメージしやくするために、カンボジアでの<STPC>についてケースメソッドを紹介しました。上智大学の学生が、どのようにカンボジアの子供たちと英語を学ぶのかそのプログラムを例に挙げたのです。

ここで、紹介されたのは、単語や文法といった知識を身につけることに偏らずに、英語を使おうという意欲を高めることを重視するコンセプトで実施されているプログラムでした。また、意欲を高めるために、カンボジアと日本の舞踊やパフォーマンスの違いの比較文化を行い、実際にカンボジアのプロを呼んで、鑑賞するなど英語を超えた内容を導入したり、実際に活用したりするアクティビティが埋め込まれていました。

授業と授業を超えたフィールドでの教育活動、英語と他教科のコンテンツにおける綿密な結びつきの創意工夫など、シナジー効果が生まれるケースメソッドです。おそらくこれは、伊藤校長にとっては、聖徳学園でもすでに始まっているという確認ができたと同時に、さらにシナジー効果という質をあげる大きなカギがあると確信したことでしょう。

そして、最後に進路の在り方の大きな変化が起こることが告げられました。それは「テストに出るから勉強する」から「勉強しているからテストで測られる」へ転換するというものでした。従来は、入試科目に関係ない教科や探究は、勉強しないという風潮があったが、授業で学んだこと、国内外のフィールドで学んだこと、4技能の英語を学んだことなど、すべてが評価の対象になるということでしょう。

「主体的・対話的で深い学び」を行ってきた、いわばポートフォリオすべてが評価対象になるわけです。学びの中で多くの時間数を占めているのが授業です。この授業の質がさらに向上し、国際教育やSTEAM教育などと結びつき、シナジー効果が生まれるようにすれば、教育の質向上は期待できます。

いよいよ伊藤校長の授業を中心とする教育の質向上のビジョンが実現の道を走り始めたのです。

                           (私立学校研究家 本間勇人)

 

 

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